【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法   作:塵塚怪翁

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続きです。


第49話 華門神社での日常と関西支部での不穏

 

 

  第49話 華門神社での日常と関西支部での不穏

 

 

「今日はいらっしゃらないんですか?

 先日助けて頂いたので改めてお礼を言いたかったんですが」

 

「うちの人、今日は別の所でお仕事が入っていて出掛けているんです。

 ごめんなさいね」

 

 

 先日の女学園の事件からしばらく経ち、3月になって春になりすっかり暖かくなった。

 今日は神社に居合わせたなのはがお客の相手をしていた。

 

 彼女は先月、隆和がとある事件で完全に休校となった女子校で助け出した娘で、名前を『安藤優子』と言う髪を肩の所で切り揃えた長身の美少女だった。

 彼女は助け出されてから友人の藤野秋葉の援助を受けて、目覚めかけた夜魔リリムとしての力を自分のものにするべく先日までガイア系列の病院に入院し治療を終えたばかりだ。あの時自分は恐れるしかなかった元教頭だったインキュバスを一撃で葬った隆和に彼女は個人的な興味を抱いていた。

 

 彼女はズズッと出されたお茶を飲むと、じーっと伺うように見るとなのはに話しかけた。

 

 

「高橋なのはさん、でしたよね? 姓が違うようですが、あの人の奥さんですか?」

 

「そうなるの。子どもも娘が生まれたばかりで、とても可愛いのよ?」

 

「…そ、そうなんですか。もうお子さんが…」

 

「他にも数人子どもを産んだ人もいるんだけど?」

 

「……え?」

 

「代わる代わる彼に可愛がって貰っているけど、他にも順番待ちがいるの」

 

「……ええ!?」

 

「ところで、今日はお礼を言う他に何かあの人に御用でもあるの?」

 

「…………いえ、お時間を取らしてすみませんでした。日を改めてお礼に伺います」

 

 

 引きつった笑みを浮かべると彼女は、にっこりと微笑んだなのはに一礼するとそそくさとその場を後にした。

 その彼女を見送ると、なのはは憮然とした顔になり後片付けを始めた。

 

 

「この業界特有の相手を増やす理屈は理解できるけど、安易に他所から来るのはもう充分なの。

 ただでさえ、ここだけで大勢いるのにこれ以上増えないで欲しいの」

 

 

 

 

「これはまたなんて言ったらいいんだろうか?」

 

「シュール、ですかね? 主様」 

 

「ちょっとシュール過ぎるんじゃないんですかー?」

 

 

 その頃、隆和はトモエやカーマと華門神社内の異界【人工異界・華門島】の見回りをしていた。

 ここの異界の経過観察という名目でちょくちょくサボりに来ては浜辺のデッキチェアでくつろいでいるショタオジから、「規定量のマグが貯まっていたから、ここのアップデートをしといたよ」と帰り際に新しい仕様書を渡されたので点検に来ていた。

 

 仕様書によれば、ここの異界は屋敷の地下に異界の主の代わりの異界制御に特化した式神が埋め込んであるらしいのだが、思ったより早くMAGの貯蔵が進んだので異界の成長とアップデートを行ったのだと書かれている。カーマがマカラに乗って島の外周をぐるりと周って確かめた所では、今まで島の東側の地霊コダマが漂うだけだった林の部分が大きく面積を広げ森へと成長しているのが分かった。

 さらに、北側の畑の部分と南の住宅部分の外周部分に森との間を遮る高さ1mほどの木製の塀が建てられ、島の中央の山の麓に湧く水源となる屋敷裏の泉も大きくなり畑側への用水路も増設されて海に注いていた。

 

 ショタオジは口を濁していたが、隆和には急激に異界のMAGが増えた原因が大体とではあるが想像がついていた。

 

 人間の精気のことを指し、様々な感情によって生じる一種のエネルギーであるマグネタイトの異界での濃度を上げる一番手っ取り早い手段は“サバト”である。何しろ覚醒に関わらず人間の男女を用意して管理しておけば、長期的にマグを得られる一番簡易な手段でもある。他には【信者脳みそマグ生成器】などもあるが、そんな事をするのは狂ったメシアンと天使だけである。

 

 

「大丈夫、涼くん。年上の奥さんに任せて♡

 天井の木目を数えているうちに終わるから、ね♥」

 

「あ、ああ。ふぇいとさん、…………くうっ」

 

