【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法   作:塵塚怪翁

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続きです。
今回は有名な方に声だけ出演頂きました。


第42話 異界・羅生門再び

 

 

  第42話 異界・羅生門再び

 

 

 東北への遠征から一ヶ月が経過した。

 異界の内部もほぼ完成し、徐々にこの華門神社の変化も落ち着いてきていた。

 

 まず、同時に三人が妊娠したことによる影響は徐々に現れていた。

 周りも彼女らが中心になるように行動するようになって行ったのもあるが、それが如実に出ているのが隆和の行動である。所用などでここを離れなければならないとき以外は常に誰かの側にいるようにして、彼女たちの世話なども甲斐甲斐しく熟していた。

 また、山梨での異界の中層での訓練も、突出した魔法戦力のなのはがいないと隆和・トモエ・カーマだけでは物理反射やテトラカーンを使う悪魔が出ると途端に勝率が激減するからというのもあり、レベル維持のためだけに行なうようになり回数を減らす事になっていた。

 

 また、代表でもある華門和の懐妊もあり、隆和のこの行動に神社内のメンバーも活気づいていた。

 

 例えば、神社内の男性構成員である。

 今のクリニックなどの永久脱毛よりも熟練すれば短時間・低価格で済む事もあり、たまに外から樫原翁の施術を受けに来る霊能組織の女性もいる事から彼らは食いっぱぐれないよう翁に弟子入りして技術の習得に励んでいた。

 女性構成員たちの方も普段どおり業務を熟しつつ、あの男性構成員や外部の男性を捕まえるか自分の能力を伸ばしてここの経営側に参加するかなど色々と模索していた。

 

 もっとも今の神社の業務はと言えば、もっぱら京都競馬場目当ての関係者の宿泊客の応対と拝殿に祀られている神々の参拝に関する諸事が主であった。ちなみに、ここの神社で祀っているのは主に和の転生元であるアメノウズメに、ついでに異界内にいるアナーヒターに宮比羅におしら様とご神体代わりの木像が増えていた。

 そのため、地元民や観光客には変な神社だと思われていたのだが神社の構成員たちは気にしていなかった。

 

 さて、ここまで来るとあと問題となってくるのは、『防衛』に関する事だろう。

 

 特に、隆和が不在時のそれが問題だった。この周辺は関西支部とここも含めた各ガイア連合派出所と現地組織の協力で、現在は概ね平和である。あるが、去年の半グレ集団の襲撃やその後に隆和が遭遇しただけでもゴロゴロと火種が転がっていた。あと、この地には、千年以上日ノ本の中心だった魔都『京都』とそれにまつわる多数の異界がすぐ近くにあるのを忘れてはならない。

 

 

「今の華門神社の様子はこんな感じやな。

 そういう訳だから、うちもレベルアップをしようと思うんやけど?」

 

「ん? 今はここの防衛の事を話し合っているんだよな?」

 

「そうや。だからこそ、うちのレベルが低いのがネックになっているんや。

 うちらの中でも実力のあったなのははんは、無理できん身体になったから余計にやな」

 

 

 他人が早々に入れない異界内の主屋敷で、諸々の資料の書類を見ながら今後の見通しについて隆和と千早は話し合っていた。妊婦の3人はトモエも介助し神社内の屋敷で過ごしており、夜刀神華とカーマはマカラ水上走行をしているのか笑い声が時々聞こえてくる。

 ため息をついた千早が、怪訝な顔の隆和に資料の一つを示しながら語り出した。

 

 

「契約で多数の悪魔がここの維持に勤めてるのは隆和はんも分かっとるやろ?

 で、契約の書類上はうちと隆和はんが連名でサインしとる。

 でも、悪魔の皆の忠誠はレベルの高い隆和はんに向いとるんや」

 

「だから、レベルアップが必要か」

 

「そうや。

 いざここが襲撃された時に、うちの指示には従わんとなったら最悪や。

 隆和はんがいつもいるという訳でもないんやし」

 

「そういう事なら、最低でもレベル20は欲しいぞ。

 今は、……12か」

 

「最近出た拠点防衛用のアガシオンは各支部の購入が優先やから、うちが買えるのはいつになるか分からへん。

 だからこそ、手っ取り早く解決するんはこの方法なんや。

 こう見えてもそこそこ戦えるんや、伊達にレベル二桁になっとる訳やないで。

 隆和はん、勝手を知っててうちにちょうどいい異界はこの辺にないやろか?」

 

