【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法   作:塵塚怪翁

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長いので幾つかに分割して、とりあえず書き上がった分です

※「waifulabs」と言うサイトで作成したイメージ図を追加


第2話 ガイア連合山梨支部にて その1

 

 

  第2話 ガイア連合山梨支部にて その1

 

 

 さて、ウシジマの一報から大阪で起きた霊能事件の後始末にガイア連合の本部である山梨支部の人々が巻き込まれることになったのであるが、ウシジマの情報の売り込み方のいくつかの文言で山梨支部側も少し本気を出す事になったのである。

 

 一つ目は、『関西方面に在野のレベル30を越える比較的善良な転生者がいる』という点。

 何しろウシジマにしてみれば、「ダーク系の悪魔と契約して使役し闇金業者を経由して暴力団の依頼を受け続けている自分」=「ダークサマナー」だと思いこんでいる彼である。

 とにかく拡大方向に舵を切っているガイア連合は、少しでも使える異能者を欲していた。

 そこへ、質はまだ分からないがこの件を解決する事により取り込みも可能な高レベル転生者という人材がいるとなれば、後始末に協力して会ってみたいと2~3徹上等な仕事に追われているショタオジは判断した。

 

 2つ目は、『市街地に異界を作りレベル20を越える悪魔に姿を変え怪しげな実験の為に少女を誘拐させる犯人』という事件の特異性の点。

 この時期、レベル10を超える異界のボスが普通に地方一帯の危機だと言われ、いくら【羅生門】や【大江山】などの大型異界を抱える京都付近だとしても見過ごせないだろう。

 しかも、事件は解決済みで確保した犯人や被害者の処置をこちらに任せるというのだから、関西の地元の組織に頼んだら無かった事にされる可能性が高い事件の調査や解析がしたい技術班や医療班のちょっとイッてる連中は話を(盗聴器で)聞くと諸手で賛成した。

 

 3つ目は、『箱だけは出来ている大阪出張所の人材確保への紹介』である。

 ウシジマ自身、こちらの世界でもあと数年以内に出来るだろう【暴対法】で今の闇金業も先細りになるのは目に見えているし、ここらで本格的に隆和とセットでガイア連合に繋がりがあれば、将来的に『暴力団から仕事を貰うフリーの異能者=狩ってもいい反社のダークサマナー』と見做されて攻撃される可能性も減るという打算があった。

 ガイア連合側としても現場の地方の霊地に行くガイア連合員の要求に押されて、大阪城付近の霊地を確保しカプセルホテルの形態の派出所を作りはしたが管理できる転生者に余裕がなかった。

 そこへ覚醒していて金勘定も得意で交渉もできる転生者は管理人としてはうってつけであるし、こちらから派遣する職員に監視役も混ぜておけばいざという時も大丈夫だと事務方の千川は判断し少本格的に動くべく手配を行なった。

 

 こうして連絡してから一時間も立たない内に文字通り転移で跳んできたガイア連合とウシジマの手配した人員で、事件現場の処理は滞りなく済むことになった。

 一度に数人を山梨の第二支部まで運べるトラポート持ちの【腐百合ネキ】が動員され、行きは日本橋のまん○らけの近くの物陰まで跳んで、帰りは山梨第2支部内のアニ○イトの近くへ跳ぶというものではあるが、現地で対処するために残ったウシジマたちを除き無事に隆和とボスの部屋にいた女性二人は山梨へと運ばれた。

 

 

 

 

 現場で待機していたストレッチャーに乗せられて運ばれて行く彼女たちを見送り、隆和は案内役としてここに残った女性である【腐百合ネキ】を見た。

 身長は160ちょい位で年の頃は10代半ばくらいであろうか、服装も動きやすいトレーナーにGパンで短い黒髪と凹凸に乏しい体型から少年にも見える少女である。

 こちらを向いた彼女に隆和は話しかける。

 

 

「えーと、フユリさんだったか? ここはどこなんだろうか?」

 

「……フユリさんとか言われたの初めてだ。【フユリネキ】と呼んで下さい。

 ここでは本名じゃなくあだ名で呼び合うのがルールみたいなものだから。

 あなたが【アーニキ】さんよね?」

 

「そう呼んでいたのはウシジマさんだけだったが、何で間を伸ばすんだ?」

 

「そういう物だからだと思う。

 あと、ここは山梨県ですよ。

 ほら、あっちに富士山が見えますよね?

