【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法   作:塵塚怪翁

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続きです。
リアルが忙しくなった原因のコロナに呪いあれ。


第44話 大阪メシア教会

 

 

  第44話 大阪メシア教会

 

 

「この部屋でなら、殺す気で来てもかまわないぞ。メシア教の聖戦士さま?」

 

「マーテルが殺しては駄目だと言うから、ぶっ殺すのは止めてやる!

 かわりにおっさん、テメーは絶対に叩きのめしてやる!」

 

「この間の腹を殴ったのがよほど気に入ったみたいだな。

 また殴ってやるから、来いよ。クソガキ」

 

「やっぱ、ぶっ殺す! 『ブレイブスラッシュ』!」

 

 

 隆和と件の彼、『勇者くん』こと【広野勇気】が対峙しているのは梅田にある関西支部の建物であるジュネスの地下にある訓練用の広間である。強固な結界もあり実戦さながらの訓練も出来る体育館ほどの広さのある部屋であるが、周囲には隆和のシキガミのトモエと副支部長のウシジマニキに、広野勇気に付き添ってきたマーテルと彼に呼ばれているシスターの少女だけがいた。

 

 シスターの彼女が正式に依頼をするためにアポイントを取って来訪していたらしいのだが、彼の方がたまたまここに顔を出していた隆和に気が付きこいつと戦わせろと騒ぎ始めたのがこの模擬試合の始まりであった。

 

 有望な戦力となる彼のためにメシア教側でいろいろと調整していたのもあるが、今まで負けること無く天狗になるほど無双していた彼を事もなげに殴り飛ばし、しかも自分の恋人で絶対的な味方だと思っていたマーテルにまで諍いは起こすなと止められ彼にとって隆和は恨みの対象であった。

 また、前に殴られた時に肝臓の辺りにアバラ骨にひびが入る怪我を負わされ、拠点に戻ってから鈍い痛みで眠れぬ夜を過ごしたのもその考えを増幅させていた。

 

 隆和としては勝負を受ける意味は無かったが、ウシジマニキからここの訓練室なら高精度のアナライズの機器があるので転生者疑惑のある彼らのデータを手に入れたいとの要望を受けたので挑発した結果、彼は頭に血を上らせてシスターの少女の制止を振り切って鼻息も荒く臨んでいた。

 

 こうして青い顔でこちらを見るマーテルを無視した広野勇気は、隆和へどこかのゲームで見た柄に羽ばたく鳥の紋章が描かれた長剣にそれらの思いを込め、スキルも使って模擬試合という名目も忘れて本気で切りつけた。

 

 

「しっ!」

 

「ぐへっ、……このやろう!」

 

「おっと、ふっ!」

 

「ぐげっ」

 

 

 上段から振り下ろされる剣を右に躱し、隆和はそのまま右フックを彼の顔面に打ち込む。一瞬ぐらつくもそのまま横薙ぎに彼は隆和へと剣を振るう。それをバックステップで躱した隆和は、もう一度踏み込むと今度は左のストレートを打ち込んだ。

 顔面に拳を受けダメージにふらつくが、苦し紛れに広野勇気は広範囲電撃魔法を放った。 

 

 

「くそぉ、『ラ◯デイン』!」

 

「…もういいか。よし、なら強く行くぞ。死ぬなよ?」

 

「なにを、……ぐぶっ!」

 

「そこまで!」

 

「ゆうくん!」

 

 

 

 広範囲に放たれた電撃魔法の【マハジオ】は避け切れずに受けた隆和は視界の隅で合図を出すトモエを見つけると、こちらに一撃を当てられニヤついている彼へもう終わらせる為に防具のある胴の中心に本気のスキルなしの攻撃を叩き込んだ。

 長剣も手放し数メートルほど吹き飛び転がる彼にマーテルが走り寄り、アナライズも解析が終わったのを確認したウシジマニキの試合終了の声が響いた。彼へと回復魔法を掛けている彼女に向かって、ウシジマニキは声を掛けた。

 

 

「これで、そっちの彼の気はもう済んだだろう?

 依頼は引き受けてこちらでやるから、連れて帰ってもらおうか」

 

「お、オレはまだやれる!」

 

「手加減されているのが判らないのか?

