【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法   作:塵塚怪翁

14 / 63
続きです。
転生者の恋愛模様ってこんな感じでいいのかなぁ?

※「waifulabs」と言うサイトで作成したイメージ図を追加


第14話 地縁と血縁と

 

 

  第14話 地縁と血縁と

 

 

「『隣に引っ越してきたんでよろしゅうな』って、本当に私用だけで言えたらよかったんやけどなぁ。 

 はあ。すまんけど、安倍はんと高橋はん。

 真面目な用があるさかい、こっちの部屋に来てくれへん?」

 

「どういうことなの?」

 

「仕事絡みやし、来てくれたら分かることや」

 

 

 希留耶が部屋に引っ込むのを確認した千早は、ため息をつくと隆和たちに隣の部屋に来てくれるようにと頼みだした。

 すでに彼女の雰囲気は、彼に言い寄る時のそれではなく仕事をする時のそれに変わっていた。

 それを見てなのはと隆和は顔を見合わせると、疑問に思いながらもドアを締めトモエに居室に戻るように伝えて隣室へと入った。

 

 

 

 

 千早の案内で『天ヶ崎』とだけプレートの貼られた隣の部屋に入ると、そこは室内はソファやテレビなどの最低限の家具は揃っているが、全てが新品でまるでモデルルームのように生活した形跡のない室内だった。 

 そして、そこには2人の人物がソファに座りこちらを待っていた。

 

 一人は中年の男性だが、烏帽子に狩衣に独特の白塗りのメイクといい家の中に中世のお公家さんがそこに居て扇子を持って興味深げに隆和たちの方を見ていた。

 もう一人は女性というより少女で、ストロベリーブロンドのロングヘアに蒼い目に透き通るような白い肌、着ている巫女服を大きく盛り上げるこの場の女性の誰よりも大きい胸をしている上に誰もが振り返るような美貌の少女が無表情で隆和を静かに見つめていた。

 

 千早の案内に従い隆和たちが彼らの正面に座ると、千早は冷蔵庫からペットボトルのお茶を人数分取り出してテーブルに置き横側の一人用のソファに座り複雑な表情で彼らの紹介を始めた。

 

 

「安倍はん。

 こちらの男性は、「京都府神社庁」の理事で【一条麿呂】はんや。

 見ての通り、京都の霊能関係の方で例の『京都ヤタガラス』の一件の後始末を手伝って下さった方なんです」

 

「ほほ。お二方、初めましておじゃ、一条麿呂でおじゃ。

 お主が話に聞く安倍隆和殿か、よろしく頼みますぞ。

 あと、この装いと口調は好きでしているのではなく仕事用故、ゆめゆめ勘違いなさるでないぞ」

 

「ああ、えっと初めまして。安倍隆和です」

 

「恋人でパートナーの高橋なのはです」

 

 

 困惑し一礼して挨拶する二人に扇を扇ぎ、鷹揚に微笑む一条氏。

 

 千早によると、こう見えて彼は文部省が監督する宗教法人である『神社庁』の幹部であり、京都周辺の霊能組織の相談役でもある立場的にはかなり偉い人であるという。だが逆に、今回のような事があれば後始末に奔走する役人側の代表でもある訳だ。

 それに最近では地元からガイア連合に伝える諸々の陳情などの調整役となり、現場に行ったまま帰って来ない支部長に代わり関西支部の事務の統括をしている千早の仕事相手でもある。

 なお、仕事上で顔を覚えて貰うために始めた今の姿はもう20年以上続けているため、幼かった実の娘にメイクを落として洋装したら「知らないおじさん」と言われた事は彼の前では禁句である。

 

 一条氏に続いて、今度は複雑な表情でにもう一人の女性を紹介する千早。

 

 

「それで、安倍はん。

 こちらの女性はな一条さんが保護された元『京都ヤタガラス』の人で、【華門和】さんや。

 何でも、あの連中の秘蔵っ子だったみたいなん」

 

「お初にお目に掛かります。

 華門和(はなかどのどか)と申します。

 一条様と天ヶ崎様にはすんでの所をお助け頂き感謝しております。

 今宵は残った土御門の家人の代表として罷り越しました。

 隆和様、どうかよろしくお願い致します」

 