 じゃ、アーニキさん。一緒にこっちに来て下さい」

 

 

 いまだに空間転移などという体験に驚いていた隆和だったが、遠くに見える富士山を眺め溜息をついて彼女の後について行った。

 建設中の大型の工場やビルがあちこちにある小さい町のような場所を通り過ぎ、一番奥にあった鳥居の横の窓の少ない3階建のビルに入る。

 ロビーを通り過ぎて3階に昇り部屋に入ると床が畳張りの和室のようになっていて、そこには3人の男女がいた。パイプ椅子と簡素なテーブルの向こうに、向かって右から緑色の事務員の制服を着たお下げ髪の女性、真ん中に一番小柄だが髪の長い男性が、左端には黒いスーツを着た男性が座っている。

 こちらに来るときにウシジマから説明のあったこの組織のトップの神主がこの人だと、真ん中にいる一番威圧感のある男性を見て隆和は気付いた。

 ペコリとお辞儀をして腐百合ネキが足早に去ると、ニコニコとこちらを見ていた神主が眉をひそめ小首を傾げている。しばらくすると、何か諦めた表情で前にあるパイプ椅子に座るように手を翳すので不思議に思いながら隆和が椅子に一礼して座ると向こうから話しかけてきた。

 

 

「遠路はるばる山梨へようこそ。安倍高和さん。

 俺は、【ショタオジ】。ここの一応トップをしているよ。

 こっちの彼女が事務の【千川ちひろ】さん。

 で、こっちの黒いのが医療班の【黒医者ニキ】。

 君と一緒に運ばれて来た女性たちの担当だ。よろしく」

 

「よろしくお願いします。それで、説明とかして貰えるんですよね?」

 

「ああ、俺たちの仲間である君を助けるのが目的だからね。

 そうだね。じゃ、まず君個人の話から行こうか。

 ちょっと待ってね。…………これを見てくれるかな?」

 

 

 そういうと彼は何かデジタルカメラのような物を隆和にしばらく向けると、画面を見ながら書き連ねた紙を見せてきた。

 そこには隆和をアナライズしたものが書かれていた。

 

『名前:安倍隆和

 性別:男性

 識別:転生者・26歳

 ステータス:レベル39 破魔無効・呪殺無効・精神無効』

 

 

「このデータは今ガイア連合製のスキャナーで測ったものだけど、何か違和感は感じないかい?

 もし感じないと言うのなら、かなり危険な兆候だよ?」

 

「えっと、どう言うことですか? これ、俺のデータですよね?」

 

「君がどうやってここまでのレベルまで上げられたかが疑問なんだよね。

 うちにいるごく一部の人のようにちゃんと戦闘経験を積んでいるなら問題はないんだ。

 でも、君の体の動き方とかにレベルに見合うものが少なすぎる。

 まるで、『パワーレベリング』か『養殖』されたようだ。

 悪いことは言わない。ここで修行していきなさい」

 

 

 隆和はそう言われて混乱していた。

 何故、自分がそう言われているのかが分からない。

 戸惑っている隆和の顔を見て、仕方がないという表情でショタオジは話を続ける。

 

 

「そもそも君のスキルはどうやって憶えたものなんだい?

 ジャイブトーク、不屈の闘志、背水の陣は自分の経験から生まれたものだろう。

 悪魔召喚、見鬼、空曜道(マッパー)の術は陰陽師か修験者系の師匠でもいたのかな?

 妙技の手管と耽溺掌は他で見たことがない。家伝の技かな?」

 

「術系は皆、師匠から基本を教わって後は独学です。

 最後の二つは、師匠が編み出した独自の技だと言っていました」

 

「師匠って誰だい?」

 

「仲魔の幽鬼チュレルのコレットによると、【大内隆】と言うそうです。

 師匠は異界の最奥に居て、俺自身も何年も会っていません。

 師匠のいる異界【大内屋敷】の場所はコレットが知っていたので行けましたけど、この数年、間引きも兼ねて何度も潜っていますが最奥付近の悪魔が強すぎて師匠のいる居室まで行けないんです」

 

「なるほど。その異界の噂は聞いたことはあるよ。

 実在するとは思わなかったなぁ。

 じゃあ、そのレベルの高さはその異界で戦っていたからかい?」

 