 

 ここの場合はどうかというと、切っ掛けは先月ここの男性職員と結婚したモリソバこと田中菲都だろう。

 

 何しろ結婚祝いとしてなのはが自分用に購入していた恐山の若返りの水を贈り彼女が10歳ほど若返った事で、音が外に聞こえにくい異界内の住宅の一つに住み込むと元気に【夜の行為】に励み出したのだ。さらにそれに触発されて、組織内の男性職員ほぼ全員が一部の女性たちに捕食される事になり異界内のヤリ部…もとい住宅エリアに嬌声が響く事態となった。

 もともと異界内のマグ濃度は隆和が連日異界内で行なう【夜の行為】で徐々に増え、いろいろな契約悪魔も増えて異界内の開拓が進んだことで増加速度が加速していたがここへ来てこの急加速である。

 実質的な経営部分を担っている華門和と千早も、自分たちもしている事もあり乱暴やNTRもないからとそっと見ないことにしたようだ。

 

 そんな神社の異界であるが、隆和たちは他の場所を見回りその森との境にある門を抜けて森の中へと踏み入っていた。

 

 

『フハハハ、恐ろしいか人間よ!! 己の非力を嘆くがいい!!』

 

「ああ、意味不明過ぎて恐ろしいぞ。誰がお前らの姿をこうした?」

 

『決まっている! 召喚主のデザインだ!』

 

「「ああ」」

 

 

 彼のデザイン力ならば、この手抜きのデザインもさもありなんと隆和とトモエは頷いた。

 確かにショタオジの仕様書には、森に実戦相手と食料を兼ねた【フード】種の悪魔が湧くように設定したと書かれている。

 ただ、彼らの眼の前には、首のない加工済みブロイラーチキンの姿の【フード オンモラキ】のリーダー個体が、白い肌の【フード カタキラウワ】の背に跨って周りに多数の同じ姿のオンモラキたちを従えて高笑いをする姿があった。

 

 

『我々はここに宣言する! この森は不可侵の我らが領土とすると!』

 

「【疾風斬】」

 

「「「ぐわーーーっ!!」」」

 

『ぐっ。お、おのれ人間め。我が倒れようといずれ第2第3の我が…』

 

「えい」

 

『ぐわーーっ!!』

 

 

 オンモラキたちは問答無用とトモエが多数を薙ぎ払い、カーマがリーダーを射止めて全滅し後にはそれぞれ肉の塊がドロップしていた。

 この日からたびたび森のフード悪魔の討伐と狩りが日課に加わる事になった。

 

 

「隆和さま。この大量の鶏肉は何でしょう?」

 

「うちの異界で採れるようになったんだ。とりあえず、今晩はこれを調理してくれないか?」

 

「はあ、それではなのはさまとも相談して調理してみますね」

 

「うん、頼むよ。和」

 

 

 その日の夕食の鶏肉尽くしは、異界の悪魔たちにも行き渡る量のご馳走になったという。

 

 

 

 

 同じ頃、天ヶ崎千早は打ち合わせのために、和のお付きの一人の珠島じゅりを連れて関西支部へと顔を出していた。

 

 もともと華門神社はガイア連合の派出所でもあるので、入口近くのアパートも構成員が泊まるためのものであるし関西支部で出される依頼の代理受付も行っている。それらの関係書類を持って来たついでに、自分たちのところに招聘できる技術者や術師を探すつもりであるのと、最も重要である関西支部と京都方面の各派出所を結ぶ淀川水系を利用した『霊道水路計画』の進捗状況の確認にも来ていた。

 

 千早が顔を出した時、関西支部では表のジュネスも地下の食品街以外は臨時休業にするほど多くの裏の人が行き交う忙しさを見せていた。

 手続きの書類を受付に渡し千早はじゅりと顔を見合わせると、通りかかった顔見知りの事務員にどういう事なのかと話しかけた。

 

 

「あの、すみません」

 

「すまないんやけど、何があったん?

