【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法   作:塵塚怪翁

39 / 63
続きです。
今回は、中休み回。


第38話 華門神社と吉澤母娘

 

 

  第38話 華門神社と吉澤母娘

 

 

「つまり、うちらの事も考えて彼女を勧誘したって言うんやな?」

 

「もちろんだよ。

 ただ、好みだからってだけの理由ではこんな事はしないさ。

 ここの神社の皆も千早やなのはも、最低限の人相手の体術を身に付けた方がいい。

 なのはは固定砲台専門だし、千早たちは後方の担当だ。

 俺やトモエは悪魔相手の我流の戦い方だから教えるのには向いていない。

 だけど彼女には、15の時から今まで生き残って来た経験と系統的な武術の心得がある。

 これほど、うちに引き抜き易い体術のインストラクターに向いている人材はそうはいないと思ったんだ」

 

「確かにわたしも接近されるとまずいと思うところもあるの」

 

「襲ってくるのが、悪魔だけやないとは言い切れんからそうかもしれんわな」

 

「そうだろう。分かってくれたか」

 

「でも、それはそれとして好みの美人の未亡人だからって誘惑したいうのもあるんやろ?」

 

「彼女の出身的に、わりと押し気味に口説いて押し倒してOKさせたんだと思うの。

 15の頃からって話も、その時に聞き出したんだろうし」

 

「………………」

 

「沈黙は肯定と受け取るで?」

 

「よし、それならわたしとも彼女としたようなちゃんとしたデートを要求するの」

 

「なら、うちもお願いするわ。ちゃんと彼女の手続きなんかは見とくさかいな。

 カーマはん、どこか関西以外にしばらく行かないように見張っといてな?」

 

「クスクス、おっけ~。

 私としてはMAGを得られて面白ければそれでいいし。

 それじゃあ、頑張れ。マスター♪」

 

 

 あの『大麻蜘蛛集落』の事件からしばらく経ち、もうすぐ秋になる頃。

 

 隆和と吉澤加奈とのデートが二人にバレて華門神社の閨でそんな会話があってから数日後、華門神社の異界の砂浜でその彼女と十数人の男女が顔を合わせていた。全員が動きやすい運動用のジャージで、参加しているのはなのはと千早、華門和と夜刀神華に、神社のメンバーからも数人参加している。

 見定めるように自分を見つめて値踏みする幾人かの女性の視線に緊張しつつ、加奈は挨拶を始めた。

 

 

「はじめまして、隆和さんの紹介で来ました【吉澤加奈】といいます。

 定期的に、体術のインストラクターとして来る事になると思います。

 実力的には上の方も居るようですが、よろしくお願いします」

 

「初めましてなの。

 隆和くんとは一番付き合いの長い高橋なのはです。

 それで、こっちが天ヶ崎千早さんで華門和さん。

 それと、夜刀神華ちゃんなの」

 

「初めまして、うちはここの管理を纏めとる千早や。

 ガイア連合の所属なんは、うちとなのははんと隆和はんだけや。

 和はんや他の皆は、うちらで面倒見とるここの神社のメンバーや。

 あとで、なのははんが名前を上げた人たちだけで話す事があるさかい。

 加奈はんもよろしゅうな」

 

「私は、先生の弟子で夜刀神華って言います。

 どんな戦い方を教えてくれるのか楽しみです!」

 

「そ、それでは始めますね。

 体術の基本としてまずは受け身の取り方から……」

 

 

 そうやって訓練が始まるのを遠目で見ながら、隆和はトモエと共に一人の少女を連れて異界の中の海岸の方ではなく島の東側の林の方を散策していた。

 

 それは、訓練をしている場所から少し離れた場所にあるビーチチェアとパラソルが挿してある一角にサングラスをしてアロハを着た髪の長い少年のような姿のすごく見覚えのある【匿名希望の凄腕専門家】氏が、クーラーボックス持参で冷えたビールとつまみを横の小さいテーブルに置きのんびりと過ごす姿があったからだ。

 なお、マーメイドやルサルカたちも彼の実力が判るために姿を消しているし、邪魔をしないように千早の指示で他の皆も見ないふりをしていた。

 