 お前が本気で斬り掛かってもあいつは大した怪我も負わず、お前への攻撃もスキルは使わずに殴るだけで、最後の本気で殴ったのもわざわざ防具のある胴体だ。

 それに、殴った箇所も急所は避けているんだぞ」

 

「……ぐぅ!」

 

「子供のお遊びに付き合うのはこれでお終いだ。

 それと、そこのシスター」

 

「なんでしょう?」

 

「依頼の方は受託するが、依頼の遂行の際の立会人にはあんたら二人は外れてもらう。

 別の人物を用意してくれ。分かったな?」

 

「……分かりました。失礼します」

 

 

 隆和を睨みつけたままの広野勇気に肩を貸しながら、硬い表情のマーテルは迎えに来た教会の人員と支部を後にした。

 彼らが完全に出て行くまで見送ると、電撃で受けた軽症を治している隆和にウシジマニキは話しかけた。

 

 

「よう、すまなかったな。怪我までさせちまって」

 

「いや、こういうトラブルはウシジマさんとの仕事ではもう慣れたよ。

 だが、出来れば完全に心が折れるまでやっておきたかったんだがな」

 

「ここのアナライズの機器であの二人の手の内は分かったから、もう戦り合う必要はないんだがどういう意味だ?」

 

「ああ。あのクソガキの目、昔、闇討ちして来た奴と同じ目をしていたからな」

 

「また仕掛けてきたらその時は、思う存分ボコっていいだろ。

 まあ、あの連中だってペットの躾と後始末くらいちゃんとするだろうしな」

 

「それで、結果は?」

 

 

 隆和がそう聞くと、不味いものでも食ったかのような表情でウシジマニキは告げた。

 

 

「ああ。自覚はないようだが、あのクソガキ、俺らと同じだ。

 占術の担当も近くで視てそうだと判断した。

 こいつの事は、『メシア教に取り込まれた』と山梨の方にも報告しておく」

 

「そうか。

 うちや知り合いの方にも接触は出来るだけ避けるように言っておくか。

 それで、あの連中が持ち込んだ依頼とかはどうするんだ?」

 

「なあ、手が空いているなら片付けてくれないか?」

 

「受けてもいいが、とりあえず詳細を教えてくれ」

 

 

 ため息をついてうんざりとした顔のウシジマニキは、面倒な事になったと同じような表情の隆和に依頼の書類を渡した。

 

 

 

 

 その翌日、隆和はトモエと共にその依頼に書かれていた大阪西成区にある雑居ビルに来ていた。

 

 治安が悪いことでも有名なあいりん地区にもほど近いこの場所は普段からホームレスや薬の売人が路上をうろうろとしており、恐喝や女性を路地に連れ込むような連中を隆和はトモエと同行者の男性と共に追い払いながらここへと辿り着いていた。

 その同行者の男性は『賀来美知夫』と名乗るメシア教の神父で、大阪で最も歴史のある戦前に建てられた赤レンガの教会を一神教新教の牧師たちから快く譲り受けて活動している司祭だと名乗っていた。

 目的のヨガ教室の看板のある部屋のドアの前に立ち、隆和はこの神父と出会った時のことを思い出していた。

 

 

「本当に申し訳ない。

 仮にも養女とした娘と身元を預かっている子がこのような事をするなど、私の管理不行き届きでした。

 友好的に接するようにと上から指示が出ていたのに、ここで改めて正式に謝罪させて頂きたい」

 

「周りに人もいるんだからもう止めてくれ。

 いいから車に乗ってくれ。現場に向かうぞ」

 

「いや、本当に申し訳がない。

 こちら側から依頼を直接持って行かせるだけのお使いがこのようになるとは。

 あの子らは今、教会内で謹慎させていますとも」

 

 

 最寄りの駅だった新今宮駅で会った神父服姿のホストでも務まりそうな美形の彼は、先日関西支部に現れた彼らの保護者もしていると言って合流した駅のロータリーで隆和たちに深々と頭を下げると謝罪してきた。人目を気にして早く乗るように言われた彼は、隆和の軽自動車に助手席にトモエがいるため後部座席へと乗り込むと、にこやかに今回の内容を移動する車内で説明し始めた。

 

 

「今回やって頂きたいのは、邪教の信徒とそれが崇める悪魔の退治ですね」

 

「邪教?」

 

「教主を名乗る男は、『バラモン』を自称するスリランカ出身のヨガ教室の講師でね。

 何でも自分を信仰しヨガを極めれば不老長寿と美は思いのままと、女性に人気の教室みたいだと言うことですよ。

 まあ、客層も教室のあるビル近くの売春婦や風俗の店員が主ですので何かあっても特に問題はないでしょう」

 

「いや、いろいろと問題はあるだろう?」

 

「ああ。

 サバトをしているという情報もあるので、マグネタイトの原料がたくさんあるという意味では問題でしたね。

 インド風の悪魔の姿が複数確認されているので、我々では対処が難しいのでそちらに依頼を出したのですが。はぁ」

 

「そういう意味ではなくてな……」

 

