【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法   作:塵塚怪翁

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続きです。

今回は、バカ話。
あと、彼の見解は歪んでいるのでご了承下さい。


第16話 黒医者ニキは大いに語る

 

 

  第16話 黒医者ニキは大いに語る

 

 

 あの隆和の経歴が分かった話し合いの日から数日が経った。

 

 千早と言えば、先の急報による混乱の解消の為に駆けずり回っており、大怪我を負って運び込まれたと言う割には次の日には怪我もなく元気にしていた支部長のレスラーニキを、自分から捜索しに行かないように支部のあるジュネスの極秘エリア内の執務室で仕事漬けにして忙しくしているようだった。

 

 あれから異界の攻略の依頼もなくホテルで通常業務をしていた1月最後の週末、隆和を訪ねて久しぶりに黒医者ニキが腐百合ネキと一緒に大阪に姿を見せていた。

 彼の足代わりとなって一緒に来ていた腐百合ネキの方は、さっそく久々に会えた希留耶と一緒に遊びに出かけている。

 彼は今、山梨支部の医療現場で知る人ぞ知る名医だった才賀氏の元で、3Dプリンターの導入も始まっているシキガミパーツの移植による義肢の研究のためにシキガミの素体の制作もしているという。これに関係して、今回はここのガイア大阪内にいるシキガミの健康診断ともう一つの目的のために来ていた。

 健康診断の方を手早く片付けると、彼は隆和にカフェスペースで軽食を取りながら関西支部の様子をそう語る。

 

 

「私が直接診たが、レスラーニキの怪我は防御していた両腕の骨折だけだったしさっさと治したぞ。

 むしろ、怪我をしている時より書類整理の方が苦痛そうだったな。

 まあ、いくら他の人を逃がすために【挑発】で攻撃を引きつけて一方的に殴られたとは言え、物理耐性持ちで大男の彼にあそこまで怪我をさせるような襲撃者は想定外だったはずだ。

 そもそもあの異界は初心者用で、ガキやオンモラキにオバリヨンが主な敵で最奥のボスだってモムノフ一体だから彼がいれば問題ない場所だったんだが」

 

「そう言えばどうやって脱出したんですか、彼?」

 

「ああいう訓練の場合、万一の為に緊急用のアイテムがあるんだ。

 美々のやつが、年末の有明での資金欲しさに山梨の工房で作りまくっていた【トラポートストーン】。

 それを使った【トラポート】で全員脱出したそうだ」

 

「美々?」

 

 

 不思議そうに問う彼に、首を傾げて気が付き答える黒医者ニキ。

 

 

「ああ、言ってなかったな。

 腐百合ネキの本名だよ。

 あの娘は姉の子で姪になるんだ。

 事情があって家を出ているから、私が身元の責任者をしているんだ」

 

「ああ。だから、いつも一緒にいるんですね?」

 

「足代わりにするのに、一番声を掛け易いからな。

 いや、逃げるためだけのスキル構成のあいつも、目的はどうあれ努力しているのは偉いもんだ」

 

「彼女は、立派な子じゃないですか。

 あまり構ってやれない希留耶の友達にもなってくれたようですし、何かご褒美でもあげたらどうです?」

 

「でも、あいつの一番喜ぶものは、最新のBL本や百合漫画だぞ?」

 

「ああ、えっと、美味いものでも食べさせてあげれば……」

 

「そうするか」

 

 

 隆和の意見に、首肯する黒医者ニキ。

 だが、彼が考えている『回らない寿司店』は、腐百合ネキはあまり好まないのを彼は知らない。

 そして、隆和も知らない。

 その彼女が、自分に全幅の信頼を置き素直で可愛らしい反応をする希留耶に激しく萌えている事を。

 彼女の恋愛対象が女性である事も。

 

 

 

 

 その頃の希留耶と腐百合ネキはと言えば、大阪の街を楽しんでいた。

 

 

「ねぇねぇ、美々ちゃん。今度はあそこの『まぐたこ』ってお店に行こう?」

 

 

 そう言いつつ、無邪気に腕に掴まって来た彼女のムニュッとした感触に、腐百合ネキは笑顔が崩れかけるが必死に耐える。

 

 

「(おっほ、この慎ましさはなかなか)そ、そうだね。じゃあ、キャル行こうか?」

 

「ほら、早く食べに行こう。早く行こう!」

 

「うん、(感触が遠のくから)あまり引っ張らないでね?」

 

「友だちとこうして遊べるなんて楽しいなぁ」

 