 とにかく、隆和はその少女、加奈の娘である『桃子』と一緒にふらふらと離れた場所でコダマやスダマが漂っている林の中を話しながら歩いていた。

 

 

「異界の中なのに本当に何も襲ってこないのは驚きっす」

 

「ここの異界の悪魔は、契約でそういう事はしないでも飢えないようになっているからだよ。

 それはそうと、見えるのかい?」

 

「これでも実家にいる時は、同年代でも素質のある方だったっす。

 けど、あの水着みたいなスーツは恥ずかしくて無理だったっす」

 

「あー、あれはうちの製品だしなぁ。

 『対魔忍は忍者服じゃ駄目だ。ぴっちりスーツじゃないと』って、うちの仲間が売りまくったから。

 なんかゴメンな?」

 

「いえ、隆和さんは関係ないっすから」

 

 

 おとなしめのブラウス姿でも判るこの歳でスタイルも良い容姿なのにかなり影の薄い彼女は、自分を見失わない隆和に少し驚きながら正面を向くとペコリと頭を下げて来た。

 

 

「今回はお母さんを連れ出してくれてありがとう、隆和さん。

 人が良いくせに一人で無茶をするお母さんを、こうしてあの地元から抜け出せたのは本当に良かったっす」

 

「お礼を言われるような事じゃないと思うんだがな。

 俺の方が加奈さんを口説いて連れて来たようなものだから」

 

「4年前に父さんが死んでからお母さん、あたしのために頑張っていました。

 親族の連中はお母さんに再婚だけ命じて、助けてもくれない連中だけですから。

 でもそこへ、隆和さんは任務先で行方不明になったのを助けただけじゃなく怪我も治してくれたっす」

 

「せっかく助けたのに、再起不能になりましたとか嫌じゃないか。

 うちの伊東くんが逃げるために体を張ってくれたそうだし、そのお礼も含めてだよ」

 

「それでもこうやって、お母さんにあまり危なくない仕事も紹介してくれたのは嬉しいっす。

 やっぱり、一人でご飯を食べるのは寂しいですから」

 

 

 隆和は、彼女の背の高さに合わせるようにしゃがんで目線を合わせてその言葉に答えた。

 

 

「出来るだけ桃子ちゃんが悲しませないようにするよ」

 

「それじゃあ妾でもいいので、お母さんと弟か妹を早く作ってくれないっすか?」 

 

「桃子ちゃん??」

 

「何かすぐに作れない理由でもあります?」

 

 

 困惑した桃子と目線を合わせたまま、隆和はその問いに真剣な顔で答える。

 

 

「理由はあるよ。

 俺たちガイア連合のメンバーは、近いうちに起こるだろう文明が終わる【終末】から生き残るために集まった組織だからだ。

 ここの異界も目的としては構築中の核シェルターであるし、中に入れるのは俺たちが『身内』だと受け入れた相手だけだという所が理由につながるよ」

 

「世界の終り?」

 

「桃子ちゃんも実家で過去にメシア教が何をやったかは聞いただろう?

 アメリカを支配しているあの連中が、核ミサイルを発射しないなんて信用できるかい?」

 

「……信用出来ないっす」

 

「うちのメンバーたちも、まず間違いなく起こると考えて行動しているんだ。

 だから、桃子ちゃんもその時はガイア連合のシェルターに逃げ込みなさい。

 加奈さんと桃子ちゃんは、俺の身内になるんだから」

 

「それは分かったっす。

 それなら、尚更早く作っておいて欲しいです。

 そんな事になったら、病院もおむつや粉ミルクの会社も吹き飛びますから」

 

 

 隆和の告げる内容に、右手で人差し指を立てて左手を腰に当てて注意するような表情で彼女は言い返した。

 

 

「あの、桃子ちゃん??」

 

「そもそも、悪魔にそういう事をされて頭から食べられて居なくなるよりは何倍もマシっす。

 隆和さんも、こうして生活の場をお母さんとあたしに用意してくれるのだから責任は取るつもりですよね?」

 

「ああ。

 だから、少しでも仲良くなれるようにこうして話そうとしていたんだけど?」

 

「いいっすか?

