【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法   作:塵塚怪翁

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続きです。
今回は閑話気味の会話回。


第43話 彼と彼女の恋愛事情

 

 

  第43話 彼と彼女の恋愛事情

 

 

 羅生門の異界に通ってレベル上げをしてから少し経ち、季節はお盆を過ぎた頃となった。

 すでに暦では残暑ではあるが、盆地である京都の夏はとても暑くて行く気にはなれないので、そうなる前に千早たちのレベル上げを終わらせられたのは僥倖だった。まさに『茹だるような暑さ』とはこの事だろうが、これで前の世での冷房が無いと死にかねない熱夏の頃ならどうだったのかなどは想像もしたくない。

 

 あれからしばらく経ったが、以前、山梨の方へ問い合わせていたあの青森で出会った少年の調査報告書が届いた。外に比べれば同じ夏でも過ごしやすい異界内の屋敷で、千早やなのはと共に隆和は山梨から送られてきた『部外秘』と赤字で書かれたその書類を確認していた。

 異界の海の沖の方では、相変わらずカーマが操るマカラの背に水着を着た華と桃子を乗せて周囲にマーメイドたちも交えて楽しそうに水上を走り回っており、浜辺のビーチチェアでは書類を届けてくれたサングラスにアロハを着たうちのトップの人がまたのんびりと過ごしていた。

 最近よく来ているが、仕事の方は大丈夫なのだろうか?

 

 それはさておき、念のために余人がこちらに来ないようにトモエが入り口で立っている中、彼らは板張りの床に置かれた座布団に座り千早がテーブルに置かれたその書類を読み上げ出した。

 

 

「えーと、名前は【広野勇気】。年齢は14歳やね。

 容姿はっと、普通の子にしか見えへんやね。

 ……隆和はん、写真のこの子で間違いないやろか?」

 

「隠し撮りみたいだが、間違いないこいつだ」

 

「出身地は大阪みたいや。

 両親は『光福の社』というカルトの儀式に参加中に死亡したみたいや。

 覚えとるか、隆和はん。

 トモエはんとコレットはんが一緒になる切っ掛けになった事件の時のカルトや」

 

「思い出したくもないあの時のか」

 

 

 聞こえて来た内容にこちらに背中を向けていたトモエが、ちらと心配気に視線を向け隆和が大丈夫だと頷くとすぐに外に戻した。あの天使と天使の下僕になり変わった半グレの少年の事は、本当はすぐにでも忘れ去りたい事だが隆和はいまだによく憶えていた。

 

 

「あの時に死亡していた連中の一員だったみたいで、息子だった彼は参加せずにいたので生き残れたみたいや。

 その後、児童養護施設に行ってそこがメシア系列の施設だったおかげで、霊能の才が飛び抜けているのが分かってスカウトされてあちこちでトラブルを起こしているみたいや。

 ついたあだ名が【勇者くん】やて」

 

「いきなりこっちを悪人だと思って斬り掛かるような性格だからなぁ。

 ただ俺が見た時はレベル17だったが、今の一般人の中にいたにしては才能が有り過ぎるようだが?」

 

「普通に考えたらそうや。

 だから、自覚のない転生者じゃないかと山梨の方では睨んでるみたいや。

 ただ、向こうに『保護』されているせいか占術でははっきりしなかったみたいや」

 

「スキルを使う時にゲームの呪文を叫んでいたのはそれも関係あるのかな?」

 

「それは違うと思うの、隆和くん」

 

 

 それまで静かに聞いていたなのはが、右隣に座っている隆和に声を掛けた。

 隆和は何となくテーブルの上の彼女の手を握り、笑い掛けながら至近距離で見つめてそれに返す。

 

 

「何が違うんだい、なのは?」

 

「そ、それはね、わたし達って結構感覚でスキルを使っているから、自分が認識しているスキルの名称と効果が違う可能性があるの。

 例えば、その人が『必殺パンチ』と言って使ったとしても、スキルとしては【ひっかく】や【毒ひっかき】とまちまちな可能性があるの。

 ま、前に【ライダーキック】と叫んでいた人がいたけど、ただの【突撃】だったし」

 

「なるほど。

 なのははスキルの効果についても勉強していたしね」

 

