【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法   作:塵塚怪翁

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続きです。

※「waifulabs」と言うサイトで作成したイメージ図を追加


第28話 新たな事件と喫茶店『翠』

 

 

  第28話 新たな事件と喫茶店『翠』

 

 

 話を始める前に、このデータ見てもらいたい。

 

 寺院の数:大阪・約三千五百ヶ所、京都・約三千百ヶ所、奈良・約千八百ヶ所。

 神社の数:大阪・約千二百ヶ所、京都・約二千ヶ所、奈良・約千五百ヶ所。

 

 数だけなら寺院が愛知に約四千八百ヶ所、神社なら新潟の約四千九百ヶ所や兵庫の約四千二百ヶ所など存在していると国の機関には登録されている。これで、未登録の物を加えるとさらに増えるだろう。

 この国の霊能組織は、大体が宗教組織となっている所が多い。そうすると、この関西の3府県の数を見ただけでも、戦後のGHQを利用したメシア教の霊能組織潰しの頭がおかしいとさえ言えるリソースの注ぎ込み具合と執拗さの片鱗が伺えるだろう。

 

 そして現在、隆和たちの地元近くのガイア連合の進出具合だが、大阪梅田に関西支部、北陸・東海・長野・中国・瀬戸内のヒノエ島・四国の大赦近くに支部が出来ている。派出所は大都市に一つは必ず最低一つは出来ているので、支部の無い県でも複数の施設は出来ているだろうと思われる。

 

 問題は、京都と奈良である。

 当然、京都と奈良にも派出所は幾つかは出来ているはずだ。

 ただし、数よりもこの周辺の千年以上の歴史の積み重ねが厄介であるのだ。

 当然として名家と自称する家の数は他の地方より膨大になるだろうし、ほぼ観光地化して無力化している神社仏閣は多いだろうし、更に言えば蠱毒と言ってもよいオカルトの歴史の積み重ねから処理すべき異界の数は考えたくもない物になるだろう。

 ましてや、つい先年に大きい顔をして悪さをしていた土御門家の一部の跳ねっ返り共がいなくなったばかりである。

 そんな状況で、京都や奈良に支部を作るから支部長をやってくれと言われたら普通の俺たちなら「ノーサンキュー」である。

 

 しかし、そんな状況だからこそ割を食っている人もいるのである。

 それは、近畿地方の各神社庁も彼に交渉を委託させ始めたガイア連合への要請をまとめる調整役でもある、京都府神社庁理事の一条麿呂氏その人であった。

 

 

 

 

 女性陣の異界化計画の打ち合わせと隆和が夜戦をした日の数日後、隆和は天ヶ崎千早と華門和を伴って関西支部の面談室に来ていた。

 

 その日はトモエとなのはの二人は折り悪く装備の点検や所用の為に山梨へと赴いていて留守だったので、ちょうど適当な攻略すべき異界の情報を探しにきた隆和たちに、受付から一条氏が来訪して君らを探していると報せがあり赴いたのだ。

 面談室に来た隆和たちの向かいには、かなり急いでいる様子で来たどこかで見覚えのある草臥れたスーツを着た中年の男性が待っていた。しかし、よく見るとその人は白粉と狩衣をしていない一条氏だった。

 彼は隆和たちが現れるや、手招きすると真剣な様子で書類を取り出し話し出した。 

 

 

「ああ、よかったでおじゃる。お主らに出会えたのは僥倖であった。

 急でおじゃるが、力添えを頼みたいのでおじゃ。

 これを見て欲しいのでおじゃ」

 

「何があったんです?

 いつもの姿ではないようですが?」

 

「麿も忙しくてする暇もないし、すぐに汗で化粧が落ちるので大変なのでおじゃ。

 それより、それを見て欲しいでおじゃ」

 

「隆和はん。これ、すぐに動いた方がええかもしれん」

 

「説明してくれ、一条さん」

 

「それはな、……」

 

 

 彼が説明するにはこういう事だった。

 

 事件が置きたのは数日前、京都府の北の若狭湾に面する寂れた温泉町の宿「武部荘」で起きた。

 珍しく若い二人連れの女性客が、温泉目当てに町の人以外がめったに来ない宿に泊まりに来ていたが、その日の深夜に大きな音がして宿の主人が部屋に行くと、2階の窓が壊され何かが暴れた跡があって宿泊していた女性たちは貴重品も残したまま姿が消えていたという。

 もちろん宿の主人は警察にすぐに通報し調べて貰ったが人のものでない大きさの泥の足跡が室内から発見され、その濡れた足跡は点々と海沿いにある古い祠まで続いていたのが警察の調査で解った。そして、京都府警内の担当者からオカルト案件として一条氏に連絡が来たらしいのだ。

 その地元には霊能組織らしいものは絶えてなかったので、急いでこちらに来たら隆和たちに会えたとの事だった。

 

 

「……と、いう事でおじゃる。

 現地の祠の話はこちらにも残っておらなんだでおじゃる。

 出来れば、すぐにでも調査して欲しいでおじゃる」

 

「トモエもおらんし、どうします。隆和はん?

