【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法   作:塵塚怪翁

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続きです。


第31話 華門神社の新人と若返りの霊水

 

 

  第31話 華門神社の新人と若返りの霊水

 

 

 華門神社を訪れ、異界の事を知らされた日から数週間が経過した。

 

 初夏になったその日、隆和はとある場所の異界に電子ジャーを片手に持ち立っていた。隣にはトモエが並んで立ち、目の前で起きている喧騒を一緒に眺めていた。

 目の前の状況を見ているうちに、トモエが隆和に不思議そうに尋ねた。 

 

 

「あの、主様?」

 

「【ハマ】っ、邪魔するんじゃない! 悪霊風情がっ、【ハマ】っ!」

 

「何だい?」

 

「【突撃】よっ! ガキなんか、さっさと死になさいっ!」

 

「私たちがここにいる意味、あります?」

 

「【マハラギ】っ! ほらっ、右側が手薄よっ! シキガミたちはそっちに!」

 

「ボスがかなり強いみたいだから、念の為だってなのはがね」

 

「もうっ、ちまちまと数だけは多いのっ! 【メギドラ】!」

 

 

 奥の方から湧き出していた悪魔の群れの一角を吹き飛ばすなのはの放った万能魔法の爆発を眺め、隆和はこの数週間前のことを思い出していた。

 

 

 

 

 事の起こりは、あの日から数日後、高橋なのはと天ヶ崎千早の予定を合わせた日に改めて異界の事を話し合うことになった日だった。

 

 話し合いは組織の主だったメンバーの顔合わせと紹介の後、女性同士で話す事があると笑顔で言われ追い出された隆和は社務所にて樫原翁にお茶を貰い、騒音の響く神社内を窓越しに眺めていた。

 

 既に神社内では派出所と同等の施設建設に向けての工事が始まっていて、ガイアグループ系ゼネコンの『ガイア建設』と『だいだら工務店』の車や作業員が頻繁に出入りしており、社務所の増築に入口横のコンクリート製の外来者用の宿舎の建築、外塀の強化とそれに合わせた敷地の結界の配置直しと強化に、組織人員の住む古い木造屋敷部分の改築とリフォームが進んでいる。

 

 樫原翁の執務室でお茶を飲みつつ、隆和は書類の整理をしている彼に話しかけた。

 

 

「皆さんの様子はどうです?」

 

「ん? 少なくとも前にいた組織にいる頃よりはあの子らも笑顔が増えたぞ。

 もともとあの子らは、組織が用意した美人局や枕要員だったしの。

 それを強制する馬鹿どもが消えて清々しとるじゃろ」

 

「それじゃ、樫原さんは何をしていたんですか?」

 

「薬師じゃよ。

 家伝の美容法や化粧に使う薬や霊草を混ぜた妊娠誘発剤や堕胎薬なんかを作っとった。

 じゃから、今は罪滅ぼしの為にも今の子らは助けたいんじゃよ」

 

「そうだったんですか。

 それじゃあ、長い事彼女らと一緒にいたんですよね?」

 

「そうじゃな、一族の出じゃから長いの。

 それがどうしたんじゃい?」

 

「……【安倍七菜】って名前はご存知ですか?」

 

「む? ……ああ、憶えとるよ。お前さんの母親じゃったな」

 

「はい。……あの誰から聞きました?」

 

「千早の嬢ちゃんに名義の件で事情を聞いて思い出したんじゃ。

 なかなか破天荒で行動力のある娘っ子じゃったぞ?」

 

「知ってる事を聞かせてもらえますか?」

 

「ええとも。確かな……」

 

 

 その後、女性陣の話し合いはまだ続いていたが華門和が呼びに来るまで、隆和は樫原翁から母の思い出話を聞くことが出来た。

 

 

 

 

 女性陣が何を長く話していたかというと、ここの新しい職員としてトモエやなのはのよく知る人物がいたからである。

 その人物は、ガイア連合関西支部に所属するデビルバスターのモリソバこと【田中菲都】であった。

 友人の登場に驚くなのはに、ため息をついて千早が事情を説明し始めた。

 

 

「ふぇいとちゃん!? どうして、ここに?」

 