 あたしも、将来はお母さんみたいにくノ一になる予定です。

 そして、その技を教えてくれるのもお母さんです。

 それなら、お母さんが居なくなるより惚れた相手の子どもを産んでいる方がいいです。

 だから、もっと押し倒して欲しいっす。

 あたしは、空気を読むのが上手いですから安心して下さい」

 

「いや、俺は安心できないんだが??」

 

「それじゃあ、そういう事でお願いするっす。

 お母さんにも言い含めてこないと」

 

 

 そう言うと、桃子はそのまま浜の方へと走り出した。

 慌てて止めようとする隆和を、トモエが行く手を遮って薄く笑う。

 

 

「トモエ、どうして止めるんだ?」

 

「いい加減、房中術でマグの譲渡扱いにして避妊を辞めさせるのもいい頃合いかと思いまして。

 シキガミの私はともかく、特になのはと和はかなり焦れていますよ?」

 

「そうは言うが、俺はまだ真っ当に就職も出来ていないのに子どもはまだ早い」

 

「『警備員兼傭兵』として立派に就職できているじゃないですか、主様。

 私はどこの戦いの場でもお伴します」

 

「履歴書には書けないだろう!?」

 

 

 桃子はくノ一の訓練をしているだけあって、かなり足が速い。

 このままでは、あの場で何を言われるか分かったものじゃないと隆和は焦る。

 だが、横を抜き去ろうとする隆和を、彼の動きの癖を熟知したトモエはこのレベル差でも完璧に妨害していた。

 

 

「まだ、その事に拘っているんですか?」

 

「例え終末が来るにしても、その前に真っ当な就職だけでも」

 

「知り合いの方に頼めばすぐにでも出来るのでは?」

 

「前世でコネ入社の年下の奴に散々迷惑を掛けられたから、それはなんか嫌だ。

 どこかに今の稼業をしつつ、勤められる表の会社は関西にないかな?」

 

「そんな夢みたいな会社が在る訳無いでしょう?

 それと、私たちの【ヒモ】か【ジゴロ】なら何時でもなれますよ?」 

 

「それだけは嫌だ!」

 

 

 そう言うと隆和は最後の手段でトモエに抱きつくと、そのまま彼女を肩に抱き上げて走り出した。

 ポカポカと驚いた顔で背中を叩いてくるトモエは無視して、林の中を全力で走り抜けた隆和は砂浜へと到達しもう少しで桃子に追いつくところだった。だが、急に砂浜の砂に足を取られた隆和はバランスを崩し彼女に追いつけなかった。

 隆和の視線の先で、桃子は大きな声で母親の加奈にこう言い放った。

 

 

「おか~さ~ん、隆和さんから責任は取るって言質は取ったよ~!

 子どももお願いしたから、今晩から頑張ってね~!」

 

 

 

 

 その様子をビーチチェアで寛ぎつつ遠くから眺めていたショタオジは、よく冷えた缶ビールを取り出しニコニコとしながら栓を開けた。

 

 

「いや~、夏の浜辺で飲む冷たいビールは美味いな~。

 アーッニキも頑張れよ~。……あっ、連れて行かれた」




後書きと設定解説


・関係者

名前:吉澤加奈(よしざわかな)
性別:女性
識別:異能者・32歳
職業:主婦/くノ一
ステータス:レベル10
耐性:破魔無効
スキル:絶命剣(敵単体・中威力の物理攻撃)
    乱射(敵全体・小威力の銃属性攻撃)    
    武道の心得(物理スキル使用時のHP消費量が半分になる)
    房中術
装備:忍者刀(模造刀)
   鎖帷子付き忍者服(実家から持って来た霊装)
詳細:
 身長170cm、B:89(F)・W:60・H:86
 九鬼神流の流れをくむ忍者流派の久喜本家に嫁いだくノ一
 元は対魔忍の出身で交流のあったこの家に嫁いだ
 父親(慎吾)が死亡してからは一人で子どもを育ててきた
 対魔忍の出身のために交流があり依頼を回して貰っていた
 20代にしか見えないショートカットの胸の大きい美女
 10歳の娘の「桃子」がいる


次回は早めに。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。