 副支部長のウシジマはんと会う約束があったはずなんやけど?」

 

「あ、天ヶ崎さん。

 例の中東での一件、あれで日本へ避難する人たちが増えたんですけど中東からの人たちだけじゃなくて。

 欧州の方でも飛び火して、メシア教過激派と穏健派の内ゲバと非メシアのコミュニティへの襲撃が増えたそうなんです。

 それで逃げて来た人たちの船が大阪港にも何隻か回されてきたらしく、我々も対応に追われているんですよ」

 

「じゃあ、日を改めた方がええんかね?」

 

「いえ。アポイントの方は大丈夫ですので、このまま応接室の方へどうぞ」

 

「おおきに。それじゃ忙しいところすまへんかったな」

 

 

 一礼して忙しそうに小走りで去る事務員を見送ると、千早とじゅりは応接室に向かった。

 応接室で待つこと十数分、少しばかり慌ただしい雰囲気を持ったウシジマニキが部屋に入って来た。

 ソファに座る二人に挨拶をすると、彼も対面のソファに座ると事務員が持って来たお茶を飲み干して一息ついているようだった。

 

 

「なんや、忙しそうやないか。抜けて来て良かったん?」

 

「大丈夫だ、お嬢。

 お嬢があの女とそのシンパを追い出してから正常に回るようにしたからな。

 俺が決済するものはだいたい片付けてきた」

 

「それでその忙しい事の方もやけど、頼んでおいた情報を教えてくれへんか?」

 

「ああ。まず今の忙しい方だが、避難して来た海外組織の人員の受け入れと調査をしているんだ。

 表向きの入国手続きと検疫なんかの法的なものと裏向きの紐がついていないかとかの調査だな。

 それから、受け入れ先を選定してどこに誰を送るか面接などして決めてと、それを百数十人規模でするんだ。

 俺もこの後に調査の済んだ代表と面接だよ、お嬢」

 

「うちも手伝ったほうがええやろか?」

 

「いや、こっちもお嬢から副支部長を引き受けたんだ。

 こっちの事はこっちでするとも。

 お嬢は抱えている連中の方を優先してくれ」

 

「おおきにな」

 

 

 今の世界でメシア教の影響が他と比べて少ないのはアジアで、その上で先進国の仲間入りをして安定しているのは日本だけだ。

 だから、目ざとい彼らがこの国を目指して脱出してくるのも当然だろう。

 そこまで話しお礼を言い微笑む千早を見ながら眼鏡を掛け直したウシジマニキは、懐から手帳を取り出すと別の話を始めた。

 

 

「お嬢が欲しがるような相手は今のところ見つかっていない。

 ただ、技術者に関しては海外から逃げてきた連中の中から見繕ってみる予定だ」

 

「うちの形態は神社やけど、個人の信仰はメシア以外は拘らんからそれでお願いするで。

 出来れば、相手が若い女性やと好都合や。

 うちの人なら【余計なこと】は考えんようにしてくれるからな」

 

「……ああ。あいつなら出来るだろうな。

 だてにお嬢の他にも娶っているわけじゃないしな」

 

 

 うっとりとした顔で何かを思い出しながら語る千早に、数秒ほどウシジマニキも口ごもったが見なかった事にして話を続ける。

 

 

「それと淀川を使った【街道】の計画だが、淀川水系のしゅんせつ工事に紛れる形で川底に結界の発生装置を埋設しているところだ。

 お嬢のところは、桂川経由で淀城跡公園にある淀神社に【街道】の出入り口を任せる形になるから藤野さんのところと連携してくれ」

 

「了解や。

 先日も藤野さんからの依頼を受けたところやし」

 

「ただ、途中にある『石清水八幡宮』の封印異界が手強すぎて攻略が不可能な状態なのが問題だ。

 ここの異界の状態が干渉するんじゃないかと危惧されているんだ」

 

「攻略は出来ひんの?」

 

「難しいだろう。

 ショタオジ本人に長期攻略を頼めば可能かもしれないが、出来ない相談だ」

 

「確かに、それはできん相談や。

 本人が仕事を抱え過ぎている状態やからな」

 

 

 何しろ、あの伊勢神宮や北九州の宇佐八幡宮と並び称される【二所宗廟】である。

 【二所宗廟】とは【皇室が先祖に対して祭祀を行う二つの廟】との意味で、祭神も祭神であるからメシア教の事を考慮すれば現状では不可能に近いだろう。

 彼らはお互いにそれは納得して結論を付けた。

 そろそろ帰ろうかと千早が考えた所で、そこにウシジマニキが机の上に数枚のパンフレットを取り出し乗せた。

 それを何気なく見て、千早はとても不愉快な気分になった。

 

 

「うわ。何やのこれ?」

 

「お嬢。最近、ガイア連合のブラックカード保持者の転生者に子どもを望む地方組織が以前に増して増えているのは知っているか?」

 

「知っとるで。

 だからその要請があまりにも多いので、いわゆる【種ごい】を依頼の一環として受け付けるようになっているんやないの?」

 

「ああ。

 でだ、どこから聞きつけたのかそうやって身籠った女性のところにこれが送られるようになったらしい」

 

 

 机の上のパンフレットにはこう書かれている。

 

『シングルマザー(母子家庭)の方、一人で苦労はしていませんか?

