【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法   作:塵塚怪翁

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続きです。
今回の異界のボスの方は、怒られると怖いのでさらっと流します。


第40話 異界・白峰明ノ宮

 

 

  第40話 異界・白峯明ノ宮

 

 

 事件は彼女、夜刀神華の何気ない一言から始まった。

 

 

「ねえ、先生。

 先生といつも一緒にいる女の子の姿の人、カーマって神様ですよね?」

 

「そうだよ。

 インドの神話でも有名な神様だけど」

 

「あの神様、いつも食っちゃ寝しているだけで、戦い以外で何か役に立っているんですか?

 この異界に居る悪魔たち、いつも他に役目があるんですが」

 

 

 その言葉を聞き、側で隆和と彼女の訓練を見物していたカーマは思わず口に入れていた飲み物を吹き出した。

 

 

 

 

 初秋に吉澤加奈を加えてから、しばらく経ち年が明けた。

 

 あの彼女ら吉澤母娘が来て少しばかり騒動になった日、余人が来ることのない異界の屋敷の寝室にてなのはと千早にこんこんと現実を突きつける形で説得された事で隆和は頭を冷やす事になり、加えて彼女らから示された今後の関係の進展に関するかねてから準備されていたプランに同意した。

 

 まず、既存の結婚という形ではないが“婚姻”という節目は付けようという事になり、秋の間に6人全員とそれぞれ洋式か和式の好きな方でウェディディング写真を取りそれぞれの親に挨拶する事となった。

 挨拶に行った日は、母親の桃子に「やっと片付いた。娘をよろしく」と隆和に明るく言われたなのははぶんむくれ、千早の義父である佐川司は嫌味を言った事で千早と口論になった。他の4人の時はというと、式神のため居なかったり両親が死亡していたり実家と縁が切れているなどで撮影後は内輪で楽しく懇親会をする事となった。

 なお、懇親会に同席していた百々地希留耶と吉澤桃子は、特にもう何も言う事もないので仲良くホテルの高級料理に舌鼓を打っていた。

 

 その次に示されたのが、年末年始の長期休暇を使ったそれぞれ個別のデートと終末前の家族計画のプランである。

 その年齢と体質から今回は外された夜刀神華と実務の取り仕切りがある為に泣く泣く断念した千早を除き、子どもを望む彼女らにはこの異界の寝室に年末年始に行為を集中的にするために籠もる計画が示された。ここでこの計画を確実にしたのは、子どもを授かれる可能性を上げるアプサラスから進化したアナーヒターの存在である。

 アナーヒターはゾロアスター教において水がもたらす湿潤や豊穣を司り、男女の生殖機能を整え、子を産んだ母に母乳をもたらす女神とされている。本人はアプサラスの感覚のままでいた為、この事を指摘されてから気づいたようだったが。

 

 ともかく潔癖症気味の彼女をなんとか説得して動員し、クリスマスイブから3が日明けまで個別デートの後に隆和は代わる代わる来る彼女たち相手に籠もって中から出て来る事はできなかった。最終日、最後に来た肌を桃色に上気させ艶々にしたなのはが身体を洗うために裏の泉に向かっている間に、体重がすこぶる落ちた隆和は疲れた表情で憐れみ顔のアナーヒターに尋ねた。

 

 

「ガイア連合の回復薬に精力剤、カーマの回復魔法も限界まで使ってヤれるだけヤッたんだ。

 これで、なのはと和と加奈の方は大丈夫なのか?」

 

「いえ、初めてこう権能ぽいものを使ったんで判りません」

 

「おい、こら」

 

「だって、しょうがないじゃないですか。

 この姿になったばかりですよ、私。

 授かりものなんですから、継続的に続けてやるんですよ?

 長期の休みが取れそうなら、これからもやるそうですので頑張って下さい」

 

「え゛?」

 

 

 そういう事で、なのはと和と加奈の三人は今までより一層仲良く和気あいあいと仕事をする事になった。

 それで、事情を知ったウシジマニキやサラリマンニキに樫原翁からは隆和が会う度に、生暖かい視線と声援をされるようになったのは些細な事だろう。

 

 

 

 

 さて、それでは年が明けてしばらく経った頃の異界の浜辺で起きた冒頭の場面に戻る。

 その日、隆和はいつものように華と組手を行なっていたのだが、休憩中に彼女が先の発言をした事で口元を腕で拭ったカーマが彼女の方へと走り寄って声を掛け言い争いを始めた。

 

 

「何て事をいうんです、この娘は!

