【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法 作:塵塚怪翁
第17話 襲撃者討伐作戦
討伐チームに指名された隆和は、ホテルで馬鹿話をしていた日の翌日にトモエを伴って関西支部の会議室の方に顔を出していた。会議室内には隆和の知らない人物も含め個人やチームなどの十数人がおり、室内はかなりざわついていた。
隆和が後ろの端の方の席につくと、隣にトモエが座る。
すると、目端の利く何人かが隆和に気づき「……【アーッニキ】、実在したのか」「掲示板の噂は本当だった!」「嘘だろ、女連れだ!?」「道下じゃない?」「ウホッ、なかなかいい男」と小声で話す声が聞こえ、隆和は新調した霊装の服が何かあるのだろうかと気にして暖房の効いた室内のため上着のジャンバーの前を開けると、何故かざわつく声が増えたので彼は疑問に思った。
彼がいま着ているのは、テスターやら何やらのお礼の名義で技術班の一部のお腐れの方々から贈られた先日来た黒医者ニキが持ってきたもので、安全靴型の霊装とセットになっている前側にあるチャックを開け閉めして着るタイプのブルーベリーの色のような青い全身つなぎの霊装である。
今は寒い時期なので上着を来ているが、同封されていた説明書によるとツナギの下はパンツのみ着用する仕様で、麻痺無効を付与され回避しやすい様に動きやすくなる代わりに防御力は低いと書かれていた。
後日、腐百合ネキも含むその方々からリクエストのあったその服装での【ベンチに座った例のポーズ】の再現写真は、本人は知らないままショタオジも知らない山梨のアンダーグラウンドの一部のマニアの間で高値で取引されたらしい。
そうやってしばらく待っていると、見た事のない書類を持ったきつい印象の女性の事務員を連れた天ヶ崎千早が部屋に入って来て隆和を見て笑みを浮かべるが、事務員に小突かれて表情を戻し来ていた全員に向けて話し始めた。
「よう集まってくれたようで、感謝するわ。
うちは、今の関西支部の事務を統括しとる天ヶ崎千早いう者や。
先日起きた支部長への襲撃事件、犯人が判明したんで聞いて欲しいんや」
「支部長は大丈夫なのか?」
「もともと、頑丈で荒事には慣れた人やったし元気やで。
今は丁度いいさかい、溜まった書類の片付けをさせとるから今回は不参加や」
「……それで、集めた理由や犯人について教えてくれ」
参加者にそう聞かれると、彼女は会議室の大画面モニターに一人の男性の上半身の写真を映し出した。厳つい顔に角刈りの髪、腕や首元の入れ墨に派手な革ジャンとGパンという典型的な不良の姿をした大男の姿がそこに映っていた。
それを指差しながら、千早は事務員から渡された書類を読み上げた。
「支部長たちの目撃証言と占術で姿を割り出して、警察のデータベースを参照したら主犯の襲撃者がわかったわ。
名前は、【芥田六三四】。「あくたむさし」や。現在は19歳。
暴行と傷害で補導歴がある男性で、20人程のグループのリーダーや。
身長は190cmで体重は94kgと記録にはある。
性格は、粗暴でバトルジャンキーと言う事や。
前に捕まった時は、会社の重役の父親が裏から手を回してすぐに釈放されとる」
「その父親の方はいいのか?」
「父親は黙らせるから、ええ。
今回は警察には危険やし、表は関係ないうちらの業界の話や。
支部長はんを怪我させるんやから覚醒している事は間違いないんや。
もし、捕まえたらこっちで処置するさかい」
そこまで答えた所で、千早の後ろにいた事務員の女性が千早を押しのけて全体を見渡し言葉を続ける。
押しのけられた千早は、不愉快気に彼女を見るが横にそのまま退いた。
「ここからは、この件を指揮する【幸原みずき】が進めます。
あなた方へ、作戦の参加要請です。
複数のたまり場を点々として移動する捕まえにくい小賢しい連中が相手です。
今回、ここに集まってのは支部長と同じか上のレベルの人です。
そこで、ここにいる複数人若しくは最低でも2人以上で組んで新人のレベル上げをします。
連中で覚醒しているのは主犯のこの男だけですから、襲撃も単独に間違いありません。
支部長が逃げ出した事でこっちの事は甘く見るでしょうから、そこを捕まえます」
「新人を囮にするのか!?」
「ここにいる人たちは充分なレベルはあるはずです。
おまけに支部長みたいに一人でいるならともかく、複数でいるなら単独の襲撃など大した事はないでしょう」
「……俺たちも暇じゃない。報酬はどうなんだ?」
「言われなくても、関西支部で確保しています。
レベル上げの指導役を引き受けるのなら、捕まるまでの間は報酬は一割増し。
もし捕獲に成功したら、こちらで確保している闇鍋ガチャで出たA賞とB賞のスキルカードのどれかか、今かなり高騰している【房中術】のスキルカードを譲渡します」
ざわっと室内にいるシキガミを連れた人たちが驚いた。中には、明らかにやる気を見せる主人やシキガミが散見される事態となっている。
何故ここまで、このスキルが高騰し需要が高まったのか?