「はい、大体は異界の戦闘によるものになりますね。

 ただ、レベルが15を越えるまでは違うやり方でした」

 

「どんなやり方だい?」

 

 

 隆和はちらと横にいるちひろを見ると、すまなそうに言った。

 

 

「コレットが安全だと判断した依頼の解決と、その……コレットとの交合による房中術をひたすらしていました」

 

 

 ショタオジは意味が分かって真っ赤な顔のちひろを横目で見て顔に出さないように吹き出しながら、コツコツと指でテーブルを叩きながら納得していた。

 

 

「なるほど。【幽鬼チュレル】は、だいたいのレベルが20代の半ばだ。

 【エナジードレイン】を応用したのかな?

 房中術により、自分のMAGと循環させて君のレベルを引き上げていたのか。

 健気だねぇ、その悪魔。

 よし。ここは結界が張ってあるから、呼び出してごらん?」

 

「多分、それは【妙技の手管】のスキルの効果です。

 このスキル、師匠いわく【房中術を含む総合的な閨の技術のスキル】なので、【応用すると状態異常の相手へのダメージを増やす】効果が出るんです。

 それと、いいんですか?」

 

「あ、ああ、その位の強さなら大丈夫だよ」

 

「それじゃあ。コレット」

 

 

 隆和が呼びかけてコレットを呼び出した。

 呼び出された彼女は周囲を見渡し、こちらをじっと見つめるショタオジに気づくと幽鬼特有の蒼白い肌をさらに白くしてガタガタと震え始めた。

 それを見ていたショタオジは、内心淫魔みたいなスキルに若干引いているのを隠しつつ静かな声でコレットに問いかけた。

 

 

「やあ、初めまして。君がコレットかい?

 ああ、自己紹介はいいよ。

 なるほど、レベル34。通常のチュレルよりもかなり強いね。

 それで、君が彼の師匠としていた契約の内容は何だい?」

 

「あ……いや、その……これは」

 

「多分、【彼の守護】が内容かな?

 それで、君より強くなったら契約先が彼になるとか?」

 

「あ…………えと」

 

「姿からすると、元はメシア教の聖女かな?

 恋もしないまま死んで、それでも初めて想い人に出会えた、と。

 個人間の恋愛には口は出さないけど、女性の幽霊噺によくある心中は止めてね。

 まあ、これからも彼とは上手くやって欲しい」

 

 

 その言葉を聞いた途端、コレットは顔を覆い泣き崩れた。

 そして、しきりに「ありがとうございます」と言い続け始めた。

 横でじっと抗議の目で見ているちひろと黒医者ニキを尻目に、ショタオジは自分の持たれているイメージに憮然としながら困惑している隆和に告げる。

 

 

「ごほん。かなり長い前置きになったけど、ここからが本題だ。

 君たちのスキル構成から見て、【状態異常で動けなくして倒す】のが戦闘における基本パターンのようだね。

 さっき言っていた異界でもそうやって戦っていたんだろうけど、これ、相手の数が多かったり遠距離から魔法を撃たれ続けたり状態異常の効かない相手にはレベル差があっても詰むよね?

 それなのに、肝心の君は戦い方が喧嘩殺法がいいところだと思う。

 違うかい?」

 

「確かに思い当たるフシはあります。

 でもそれは俺に戦うセンスがないからで……」

 

「確かにそうですけど、それは私が彼を護りたいからで……」

 

「あー、取り敢えず二人とも少し待ってくれるかな?

 まず、その【大内屋敷】の異界の情報とそこでどういう風に戦っているのかを説明してくれるかな?」

 

 

 そう問われて隆和とコレットが知る限りの情報を話すと、ショタオジは頭を抱え、ちひろは理解を放棄し、黒医者ニキは興味深げに聞いている。

 少し遠い目をしながらショタオジは、今聞いたことの確認をし始める。

 

 

「まとめるよ。

 基本的に異界内は寺の境内を模したもので、君の師匠は最奥の居室で異界のボスとされる女性悪魔を閨の技術で鎮め続けている、と。

 ボスは彼の妻を自称する女性悪魔たちで、今のコレットより強い悪魔の【地母神ハリティー】【妖獣タマモ】【大天使ライラ】の三体。

 50年以上それを続けているなら、君の師匠はもう半分以上人ではないかもね。

 