 私がさも役に立たないとでも言うかのような発言は、ちょっとどうかと思いますけど!?」

 

「じゃあ、この異界ではどんな役目があるの?」

 

「それは……、わ、私は彼と契約した神様で、彼からMAGを献上される代わりに彼の守護をしているのです。

 だから、ここでの役目は無くても大丈夫なんですー」

 

「私だって戦う以外だと巫女のお手伝いもしているんだけど、そういう事はしているの?」

 

「うぐっ、それは……」

 

「神話の勉強だってしているんだよ?

 カーマって神様は、何かに乗って弓を使うんだよね?

 乗るものはどこ?」

 

「の、乗り物の代わりに、私には【真・夢幻の具足】というどこにでも行けるスキルがあるのでいらないんですー。

 だから、質問はその辺にして下さい」

 

「それがあったら先生たちが楽になるかもしれないのに、連れて来れないの?」

 

「ぐっ、オウムの方はスキルになっちゃいましたけど、『マカラ』が居たらすぐにここの異界でも乗りこなしてみせます!

 そういう訳で、マスター! マカラを見つけて下さい!」

 

「人任せかよ」

 

 

 差し迫って急ぐ依頼などは無い隆和は、千早にも言われていたマーメイド以外の海中を見てくれる仲魔の必要性があったのでその『マカラ』を探す事にした。

 彼女の言うマカラとは、【龍神マカラ】の事だと分かったのは異界を出てパソコンで調べたからである。

 

 【龍神マカラ】。

 

 ヒンドゥー教神話において神々を河や湖で背に乗せたと言われている聖獣である。

 その姿は、象やワニのように尖った鼻を持ち、とぐろ巻く尾を持つ怪魚や龍、ワニとライオンの合成獣として表現される。

 なお、カーマの神話での異名には「マカラを旗標とするもの」というものもあったりする。

 

 だが、流石に今からインドまで探しに行く事は出来ないし、インドに直接行くのはカーマが絶対に嫌がるだろう。

 そこで、日本国内でどうにか出来ないか伝承に詳しい人に相談する事にした。

 

 

 

 

「それで麿呂でおじゃるか?」 

 

「はい。不躾ですが、それでお力添えを願えればと」

 

 

 隆和が向かったのは、京都神社庁の近くにある一条麿呂の事務所である。

 あてもなく探し回るわけにいかず、それならばと京都近辺の伝承に詳しい彼の所に来たのだ。

 こういう場合、最初に頼る千早は先日の件のその後の準備で何かするために手一杯らしく、トモエや他の皆もその手伝いに借り出されていた。

 こうして訪ねて来た隆和に、いつもの白粉と狩衣姿の彼は思案するように首を傾けている。

 

 

「龍神マカラを所望とな?

 確かに、隆和殿の契約しているカーマ殿のシンボルでもおじゃるがのう。

 麿呂は、ヒンドゥー教はヨガ教室くらいしか知らぬでおじゃるし、うーむ」

 

「何か伝承などで手がかりとかありませんか?

 そこから、目当ての異界が発見できればいいのですが」

 

「ちょっと待ってたもれ」

 

「はい」

 

 

 そう言うと彼は事務所にあった本を取り出し、それをめくり始めた。

 その本のタイトルには、『修験道と大権現~山岳信仰とその由来』と書かれていた。

 それと、ファイルから資料を取り出して見比べ始めた。 

 

 

「一つだけ可能性は高くないが、いる場所は特定できるかもしれぬ」

 

「その場所はどこですか?」

 

「まあ、待たれよ。

 その根拠も説明せぬのはある意味、不義理である故」

 

「不義理?」

 

「まず、カマラでおじゃるが元はヒンドゥー教のガンジス川の鰐の神クンビーラでおじゃる。

 これが仏教の側にも習合し、仏教の水運の神で、薬師如来十二神将の筆頭の【宮比羅大将】となったでおじゃる」

 

「なら、薬師如来を祀る寺を訪ねれば……」

 

「隆和殿。戦後のメシア教の所業を忘れてはおらぬか?