「だから、本名は……ああ、まあ。……それはとても答えづらい質問でして……」

 

「ソーシャルゲームやろ、原因は」

 

「ソシャゲ!?」

 

「あんな。こん人、大のソシャゲ狂いやったんよ。

 それも最新のガイア製のスマホを買って、ガイア運営の複数のゲームに手を出しとってな。

 大爆死して家賃が払えなくなって、ウシジマはん所に借りに行ったみたいなんや。

 ほんで、うちの所に連絡が来てここに連れて来たんや」

 

「「……うわぁ」」

 

「……うぐぅ」

 

 

 思わずトモエとなのはにドン引かれ、真っ赤になって顔を覆い蹲るモリソバ。

 可哀相なものを見る目で見る千早が話を続ける。

 

 

「貯蓄もほとんど散財して残っとらんと言うし。

 けど、なのははんの友人で、なのははんが推薦した有能な人や。

 このままでは惜しいんでな? 

 レベルも高いし、ここの守衛に住み込みで雇う事にしたんや」

 

「だから、あれほど程々にしなさいって言ったの」

 

「……面目次第もございません」

 

「それで、ゲームは辞めたの?」

 

「……そ、それは……」

 

「それはやな……」

 

 

 得意気に言いかけた千早に、真っ赤なまま首を振るモリソバが縋り付いた。

 

 

「ああ、天ヶ崎さん、お慈悲を!」

 

「うちの組織、元々は目標になった有能な人物を枕で誘い込む人員だったやん?

 その中には女性だけやなくて、『陰間』、いわゆる【男の娘】もおったんや。

 で、その中の一回りも下の子に岡惚れしたらしいんや」

 

「あああっ」

 

「しかも、『浮気はしない』とか言うて全部ゲーム消したんやで?

 立派な覚悟やないか? なあ、田中はん?」

 

「あああああっ」

 

「「「それはいい事を聞きました」」」

 

 

 再び、真っ赤になって顔を覆い蹲るモリソバに、工事のせいで神社が開店休業状態のため暇だったので聞き耳を立てていた巫女達が、話をしていた事務室の隅の応接セットの場所へと大挙してやって来た。

 そして、彼女たちによるモリソバへの相手は誰かという追求尋問が始まった。

 

 

「さあ、誰なのか吐いて楽になるの」

 

「……拒否します」

 

「答えてくれたら、主様には内緒で応援や協力もしますよ?」

 

「……きょ、拒否します」

 

「うちが思うに、あの小悪魔チックな『鞠也』やと思う」

 

「正統派な『準』では?」

 

「女装するとお嬢様っぽい『瑞穂』とか?」

 

「意外とワイルドな『涼』の可能性も?」

 

「男なのに色気有りまくりの『るか』でしょう?」

 

「や、やめっ、止めろぉぉぉぉっ!!」

 

 

 真っ赤になったモリソバの声が事務室に響き、恋話好きの巫女たちのからかい混じりの追求に彼女の抵抗は長時間続いた。

 

 

 

 

 一方、話が今だ弾んでいるなのはたちを残し工事の脇を抜けて本殿に入った隆和は、和に案内されて4体に増えたマーメイドと異界内の岸沿い屋敷で会っていた。

 彼女らは例の異界【八百比丘尼の洞窟】から連れて来られたのだ。結局、あの異界は万策尽きた北陸支部の救援要請で山梨支部からの“応援”が出動し沈静化されたという事である。

 なお、その帰りに某氏がどこぞによって1日たっぷりと“仮眠”が取れてお土産を手に入れたのは、周囲には秘密しているらしい。

 ただ、その人魚たちなのだが、全員緑髪の似たような美少女顔と容姿である。アナライズの使える隆和には最初の彼女がレベル12なのですぐに分かるが、他の3体はレベルも同じ10のため見分けるのは非常に困難であった。

 メモを見ながら背景を語った和は、隆和に彼女たちの紹介を始めた。

 

 

「隆和さま、紹介しておきます。

 その平定された異界【八百比丘尼の洞窟】でスカウトされて来たマーメイドの増員の3人です」

 

「「「すっごい強い人が来た! よろしくお願いしまーす!」」」

 

「はい、よろしく。最初の娘がリーダーだから言うことを聞くように」

 