 そこで遭遇した悪魔が、妖精、鬼女、夜魔、魔獣、妖鳥、天女などなど。

 つまり、レベル10~30後半位までの7割が女性型悪魔。

 しかも、最奥付近にはボス部屋のお溢れに与ろうと強い悪魔が出待ちしている。

 

 異界の法則の推測は出来るよ。

 男性間の痴情のもつれで滅んだ大内義隆の子孫が、四六時中、ボスたちと盛っている。

 そしてそれが数十年に渡って続いている。

 だから、そのMAGの影響で女性型悪魔がかなりの確率で出現しやすくなっている。

 それが【大内屋敷】だと」

 

「はい。

 そして俺が11になった頃に、異界の入り口のある廃寺に地元の若い連中が大勢で来て封印の石を蹴り壊して今まで硬く封印していた入り口が開放されたそうです。

 師匠はその時に数十年ぶりにこちらに戻り、異界から動けない自分に代わり外から再封印を託せそうな相手を探している時に俺に出会ったんです。

 自分の技術を俺に教えてコレットを渡すと、その後師匠は異界に戻ってそれ以来会っていません」

 

 

 それに、コレットが隆和の意見を補足するように続ける。

 

 

「彼は表の世界での職業について平穏な生活を強く望んでいます。

 私はそんな彼が好きですから、出来るだけ安全に強くなるようにしてきました。

 だから、保有マグネタイトを増やして強くなることだけを優先しました。

 数が多かったりして倒せない相手からは逃げましたし、倒せる相手を行動不能にして倒し、後は上げたレベルのスペックに任せてゴリ押しする戦い方は彼を歪にしたかもしれません」

 

「師匠は俺の命を助けて、今まで生き残るための全てを授けてくれました。

 平穏な生活を送りたいのは確かに希望ですけど、恩は返したいんです。

 このままで駄目だと言うなら、どうか戦い方を教えてください。

 お願いします」

 

 

 二人はそう言うと揃ってショタオジに頭を下げた。

 まだレベルをそこまで上げた方法を言い淀んでいる節はあるが、素直に教えを請うその二人を見たショタオジは少し感動していた。

 ここ最近に訓練を施した数々の転生者達に比べて、なんて素直で前向きなんだろう。

 これは会談が終わったら、必ずそのレベルアップの方法の詳細を聞き出した上で高レベルだし特別にスペシャルな特訓方法でやろうと決めた。

 ものすごい寒気を感じて周囲を見る二人を余所に、ショタオジたちに追加の書類を渡して巻き込まれるのを恐れて足早に立ち去る職員を見送り上機嫌な顔でショタオジは続ける。

 

 

「大丈夫、訓練の方は任せてくれ。

 よし、俺の話は終わりだな。

 調査報告も来たようだし、それにも関連した話を二人から頼むよ」

 

「ええ、分かりました。

 では、今回の事件に関する事と今後に関する事を話し合いましょうか?」

 

 

 上機嫌で話すショタオジを見ながら、二人のこの後の訓練の事を気の毒に思いながら黒医者ニキとちひろは書類を手に取り話し始めた。




後書きと設定解説


・関係者
名前:腐百合ネキ(桂木美々)
性別:女性
識別:転生者(ガイア連合)・17歳
職業:ガイア連合山梨支部連合員
ステータス:レベル14・スピード型
耐性:破魔無効・呪殺耐性(装備)
スキル:トラフーリ(戦闘脱出)
    トラポート(長距離転移)
    エストマ(敵遭遇率低下)
    スクンダ(敵全体・命中と回避低下)
    迅速の寄せ(素早さと先制率上昇)
    逃走加速(逃走確率の上昇)
装備:軍用バックパック(耐刃防弾仕様)
   呪殺耐性の指輪
詳細;ガイア連合員専用の物資の配達をする部署の関西方面担当の一人
   テレポート地点はBL本を買った思い入れのある場所が基点となる
   異能ではなく趣味のことで家族と疎遠になり家を出た
   友人の手で腐海に引き込まれ、貴腐人と百合モノ好きになった
   友人の栗原すずかは有明で売れっ子の同人作家
   つるん・ぺたーん・すとーん(黒医者ニキのメモより)


【挿絵表示】

腐百合ネキのイメージ図


次はガイア連合関係者との会談の続き。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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