 本来なら、調査員を送ってそれから依頼いう形になりますけど」

 

「いや、調査だけなら俺だけでも出来るだろう。

 カーマもいるしな」

 

「ただ、若狭湾一帯には少し懸念がおじゃる」

 

「懸念ですか、一条さん?」

 

「あの辺り一帯には、厄介な【八百比丘尼伝説】がおじゃる。

 伝説自体は日ノ本の色々な所にあるのでおじゃるが、あそこには入定したとされる洞窟もある故な」

 

 

 難しい顔でそう言う一条氏に、申し訳無さそうに手を上げ告げる千早。

 

 

「あの……」

 

「何でおじゃる? 千早殿」

 

「福井県のその洞窟、異界になっていて現在は北陸支部が攻略中や。

 八百比丘尼本人が異界の主で、説得中だという事らしいんや」

 

「??」

 

「何でも戦後すぐのメシア教のアレで、その時の当代の巫女を殺されてその後に雑な封印をされて昨今の霊地の活性化で怨霊として復活したとか。

 伝説が伝説や。致命傷もすぐに消えるように癒えるとかで何とか説得できないかとしているそうや」

 

「???」

 

「伝説自体、記録で確認できるだけでも室町の頃からのものや。

 で、福井県だけでなく他の地方でも伝説関連で異界が多数発生して処理をしている最中なんやよ。

 だから、距離的にその祠も伝説が引き金になっとる可能性もあるわ」

 

「おおう」

 

 

 顔を覆って項垂れる一条氏。

 それを申し訳無さそうに見ていた千早は、隆和の方を向いて告げてきた。

 

 

「そういう訳やから、隆和はんあんじょう頼みます。出来るなら、解決したってや」

 

「ああ、任しておけ」

 

「だから、この一件、和はんも連れて行ってや」

 

「お願い致します、隆和さま。皆が助かるためにも弱気ままでは居られませぬので」

 

 

 真剣な顔をしてこちらを見る和の顔を見て、どちらにしろ今後の事を考えると彼女のレベル上げも必須だと考え渋りながらも応じる隆和。

 

 

「うーん、危険だと判断したらすぐに逃げるぞ。それでもいいなら?」

 

「はい、構いません。ありがとうございます、隆和さま」

 

「さて、そういう事なら新副支部長の方にも話を通しておくさかい、地下の社用車を使ってや。

 ほな、依頼書の方を作成するんでうちは事務所の方に顔を出しておくわ。

 一条はん、行きますんで起きてや?」

 

「おお、すまんでおじゃる。

 それでは安倍殿、よしなにでおじゃる」

 

 

 細かく装備の準備などを話しながら出ていく隆和と和と別れ、顔を上げて頷く一条氏を連れて千早も面談室を出た。

 しばらく前に、シンパも居なくなり自身の待遇に我慢できずに爆発し支部を辞めて行ったあの女に代わり、新しく彼女が推薦して説得したウシジマニキのいる副支部長室に向かいながら千早は考えた。

 彼なら華門和の安全に気を使うので危険に突っ走るのを防げるし、彼女がいれば行った先でまた以前の依頼のように女を充てがわれる事はまず無いだろう。

 依頼の成功率は八割を越える彼の事だ。これで、和のレベル上げも出来れば万々歳である。

 上手く運んだ先で隆和に褒めて貰えるのを思い浮かべ、顔が緩むのを抑えながら彼女はまた無意識に首元のチョーカーを弄りながら移動した。

 

 

 

 

 一方、山梨でトモエの『名刀ムラサマ』と『衛士強化装備・レプカ』、それになのはの『ナノハ・バリアジャケット』の点検と修復にアップデートもするらしく数日は掛かるというそれになのはたちは、なのはの母が経営する喫茶店『翠』に泊まり店を手伝いながら暇を潰していた。

 暫く振りに帰って来た一人娘の変わり具合に気付いた母の桃子であったが、何も言わずに「おかえり」とだけ言って出迎えていた。

 

 店舗の形状や色合いに家具まで用意されていたこの店舗の建物は、建設したガイア連合系の社員の中にいた連中が気を利かせてあの『翠屋』と瓜二つに忠実に再現され造り上げた逸品だったりする。

 今、この店舗兼住居に住んでいるのは、なのはの母である【高橋桃子】とその護衛役として飼い犬としているなのはの専用シキガミの【シロウ】である。

 シロウはなのはが母の護衛のために作って貰ったオオカミ犬型のシキガミで、なのはが自分の前衛役もこなせるようにとある程度のレベル上げもしているので安心して母の護衛を任せている。

 本人(本犬?)としては、既に彼女のご飯の虜になってより一層忠誠心を高めている様子である。 

 

 営業が終わり後は就眠だけとなり、なのはの部屋に布団を敷きトモエは泊まっていたので一緒に風呂上がりに部屋に向かった。お互いに寝巻き代わりのラフな服装で着替える途中で、なのはが携帯のメールに気付いて見るとそのメールには『一条氏の依頼で異界に向かう』とだけ記されていた。

 その姿をトモエが彼女を問いたそうに見ていると、なのははそれに気付き苦笑したようにひらひらと手を振ると答えた。

 

 

「隆和くんがまた、異界に潜るって書いてあるだけだよ」

 

「またですか?