「この時期に内戦をしているような国の邪教徒の祭司とそれの崇める悪魔ですから、遠慮せずに神の誅罰を下しましょう」

 

 

 これ以上の会話は無意味だと思った隆和は近くの駐車場に停めると、現場につくまで必要最低限の会話のみで彼と共に絡んでくる相手を処理しながら雑居ビル内の3階にあるワンフロアを借り切ったそのヨガ教室へと着いた。

 これまでの彼とのやり取りを頭を振って追い出すと、隆和は鍵のかかっていない扉を開けて中へと入り込んだ。

 

 

 

 

 室内ではまさしくサバトが行われている最中だった。

 

 複数の女の嬌声と水音が響き隆和も憶えのある臭いが立ちこめ異界に成りかけている室内では、4体ほどいるそれぞれ相手の女性に腰を振る頭に角を生やした赤い肌の逞しい男性の上半身と黄金の鳥の翼と下半身を持った姿のレベル16の【妖魔ガンダルヴァ】と、教主と思しきレベル8の唯一の覚醒者である男の上で腰を振るレベル8の【妖魔アプサラス】がいて入って来た隆和たちに驚き腰の動きを止めて立ち上がろうとした。

 しかし、それよりも早く踏み込んだ彼らの攻撃が悪魔たちに降り注いだ。

 

 

「見苦しいです、【疾風斬】!」

 

「邪教の悪魔よ、浄化されよ! 【マハンマ】!」

 

「カーマ!」

 

「はいはい。げっ、見覚えのある連中じゃないですか!

 しっしっ、【天扇弓】!」

 

 

 トモエとカーマの強力な全体攻撃と賀来神父の全体破魔魔法が炸裂し、あっという間に悪魔たちは全滅した。

 窓と厚いカーテンを開けて不快気に外の空気を吸っているカーマや、女性達の介抱を始めているトモエに下半身丸出しで勃てたままの教主を結束バンドで手際よく拘束している隆和に構わず、賀来神父は奥にあった祭壇の上の呪物らしい木像を取ると怒りの表情で踏み砕き始めた。

 

 

「おい、壊すのは待ってくれ!

 悪魔を呼び出したのはそれが原因だろうから調査しないと!」

 

「こんな! ものは! 調べる! 必要も! ありません!

 邪教の! 不浄な! ものは! 打ち壊すのみ!

 ああ、やっと砕けましたか」

 

「おい、本当に調査しなくて良いのか?

 報告書とか作るのに資料が必要だろう?」

 

「ええ、構いませんよ。

 こちらがお願いしたのは悪魔の討伐と邪教徒の拘束のみです。

 こんな不浄なものは必要ありません。

 いるのならどうぞ」

 

「まあ、そっちがそれでいいのならいいが。

 じゃあ、これで仕事は終わりだな?」

 

「ええ。

 後始末は我々の方で行ないますので、ご苦労様でした」

 

 

 踏み砕かれた木像を拾ってにこやかに笑う賀来神父に気持ち悪いものを感じた隆和は、うげーっとしていたカーマを封魔管に入れると神父を警戒しているトモエと共にこの場を後にした。

 彼らが立ち去るのを窓から見ながら、教会の実行部署と救急車の手配の電話を携帯でしていた賀来神父は、熱い息を吐き舌なめずりをしながら今日出会った隆和の事を思い浮かべていた。

 

 

「はぁ。彼、あの抜きん出た強さは是非、我々の神の教えを説いてあげたいですねぇ。

 本当にガイア連合の異能者たちは素晴らしい。

 ああ、それにしても残念だ。

 せっかく養女を与えたのですから、あの少年にも投資に見合う『聖戦士』になって欲しいものですね」

 

 

 

 

 隆和たちが依頼をこなしていた日の夜、拠点している教会の宿舎で戻ってからずっと悔し涙を流している広野勇気はとても荒れていた。怪我の方は回復魔法で治癒済みであったが、隆和に軽く鼻であしらわれた事に我慢が出来ない様子であった為だからだ。

 夕食や入浴を済ませてもう就眠の時間であるのに、まだ落ち着かない彼をマーテルは抱きしめながら慰めていた。

 

 

「くそっくそっ、何でなんだよ!

 オレは強いんだぞ。不良の連中に殴られ続ける事はもう無いんだ。

 あんな土方の格好のおっさんにあんなにされるなんてありえないんだ!」

 

(今はまだ弱くても、あの中で一際強そうなあの男性に一撃を入れられたんだ。

 ゆうくんはもっと強くなれるはず。

 たまたま選ばれただけの孤児院出の私には、彼と一緒に行くしか道はないんだ)

 

「なあ、マーテル。

 神様は正しいことをしていれば、死んじまった家族や見放した親戚の連中とは違ってオレを見ていてくれるんだよな?

