幻想郷と別世界からの来訪者   作:フォーウルム

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「どーゆーことですか?」

机に座る男を前に、葛城は語気を強める。

「援護出撃の取り止め。フツーならありえねぇだろ。」

葛城はそう言って書面を見せる。
本来は極秘情報であるが、以前帝国側の名家でありながら連合と内通していた彼からすれば簡単に手に入れられる物だ。

「しかも相手はゴブリンの大群。さっさと行かねーと死人が出ちまうんじゃねーの?」

葛城はそう言って目の前の男を睨み付ける。

「そうだな。本来なら取り下げはしない。」
「じゃあ何でなんだ?理由はあるんだろーな?」

男はしばらく考え、溜め息を吐きながら言った。

「既に戦闘は終わり、もうすぐで帰投するそうだ。」




「……………はぁ?」







怪物の帰還

 

 

それは、葛城が上司の元へ殴り込みに行く数分前の事だった。

 

 

 

 

 

「終わったな。よくわからん連中だったが…一体なんだ?」

 

目の前の男はそういいながら肩に担いだ剣に付いた液体を払う。

彼の周囲には切り裂かれ、原形を保てず消滅していく残骸が大量にあった。

元々は『ゴブリン』と呼ばれる()()を事も無げに殲滅したこの男は……まさか。

 

「久しぶり…で合ってるのか?速水。」

「…それで間違いない。零。」

 

彼は間違いなく零だ。

戦い方、喋り方、立ち振舞い。全てが突如として姿を眩ましたあの男と一緒だ。

 

「生きて…いたのか?」

「まあな。」

「…そうか。」

 

彼は以前よりも生き生きとしている。暗く、弱々しかった以前とは別人のようだ。

 

「零ー、そっちはどう?」

「終わったぞ。霊夢のほうも良さそうだな。」

 

霊夢と呼ばれた茶髪の少女は右手に持ったナイフをしまいながら近づいてきた。

 

 

彼らの戦い方は完全に常識を逸脱していた。

いや、私の戦い方(大剣を片手で振り回すこと)自体が普通と言うつもりは毛頭ないが、それでもこの二人はおかしい。

 

零のほうに関しては素手で殴りかかっていた。そこまではいい。

だが銃弾を素手で握りつぶしたり蹴って跳弾させるなどありえない。

特に4メートル近く離れた敵を触れずに捩じ切るとかどうなっているのだ?

 

霊夢という少女はナイフによる近接術、そして軽やかな身のこなしによる立体的な攻撃で的確に急所を突く戦いが得意なようだった。

まるでボールのような軌道を描いて戦っていたが、元は何をやっていたのだろうか……?

 

「とにかく助かった。感謝するよ。」

「感謝…されるかはわからんがな。」

 

そう言って彼は方向を聖遺物兵装に変えた。

 

 

 

 

 

 

・・・なんやかんやありまして・・・

 

 

 

 

 

 

 

「とユーことで!祝!零の帰還アーンド、ハヤミの無事を祝って!」

 

『かんぱーい!』

 

 

拠点に戻ってきたハヤミは彼女の同僚たちと共に宴会を開いていた。

戦いの後の処理はすでに終わらせ、上層部への報告も終わっていた。

 

「にしてもまさか生きてるとはなー」

 

そう言いながら零に近づいてきたのはカツラギだった。

そばにはハヤミやウキシマがおり、俺の隣には霊夢がいる。

 

「零、この人たちは?」

「紹介しよう。この男は葛城(カツラギ)将明(マサアキ)。元官僚でありながら途中から軍に入ってきた変わり者だ。」

「んな?!」

 

零の紹介に葛城がショックを受ける。

 

「さっきから浮いてるこいつは浮島(ウキシマ)春斗(ハルト)。体も術式も浮いてるやつだ。」

「うきしまだよ~。よろしくね~。」

 

浮島と呼ばれた子供が霊夢に挨拶をする。

……宴会で綿あめを食べているのがすごい気になる。

 