 主だった仏閣も根こそぎにされておるのではないかと麿呂は愚考するが?」

 

「……ああ」

 

 

 がっくりとした隆和に、苦笑する一条氏。

 

 

「まだ説明の途中でおじゃるよ。

 『宮比羅』とは、『金毘羅』『金比羅』ともされるわけで。

 後に、いわゆる『こんぴらさん』へと変わったでおじゃる。

 香川県の地にて神仏習合と修験道の流入と廃仏毀釈の末に、『大物主命』と共に祀られ『金毘羅大権現』となり海運の守り神となっていたのでおじゃる」

 

「……でも、少しでも有名なら」

 

「もちろん、メシア教の所業によりガタガタでおじゃる。

 でも、その地には一つだけメシア教の所業を切り抜けた場所があるでおじゃる」

 

「どこですか、それは?」

 

「讃岐御所の鎮座される廟、【白峰宮】でおじゃる。

 世に伝わる日本三大怨霊のお一人、【崇徳上皇】が眠られる地よ。

 記録では、皇家縁の地であり多少手控えた事で異界の内にて攻め入った者悉くが帰らぬ有様で、神社を守る家々を根こそぎに潰して溜飲を下げて引き上げたとされているでおじゃる」

 

「俺でも聞いた事のある有名人の崇徳上皇さまと金毘羅様に何の関係が?」

 

「なんでも保元の乱にて敗れ讃岐の地に流されたあの方は、生前に讃岐の金毘羅宮に滞在された記録があっての。

 そこから、死後に本社相殿に奉斎した、つまり、合祀されて祀られている縁があるのでおじゃる。

 ならば、あの方に目通り叶えばあるいは、という事でおじゃる」

 

「それが確かなら、四国まで行く準備をしないと」

 

「その前に、京都市内の神社【白峯神宮】を訪ねるでおじゃる。

 蹴鞠の守護神も祀られているためサッカーの関係者に有名な所でおじゃるが、主たる祭神はあの方よ」

 

 

 

 

 それから、数日後。隆和は四国香川県にいた。 

 何故、彼がここに居るのかというと、京都の白峯神宮を訪ねた際に直接彼の方から返答があったからだ。

 曰く、『話は会って聞くので、カーマを連れて直接こちらに来なさい』だった。

 

 目的地は、香川県坂出市にあるかの方を祀った【白峰宮】である。

 瀬戸大橋を渡りそこへ向かう彼の軽自動車には、助手席に地元組織の大赦の案内人である女性と後部座席にはその女性をじっと監視するトモエが同乗していた。案内人の女性は『浅間』と名乗る胸の大きい巫女風の女性で、こちらに来る間は何かと隆和に話しかけていた。

 

 

「そういう訳で慈悲深くも銀時さんはこうして支部も作って定住を決めてくださったんです。

 ですから、地元の女性を顧みるように是非、銀時さんにも推奨してください。

 音に聞こえた各地で男女を食べまくっている貴方のように」

 

「それ、別の人の噂が混じっています。

 【あべたかかず】って、うちの組織には俺の他にも何人か同じような人がいるので」

 

「そうなんですか? てっきり、貴方のことかと。

 じゃあ、最近聞いた京都にハーレム神社を作った方でしたか。

 それなら、うちの方でも見ていかれるのですか?」

 

「大赦の方、そういう事は関西支部の方へご連絡を。

 ちゃんとそういう依頼を正式にされれば、募集はされるそうなので」

 

 

 ギロッと睨むトモエに焦ったように言い返す女性。 

 

 

「いえいえ、今回は向かう先が向かう先ですから、そういう暇は無いと理解しています。

 でも、噂がそういう方ですので一応は確認しておかないと」

 

「そういう確認は不要です」

 

「申し訳ありません。

 ですが、地元の我々でもあそこは触れてはならないと神樹様にもキツく言われていた場所なので。

 そこを目的にガイア連合の方が来られるなら、こちらもいろいろと準備をせねば、と」

 