 最近の主様は、資金稼ぎなのか鍛錬なのか頻度が多すぎます。

 もう師匠との約束は果たしたのですから、もっと落ち着いても良いのに」

 

「わたしもね、もう戦うのは落ち着いてもいいと思うの。

 だからわたし、隆和くんに前に言ったの。

 和ちゃん達の事は千早が何とかするから大丈夫だって。

 なんなら、わたしと結婚してトモエも一緒で構わないからこの家でゆっくり過ごそうって」

 

「何て答えたんですか、主様は?」

 

「それがね、こう言ったの。

 『ごめん。複数と関係を持って逃げるみたいなのはちょっと』って」

 

 

 そう言われたトモエは、ため息をつくとなのはを見つめ話し出した。

 

 

「しっかりして下さい。

 私たちの中で主様が自ら望まれた女性って、貴女だけなんですよ。

 コレットや私は主様に誰かから贈られたものですし、和さんも似たような者ですよね?

 それと、千早さんは言い寄った末にですし」

 

「それはそうなのだけど……」

 

「あのですね?

 育て親のコレットとして言わして貰うなら、貴女が主導権をちゃんと握りなさいな。

 ちゃんと彼、私たちに順位をつけて扱っているじゃないですか。

 彼から贈られた呪殺無効のアクセ、これを見れば立場は一目瞭然でしょう?」

 

「まあ、たしかにそうなの」

 

「結婚に拘るのはまあしょうがなくはないですが、今更、独占は無理ですよ?

 男だから彼は受け入れているみたいですし、彼、これで仲違いして醜く争ったら逃げますよ。

 私も含めて離れる気はないですし」

 

「それは困るの」 

 

「それに、気が付いています?

 夜に全員抱く時に、徐ろにスキル全開でこちらが飛ぶまで抱くの私と千早だけですよ。

 貴女と和さんがそうなる時は、そうしてって言った時だけじゃないですか。

 彼なりに大切にされていますよ、貴女」

 

 

 トモエに指摘され、赤くなるなのは。

 さらに、マーラから力を授かってからほぼ数日おきに隆和に誰かしら抱かれているのを思い出し赤面する二人だが、ふとある事に気が付きなのははトモエに尋ねた。

 

 

「あのー。それじゃあ、千早があの鍵の飾りのついたチョーカーを選んだのは……」

 

「私の場合は、彼専用のシキガミでもあるので当然この形ですけどね。

 要は、『私をあなただけのものにして。私に刻み込んで』って事じゃないですか?

 ほら、ドラマで見たホストに入れあげる女性客みたいなものでしょう。

 初めて来た時から『彼を養う』とか言っていたじゃないですか。

 抱かれてから、変なふうにタガが外れたみたいですけど」

 

「うわぁ、なの」

 

「帰ったら、また話し合いましょう。色々と問題が起こる前に」

 

「そうするの」

 

 

 そうして長い事話し込んでいた彼女らは、ようやく眠りについた。

 そして、帰ってから話し合った時に千早の症状を改めて確認する羽目になった二人だった。




後書きと設定解説


・関係者

名前:天ヶ崎千早
性別:女性
識別:転生者(ガイア連合)・23→24歳
職業:ガイア連合山梨支部監査部関西派遣員
ステータス:レベル12・マジック型
耐性:破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:アナライズ
    呪符作成(魔法の石相当の護符の作製技術)
    コンピューター操作(ハッキング含む技術)
    誘惑(異性の相手によく効く交渉術)
    財力(アイテムの購入などの資産運用術)
    図書館(書物による的確な情報収集技術)
装備:鍵の飾り付き黒色のチョーカー(呪殺無効の霊装)new!
   魅了無効の指輪 new!
詳細:
 15歳時、身長162cm、B:72(AA)・W:55・H:78
 現在時、身長167cm、B:89(F)・W:57・H:82
 隆和のパトロンを自認し【色々と駄目な気質】が開花しつつある美女
 株式などの資産運用で多大な個人資産あり
 黒髪をボブカットにし、仕事中はスーツと丸いフレームの眼鏡を着用
 山梨支部から関西支部の内偵に派遣されていた内部監査部員
 過去の恩と感謝と初恋が混ざった感情のまま突き進み、念願の関係に
 ただ、仕事が忙しいためなかなか顔を見れないのが悩み


【挿絵表示】

天ヶ崎千早のイメージ図

名前:一条麿呂
性別:男性
識別:異能者・47歳
職業:文部省監督宗教法人「京都府神社庁」理事
ステータス:レベル3
耐性:破魔無効
スキル:見鬼(アナライズ)
    拍手祓い(ハマ)
    占術、執り成し、根回し
装備:呪殺や状態異常を防ぐ護符や札×多数
詳細:
 京都府内の霊能関係者のオカルト方面の相談役
 京都府内の霊能組織の要請を何とかする役所の担当者とも言う
 最近はガイア連合への要請をまとめる調整役でもある
 現在、近畿地方の各神社庁も彼に交渉を委託し始めた


次は、早めに。
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