「自分のよく知る異界で、レベル10~20の悪魔が多く出る場所か。

 山梨ならすぐだけど、千早は長くここを開ける訳にいかないからなぁ。

 う~ん、一つ心当たりがあるけど大丈夫かな?」

 

「なんやええ所があるんか、隆和はん?」

 

「ああ。とりあえず、準備をして行ってみる事にしようか」

 

 

 不思議そうに首を傾げる千早に笑いかけ、隆和は準備するべく立ち上がった。

 

 

 

 

「それではお気をつけて」

 

「どうも、じゃあ行こうか」

 

 

 現場の管理をしている関西支部の職員に挨拶し、隆和は貸出された許可証を取り出して示し中に入った。

 以前は隆和が潰す事になった現地組織が管理していた【髭切の破片】で出入りしていたが、今はガイア連合製の封印機器で簡単に出入りが出来るようになっていた。中に入って隆和たちだけになったところで、赤面した千早が着ているボディスーツ型の防具の【衛士強化装備・レプカ】を手で触りながら隆和に言った。

 

 

「あ、あんな隆和はん、やっぱりこの格好は恥ずかしいんやけど?」

 

「うちにある防具で一番頑丈なのがそれだったから、我慢してくれ。

 トモエとスタイルが同じくらいでちょうど良かった。

 色っぽくて似合っているから安心して」

 

「そういう問題やないんやけど、もう!」

 

「まあ、私も今は使っていないのでどうぞ。千早」

 

「うっわぁ、身体の線が凄い出ているなぁ。

 田中さん、先生ってこういうのが趣味なのかな?」

 

「わたしに聞かないで下さい、夜刀神さん」

 

 

 そう言い合っている隆和と千早の横では、ミニスカ巫女服霊装姿のトモエと新品の防具を着込んだ夜刀神華にいつもの騎士霊装を着込んだモリソバこと田中菲都もいた。

 彼らがいるのは、現在は関西支部が管理している異界の【羅生門】である。ここは10~20レベルの鬼と名のつく種族の悪魔が出るデータも分析し終わった場所であり、異界のボスと思われる茨木童子も最奥にいて出て来る気配がないため湧き潰しがちょうどいい訓練になる異界となっていた。

 彼女らがこうしてここにいるのは、隆和がよく知る異界というのがここであったからである。

 

 

「よし、彼女らの護衛を頼むぞ、ルサルカ」

 

「まっかせて、マスター。

 アナーヒターよりも強くなって見せるから、ご褒美よろしく」

 

「はいはい、老舗菓子店の『村上開新堂』のクッキーだろ?

 ちゃんと予約はしてあるからな」

 

「よっし、頑張るぞ!」

 

「隆和はん?」

 

「先生?」

 

「お土産に皆の分もあるから帰りにな」

 

「やった!」

 

「よーし、久々に本気出すで。グリモワール!」

 

 

 今回のレベルアップに志願した【妖精ルサールカ】ことルサルカを呼び出した隆和が帰りのお土産のことも話していると、千早が【グリモワール】と呼ぶ自分の専用シキガミを取り出した。その姿は一抱えほどの大きさの黒い表紙のハードカバーの本で表紙には銀色で『セフィロトの樹』が描かれており、スキル構成としては4属性の全体魔法と読心が使えると隆和には伝えている。ちなみに、魔術書っぽい図案を千早が注文したら特に意味はないがこの図が描かれていたそうだ。

 

 前衛としてモリソバと華、後衛に千早とグリモワールとルサルカの組み合わせが出来ている。広範囲に攻撃する魔法スキル持ちが2人と頑丈なタンクに全体デバフの得意な妖精と潤沢なアイテムを持つ司令役もあり、彼女たちならばここの湧き潰しでのレベル上げは大丈夫だろう。

 

 

「高レベル過ぎる俺が側にいると、レベル上昇にマイナス効果が出るからこのメンバーで行こう。

 それじゃあ、俺はいつもの挨拶に行ってくるから頑張ってくれ」

 

「隆和はんも気をつけてな」

 

「ボスと会っても戦うわけじゃないから大丈夫だよ。じゃあ」

 

「先生も気をつけて!」

 

「向こうの路地から鬼たちが来ます!」

 

 

 昔の平安京を模した異界であるここの路地の方から鬼たちが現れ、彼女たちはそちらの方へと走って行った。 これなら大丈夫だなとそう判断した隆和は門を潜ると、声を掛け彼女たちと別れてトモエと共に奥の方へと移動を始めた。

 

 

 

 

「イーバーラーギーどーうーじさーん、あーそーびーまーしょー!