答えは簡単、このスキルの所持者が掲示板で盛大に煽ったからである。
最初は「★シキガミ欲しいスレpart69」において、一人の人物の書き込みが始まりだった。
その人物は、このスレに常駐する【鬼畜生ニキ】と呼ばれる人で度々顔を撮さないようにした様々な自分の美女シキガミの写真で煽る人物だったが、ある時彼はシキガミが扮した『口に避妊用ゴムを咥えている口元と胸元の開いた女子高校生の制服写真』の画像添付と共にこう書き込んだ。
『自分のシキガミに【性交】スキルしかない連中、ゴメンなぁww
【房中術】込みのセッッッの気持ちよさ、ハンパねぇわwwww
んじゃ、彼女が待ってるからいない奴は一人で寂しく寝ろよwwww』
もちろんスレは炎上したが、同調するように彼と同じようにパートナーに【房中術】持ちのニキネキが同じような意見を書き込む事でさらに大炎上し運営がスレストップする事態になった。
さらに他のスレでもこの話題が広まり、検証スレの暇な奴がある程度ありうると証明するに至りこの需要過多の状況になっていた。
なお、隆和自身は自身のスキルからその違いを知っているが相手のプライバシーもあるため、他の人にその話題を聞かれた際は口を濁して噤んでいる。
「これは我々、ガイア連合の面子や信用にも関わる問題です。
『チンピラに何も出来ない』など、格下の現地組織に思われる訳にはいきません。
張り切って参加するように」
最後に彼女はじろりと室内の全員を見るとこう締めくくって通達は終わり、千早を急き立てるように小声で言い争いをしながら部屋を出て行った。
その後、要請を請ける者請けない者に別れて集まっていた面々は三々五々と散って行き、隆和としては千早には悪いが数も多く受付で混雑が起きるほど参加しているため、彼は彼自身の事情もあるため要請を辞退して帰路についた。
暫くの間、数日ほどこの状態が続いた所で事態は動きを大きく見せる事となった。
†
その日、隆和は依頼を受け普通の服を着たトモエと共に行動していた。
師匠の異界の攻略のため、実力を上げるべく戦闘の発生しやすい依頼を隆和は探していた。
そして紹介され請けた依頼はと言えば、大学の友人が新興宗教のチラシに誘われていなくなったという物だった。
届けられたそのチラシには、このような事が書かれていた。
『今の自分が嫌になりませんか?
今までの自分を変えてみませんか?
未来に希望を持ちたくありませんか?
そんな貴方を、我々は歓迎します。
まずは、ボランティア活動に参加しませんか?
連絡は、0120-◯◯◯◯まで 光福の社』
届けられたチラシには呪的な加工があり、【最後の行の番号が22歳以下の者にしか見えない】という物だった。明らかに、その年齢以下の人物を信者か贄として誘うものである。
もちろん隆和にはそれが見えず、その説明をしてくれた女性の鑑定者は憤慨しながらそれを教えてくれた。
電話番号に連絡すると日時と場所を指定して迎えに来るらしく、トモエをその鄙びた駅前の待ち合わせ場所に立たせツナギ姿の隆和は離れた場所から荷物を持ちそれを見守っていた。
おとなし目のブラウスとスカートという姿の美少女が立っているというのにナンパ目的の男性グループすらいない寂れたそこでトモエが待っていると、明らかにやばい雰囲気の中年女性が彼女に話しかけ場所を移動しようとしている。
ちらりとこちらを見るトモエの視線に頷くと、移動し始めた彼女たちの後を隆和は尾行する。
その女性に話しかけられながら、トモエたちはさらに郊外の山の方へと移動していった。
†
向かった先にあったのは、廃棄されたと思われる建築会社の倉庫であった。
周辺には何かの悪魔崇拝らしいオブジェが転がりそれらしい雰囲気のある廃墟であったが、今日は様子が違っているようだった。
入口付近には大勢のバイクが止められ、中からは男女問わず大勢の騒ぐ音と破壊音がしている。
「こんな連中、ぶっ殺しちまえ!」
「我が神の降臨を邪魔するな! 不心得者共!」
「ああ、なんて事! 不信心者がここに入り込むなんて!