「(なんて可愛いんだろう。……たこ焼きじゃなくてこっちを食べたら駄目かな?」

 

「ん? たこ焼き以外にあのお店で何を食べるの?」

 

「な、何でも無いよ。さあ、行こう」

 

 

 何か邪念が混じっているようだが、二人は楽しんでいるようだった。

 

 

 

 

 話題を変えるように、黒医者ニキはもう一つの目的について語る。

 

 

「そう言えばだ、彼女についてはどう思う?」

 

 

 そう言うと、彼はカフェスペースの端を指差した。

 それに釣られ隆和もそちらの方を見ると、サラリマンニキが一人の胸の大きい少女を横に座らせてトモエとその少女が談笑しているのをいつになく満面のにこやかさで眺めている。

 その少女の名は、【ユカノ】。

 サラリマンニキの念願のシキガミ嫁であり、製作者の一人が黒医者ニキでもあるので今回一緒にここへ連れて来たトモエの妹と言ってもいい存在である。

 隆和もその彼女の方をしげしげと見ているのが分かり、得意気に彼女の事を語る黒医者ニキ。

 

 

「どうだ、彼女の姿は?

 ブラックボックスはショタオジ謹製でデザインも技術班こだわりの容姿であり、パーツの作成は私と才賀先生も参加した抜群の曲線の美しさと柔らかさを兼ね備えた一品だ。

 彼女用の装備も彼が奮発したらしく、かなりいい物だぞ」

 

「確か、元ネタは『ドラゴン・ユカノ』だったかな?」

 

「そうだ。コンセプトが忍者漫画の『くノ一』だった。……対魔忍じゃないぞ?」

 

「今は普通のブラウス姿だし、そんな事は考えていない」

 

 

 そう話していると、向こうも話し終えたのかサラリマンニキは満面の笑みでトモエと別れ、顔を赤らめたユカノと恋人つなぎをしながらスキップを踏むような足取りでホテルを出て行った。

 彼らと話し終えたトモエがほうじ茶を持って隆和の隣に座ったため、隆和は彼女に聞いた。

 

 

「トモエ、彼女と何を話していたんだい?」

 

「はい。主様。

 彼女はわたくしと違ってまだマスターと過ごす経験が少ないので、過ごし方のコツなどを少し。

 あと、正式な契約にはマスターの血液ではない体液の接種が義務付けられていますので、この後は【デート】に向かわれるそうです」

 

「んん?」

 

「ああー」

 

 

 少し顔を赤らめたトモエの答えに、疑問を浮かべる隆和と納得の声を上げる黒医者ニキ。

 隆和が黒医者ニキの方を見ると、楽しげに笑っている。

 

 

「まあ、これはしょうがない。

 今現在、技術班のシキガミの製造技術が上昇してほぼ完全な人体と見紛うパートナーが一般的になりつつあるんだ。

 それで、男性や一部の女性の【俺たち】の間であるスキルカードがかなり高騰しているから、代わりにデートしてそれからというつもりなんだろ」

 

「あるスキルカード?」

 

「【房中術】。

 ストップ高の値段だと、装備抜きで彼女がもう一人分くらいかな?

 だから、彼もこのスキルは今回はユカノに導入出来なかった。

 いずれは高級式神には標準搭載する予定だが、まだ数年はかかりそうだからしょうが無い。

 あと体液の接種は、主とのレベル同調もあって仕様だぞ」

 

「まあ、気持ちは分からないでもないが」

 

「運命の相手と出会ったっていうロマンだからだよ。

 最初の出会いの場面で、いきなりディープキスをしてくるシチュもいいが、こういうシチュも男なら好きだろ?

 彼も舞い上がっていたようだし、お前さんもそんな感じだっただろ?」

 

「いや、それは……」

 

 

 言いよどむ隆和を前に軽食のサンドイッチを食べ終わると、コーヒーを片手に黒医者ニキは指を指して話を続ける。 

 

 

「いいか。【俺たち】のほとんどは、異性が苦手か陰キャが大勢を占めている。

 恋愛の得意な陽キャやパリピなんて、ほんの極小数だ。

 それに、男なんて『女性は苦手だが女体は好き』って馬鹿な生き物だぞ?」

 

「まあ、確かに」

 

「うぐ」

 

 

 近くの場所で休憩していたナイスボートニキが心にダメージを負って机に蹲っているが、話は続いている。

 

 

「女性だって逝きつくとこまで行くと、

 

