【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法   作:塵塚怪翁

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続きです。


第10話 過去が追いかけて来た

 

 

  第10話 過去が追いかけて来た

 

 

「ちょっと顔を貸せなの。話があるの」

 

 

 そう言われた隆和は、なのはに事務室の奥の防音仕様の応接室に連れて来られた。

 隆和自身、事態が飲み込めていないが、不機嫌な表情のなのはにソファに座らされた。

 いつもより低い声色で問いただされる。

 

 

「あの子、6年前に助けたあの子で間違いないんだよね?」

 

「ああ。見鬼の術でも名前は名乗った通りだった」

 

「それなら、あれは何なの?」

 

「こっちが聞きたい。今現在の彼女が何者なのかも知らないんだ。

 分かっているのは、【彼女は佐川さんの可愛がっている義娘】て事ぐらいだな」

 

「心当たりはないの?

 【ちひろの下で働いている】とも、言っていたの」

 

「仕事関連にしては、いきなり【養う】と来るのはおかし過ぎるんだ。

 ちひろさんに連絡は取れないか?」

 

「ちょっと待っててなの」

 

 

 そう言うと、なのはは事務室に行き山梨へ電話をかけた。

 しばらくやり取りがあり、応接室で待っている隆和の元へ彼女が戻ってきた。

 

 

「ちひろが言うには、彼女は向こうから仕事関連で派遣したって言っていたの。

 こっちからも改めて言っておくから明日、話を聞いてやってと言われたの」

 

「わかった。じゃあ、明日。

 今日はもう宿泊の受付の時間も終わるし、部屋に戻るよ」

 

「そう。

 明日は、わたしも気になってしょうがないから参加するの。

 それじゃあ、上がるの」

 

 

 そう言うと、彼らは今日の仕事を終えて家へ帰って行った。

 

 

 

 

「『うちが養ってあげる』って、会っていきなり何言うてん? アホちゃうか、うち」

 

 

 ベッドとテーブルが有るだけの小さな個室で【天ヶ崎千早】は、顔を真っ赤にして枕に沈めながら羞恥に震えて久しぶりの再会で空高く舞い上がり興奮しすぎたと反省していた。

 

『私は仕事のために立候補した優秀な貴女を派遣したのであって、婚活の為ではありませんよ?』

 

 と、なのはが連絡した事により先程受けたちひろからの注意の電話は、簡単に言えばそういう内容だったが、彼女の少し険のある押し殺した声は氷水を頭から被せられたように千早の頭を冷えさせるのには充分だった。

 彼女がここに来た今回の表向きの任務は、出来たばかりの関西支部の事務や後処理の応援である。

 実際、つい先日まで京都府の神社庁の一条氏とあちこち飛び回っていたが、その過程で6年前のあの時自分の命を救ってくれた憧れの人の詳細な情報を知り実際に見かけたのだから。

 明日話しかける時は、もっと冷静に『できる女』になったと見せないといけない。

 そうして気持ちを切り替えると、彼女は携帯にタイマーをかけ就寝した。

 

 

 

 

 翌朝、職場の反応は様々だった。

 希留耶は、ツンとして「おはよう」とだけ言うとそのまま学校に行き、

 サラリマンニキは、にこやかに「【地返しの玉】用意しておきますね?」と言い、

 ナイスボートニキは隆和をそっと手を合わせて冥福を拝み、

 他のスタッフにはヒソヒソと何かを話されていて、

 なのはには耳を引っ張って応接室に連れて来られた。

 

 それからしばらく経ち、応接室にスーツ姿の隆和となのは、向かい側に千早が座り黒スーツ姿のウシジマニキが後ろに立っていた。

 隆和は昨夜、物陰で一部始終を見ていて部屋で不安で泣いていたトモエへの釈明のために遅くまで起きていたため、昔はいつもやっていたカフェイン剤と耐性の【精神無効】の内の睡眠無効を強く意識して眠気を抑えている。

 

 

「昨晩は失礼しました。

 それでは、改めて自己紹介します。

 ガイア連合山梨支部監査部所属の天ヶ崎千早と申します。

 後ろのウシジマさんは護衛として来て頂いています。

 今回は、先日の件を含めた安倍さんの関わった事件に関する件のために来ました。

 昨夜の失言は、一旦忘れて下さい」

 

「千早ちゃ…、天ヶ崎さん。

 まず、この6年間の間に何があったのかそこから教えてくれないか?」

 

「そうそう。そこから聴きたいの。失言の事は忘れないけど」

 

「どうしても必要ですか?

