翡翠の悪夢の件から数日経ったある日
紅魔館には緊張が満ちていた
発信源は零
この上なく冷酷な顔つきをして、何かの紙に目を通している
彼の前に正座しているのは霊夢だった
その様子を部屋の外から眺めているのは他の面々だ
「なんであんなに御兄様は怒ってるの?」
「わかりませんわ」
「どうしたんでしょうね?」
フラン、咲夜、妖夢は中の様子に疑問を持つ
レミリアや魔理沙たちもいるが、零が不機嫌な理由はわからない
ただ一人、龍義を除いて
「…なぜだ」
「……」
「なぜ黙っていた」
「…ごめんなさい」
「謝る必要はない。何故これを黙っていたのかと聞いている」
その手には何枚もの紙が握られている
それは以前霊夢が神薙彩という女性からもらったものだった
「……零を傷つけると思ったから」
「……そうかよ」
零は立ち上がり、部屋から出て行こうとする
「あ……」
霊夢は彼を追いかけようとするが、そのまま立ち竦んでしまった
「お、お兄…様」
「……」
部屋の外にいたフラン達を、零は一瞥し、館の出口を目指す
それを止められるものは誰もいなかった
零の持つ手紙にはこう書いてあった
「あなたは本物の人間ではない」
「あなたは私の息子の遊び相手であり、大量殺戮のために作られた」
「あなたは覚えてないかもしれないが、すでに何億もの命を奪っている」
他にも大量の真実が事細かに書かれていた
その全ては、彼の精神を揺さぶっていた
「……最初っから、俺には資格がなかったのか」
そうやって眺めていると、一枚だけ不思議なものを見つけた
「ん?」
それは零に向けられた、懺悔の言葉だった
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あなたがこれを読んでいるということは、きっと、私は役目を終えているでしょう。
私があなたを作ったのは、息子の遊び相手が欲しかったから。国の政策で『軍用クローン兵器』を作ることになった時に、それを口実にあの子の細胞からあなたを作ったの。誰にも負けない圧倒的な力と一緒にね。名前はあの子の名前の別の読み方の『ゼロ』にしようってことになった。
あの子はとても喜んだわ。同年代の遊び相手が出来たって。当時の私は研究所勤めで、あの子のことは見てあげられなかった。あなたが戦場に向かう度に『いつ戻ってくるの?』って聞かれて大変だった。本当はあなたは大戦が終わったら廃棄処分されるはずだった。流石にそれは可哀想だと思ったから『戦闘能力を剥奪した上で、私が預かる』ように上に掛け合ったこともあった。
でもそうはならなかった。
敵の最後の足掻きであなたもあの子も重傷を負った。どちらかを助けることは出来たけど、そうすればもう一人の方は死んでしまう。そんな中、あの子は『ゼロのために使ってあげて』と言った。私は悲しかったけど、あなたに治療を施した。その後、あなたに協力していた五人のパラサイトたちにお願いしてあなたの記憶を書き換え、幻想郷に送ったの。
あなたが私をどう思おうと構わない。それでも
私はあなたを愛しています
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「………」
零はただ無言でその紙を見ていた
「どうだった?」
「……居たのかよ」
振り向くと、そこには龍義がいた
「俺は、人間じゃないのか」
「そうだ」
「知ってたのか?」
「仕事上な。お前のことは調べまくったからな」
「……そうかよ」
零はそっぽを向く
「気にすることは無いと思うぞ?」
「……何?」
「ここは幻想郷なんだ。何が居ようが気にする奴はいない」
「……俺は、本物なのか?この体も、この記憶も、この想いも」
「知るか、それはお前が決めることだ」
「俺が……?」
「ああ。そうだとも」
龍義は大きく頷く
「そうか……そうだよな」
零はそう言って空を仰いだ
その日の夜
博麗神社の縁側に、霊夢はいた
彼女の顔は赤く、泣き腫らした跡があった
そこへ
「………霊夢」
「?!………零?」
そこに立っていたのは零だった
「…隣、いいか?」
「あ…うん」
零は霊夢の隣に腰をかける
「すまなかったな」
「え?」
「あの時は霊夢を傷つけるような発言をしてしまった」
「……零」
その目には先ほどの冷酷な光は無く、安らかで穏やかな光が灯っていた
「………私も」
「ん?」
「私も、零に何も相談しなかった。ごめんなさい」
「……いいんだ、もう」
零は霊夢を抱き寄せ、その薄い赤い色をした頬にキスをする
「………」///
「まだするか?」
恥ずかしさで顔を真っ赤にする霊夢を零は悪戯っぽい笑顔で見つめる
「……ばか…」
霊夢は彼の唇に己の唇を合わせる
最初は合わせるだけだったが、どちらともなく互いの舌を絡め合う
「…………ぷはっ」
「………可愛いことするじゃねえか」
「……たまには、ね」
恍惚とした表情で霊夢は零を見る
零はそんな霊夢を強く抱きしめる
「……離さねえから」
「……うん」
「何があっても、守り切ってみせる」
「……わかったわ。お願いね」
「…ああ、任せろ」
そう言った零は月を見上げる
その月は煌々と輝き、2人を優しく照らしていた
ここまで読んでいただき、ありがとうございました
どうも、フォーウルムです
気がついたらUAが5000超えてました。ありがたい限りです
今後、この《来訪者》の投稿は若干遅くなります
四章が終わったら…
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描かれなかった日常編
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そのまま五章に突入