 『髪は月一で美容院で切り髭剃り爪切りは欠かさず毎日の入浴と洗髪とちゃんと洗濯した服を着るのは基本として、30代前半までで年収500万円以上でマーチ大卒で身長は170以上で自分も知ってる企業の正社員で一人っ子でなく長男でなく禿げてなく太っておらず清潔感があり趣味はオタクじゃない大人の趣味で自分のことを最優先に考えていつも行動する普通の男性』

 

 と、いうどう見ても普通じゃないハイスペックの伴侶を求めるようになるんだぞ?」

 

「そのような男性はいるのでしょうか?」

 

「国の統計だと“30代前半で年収500万以上の男性”なら、日本全体で約3%位いるらしい。

 こっちの業界を含めればもう少し増えるだろう。

 ただ、全部の条件を満たすような【普通の男】はいないと思うぞ」

 

「ううう」

 

 

 不思議そうに聞くトモエに、首をすくめて答える黒医者ニキ。

 話の聞こえた一部の女性が、思い当たる節を思い出し心にダメージを負っているが話は続く。

 

 

「そこへ来て、ガイア連合では他にない解決策を用意した。

 君たち、【高級シキガミ】だ」

 

「わたくしたちですか?」

 

「そうだ。

 覚醒してガイア連合に所属さえすれば、(転生者なら)理想のパートナーを手に入れるチャンスが出来るんだ。

 普通の人より頑丈で、老いによる容貌の衰えもなく、本人が望むままの姿のパートナーが。

 しかも、主人に一途で軽んじる事など絶対にしないパートナーだぞ」

 

「はい、もちろんです。

 そのような女性と同じ事は絶対にしません」

 

 

 トモエのその答えに満足そうに頷くと、黒医者ニキはカバンからポスターを取り出しカフェスペースの隅にある掲示板に貼った。

 そこには、男女や動物やロボットなどの様々な見惚れるような姿のシキガミ達の写真で作られたシキガミの購買意欲をこれでもかと煽るポスターであった。これは、表向きは来るべき【終末】に向けて覚醒するための修行を挫折する人が多いのを危惧したショタオジの発案でもあった。

 ただ、本人としては射幸心を煽り趣味も兼ねた地獄の訓練に望む人を増やしたいという軽い考えでもあったが、後に全国の支部で張り出したこのポスターの出来の良さから余計に注文が殺到し本人が地獄を見る事になったのは言うまでもない。

 

 そして、ポスターの側に居る黒医者ニキの所には、ナイスボートニキを始めとした幾人かが集まり熱心に話しかけている。

 

 

「先生、木◯本桜ちゃんでも大丈夫ですか!?」

 

「大丈夫だ! ロリでもシキガミは合法OKだ!」

 

「先生、FG◯のデ◯ンくんちゃんみたいに両方あっても大丈夫ですか!?」

 

「伊東くん、業が深いな。でも、大丈夫だ!

 値段は増すが、付いたままでも可変式もあるぞ!」

 

「はぁはぁ。先生、五◯退きゅんみたいなショタもありですか?」

 

「ロリもOKだから、全然大丈夫だ!」

 

「「「先生! 先生! 先生!」」」

 

 

 シキガミ熱で盛り上がっているのをテーブルで眺める隆和たちの所になのはが書類を持って歩いてきた。そして、盛り上がる彼らを訝しげに見ている。

 

 

「隆和くん。あれ、何なの?」

 

「シキガミ教、かな?」

 

「???」

 

「何か用事があったんじゃないのか?」

 

「ああ、そうだったなの。

 例の襲撃事件の犯人が分かったから、討伐チームに隆和くんが指名されたの」




後書きと設定解説


・関係者

名前:ユカノ
性別:女性
識別:シキガミ・0歳
ステータス:レベル9・スピード型
耐性:物理耐性・呪殺耐性
スキル(戦):暗夜剣(敵単体・2回中威力の物理攻撃。低確率で封技を付与)
       物理鋭化(物理属性の攻撃時、その威力が通常の1.1倍になる)
       食いしばり(HPが0になった際、自動的に一度だけHP1で復帰する)
       かばう(主人が致死ダメージを受ける時、その攻撃をかばう)
スキル(汎):会話・食事
装備:忍者刀(模造刀。予備あり)
   白疾風(物理見切り付与。白疾風ナルガ女性装備再現)
詳細:
 サラリマンニキこと服部正成の専用シキガミ嫁
 モデルはニンジャスレイヤーのドラゴン・ユカノ
 レベルの上昇はサラリマンニキの努力の結晶


次は、出来るだけ早く。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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