「ちなみにこいつ女な。」

「ヘー。………え?」

「んで、こいつが速水(ハヤミ)香識(カオリ)。一番の功労者だ。」

「そんなものではない。」

 

霊夢の聞き返しに答えず

速水はそう言って顔をそむける。

 

「そんで零、こいつは誰なんだ?見たとこ普通の人間っぽくはなさそうだが。」

「彼女は博麗霊夢。幻想郷の住人で俺のパートナー。」

「…!なるほど、そういうことか。」

 

零の言葉に葛城は納得する。

 

「……驚かないわけ?」

「時空転送門がある時点で異世界の一つや二つ驚かねえって。」

「それに、私たちの間では幻想郷の存在は認知してましたので。」

 

呆れる霊夢に葛城と速水が返す。

 

「まあいい。折角の宴会なんだ。ゆっくりしようじゃないか。」

 

 

 

 

 

その日の夜、とある一室で零は無線機を使って連絡をとっていた。

 

 

「任務はどうだ、(シン)?」

『問題はありませんよ、ご友人。』

 

独特の喋り方をするのは大戦時に俺と渡り合った男(クレナイ) 親だ。

連合軍で随一の強さを誇るこいつと、当時帝国に所属していた俺は一度だけ戦ったことがあった。

その後は連合に亡命し、こいつと肩を並べての戦争になった。

こいつは気に入ったやつを「ご友人」等と呼び、サプライズと称して辺りを焼き払う変人だが、礼儀正しく部下思いの人間だった。

 

「相変わらず、その呼び名か。」

『ご友人はご友人です。それは変わりませんよ。』

 

この男に連絡をとったのは他でもない。

 

『それで、何をするんです?』

「聖遺物兵装の破壊…()()()。」

『ほう?』

「事情があって方針を変えた。しばらくは味方さ。」

『なるほど。それは安心しました。』

「こっちにも留まる予定だし、骨のある奴も連れてきてやる。」

『それはそれは…楽しみです。』

 

その言葉を最後に、通信は終了した。

 

「雇われてる間は、仲間でいてやるよ。」

 

 

 

 

________________________

 

 

 

数時間前、執務室にて。

 

 

 

 

 

「久しぶりだな、章造(ショウゾウ)のオッサン。」

「ふん…お前も元気そうだな、小僧。」

 

零の前で椅子に座っているのは速水章造。速水香織の父親にして組織の最高司令官だ。

 

「面倒は嫌いだ。目的は何だ?」

「聖遺物兵装の破壊。」

「ほう?出来るとでも?」

「やるさ。」

 

章造の問いに零は自信満々に答える。

 

「我々としては、今あれらを破壊されるのは困る。」

「ふーん、じゃあ取引しようぜ?」

「取引だと?」

「ああ。『聖遺物兵装を破壊しない代わりに、あんた等は幻想郷に手を出さない』。どうだ?」

「…なるほど。構わんよ。」

 

零の出した条件を、章造はあっさりと呑む。

 

「意外だな。反論されるかと思ったが。」

「私はあれには興味はない。それは貴族共が躍起になっていることだ。私は娘さえ無事なら何でも構わんよ。」

「そうかい。」

 

そう言って零は部屋を後にした。

 

 

__________________________

 

 

 

 

「……一旦戻るか。()()()を連れてくるにしても、一度焔達のとこに帰ろう。」

 

そう言いながら零は次元の狭間に入るのであった。

 




どうも皆さんこんにちは、フォーウルムです。
最近色々やりすぎて枯れそうです。いや、どっちかといえば萎れるのほうがいいのかな?
まあいいや。

さて、今回登場した紅 親ですがご存じの方もいるでしょう。最近私がはまっているARMORED COREⅥに登場したキャラ「オーネスト・ブルートゥ」が元ネタです。
まあクズではなく仲間としてですが。
主要キャラですのでお楽しみに。

それでは今回はここまで。
次回をお楽しみに!

実装して欲しい兵装(元ネタの名前で募集)

  • しめ縄
  • 千岩
  • 雷のような怒り
  • 楽団 
  • 剣闘士
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