 たーたーかーいーまーしょー!」

 

『嫌じゃ! 来るなと言うたのにまた来おったな! 帰れ!』

 

「鬼の頭領が闘いから逃げるのかー!?」

 

『どうせ応じたら、あの女郎蜘蛛の様にするんじゃろ!?』

 

「もちろん!」

 

『あんな顔、部下共に晒して戦えるものか! 帰れ!』

 

 

 異界の奥のボス部屋だと思われる偽内裏の門扉をドンドンと叩きながら、隆和は茨木童子と何回目かになる問答を続けていた。ボス部屋前の広場の彼の周囲では、アヘ顔を晒した鬼たちをトモエがとどめを刺して回っている惨状が広がり、門には『快楽男は面会禁止』と達筆の張り紙がされている。

 このようになったのは、隆和の初回来訪の経緯を知った関西支部がここを管理してから訓練用の異界として丁度よいので、依頼により隆和はほぼ同レベルと思われるボスである茨木童子に対処するために定期的に巡回しに来ているのである。

 

 

「でも、酒呑童子はどのみち動けないぞ?」

 

『うるさい! わしはあの方が呼ばれたならすぐにでも馳せ参じるつもりじゃ!』

 

「そうは言ってもなぁ……」

 

 

 【大江山の酒天童子】。

 もちろんこの有名な鬼の頭領の行方は関西支部でも調査していたが、その結果、分かった居場所は2ヶ所あった。

 

 一つは、丹後半島の近くにある『大江山』。

 異界は結界で封印されていたが、その山で退治された怪異の伝説は酒呑童子以外にもあった為に複数の高レベルの悪魔たちがボスの座を掛けてにらみ合いをしているのが分かった。最古の土蜘蛛の王【陸耳御笠】、酒呑童子の伝説の元ネタとされる【英胡・軽足・土熊】の悪鬼たち、それに酒天童子の一体であった。膠着状態が続いているために、現在は現地の組織と協力し監視と湧き潰しを続けている。

 

 もう一つは、京都の西のすぐ近くにある『大枝山(おおえやま)』で、本命としてはこちらになると思われている。

 この付近は、『老ノ坂清滝トンネル』や近くにある西山霊園の『老ノ坂バス停』に潰れたモーテル跡の『モーテルサンリバー』など幽霊が出る心霊スポットとしても有名な場所が多く、さらに源頼光が斬った酒呑童子の首を納めた言い伝えのある『首塚大明神』もある。これだけこの付近に集中しているのも、メシア教のせいで管理していた家や資料は散逸していた為に推測ではあるが本体がここに封印されているためだろう。

 どちらにせよ、今は双方の異界の結界や封印は破られてはいない。

 

 この茨木童子と酒呑童子の関係は判らないが、異界の主としての彼女は放置できないのでこちらとしてはいずれは契約で抑えるなり倒して異界を消すなりしなくてはならない。隆和にしか出来ないだろうが、いっそ倒した時にそのまま夜魔のように寝所に引っ張り込んで【説得】するのもありかなどとふと考えついた。

 その考えを読んだのだろうか、慌てた様子の彼女の声が聞こえて来た。

 

 

『……っ! 今、お主、とても恐ろしいことを考えついただろう!?』

 

「言い伝えの通りに勘がいいな。

 ただ、FGOの姿でもまあイケるかなとは思っただけだぞ」

 

『えふごうが何かは知らんが、恐ろしいことを考えつくでないぞ!』

 

「伝説にある美女ぶり、一目見てみたいんだがなぁ」

 

『たわけ! お主に見せるために着飾っているのではないわ!』

 

「……今日も駄目そうだな」

 

『お主は未来永劫、出禁じゃ!』

 

「そうか。じゃあ、また来るよ。

 此処から出て来たら、飛んでくるんでよろしくな」

 

『帰れ!!!』

 

 

 茨木童子の怒鳴り声に押されるように、隆和は周囲のとどめと回収を終えたトモエを連れて門の前を立ち去った。隆和が立ち去るのを見送って安堵したが、かつて快楽に蕩けた顔のまま嬲り殺された女郎蜘蛛の痴態を思い出し身震いした茨木童子は布団を被って寝床に潜り込んだ。

 

 

 

 