「はあ、どうぞよろしく」

 

「ふーん、よろしくなの」

 

 

 室内に透き通るような声が響くと立ち上がり深々と一礼する華門嬢の揺れる胸と魅力的な肢体に見惚れる隆和と、それを横目で見て見えない所で抓りながら説明を求めるように千早を見るなのは。

 それを受けて、面白くない表情の千早と微笑む一条氏たちが説明を始めた。

 

 

「安倍はんが山梨に連絡をくれたあの日、ショタオジから直接こちらに動員の要請が届いてな。

 慌てて、手すきのメンバーをみんな連れてあの料亭を抑えたん。

 それから、調査が入ったら出るわ出るわで大捕物もあって大騒ぎになったんや」

 

「そこに麿呂の所にも一報が入って、こちらも動かせる伝手を辿って天ヶ崎殿に合流したでおじゃ。

 元々あの一派は、麿呂のことなど歯牙にも掛けぬ今は行方不明の権謀術数では老獪な妖怪婆どもが率いる強硬な家々の一派での。

 余所の有能な霊能者を手段を選ばず一族に加えて血筋を強化する組織づくりの巧みさで成り上がり、各家への利益配分と覚醒者の多さで京都の顔役のように振る舞う連中だったでおじゃ。

 しかし、鼻つまみ者と陰口を言われるだけの傲慢さで内心では嫌われていたおかげで、この一件を知るや多くの離脱者や敵対していた他の家の介入により組織はバラバラになったでおじゃ」

 

「そんで一条はんの協力もあって、他からの障害も防いで本家や関係各所に踏み込んで制圧したんやけどな。

 あいつらの最重要施設だったハニトラ用の女性達を集めて育てていた【華屋敷】と呼ばれる場所に、一条はんと踏み込んで逃げ支度をしていた連中から助け出したのが彼女なんや」

 

「あの時は、他の娘と一緒に助け出して頂いて本当に感謝しています。

 皆様のご協力もあって、外の社会で暮らせる娘たちは皆、真っ当な生活を送れるようになりました。

 私はこの体質もあり表の社会で暮らすことは適わないので、同じように他に移る伝手のない者たちを率いて『羅生門の鍵』を護る為に一条様の後見の許、賠償のための売買で売れ残った屋敷にて暮らしております」

 

 

 そこまで語った所でペットボトルのお茶を開けて飲むと、複雑な表情の千早と興味深げな表情の一条氏は話を続ける。

 説明によると、ただ資料を抑えて制圧するだけなら問題はなかったのだが、それを機だと見た土御門家と関係していた大小十数家が自分の利益のために一斉に動き回り混乱に陥ったのだという。全てを鎮圧し、諸々の手続きや始末などが年末まで続いていたそうだ。

 これは関西支部が大阪市の梅田のジュネスにあり、景観や地元組織の多さなどの制限で京都や奈良にはホテルや旅館の形式の派出所しか置けなかった事も一因であるらしい。

 彼らの中心であった土御門の家は、ほとんどの大人は逃げ出すか抵抗して捕らえられた為に今は華門和を仮の代表として行き場のない女子供ばかり十数人がいるばかりだと告げられた。

 こうして前提だというあの事件のその後の説明を終えると、一条氏は本題に入った。

 

 

「こうやって麿呂が後見して纏めてはいる土御門の家でおじゃるが、如何せん麿呂には他にも仕事がある故いつまでも残業続きなのはきついのでな。

 それ故、早めに京の家の総代なり正式な当主を決めて任せたいのでおじゃ。

 そこで、安倍隆和殿。

 そちらにその地位に就いて欲しいのでおじゃ」

 

「その、何故、俺なんかに?」

 

「そこよ。

 京の土御門の家は、この後ガイア連合の傘下組織にされると決まっているでおじゃ。

 宗家としての土御門は、根願寺に参加した関東に回向した家になる方針での。

 ただガイア連合の傘下となる際、代表に相応しい人物が継いていれば障害も少なく済むでおじゃ。

 【安倍晴明の血を引く一族】という血統と権威は、面ど…矜恃の高い京や奈良に複数ある霊能組織を纏めるのにうってつけの看板ではあるのは間違いないであろう?