 ……う。そ、そやね。そこから説明せんとあかんか」

 

 

 6年前、天ヶ崎千早は大阪の既に父の本業がサラリーマンと化している裏の稼業を畳む寸前の小さな拝み屋一家の娘だった。

 その日は、『近所の公園におじいさんの幽霊が出るから何とかしてくれ』といういつも請けるような依頼で千早も助手という形で両親とともにそこに赴いていた。

 ただ、その幽霊はいつもの相手とは違った。

 そいつは奇襲し【ムド】と唱えると次々に彼女の両親を殺し、【悪霊ディブク】へと進化するとそのMAGで異界を作り出した。

 異界の中でそいつに追いかけ回された記憶は残っていないが、唯一彼女が憶えているのは、彼女を抱き抱えて庇う隆和と何もかも閃光で薙ぎ払うなのはの姿と蘇った前世の記憶だけであった。

 

 その後、彼女は母の兄であった佐川組組長【佐川司】の元に引き取られ、高校と大学は関東へ進学して大学生の頃にショタオジのオフ会に参加し完全に覚醒を果たした。

 各種の資格を手に入れて大学卒業後はガイアグループの企業に就職する形で連合に参加し、今の部署で隆和の名の記録がある今回の任務を知り、立候補して帰郷も兼ねて大阪に戻ってきて現在に至るということだ。

 

 

「それで、6年ぶりに安倍はんにおおて、つい昨日みたいなことを言ってしまったんや。

 でも、ITバブルの株式投資とガイアグループへの投資で旦那はんを専業主夫に出来る収入はあるのは本当や。

 『将来、必ず貴方に会いに行きますから……立派になって会いに行きます』。

 別れ際にしたこの約束は嘘やないから、この件が終わってからでええから考えて欲しいんや」

 

「へえ、あのどさくさでそんな事をしていた訳?」

 

「あ、あれから一度も連絡はなかったし、きれいな思い出のままかと思っていたので」

 

 

 頬を赤らめながら告白する千早と横から睨むなのはから視線をそらす隆和。

 修羅場は別の場所でやれと考えつつも、咳をして話題の変更を促すウシジマニキ。

 

 

「そういうのは仕事を終えてからしてくれねえか、お嬢。

 浮かれるのはまあ分かるし、佐川の親父も前向きと言えな」

 

「そうやね。

 こうやって会いに来たんは、仕事の件もあるんやし」

 

「仕事?」

 

「はい、まずはこれを見てや」

 

 

 ようやく元の冷静な顔になった千早は、カバンから数枚の書類を取り出し隆和たちに見せてきた。

 そこには希留耶と関わる事になったあの事件の詳細が書かれていた。

 

 

「そこに書かれている通り、バフォメットになっていたあの悪魔人の出自は隣国の【半島】人や。

 偽造旅券で入国したため足取りを追うのに時間が掛かったんやが、日本側の手引であの事件の一家の『背乗り』目的で来たようや。

 いつあの能力を手に入れたのかまでは判明しておらんが、あの家に潜り込んだ時にはもうなっていたようや。

 そして、あの屋敷で派手にやり過ぎて安倍はんが介入する事になったん」

 

「分かるだけで10人以上の娘が犠牲になっていて、遺体は見つからなかった、と。

 やっぱり、悪魔化して【外道】に成りうるだけの事はしていた訳だ」

 

「屋敷の床底から魔法陣が見つかったってのは?」

 

「高橋はんも知っている通り、異界は地脈に繋がっている。

 ショタオジは、富士の神社で日本の全体の地脈を詳しく観れるので気がついたそうや。

 あの屋敷でマグネタイトを発生させ、それを別の場所に送るそういう仕掛けがそれなんや。

 けど、送り先が既に途切れていて見つからんかったそうなん」

 

 

 マグネタイトは人間の激しい感情から生まれる。

 つまり、あの屋敷で幾人もの少女が犠牲になることで生まれたマグネタイトを、魔法陣を通じて『上納金』のように受け取っていた者がいるという事だ。

 しかも、わざわざ隣国の外国人を呼び寄せて力を与えている資金と手段がある奴だ。

 絶対に捕まえるか、最悪、潰さないといけないだろう。

 千早がもう一枚書類を差し出すが、それを見て顔をしかめるなのは。

 

 

「そこで、この書類の場所を調べて欲しいんや。

 微弱で途切れ途切れやけど、同じ仕掛けらしいとショタオジは見とる。

 しかも調査では、ここの雑居ビルには若い少女が居なくなる噂が出ているんや。

 うちの調べでも確かにいなくなった少女がいるのは間違いないんです」

 

「本当にここで合っているの?

 西成の飛田新地のすく近くじゃない、ここ?」

 

「うちの今のおとんは道頓堀でも大きなキャバレーのオーナーで、そっち方面には顔が利くんで調べてもろたら地元じゃない人間が出入りしとる話なんで間違いないと思う。

 ウシジマさん、そうやな?」

 

「ああ、親父が名義貸ししてる店も幾つかあるから間違いない」

 

 

 『飛田新地』とは、大阪西成区にある1910年頃から続く日本最大級の遊郭の建物が今も150軒以上残る歴史のある街で、実際にこの地域の最も古い建物であり料亭でもある「鯛よし百番」は国の登録有形文化財にも認定される程である。

 

 問題の5階建ての雑居ビルは、料亭の並ぶ通りから外れて裏通りに入った場所にあった。

 1階がビルの事務所、2階がナースイメクラ、3階がゲーム麻雀店、4階がガールズバー、5階がキャバレーである。佐川氏が名義貸しをしているのは5階の店で、店のママが元愛人らしいので信用できる情報だそうだ。

 主に消えているのは2・4階の店の子で、それぞれの店主は補充は直ぐにできると豪語し店舗の内容から警察には届け出は出していないらしいとそれには書かれている。

 それを見ながら、隆和は千早に尋ねる。

 

 

「何故、この調査を俺たちにやってくれと言うんだ?