 隆和が茨木童子の方へ向かい数時間過ごしていた間に、千早たちは無駄に広い異界の中を移動しながら潤沢に持って来ていたアイテムが尽きかけるほど闘い続けてレベルもかなり上がっていた。そして、撤退の合図だった火炎を上空に撒き、離れて彼女らの援護をしていたカーマや周囲の敵を蹴散らして来た隆和たちと千早たちは無事に合流できた。

 合流した千早たちは大きな怪我はないが、無数のかすり傷と大きく疲労しているようであった。隆和が近づくと彼女らは手を降って彼を迎え話しかけた。

 

 

「はぁはぁ、いやぁ久しぶりの実戦やからグリモワールとの連携も思い出すのに時間が掛かったわ。

 ああ、隆和はん、見ての通りみんな大きな怪我とは無いで」

 

「先生、やっぱり人型の相手は殺り易いですね。

 教えて貰った弱点が人とあまり変わりないですから」

 

「安倍さん、貴方どんな戦い方をこの娘に仕込んでいるんです?

 相手の足指を潰したり指を目に引っ掛けたり金的狙ったりと、戦い方がやたらエグいんですが?」

 

「そりゃあ田中さん、小柄でスピードで相手を撹乱するタイプの子ですよ?

 正面から戦うより、人体的急所を突いたラフファイトが手っ取り早い」

 

「「うわぁ」」

 

「ルサルカも一緒に引かないでくれ、失敬な。

 ほら、そろそろ帰るからここからは一緒にいくぞ」

 

「ほな、帰ろか」

 

「あ、そうそう。

 まだ千早が目標の田中さんと同程度の強さになっていないから、またみんなも来るからそのつもりで」

 

「「「え!?」」」

 

「はい、先生! 期待に添えるようにばんばん殺りますね!」

 

 

 その後、千早とルサルカがレベル20に、華とグリモワールがレベル18になるまで何度も続けられ、一部のメンバーを除き彼女らにとっては地獄の特訓となった。もっとも隆和からすれば、ショタオジのそれよりもお遊戯のように優しくしていたつもりだったのだが、彼女らにはその真意は伝わらなかったそうな。




後書きと設定解説


・レベルリザルト

天ヶ崎千早:12→20・ルサルカ:18→20・夜刀神華:12→18
グリモワール:12→18・田中菲都:19(成長限界)

現地人のレベル上限は、上澄みの才能で10から20と想定しています。
また、転生体や悪魔人の娘らは、元になる悪魔の各登場作品の初期レベルの平均の数値を想定しています。

※ただし、個人差で大きく違いあり

・関係者

名前:グリモワール
性別:女性
識別:シキガミ
職業:天ヶ崎千早のシキガミ
ステータス:Lv18・マジック型
耐性:物理耐性・破魔耐性・呪殺耐性
スキル:マハラギ(敵全体・小威力の火炎属性攻撃)
    マハブフ(敵全体・小威力の氷結属性攻撃)
    マハジオ(敵全体・小威力の電撃属性攻撃)
    マハザン(敵全体・小威力の衝撃属性攻撃)
    吸魔(敵単体・小威力のMP吸収万能属性攻撃)
    シキガミ契約のため主人以外からの精神状態異常無効
スキル(汎):念話・読心・浮遊
詳細:
 天ヶ崎千早が秘蔵していたハードブック型の専用シキガミ
 黒地に銀色でセフィロトの樹が描かれているアンティーク装飾
 非常に無口で千早以外と話そうとしない冷静沈着な性格

・敵対者?

【妖鬼イバラギドウジ】(ボス)
レベル38 耐性:物理耐性・破魔無効・呪殺無効
スキル:ドルミナー(敵単体・中確率で睡眠付与)
    マカジャマ(敵単体・中確率で魔封付与)
    ラクンダ(敵全体・防御力低下)
    乱れ撃ち(敵全体・中威力の銃属性攻撃。低確率で魔封付与)
    飛び蹴り(敵単体・中威力の物理攻撃)
    変化(自身・人間の姿に変われる)
詳細:
 異界・羅生門のボスである鬼女でない女の鬼
 誰かが殺しに来るか、酒呑童子が復活するまで怠惰に睡眠中
 かつて覗いた女郎蜘蛛の死に様は若干トラウマになっている
 データは関西支部で偶然遭遇した際に観測されたもので、真2ボスデータとほぼ同じ
 ※ボス補正によりHPとMPは増大し、破魔・呪殺は無効化、状態異常も耐性がある

皆さんも風邪には注意しましょう。


次は出来るだけ早くに。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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