狂ったくらいのやる気を持つ研究者は食事を取っていないという偏見
旧地獄 商店街
零達が追跡者と接触していたころ、地底の警備にあたっていた執行者こと竜胆は行きつけのラーメン屋に来ていた。
「あいよ!御待ちどう!」
「感謝する。相変わらずの速さだな。」
「おうよ!ウチは《速い!旨い!安い!》がモットーだからな!」
竜胆の前に二人分のラーメンを持ってきた店の店主といつものように会話する。
「にしても珍しいな。あんたが小上がり選ぶなんてよ。」
「今日は
「そう言うことかい。んじゃ今度はそいつとまた来てくれや。」
「無論だ。」
気になった疑問を解消した店主は笑顔で厨房に戻っていった。
「ほら食え。麺が伸びるぞ。」
竜胆はそう言ってラーメンを友人の前に持っていく。
「……いいのかい?」
「当たり前だ。
「……ありがとう…。」
竜胆に促され、ラーメンに箸をつけたのは……
階級第五位の
数分後
「美味かった。御馳走様。」
「口に合ったか?」
「うん、数年振りにこんなに美味いものを食べたよ。」
先程まで完全に死にかけのような雰囲気だった統制者はすっかり元気になっていた。
「理由は解るが、一応聞こう。何があった?」
「いやー、こっちに来たあと色々な妖怪達に会うことが出来てはしゃいでいたら空腹で倒れちゃってね。」
「…相変わらず、その情熱は消えんのだな。」
「君こそ、ラーメンは好きなようで何より。」
統制者は柔らかい笑みを浮かべる。
「それで、どうだったのだ?」
「駄目だね。妖怪達の脳は僕らとは違うから洗脳も出来ないし、解剖しようにも僕にそんな力はない。」
統制者の特殊能力は《脳波統制》と呼ばれており、超広範囲の人間の脳波を操作し、制御を掌握することでまるで軍隊のように扱うことが出来るというものだった。故に本人は戦闘力はなく、いつも戦いの際には本陣で指示を出すか研究室で脳の解剖をするかのどっちかだった。
「それで、今後はどうする気だ?」
「どういう意味かな?」
「我等と争う気が有るか、という意味だ。」
「……うーん。」
統制者は恐らく他の幹部達と来ている。もし害を成すというのであれば此処で無力化する必要がある。
「いやー、無理でしょ。」
そんな心配を他所に、統制者は肩を竦める。
「この幻想郷は人間よりも妖怪とかの比率が圧倒的。しかも大体の戦力が妖怪に寄っている。洗脳できないんじゃあ勝ち目はないからね。」
「殲滅者も来ているのだろう?」
「来てるね。なんでも捕食者と決着をつけるとかなんとか。」
「変わらんな。アイツも。」
「だろうね。順位以外にも何かありそうだけど。」
「? どう言うことだ?」
「解らないなら構わないよ。そんなことよりも……。」
統制者の言葉に首を傾げる竜胆。
「君、いつから人間を辞めたんだい?」
「……数ヵ月前だな。」
数ヵ月前というのはちょうど零の式神になった時期である。
「へぇ。通りで脳波が違うわけだ。君の『我天誅』も変わったのかい?」
「まあ、そうだな。」
『我天誅』というのは上層部が竜胆、もとい執行者の能力である『自身に敵意を抱いたものに触れることで殺害する』という能力に付けた呼び名で、竜胆は嫌いであった。
「どう変わったんだい?」
「対象が個人から複数になり、即殺ではなくなった。」
「…!いいなぁ~。」
統制者は素直に羨ましがる。
「僕はそう言うの無いからなぁ。」
「我が主に願ってみてはどうだ?」
「主って…もしかして『異名殺し』?」
「うむ。」
「……指詰めれば許してもらえるかなぁ。」
『異名殺し』というのは零に対し帝国が名付けたものだ。
「そんなことしなくても許していただけるだろう。」
「本当かい?」
「ああ、我もあの方の右腕吹き飛ばしたが許してもらえたぞ。」
「…それって『我天誅』で?」
「うむ。」
「…即死攻撃を腕だけで済ませるとか化物でしょ…。」
「それで、どうするのだ?」
「…行くよ。君に奢ってもらった借りを返すまでは死ねないからね。」
「そうか。」
竜胆は心の底から安心した。古くからの友人を手に掛けずに済んだのだから。
「そう言えば、『八意永琳』という人物を知っているかい?」
「ああ、八意殿か。知っているがどうした?」
「いや、博士がその人に会いに行くって言ってたが……
「…幻想郷に来る前からか?」
「うん。不思議な話だろ?僕らは最近までコールドスリープだったから外界とは分け隔てられていたのに。」
「……妙な話だな。」
「…それはそうと。」
「ん?」
「もう一杯ラーメン食べてもいいかな?」
「…ふん。良かろう。」
統制者の疑問に首をかしげている時に統制者はあろうことかおかわりを要求してきた。
始めて会ったときもラーメンを奢っていたな、と思いながら竜胆は二人前のラーメンを注文するのであった。
幻想郷 迷いの竹林
月が昇り、辺りを青白く照らし出す頃。鈴仙は妖夢と共に竹林を散策していた。
理由無く歩き回っている訳ではない。
「ごめんね妖夢ちゃん。手伝ってもらっちゃって。」
「いいんですよ!たまにはこうやって歩くのも新鮮ですし。」
「…危機感持ってる?」
「持ってますってば!」
二人が散策をしている理由は周囲の警戒だ。
零から警戒するように、と言われた二人は夜の竹林をパトロールしていたのだ。
そこへ、もう一人の少女が降り立つ。
「! 翼ちゃん!」
「…ん、久しぶり。鈴仙お姉ちゃん。」
やって来たのは青い髪に同じ色の瞳を持つ翼だった。
「翼ちゃんも見回り?」
「…マスターが鈴仙お姉ちゃん達のところに行けって。」
「零さんが…?」
「…うん。…『俺が行けない分、彼女達の力になってほしい。』って。」
「……そっか。」
鈴仙と妖夢は顔を見合わせて微笑む。
普段は戦いの事でいっぱいの彼からの気遣いが少しくすぐったく思えた。
「…そういえば、最近変なこと無かった?」
「…変なこと?」
「…例えば、『今まで見たこと無い人が訪ねて来た。』とか。」
「私はないですね。鈴仙さんはどうです?」
「私?…うーん。」
鈴仙は考える。
人里から毎日のように患者は来るが、特に変なことはない。
…いや。
「1個だけあったかも。」
「…どんなこと?」
「今日の朝くらいかな。一人のお爺さんがお師匠様を訪ねて来たの。」
「…おじいさん?」
「そうそう。『今お師匠様は紅魔館に行っていて不在です。』って言ったら帰っちゃったけど。」
「…それ、どんなおじいさんだった?」
「え?…えーと、80代くらいのお爺さんで、優しそうな雰囲気だったよ。」
「…それだけ?」
「他には…あ、なんかわからないけど『うりー』?て言ってたよ?」
「……不味い。」
翼が唇を噛む。
「ど、どうしたの?」
「紅魔館に幹部の一人が向かってる。」
「?!」
「もしかして、そのお爺さんが?!」
「…うん。」
驚く二人に翼がうなずく。
「一体誰なんですか?!」
「…それは___」
翼が幹部の名を言おうとするのと、彼女の首もとから鮮血が吹き出すのは同時だった。
続く
実装して欲しい兵装(元ネタの名前で募集)
-
しめ縄
-
千岩
-
雷のような怒り
-
楽団
-
剣闘士