「「「はーい!」」」

 

「それで千早さまは、彼女らを『ブラボー』『チャーリー』『デルタ』と呼ぶそうです。

 それに合わせて、最初の娘は『アルファ』と呼ぶ事にするつもりだそうです」

 

「「「異議あり! もっと可愛い名前で!」」」

 

「流石にそれはあんまりです」

 

「それ、コードネームじゃないか。俺が考えようか?」

 

「お任せします、隆和さま」

 

 

 和にそう促され、期待の目で見るマーメイド達に圧されつつ考え込む隆和。

 

 

「んー、じゃあ『ABCD』の並びは崩さずに、順に『ベルタ』『クリス』『ドーラ』でいいかな?

 リーダーの君は『アリ◯ル』は某所が怖いので、少し捩って『エイプリル』で」

 

「「「うわぁ、ありがとう!」」」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

「それじゃ、仕事に戻ってよし」

 

 

 ニコニコとしたマーメイドのエイプリルは、他のマーメイドに「ずるいー」とか「えこひいきー」と言われても気にせず皆と一緒に上機嫌で潜って行った。

 それを横でじーっと見ていた和は、無言で部屋の奥に行くと一抱えはありそうな大きさの物を抱えて来ると隆和の足元に置いた。よく見るとそれは、横側に赤い文字の書かれた黄色い御札の貼られた昭和風の古いデザインの炊飯器だった。

 隆和は、それを見て和に尋ねる。

 

 

「何か、はるか昔に見たような覚えがあるこれは?」

 

「【魔封波電子ジャー】です」

 

「【魔封波電子ジャー】?」

 

「はい、そうです」

 

 

 そう言うと、彼女は無表情で『取り扱い説明書』と書かれた冊子を渡してきた。

 それにはこう書かれていた。

 

『契約して使役する事になる悪魔は、普通はマグネタイト消費の関係で封印器具で入れて過ごすものである。

 しかし、【悪魔召喚プログラム】と【COMP】は今だに未発見なのだ。

 そうなれば【封魔管】なのだろうが、使用に特別な素質と訓練が必要である上に残数が少なく希少であるのが難点なのだ。

 さらに、封魔管自体が高度な職人技の製品でその職人自体もメシア教の戦後のアレのせいで希少過ぎる状態だ。

 我々でも簡易に使える封魔管の代わりが欲しい。

 そこで、我々が開発した契約悪魔封印器具【魔封波電子ジャー】。

 これ一つに契約に同意した悪魔を1体封じて持ち歩くことが出来る頑丈な優れものだ。

 いずれ小型化し、赤白のボールの形状のものも鋭意開発中であるのでお待ち頂けたい』

 

 読み終えた隆和が奥の方を見ると、これと同じものが2つ置いてあるのが見えた。

 返された説明書を受け取った和が、隆和に説明を続ける

 

 

「あの人魚たちは、これらに入れられてガイア連合から梱包されて来ました。

 隆和さまには、これを使ってこの異界で管理を担当させられる様な悪魔を連れて来て欲しいのです。

 千早さまも伝手を辿って探していますが、なかなか見つからない様なのでお願いします」

 

「異界を巡って仲魔探しか。メガテンぽくていいな。

 よし、乗った。見つけて来るよ」

 

「ありがとうございます、隆和さま。

 では、こちらへ。報奨の前渡しと言うやつで」

 

 

 頬を上気させ隆和を奥へと誘う和に、さっきのマーメイドとのやり取りで思う所があったのかと可愛らしいなと考えた彼は誘われるまま奥へと行き、他の女性陣が探しに来るまで建物の裏手にある綺麗な泉で彼女との逢瀬を楽しんだ。

 なお、この泉はアプサラスの家でもあるので、後日、千早経由でなのはたちにバレて怒られた。

 

 

 

 

 電子ジャー片手にあちこちの異界に行ったがこれはという悪魔が見つからず、困っていた隆和のもとになのはがニュースと異界の情報を持って来た。

 

 先日、恐山支部でイタコの女性達が待ち望み、防御施設やジュネスと並んで最優先で復旧作業が続いていた【恐山の冷水】が復旧し、アラフォーやアラフィフのオネエサマ方が先を争うようにして効果の程を実証しているというニュースが飛び込んで来た。