 その上、仮にその代表がガイア連合の一人なら文句も付けられないでおじゃ」

 

「いやいや。他に相応しい血筋の人はいるでしょう?」

 

「確かにそれはいるであろうが、より強くまともな覚醒者である事が望ましいのでな?

 逃げ出したり、抵抗して捕らえられた者は論外。

 親戚筋の覚醒者は、面ど…我が強く矜恃の高い害にしかならぬ者ばかり。

 関東の分家出身のガイア連合に所属している者も、返答は梨のつぶてよ。

 そこにいる華門殿とて、箱入りな上に体質的に人を率いるには向いておらぬのよ」

 

 

 話を振られたその彼女はと言えば、変わらず無表情のままじっと隆和を見ると一条氏に続けて話し出した。

 

 

「私が育てられた『華屋敷』と呼ばれる場所は、所謂有能な霊能者を篭絡するための人材を育成する為の場所でした。

 けれど、先の一件でそこの管理を任されていた者達は、当主不明の一報を知るや金目の物を持ち出して一目散に逃げたり、育てていた娘や子供を無理やり連れて逃げ出そうとするなど狼藉を働くような者達ばかりでした。

 私には強力な魅了の能力があったので、それで仲間を守りつつ助けが来るのを待っている時に天ヶ崎様や一条様が来てくださったのです。

 そして騒動も終わり私と共に残った者達と言えば、身寄りが無かったり、異能の使い方だけしか知らず外に順応できなかったり、私のように覚醒時の体質で表の世界で普通に暮らせない者ばかりでした。

 どうかお願いでございます。私たちをお助け下さい。

 その為なら、我が身を差し出しても構いません」

 

 

 そう言って、彼女は正座すると深々と隆和に頭を下げた。

 困惑し何と答えていいか言いよどむ隆和に代わり、なのはがバンとテーブルを叩き大きな声で答えた。

 

 

「黙って聞いていれば、自分勝手な理屈で問題をこちらに押し付けるのは止めて欲しいの!

 そもそも、彼自身、両親も判らないのに何故血縁者かどうかなんて知っているの?

 そこからはっきりして欲しいの!」

 

「それがそうでもないんや、なのははん。

 連中の隠し持っていた資料とおとんの調査結果を調べ合わせたら、それが判ったんや」

 

「は? え?」

 

「どういうことなの!?」

 

 

 驚きどういう事なのかと彼女を見る二人の視線に、真剣な表情でそれに答える千早。

 

 

「そこの所は提案に関係なくちゃんと答えるさかい、まずはちひろはんと相談して来た提案を聞いて欲しいんや。

 うちはこの件の調整も任されとるさかい。

 まずガイア連合としては、地元の組織の救済と復興をして来たるべき日のリソースの消費を抑えたいのは全体の方針や。

 ただ、この件の場合の彼女らは組織としての体裁を保っておらず、異能者の集団でしかあらへん。

 そこで、安倍はんには代表としての名義貸しをして欲しいんや」

 

「名義貸しって、俺は名前だけ彼女らの家の代表になるのか?」

 

「簡単に言えばそうや。

 『現地の人を助けるのは個人の裁量で』という方針の拡大解釈やけど。

 安倍はんがこの件を受けた際のメリットとデメリットを上げるから、それから考えてや」

 

「そういう事なら、聞かせて欲しい」

 

「まずメリットとしては、将来的に彼女らが安倍はんに定期的な利益を齎せるようになるという点や。

 彼女らに掛かる手続きと資金の用意、安倍はんの役に立てるように鍛えるなどの実務はうちの方で面倒見たるし、安倍はんの指示には従うように教育もしたる。

 さらに、彼女らが持つ『羅生門の鍵』の管理も関西支部の方で有効利用しとるから、それ絡みの管理や異界の攻略なんかの面倒な事は安倍はんは心配せんでも大丈夫や。

 そして、安倍はんが攻略を目標にしている京都のあの異界に関する事柄は、何をおいても安倍はんが優先されるように取り計らわれるようになる。

 デメリットとしては、彼女らが安倍はんの保護下にあると霊能関係者に認識される事と、時々彼女らの所に顔を出して仲良くして欲しいくらいやな」

 

 

 そこまで聞いて考え込む隆和は、顔には出さないが実はもう一杯一杯であった。

 期待を込めた視線を送る一条氏と華門嬢を見て、思わず了承するところをなのはがそれを止めてじろりと千早を睨む。

 

 

「おかしいの。

 何でそんなに貴女が持ち出しで手を貸すの?