「今回はそこの神社に詣でるだけなので大丈夫です。

 ああ、着きましたね」

 

 

 車から降りて神社に向かう一行を、その女性は拝殿近くの赤い三輪鳥居を潜った途端に姿を消すまで見送った。

 

 彼らが戻って来たのは、翌日だった。

 隆和やトモエは服がボロボロで、行くときには姿を見せなかったカーマがグスグスと泣きながら出てくるのを鳥居の前で待っていた大赦の構成員が見つけて大騒ぎになった。

 隆和たちは中の事を聞かれると、

 

『目的のものは手に入れた。口止めはされているし、中での事は語りたくない』

 

 とだけ語り、四国を後にした。

 大赦の面々は、やはりここの異界はここの神社の家に任せて距離を置こうと改めて組織内に通達を出したという事だった。

 

 

 

 

 それから、また数日後。

 華門神社の異界の海の沖の方で、得意げなカーマと楽しげな華が全長2m以上はある龍の頭を持った奇妙な魚のような姿の【龍神マカラ】に跨がり水上をかなりの速さで進んでいるのが見られるようになった。

 

 隆和たちがあの白峰宮の異界で遭遇したのは、崇徳上皇とそれを守る【鎮西八郎為朝】とその一党二十三騎の姿だった。

 かの方が言うには、封印前に宮比羅大将に預けられた分霊を元の主であるカーマもいるので譲っても良いとの事だったが、条件があった。

 その条件は、今日、そこまで鍛え上げた者を見るのは久しぶりなのでと、代わりに主上の無聊を慰めるために側に控えていた鎮西八郎一党らと彼らが心ゆくまで腕比べに付き合ってくれだった。数百年、技を鍛えて来た凄腕技量集団であったので結果、隆和は組み討ちでトモエは刀術でカーマは弓術でと得意だと思っていた部門でスキル無しで勝負し彼らはボコボコに“かわいがり”を受けた。

 

 隆和としては、この光景を見れた事でまあ成功だったと思う事にした。

 ショタオジのキツめコース並だったのでもう行きたくないが。

 

 後に、たびたびガイア連合の方へ彼らから強者の派遣を望む依頼が来て関係者が苦労する事になるが、それは別のお話である。




後書きと設定解説


・関係者

名前:マカラ
性別:男性
識別:龍神マカラ
ステータス:レベル13
耐性:火炎弱点・氷結耐性
スキル:ブフ(敵単体・小威力の氷結属性攻撃)
    ジオ(敵単体・小威力の電撃属性攻撃)
    タルンダ(敵全体・攻撃力を1段階低下させる)
詳細:
 インド神話においてカーマや神々を河や湖で乗せたと言われている聖獣
 巨大な魚の一種で、ワニを基本とし、カバや象、龍の特徴を持つとされる
 仏教では宮比羅大将であるともされ、水運の守り神金毘羅様でもある
 メシア教襲来以前に本霊からあの方に預けられていた分霊

【英傑チンゼイハチロウ】
レベル?? 耐性:物理耐性・銃耐性・毒無効
スキル:グランドタック(敵単体・特大威力の銃属性攻撃)
    天扇弓(敵全体・大威力の銃属性攻撃)
    銃プレロマ(自分の銃撃属性攻撃時の攻撃力を強化する)
    勝利の息吹(自分のHPが戦闘勝利時に回復する)
    三分の活泉(自分の最大HPを大きく上昇させる)
    不屈の闘志(自分のHPが0になると一度だけHP全快で復活する)
詳細:
 本名、源為朝。平安末期の武将で九州で反乱を起こした時に鎮西八郎と名乗った
 身長2mを超える巨体のうえ気性が荒く、剛弓の使い手で剛勇無双を謳われた
 保元の乱において後白河天皇ではなく、崇徳天皇の側に立ち戦った記録がある
 弓の一射で300人の乗る船を沈めた逸話がある平安◯ンダム
 この劣化分霊は伊豆大島の本霊より讃岐御所への出仕のために派遣された者

ここはこの為朝にたぶん、呪殺貫通持ちマハムドオンを使うであろう御方がボスの異界です。

次は出来るだけ早くに。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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