「わ、わたしの魔法だって同じ【メギドラ】でも、光線で撃つときや爆発の形で撃つ時もあるからそういうものなの。

 あ、あとちょっと恥ずかしいの」

 

「理屈は分かったけど、それはそれとして。

 子どもも出来たのに、いまだに『隆和くん』呼びなのはどうしてですか、可愛い奥様?」

 

「そ、それはなの……」

 

「ゴホン!」

 

 

 向かいに座る千早が咳払いをしてジト目で二人を睨んだ。

 顔を赤くして視線を逸らすなのはだが、手は握ったままだ。

 

 

「今は真面目な話の途中やからイチャイチャするんは後にしてや、隆和はん。

 確かに報告書の方にも、物理技と【マハジオ】と【トラポート】が使えるのが確認できたみたいや。

 それを本人は、それっぽいゲームの技名で叫んでるだけみたいやな」

 

「ああ、ごめんな。

 このところ千早たちとだけ出掛けていたのを気にしていたみたいだから、折を見てこうしているんだよ。

 それで、その餓鬼を制御していたシスターの方は?」

 

「ああ、それはやな……」

 

 

 彼女の名前は、【シスター・マーテル】。

 所属は、青森県新郷村の『メシア戸来教会』となっている。

 

 その青森県の新郷村には、昭和になって発見されたとされる『竹内古文書』により【一神教救世主の墓】が見つかった地である。一般的にはただの珍しい観光名所だが、メシア教会にとっては重要だったようで戦後すぐに東北地方の一大拠点の一つと化している場所だ。それもあってか、村の麓の十和田湖付近には大きな教会もあり恐山の方ではかなり警戒しているらしい。

 

 彼女自身は金髪碧眼の少女であるが、【マグダレン修道院】と呼ばれる古い歴史を持つ日本の修道院の孤児院の出身で今はある神父の養女となっている。そして、件の彼とは彼が保護されていた施設で【運命の出会い】を経て彼を『正しい道』へと導く恋人となり、いつも一緒に行動していると報告書には記されていた。

 

 

「一言で言うなら、関わり合いにはならん方が良いという手合やな。

 まあ、向こうは東北でこっちは関西やし、もう会う事はそうそうあらへんやろ」

 

「確かにもう会いたくはないな。

 ただでさえこっちは立て込んでいるのにな」

 

「そうそう。隆和くんはもう一人だけの体じゃないんだから」

 

「そう思うなら、『あなた』とか『旦那さま』とか呼んで欲しい」

 

「……それは人前ではもう少しだけ待って欲しいの」

 

「ベッドでは色々してあんな可愛いのに、呼び方の方が恥ずかしいのか?」

 

「隆和はん。

 乙女心というのは複雑なものなんやで。

 乙女心ついでに隆和はんに相談に乗って欲しい人がいるんやけど?」

 

「相談?」

 

 

 

 

 それから、数日後。

 隆和は一人でジュネス内のとある店で人と会っていた。

 

 

「お帰りなさいませ、ご主人さま。何名様ですか?」

 

「先に来て待ち合わせをしているんだが?」

 

「安倍さまですね? こちらにどうぞ」

 

「ああ、ありがとう」

 

 

 ジュネス内にあるメイド喫茶『アリスのエプロン』、そこの奥のブースには深刻そうな顔をしたナイスボートニキが座っていた。隆和が現れると、彼は元気無く手を振りこちらだと合図した。

 そして、向かいに隆和が座ると店員が注文を取りに来た。

 

 

「ご主人さま、ご注文はお決まりでしょうか?」

 

「オレはコーヒーで、安倍さんは?」

 

「それじゃ紅茶で頼む」

 

「『丁寧に絞った黒い愛』と『穏やかに滲み出る紅い愛の雫』ですね、お待ち下さい」

 

 

 店員が立ち去ると、隆和はメニューを見て訝しげな表情を浮かべた。

 

 

「意味が分からないな」

 

「こういう店はそういうものですよ、安倍さん」

 

「まあいいか。それで、お互いにシキガミも抜きで俺に相談って一体何だ?」

 

「とりあえず、お子さんが出来たようでおめでとうございます。

 相談ってこれにも関係しているんですよ」

 