 仮にも関西支部が出来たのなら、実力者はいるだろう?」

 

「あんな、自覚してや。安倍はん。

 高橋はんとあんさんは、この辺で頭一つ抜け出た実力者なんやで。

 おまけに、おとんとウシジマさんから何度か仕事も受けていて、うちも助けてもろたという信用もあるガイア連合の異能者は他に知らへんわ」

 

「なのはさんはどうする?」

 

「わたしもやるの。

 久々に、隆和くんとも組んでみたいし」

 

「わかった。

 じゃあ、いつから掛かればいい?」

 

「準備ができ次第やな。

 決まったら、教えてや。ママさんの方にも連絡するんやから」

 

「ああ。それでいいぞ」

 

「ほな、お願いするわ。安倍はん。

 それと、あの話も忘れんといてや?」

 

 

 そう言い残すと、千早は彼に蠱惑的な笑みを浮かべウシジマニキと共にホテルを後にした。

 彼らが帰るのを見送ると、隣で一緒に見送っていたなのはが横目で隆和に尋ねた。

 

 

「それで、隆和くんはあの娘の話を受けるの?」

 

「魅力的な話なんだが、突然過ぎるし受けるのは躊躇するよ。

 コレットやトモエみたいに他の選択肢がない娘ならともかく、彼女にはもっと他に選択肢もあるだろうしね。

 『普通の職業について普通の結婚をして平穏に暮らしたい』なんて、コレットやトモエを受け入れている癖に中途半端な夢を見ている俺には無理だろう」

 

「ま、隆和くんならそう答えるとは思っていたの」

 

「こんな中途半端な夢を未練たらしく持っているのに、二股している俺を受け入れてくれる都合のいい女性なんて居るわけがない」

 

「……そっか。じゃあ、戻ろうか?」

 

「ああ、そうだな」

 

 

 

 

 千早の依頼をなのはと受ける旨を、机の上にこれ見よがしに短剣の多く刺さった『黒ひ◯危機一発』置いているニコニコと笑うサラリマンニキに報告し、数日後、大型バンを借りて隆和は目的のビルの駐車場までたどり着いていた。

 初めて組むなのはに不安そうな目で見る巫女服のトモエに、竹刀ケースを持って楽しげなスーツ姿のなのはと作業着姿の隆和は車から降り準備をしていた。

 そこへ、若い女性が声を掛けてきた。

 

 

「待っていましたよ、安倍さん」

 

「天ヶ崎さん? どうしてここに?」

 

「今回はわたしが案内しようと思って来ました。

 現場でも大丈夫ですよ」

 

 

 そこに居たのは、ニコニコと笑う天ヶ崎千早であった。

 彼女は、前に来た時と同じスーツ姿でそこに立っていた。

 

 

「……ふーん。

 ま、いいんじゃないかなの。それじゃ、よろしく」

 

「……ああ、そうだね。じゃあ、よろしく」

 

「じゃあ、行きましょうか」

 

 

 3人を案内しようと前を歩く彼女を追いながら、なのはと顔を見合わせて薄く笑うと不思議そうな顔のトモエを連れて千早の後を追って隆和たちは移動し始めた。




後書きと設定解説


・関係者

名前:佐川司
性別:男性
識別:覚醒者・67歳
職業:関西連合直参佐川組組長
ステータス:レベル4 破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:霊視・財力・蛇の道は蛇・鋭い勘・カリスマ・根回し
詳細:
 大阪道頓堀近くでキャバレー「グランド」などの幾つかの店を持つ極道の組長
 【財界俺ら】や極道関係や霊能組織にも顔が広いフィクサー

名前:ウシジマニキ
性別:男性
識別:転生者(ガイア連合)・30代
職業:金融業「ウシジマファイナンス」社長
ステータス:レベル13・フィジカル型
耐性:破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:突撃(敵単体・小威力の物理攻撃)
    マカジャマ(敵単体・中確率で魔封付与)
    パララアイ(敵単体・中確率で麻痺付与)
    潜伏(自身・敵から狙われにくくなる)
    交渉術・執り成し
詳細:
 元々は、霊能組織相手の闇金系派遣仲介業(人身売買含む)業者
 ガイア連合に参加後は、ちゃんと許可を得たガイアグループ所属の金融業社長
 シキガミは、動物型の兎「うーたん」で回復やトラフーリなどのスキル持ち


次回も、過去からの続き。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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