 マーテルだって、ずっと側にいてくれるんだよな? なあ!?」

 

「大丈夫だよ。

 神様は教えの通りに正しい事をしていれば、ずっと見守ってくれるよ。

 私だってずっと側にいるからね」

 

「見放さないで、マーテル。

 オレは強くなるから、神様の教えも守るから側にいてくれ、頼む」

 

「ずっと一緒だよ。

 今日はこうしていてあげるからゆっくりと眠ろうね」

 

 

 そして二人は、そのまま抱き合うようにして同じベッドで眠りに落ちていった。

 その彼らをじっと見下ろす羽の生えた大きな人影に気付かないままに。




後書きと設定解説


・関係者

名前:広野勇気
性別:男性
識別;転生者(ガイア連合)・14歳
職業:中学2年生(不登校)
ステータス:レベル17・アタック型
耐性:破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:ブレイブスラッシュ(スラッシュ)
    (敵単体・小威力の物理攻撃)
    ライデ◯ン(マハジオ)
    (敵全体・小威力の電撃属性攻撃)
    ◯ーラ(トラポート)
    (味方全体・長距離転移が可能)
    大天使の加護(万能以外の魔法の回避率が2倍になる)
装備:銀のロザリオ(呪殺無効)
   ケブラージャケット(一般品)
   “ゆうしゃの剣”(それらしい装飾のガイア連合製霊装) 
詳細:
 メシア教のシスターと出会い覚醒し『正しい道』を進む転生者
 力の全能感と修道女の彼女に導かれて『正義』の道に邁進している
 地方の支部関係者からは、【勇者くん】と呼ばれて忌避されている
 スキルの名称は勝手な自称で、発動はするが威力や精度が落ちている
 某アニメのどこかの洞窟でゴブリンの集団に殺された剣士の少年に似た容姿

名前:シスター・マーテル
性別:女性
識別:異能者・16歳
職業:メシア教穏健派シスター
ステータス:レベル11・マジック型
耐性:破魔無効・呪殺耐性(装備)
スキル:ハマ(敵単体・小威力の破魔属性攻撃。
       弱点を突いた時、確率で即死付与)
    ディア(味方単体・HP小回復)
    パトラ(味方単体・軽度の状態異常回復)
    物理ブロック(味方全体・短時間、一度だけ物理攻撃を無効化する)
    大天使の加護(万能以外の魔法の回避率が2倍になる)
装備:銀のロザリオ(呪殺耐性の霊装)
詳細:
 メシア教孤児院出身のメシア教の司祭賀来神父の養女
 金髪碧眼で儚げだが芯の強い生真面目な印象を与える容姿の美少女
 優れた異能者をメシア教に引き込むための孤児院出身の人材の一人
 某アニメのゴブリン殺しの剣士と共にいる僧侶の少女に似た容姿

・敵対者

【妖魔ガンダルヴァ】
レベル16 耐性:火炎弱点・電撃耐性
スキル:ベイバロンの気(敵全体・中確率で魅了付与)
    高揚の歌(敵全体・中確率で高揚付与)
    (高揚:酩酊させて行動がランダムになる状態異常)
    エナジードレイン(敵単体・小威力の万能属性のHPとMP吸収)
詳細:
 インド神話においてインドラに仕える半神半獣の神の居る宮殿の奏楽担当の妖魔
 頭に八角の角を生やした赤く逞しい男性の上半身と、黄金の鳥の翼と下半身を持った姿
 その大半が女好きで肉欲が強いが、ソーマと処女の守護神でもある
 酒や肉を喰らわず香りを栄養とし、自身の体からも香気を発している

【妖魔アプサラス】
レベル8 耐性:火炎弱点・氷結耐性
スキル:ブフ(敵単体・小威力の氷結属性攻撃)
    マハブフ(敵全体・小威力の氷結属性攻撃)
詳細:
 インド神話ではガンダルヴァの妻とされている水の妖魔
 今回はガンダルヴァと共にサバトの相手として呼び出された
 
【異能者の男】
レベル8 耐性:破魔無効
スキル:ブレインウォッシュ(敵全体・低確率で洗脳付与)
    (洗脳:魅了とほぼ同じ効果の状態異常)
    脅迫・脅し
詳細:
 『バラモン』を自称するインド出身のダークサマナー
 表向きはヨガ教室の講師をして、自分のカルト団体を作っていた
 アプサラスを呼ぶつもりがガンダルヴァも呼び出して操り人形に成り果てていた


次は出来るだけ早く。
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