「ああ、ありがとう。で?」

 

「複数の女性と関係を持ってるアーッニキのマーラ様っぷりの知恵を借りたいんです」

 

「確かにそうだけど、はっきりと言わないでくれ。

 それで何について聞きたいんだ?」

 

「【ナニ】についてです」

 

「……帰ろうか」

 

「待って下さい。切実な悩みなんです!」

 

 

 隆和が立ち上がりナイスボートニキに引き止められた所で、店員が注文の品を持って来たので再び隆和は座る事にした。

 

 

「お待たせしました。

 『丁寧に絞った黒い愛』と『穏やかに滲み出る紅い愛の雫』です。

 ごゆっくりどうぞ」

 

「……とりあえず飲むか。……リ◯トン?」

 

「よく飲んでるから判りますけど、こっちはネス◯フェですね」

 

「これで700円か。で、コーヒーが600円ね」

 

「そういうコンセプトの店ですから高いのはしょうがないんですよ」

 

「やけに詳しいんだな?」

 

「地元でいろいろとあったので」

 

 

 お互いにお高目のインスタントの飲み物を飲んで、改めてナイスボートニキは話し出した。

 

 

「それで相談なんですけど、以前女郎蜘蛛から助けてもらったじゃないですか」

 

「ああ。あれから俺もあっちの家に引っ越したしな。それで?」

 

「オレ、今はカプセルホテルの『ガイア大阪』の地下にある宿直室だった部屋で暮らしているんですが、同じ建物内の従業員用の部屋に希留耶ちゃんもひとり暮らししていますよね?」

 

「あー、うん。

 『やりたい事がある』ってなのはも許可を出していたし、俺は俺であまり強く言えなくなったからなぁ」

 

「あの事件以降、まだ中学生の妹みたいに思っている希留耶ちゃんなんですけど……」

 

 

 一度俯いた彼は、恐怖に慄いた表情で隆和に震えた声で告げた。

 

 

「最近、オレの部屋を掃除したり、サーバーに掛り切りになっていると食事を用意してくれたりするんです。

 それで、時々、オレを見る目が地元のあの娘らと同じやばい雰囲気になっているんですよ」

 

「あっ。あー、えーと。それで俺に相談を?」

 

「安倍さん、彼女の父親代わりなんでしょう? 助けてください」

 

「助けてくれと言われても、伊東くん自身はどうしたいんだ?」

 

「流石に、事案になる年齢の娘に性的に襲われるのは避けたいです。

 しかも、妹みたいに思っている娘に」

 

「そういえば、まだ童貞だったっけ?」

 

「そうですよ。

 もし、彼女とそうなるにしてももっと時間を起きたいじゃないですか。

 こう純粋に大切にしたいというか、今の彼女は穢したらいけないというか。

 彼女との関係は、もっと少しずつ段階を踏んで進めたいというか」

 

 

 現在、20歳になるナイスボートニキはワナワナと震えながら希留耶の事を訥々と語リ始めたが、隆和はそれを止めてため息をついて自分の考えを述べた。

 

 

「伊東くん、憶えておくと良い。そう思っているのは君だけだろうな」

 

「!!?」

 

「妹のように可愛がってくれているのはよーく解ったけどね。

 妹でも女性は女性だよ?

 年齢に関係なく、好きになった相手には躊躇しないと思うぞ。

 今のあの娘の母親代わりは、あのなのはだぞ?」

 

「え、は!?」

 

「俺自身、彼女が好きだったけどな、関係を持ったのは彼女からだぞ?

 たぶん、その薫陶を受けているなら、なおさらだろう。

 そもそも、他に物証とかあるのかい?」

 

 

 隆和がそう聞くと、ナイスボートニキは口に手を当てて思い出すように語った。

 

 

「彼女、うちが作った最新のスマホを持っているじゃないですか」

 

「ああ。かなり前にプレゼントしたが?」

 

「たまたま、彼女が何か買うのか検索しているのが見えたんですが、うちの組織がやっているオンラインショッピングサイトだったんです」

 

「それで?」

 

「裏側の転生者の親族なら買える商品で、あの【スケベ部】の製品を見ていたんです」

 

「……ああ」

 

