「まさか、ここまでとはな」
目の前の男が私にそう声をかける
普段はこんなことはしない
いつもならば笑って共に酒を酌み交わす仲だったのに
「どうした?鬼ともあろうものが、迷っているのか?」
目の前の男の挑発に苛立ちを覚える
だが、私はあくまでも冷静だ
絶対にお前を止めて見せる
「《執行者》?」
紫から今回の戦闘に参加するように言われたのはつい先程だった
「ええ、貴女にお願いしたいのだけれど」
「構わんが、私は飲む約束をしてるんだ」
「へー?お相手は?」
「竜胆ってやつだ」
「……そう」
「あ?なんか文句でもあんのか?」
「いいえ、でも…」
歯切れが悪い、何を考えている?
「なんでもないわ、精々楽しんでね」
「あ!おい!」
返事も聞かずいきいきやがった。
あんにゃろう
「待たせたか、勇儀」
いつもの居酒屋で飲んでいると声をかけられる
「ああ、待ってる間に一本飲んじまったよ」
「ふむ、それはすまなかったな」
竜胆はそう言って私の隣に腰掛ける
「さっき八雲紫ってやつが来てな?」
「うむ、それがどうした?」
「執行者ってやつと戦えってさ」
「な?!」
竜胆が異様に驚く
「どうした?竜胆?」
「勇儀、外へ行こう」
「あ?なんでだよ」
「面倒事を片付けるのだよ」
急に雰囲気が変わった
その後私達は地獄の外れにある平原に来ていた
「んで、面倒事ってなんだよ」
「《執行者》と戦うのだろう?」
「ああ?まあ、そうなんだg」
「我がその《執行者》だ」
は?
「何かの冗談か?竜胆」
「そう聞こえるか?」
「ああ、聞こえるね」
「ならば仕方がない」
「宣言しよう、我は地獄を滅ぼす」
「!?」
「そのままだよ、我は我が正義の為に地獄を滅ぼす」
「一体何の真似を!」
「口実だよ、お前が我と戦うためのな」
「そうまでして…」
「なあ、勇儀」
「?」
「怖いのか?」
「…何が言いたい?」
「殺し合うのが怖いのかと聞いている」
「…」
「怖じ気付いたのなら構わん、そこをどけ」
竜胆が町に向かって歩こうとする
ガシッ
彼の肩を掴む
「ん?」
「行かせると思っているのかい?」
「ほう?」
「やってやるよ」
久々の喧嘩だ
相手は竜胆
不足はない!
「さあ!始めようか!」
喧嘩、というのが正しいのだろう
弾幕を出さず、ただ己の肉体だけで戦う
普通の喧嘩と異なる点があるとすれば
両者の拳は一撃必殺の威力である、ということだろうか
互いの一撃は喰らえば即退場の致命打になり得る
それを互いに繰り出しつつ相手のを避ける
その動きは一種の舞のようだった
「何故戦うんだ?竜胆」
「無論、我が正義の為」
「なら、その正義ってなんだ?」
竜胆は押し黙る
彼の正義
それは彼自身にもわからなかった
「解らぬ」
「そんなもんの為に戦うのかい?」
「…何が言いたい?」
「私にゃあ正義がなんだというのは解らんが、少なくともこれだけは言える」
「くだらないね」
「…」
「そうだろう?訳も意味もわからないもののために戦って何になるってんだい?」
「…」
「私はな、楽しいから戦う」
「…楽しい?」
「ああ、それにな」
「なんだ?」
「喧嘩の後の酒は旨い」
「は?」
数秒の沈黙……
「……ククッ」
「?」
「ハッハッハッハッハ!」
急に竜胆が高笑いをする
「そうか、楽しいか。酒が旨いか」
「ああ」
「我に足りなかったのは、そういう娯楽だったのかも知れんな」
「どうだろうねぇ?」
「悩んでいた我が馬鹿馬鹿しい」
竜胆が顔を上げる
その顔は、清々しく笑っていた
「ならば、決着としようか」
「いいねぇ!そうこなくっちゃ面白くないさ!」
互いに距離を取る
そして…
「『四天王奥義 三歩必殺』!!」
「『黒龍拳 鏖牙閃雷』!!」
互いの必殺技がぶつかり
巨大な衝撃波を生む
「……うーむ」
目が覚めると、そこには誰も居なかった
周りには飛び散った泥、足元には直径15メートル程のクレーター
首のペンダントは砕けている
「相討ち、とはな」
見渡しても勇儀の姿はない
「紫、いるのだろう?」
「ええ、ここに」
竜胆の呼び掛けに紫が答える
「どうなった?」
「そのまま相討ちよ、妖夢と凛音みたいにね」
「そうか…」
「勇儀なら無事よ?すぐ戻ると思うし」
「なら構わん」
そう言って歩きだし始めて、ふと足を止める
「伝え忘れていた」
「何かしら?」
「次の相手だ」
「あら、そうだったわね」
「次の相手は《狙撃主》だ」
「間違いないの?」
「ああ、奴は恐らくまだ出るまい」
奴とは捕食者。焔のことだ
「わかったわ。伝えておく」
そこへ
「お疲れ様でした、竜胆さん」
「? ああ、陸斗か」
第一戦目で出てきた陸斗がいた
「紫さん、伝言です」
「何かしら?次の相手は聞いたのだけれど」
「それなんすけど、戦いは三日後にしてもらえませんか?」
「いいけど、なんで?」
「さあ、とりあえず零さんからの指示なんで」
「? わかった、伝えておく」
「じゃあ、そういうことで」
そう言って陸斗は消える
「その顔は、見つけたようね」
「うむ、我はもう、迷わない」
それを聞き紫はスキマに消える
さて、我も行こうか
次回 《
翼「♪♪~」
陸斗「なんすか、あれ…」
凛音「戦車の…砲台……?」
焔「これ、戦いになんのかよ…」
ここまで読んでいただきありがとうございました
お気づきの方も居るかと思いますが、式神でスペルや技が使えるのは「迷いがなくなった」時です。なので翼ちゃんはガンガンに暴れまわります
次回はスナイパー対決です!さてさて、誰が相手になるのやら、お楽しみに!
四章が終わったら…
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描かれなかった日常編
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そのまま五章に突入