 我々はそんなシングルマザー(母子家庭)を手助けするための団体です。

 【お金を作れる力を得る】【共感のできるコミュニティ】【結婚に前向きになれる援助】を実現しています。

 生活に困るなどの悩みや相談はこちらまでお知らせ下さい。

 女性支援団体『ウーマンライツ・ナウ』 代表:幸原みずき』

 

 不愉快そうに顔をしかめた千早はウシジマニキに尋ねた。  

 

 

「それでこれがどうしたんや?」

 

「それの宛先がここでな。

 名前が『高橋なのは』、『華門和』、『吉沢加奈』だった。

 俺の一存でここに保管していた」

 

「なんやの、それは!」

 

「主に、お嬢や山梨の千川への嫌がらせだろう。

 大半の所では無視したようだが、一部のこれに参加した女性によると裏の事情を考えなければ真っ当な活動だったそうだ。

 つまり以前の腹いせに、合法的な手段でこちらに嫌がらせをしているんだろう。

 これで力付くで何かすれば、警察に駆け込んでこっちはダークサマナーやメシア教と同じとでも言いたいんだろう」

 

「ムカつくわぁ、あの女。まだ懲りてへんやったみたいやね」

 

「だから、違法になるような手段はできるだけ取らずにこういうグレーな手段に出たんだろう。

 こちらはこれの相手にしないように通達を出してある。

 お嬢、この女はまだ恨みに思って見ているぞ。気をつけてくれ」

 

「分かったわ、ウシジマはん。それは何かに使えるかもしれへんからそちらで保存しといてや」

 

 

 そう言うと千早はウシジマニキに別れを告げ、関西支部を後にした。

 華門神社に帰るタクシーの車内で、ふと同行していたじゅりが千早に告げた。

 

 

「あの、前になのはさまが『悪い予感がする』とおっしゃっていました。

 もしかしたら、あの神社の襲撃もこれに繋がっているのではないでしょうか?」

 

「可能性はあるかもしれへんな。帰って対策を考えんと」

 

 

 考え込む千早を乗せて車は一路、華門神社へと向かっていた。

 

 

 

 

「ねえ、秋葉。あの人、とても私では付き合えるような人じゃなかったよ」

 

「だから、会いに行くのは止めなさいって言ったじゃない。

 優子もこっちの業界に足を踏み入れたんだから、その辺の常識ももう一度勉強し直すからね?」

 

「はーい」




後書きと設定解説


・敵対者?

【フード カタキラウワ】
レベル3 耐性:物理弱点・火炎弱点・氷結弱点・電撃弱点・衝撃弱点
スキル:突撃(敵単体・小威力の物理攻撃)
    反撃(自分が物理または銃撃属性で攻撃された際に確率で反撃)
詳細:
 華門神社の異界の森に湧くように設定されたノンアクティブの悪魔
 人員の実戦相手と狩猟相手とされているので倒すと豚肉になる
 容姿は従来の物と違って呪殺は出来ず肌が白くて両目がある

【フード オンモラキ】
レベル5 耐性:銃弱点・氷結弱点・衝撃弱点
スキル:アギ(敵単体・小威力の火炎属性攻撃)
詳細:
 華門神社の異界の森に湧くように設定されたノンアクティブの悪魔
 稀にリーダー種が生まれると率いられてアクティブに動くようになる
 人員の実戦相手と狩猟相手とされているので倒すと鶏肉になる
 容姿は走り回る加工済みのブロイラーチキン
 リーダー種はブロイラーではなく日本3大銘柄の鶏肉になるレア種

伊勢神宮祭神:天照坐皇大御神(天照大御神)、豊受大御神
宇佐神宮祭神:八幡大神(応神天皇)、比売大神、神功皇后
石清水八幡宮祭神:八幡大神(誉田別命、比咩大神、息長帯姫命の総称)
※八幡大神は源氏の総氏神


次回は、近いうちに。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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