「ほら、裏側の商品ならうちのメンバーの親族(後のゴールドランク相当)はある程度の年齢があればいろいろと買えますよね?」

 

「確かに割引だったり、一部の商品はタダだったりするね。

 実際にその辺の料金はなのはが管理しているし」

 

「それにここ最近はやたらと自室に招いて夕食を食べさせようとするし、産休に入る前のなのはさんもやたらとニコニコとしてこっちを見ていたしおかしいでしょう??」

 

 

 隆和は紅茶をズズッと飲み干し、こちらを凝視するナイスボートニキに告げた。

 

 

「諦めたら? もう試合終了だぞ」

 

「安西先生……!! まだ諦めたくないです………」

 

「いや俺が言うのも何なんだが、希留耶は君と関係を持つのを諦めないと思う。

 年頃でそういうのに興味があるのもあるだろうが、そういうサイトを物色しているのはそういう事だ。

 おまけに、なのはもそれを後押ししている節があるみたいだ。

 それなら、遅かれ早かれ【襲う】か【襲わせる】だろう」

 

「…………」

 

「男なら腹を括った方がいいぞ。厚めの雑誌を腹に巻くよりはマシだ」

 

「腹をくくるしか無いのか」

 

「そうだな。

 あと、絶対にしてはいけないのは彼女に【恥】をかかせるなよ?」

 

「恥、ですか?」

 

「どういう手段を取るにせよだ、彼女自身相当の覚悟を持ってやって来るだろうな。

 希留耶は、『ただ興味があるからしてみたい』みたいな娘じゃない。

 それで君が対応をミスったら、最悪、希留耶にトラウマが出来る」

 

「……トラウマ」

 

「伊東くんだって希留耶にトラウマを作るような真似は嫌だろう?」

 

「それは……嫌だな」

 

「嫌ってはいないんだろう?

 なら、彼女の覚悟を男らしく受け止めてくれ。

 変な結果になってしまわないように」

 

「……わかったよ、安倍さん。出来る限り頑張ってみるよ」

 

 

 ナイスボートニキこと【伊東誠】、彼女の16歳の誕生日に彼女の自室に連れ込まれ関係を持つ事になる。

 その後、週1~2のペースで【お泊り】する事になるのを彼はまだ知らない。

 また、近い将来、彼の二人目の女性型シキガミも合流する事になるのも彼はまだ知らない。

 

 

 

 

「見つけたぞ、おっさん! 俺と勝負しろよ!」

 

「駄目だって、ゆうくん! ガイア連合の人と諍いは駄目だから!」

 

 

 ナイスボートニキと別れ、帰りがけに何か依頼はないかと関西支部の事務所に寄った隆和は、指を指してこちらを罵倒するどこかで見た少年とそれを必死に宥めているどこかで見たシスターに絡まれていた。

 

 

「何でここにいるんだ、お前ら?」




後書きと設定解説


・関係者

名前:百々地希留耶
性別:女性
識別:異能者(悪魔人)・14→15歳
職業:中学3年生
ステータス:レベル11→12・スピード型
耐性:火炎耐性・電撃弱点・衝撃耐性
スキル:アクセルクロー(敵複数・2~4回中威力の物理攻撃)
    引っかき(敵単体・小威力の物理攻撃)new!
    マリンカリン(敵単体・中確率で魅了付与)
    獣眼(自身の攻撃の命中率上昇)
    見切り(物理回避率が10%増加)
    野性の勘(自身が受ける攻撃のクリティカル率を25%減少)
装備:おしゃれなワンピース(ガイア連合製の霊装防具)new!
   人化(弱)のブレスレット(猫の特徴の人化偽装用霊装)new!
詳細:
 カルト(メシア教)に嵌った両親に放置された末に悪魔合体の実験に使われた少女
 【魔獣ネコマタ】との悪魔合体で生存し悪魔人となった
 大きい音には身が竦む癖や前髪の一部がストレスで白くなったのは無くなった
 わりとダメンズな所がありこっちから意中の彼にアプローチしている際中
 悪魔人化の頃より変化しない背とスタイルを危惧して、最近牛乳をよく飲んでいる


【挿絵表示】

百々地希留耶のイメージ図


次は出来るだけ早くに。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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