いい? あなたはここで待っていなさい。
教祖様、今お助けしますわ! キィエェェェ!!」
その様子に驚いた中年女性はトモエにここで待つように言うと怒りで逝った目になり、ハンドバッグから包丁を取り出すと奇声を上げて建物の中へと突っ込んで行った。
呆然として立ちすくむトモエに近づくと、隆和は荷物から模造刀を取り出しトモエに渡し話しかける。
「戦闘になるぞ。準備しろ。
ダークサマナー同士の襲撃のようだから、様子を見て突っ込むぞ」
「はい、主様」
「コレットも出てくれ」
「あれ。久々にこのメンバーね?」
「ああ。MAGの温存のためにコレットには窮屈な思いをさせてすまない」
「私はいいの。こうすれば消耗は最小限に出来るもの。
でも、気づいてるの? 隆和。
あなた、レベルが下がっているわよ?」
「……ああ」
実際、今の隆和はレベルが39から38へと緩やかに落ちていた。
数年前まで攻撃魔法のあるなのはと組んでレベル20~30の悪魔がゴロゴロと出る師匠の異界の奥へと行っていたのだが、彼女と組まなくなってから建設現場の仕事が忙しくなり、さらには異界の悪魔に手の届かない遠距離から魔法を打ち込まれ続ける対処法を憶えられてからは異界には両手で数えるほどしか潜っていなかった。
そのため、緩やかではあるが体内のマグネタイトが揮発し増えるより減る方が上回っていた。
前職を首になりガイア連合に加わる事で、数々の高レベルの相手との戦いやちゃんとした霊地で暮らす事によりマグネタイトの消耗はコレットと房中術で交わるだけの頃よりは抑えられていた。
しかし、その後になのはと結ばれて安定を求める意識と快楽のために大事な相手を状態異常にするのは嫌だという個人的な感情で【房中術を用いた夜の行為そのもの】を忌避して行わない事で、再び減る量の方が増えていたのだ。
「今、優先するするべきなのは何か思い出して。
あの異界を攻略していずれ来る【終末】を乗り切るには、これ以上弱くなるのは避けないといけない。
私とトモエは既に何があろうとあなたに付いていくつもりよ?
なのはともよく話し合って意識を切り替えて、隆和」
「主様。わたくしは主様の刀で盾です。
どこまでもいつまでも何処でも伴に参ります」
「ありがとう。俺は…」
「イヤだぁぁぁぁ! 死にたくねぇぇ!」
建物の方に視線を向けながらもすっかり話し込んでいる間に中の騒ぎの声は消え、一人の若い男が飛び出して来た。
格好から不良集団の一人だと思えるが、隆和には彼の顔に見覚えがあった。
バイクの所へ走り込んできた彼に、思わず門のところから駆け寄る隆和。
「たかしくん!? 木下社長の息子のたかしくん?」
「あれ? あんた、社員の人で見た覚えがあるような?」
「6年勤めたけど、去年、事情があって会社を辞めた安倍です。
どうしてここに?」
彼がそう聞くと、膝を付き両手で身体を抱きしめるようにしてガタガタ震えながら答える木下。
「ああ、オレめちゃ強えぇリーダーの下でグループをまとめていたんだよ。
馬鹿らしいオカルトなんざ、リーダーがみんなボコにして上手く行っていたんだよ。
なのに、何だよ! リーダーが簡単に殺られるようなあんな怪物が出て来るなんて知らねぇよ!」
「リーダーって誰です?」
「ムサシだよ。あいつが殺られるなんて聞いてねぇ! あああああ!」
泣きながら地面を叩く彼に、隆和は聞く。
「たかしくん。ここにいる金髪の女の子は見えるかい?」
「そのキレイな子がどうしたんだよ?」
「よし、【デビルスリープ】」
「……え、あれ?」
「隆和?」
「この子は知り合いだし、色々と知っているようだからね。
連れて帰らないと」
万一の捕獲用に用意しておいたデビルスリープと拘束用のロープで彼を手早く拘束すると、隆和は門の近くの物陰に彼を隠した。
そして、彼女らを促し建物の中へと向かうことにした。
「じゃあ、向かおうか。
かなりの大物の様だから気をつけていこう」
「畏まりました。主様」
「わかったわ、隆和」
後書きと設定解説
・主人公
ステータス:レベル39→38
【青い色のツナギ】
前側にあるチャックを開け閉めして着るタイプの青い全身つなぎの霊装
安全靴型の霊装とセットになっている
麻痺無効と回避強化を付与されている代わりに防御力は低い
・関係者
名前:木下たかし
性別:男性
識別:覚醒者・17歳
職業:無職
ステータス:レベル1
耐性:破魔無効
スキル:なし
詳細:
隆和がかつて勤務していた木下工務店の社長の息子
悪知恵が働くタイプの参謀気取りの不良
今回の遭遇で覚醒した
プロットを組んだ際の主人公の高いレベル周りの設定が本家様で解説されていたのは驚いた。
次は、出来るだけ早く。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。