 このニュースを知って、刺激されたうちの地元にも若返りの伝説の泉があるという所は優秀な異能者呼び込みのためにガイア連合の支部に掛け合って動き出しているのだという。

 

 その一つが岐阜県にある【養老の滝と菊水泉】である。

 ここはかつて奈良の都から元正女帝が行幸され、この水を飲まれたことで病気が全快し白髪も黒髪に戻ったと言われており、元正女帝はそれを称え「老いを養う」として元号を養老と改めたのが名称のもとになったという伝説の『日本の滝百選』にも選ばれた名水の地である。

 

 ここの付近を統括する北陸・東海の各支部はそのエリア内はほとんどが山岳地帯である。

 故に、山村を巡るような交通の便の悪い場所へは優秀な異能者である『俺たち』は忌避する傾向がある。

 従って、海沿いや都市部より山手側は余計に他より人手不足に陥る傾向がとても強くなった。

 そこへ恐山のニュースが来てじゃあうちもやるかと作業を始めた途端、現場で作業していた誰かのミスで敵対的な悪魔の異界が出来てしまう事態に陥った。

 この事態に困った支部の上層部だったが、一人の幹部がある事を思いついた。曰く、

 

『これで人手が余計に足らなくなる? 逆に考えるんだ。人手を呼び込むネタにするんだ』

 

 そしてここを管理する支部は、近場の連合員と関係者にこう言った。

 

『異界の討伐に貢献された方から順番に無償で若返りの水を提供します』

 

 こうして、老人や年齢が微妙になりだしたオジサマとオネエサマたちが挙って集結し、転生者も現地民も関係なく異界へと突撃したのだった。

 隆和がなのはに連れられて参加した時に数えると、あの師匠の異界の攻略の人数をはるかに越えていた。

 

 そして、場面は冒頭へと戻る。

 

 人数と能力と技術の差で文字通り、蹂躙されていく異界。

 鬼気迫った表情で、それでも巧みに連携して悪魔達を駆逐していく参加者たち。

 立ち向かったものも恐怖にかられ逃げ出そうしたものも悪魔達は等しく消えて行った。

 なのはのフォローをしつつ順調に異界の奥へと進む隆和たち。

 

 もうじき、若さを求める者たちの魔の手は異界の主へと届こうとしていた。




後書きと設定解説


・関係者

名前:モリソバ(田中菲都・たなかふぇいと)
性別:女性
識別:異能者・自称20(29→30)歳
職業:フリーター→ガイア連合関西支部所属デビルバスター
ステータス:レベル19(成長限界)・フィジカル型
耐性:破魔無効・呪殺耐性
スキル:変なスラッシュ(敵単体・小威力の物理攻撃・低確率で幻惑付与)
    全門耐性(物理・万能以外の属性攻撃を受けた際、ダメージを50%にする)
    みかわし(物理攻撃を回避しやすくなる)
    食いしばり(HPが0になった際、自動的に一度だけHP1で復帰する)
    不屈の闘志(HPが0になった際、自動的に一度だけHP全開で復帰する)
    生還トリック(即死効果攻撃を受けた際に自動的に必ずHP1で生き残る)
装備:ししょーパラ子・レプリカ(ガイア連合製の剣盾鎧のセット霊装)new!
   黒服スーツ(サングラス付きのガイア連合製のセット霊装)new!
詳細:
 某騎士王に似ているが黒髪黒目の日本人顔の女性デビルバスター
 高卒での就活に全滅し、両親と揉めて家を追い出されこの業界へ
 魔王ネキの学生の頃の友人で、あだ名の命名者も元ネタを知ってる魔王ネキ
 ソシャゲ生活に行き詰まり、千早に定職を求めて雇われた
 三十路を迎え、将来の貯金のために泣く泣くソシャゲは辞めた

・アイテム

【魔封波電子ジャー】
COMPが無い頃、封魔管の劣化・廉価品として開発された悪魔の捕獲容器
使い方は、相手の同意を得るかポ◯モンのボールと同じ物理的やり方で可能
もちろん、形状違いで紅白ボールや他の形のものも開発予定


次は、早めに。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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