 普通人助けだとしてもそこまではしないし、条件もおかしいの」

 

「あー、それはやな……」

 

 

 言いよどむ千早をますます睨むなのは。

 隆和や周りの二人も思わず彼女を見ているため、千早は視線をウロウロとさせ始めた。

 

 

 

 

 さて、今の状況について簡単に解説しておきたい。

 

 まず前提として、ここにいる3人の転生者である隆和・なのは・千早であるが、彼らは能力は優秀ではあるが一般的な【転生者俺ら】の例に漏れず【まともな恋愛の経験値はとことん低い】。

 

 例えば、隆和は前世では絶食系のまま中年で病没し、今世ではコレットによって好みの男性になるようにと歪んでしまっている。

 なのはの前世はブラック企業で30前に過労死、今世ではまたブラック企業に入って潰れそうになるのを隆和と出会って覚醒しふわふわと生活して今に至る。

 千早は前世では仕事が面白くて婚期を逃してお局独身で事故死、今世でも仕事が面白く恋愛は時々忘れかける始末である。

 

 そして、今回の件である。

 

 内容の細かい部分をすっ飛ばして簡単に言うならば、仕事の成果を誇示して相手をこちらに向かせようという男性のようなアプローチをする千早と、棚ぼたで手に入った自分の物を奪われまいと威嚇するなのはという構図である。

 つまり、華門嬢を始めとする美味しそうな特典を用意して一般人の感覚の彼を大量の情報で押し切ろうとした千早を、勘所は鋭いなのはがストップを掛けて押し切らせなかったのである。

 

 もう少し違うアプローチは出来ないのだろうか?

 それでは続きをどうぞ。

 

 

 

 

 結局、隆和は名義貸しは了承する事にした。

 

 なのはの追求と交渉で、後々この件で徐々に隆和を取り込むつもりの千早の目論見はバレて、彼女が提示した条件の通り全ての面倒は千早が見る事になり華門嬢らの所に隆和が赴く際はなのはの同伴必須と条件に盛り込んだからである。

 勝ち誇るなのはを見て涙目になった千早は、契約の書類を纏めると最初に言ったように隆和の経歴について語りだした。

 

 

「安倍はんの母親の女性はな、華門さんもおった華屋敷で育てられていた土御門の一族の娘や」




後書きと設定解説


・彼らが引っ越した物件

梅田にある関西支部の家族もいる職員用に買い取られている高級マンション。
ちなみに、千早がここに用意した物件は自宅ではなく、今回のような会談をするためのセーフハウスが目的。


・関係者

名前:華門和(はなかどのどか)
性別:女性
識別:転生者(女神アメノウズメ)・18歳
職業:巫女
ステータス:レベル4・ラッキー型
耐性:破魔無効・精神状態異常無効
スキル:極上の肉体(敵味方全体・中確率で魅了付与・パッシブ)
    セクシーアイ(敵味方単体・中確率で魅了付与・パッシブ)
    キャンディボイス(敵味方全体・中確率で魅了付与・パッシブ)
    天宇受売神の加護(肉体依存の魅了の状態異常スキルが全て自動効果になる。
             ただし、魅了の対象は男性のみ)
    悪魔のキス(♀)(男性単体・高確率で麻痺付与)
    不動心(感情が抑制され精神状態異常にかからなくなる)
装備:魅了封印の護符
詳細:
 初潮が来て覚醒したストロベリーブロンドの長髪、蒼い目、白い肌の美少女
 女性のみの屋敷で幼少の頃から“人形”としての英才教育を受けていた
 父親は白人の一神教の能力者らしいが、両親ともに行方知れず
 土御門の当主が秘蔵していた掛け合わせた血筋の集大成の傑作の一つ
 組織崩壊時に一族が離散し、男性経験前に一条氏により保護
 身長154cm、B:100(K)・W:58・H:86
 (サイズは彼女を健康診断した黒医者ニキのメモより)


【挿絵表示】

華門和のイメージ図


次は、出来るだけ早くに。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。