【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法   作:塵塚怪翁

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続きです。
クライマックスに突入です。


第54話 異界・大阪人工島「夢洲」

 

 

  第54話 異界・大阪人工島「夢洲」

 

 

 『大阪国際情報都市』。

 

 それは、大阪府が80年代に進めていた新都心都市計画の事である。

 大阪湾の埋立地である人工島の舞洲のその南西、大阪市の最西端である夢洲に於いて進められていたそれは、その名の通りITや半導体企業を誘致し流通と情報の中心地“日本のシリコンバレー”を目指していたらしい。

 面積が約390haになる夢洲の南西に完成している大型コンテナ専用の港のコンテナターミナルと、道路沿いに隣接した北側の約50haの部分にビル街を建設する計画だったようだ。

 

 もっとも、その計画は建設の途中で頓挫していた。

 

 その計画に手を上げ強く参加してきたのが当時勢い強く成長中だったIT企業の【アルゴンソフト社】で、関東圏でアルゴンソフトは社の命運をかけた事業を展開する用意しておりその予備として、当時の政府次官の後押しもありここの都市計画に参加したのだという。

 しかし、大阪支社のビルが完成し他のビル群の建設がある程度進んだところで、アルゴンソフトの本社が急に倒産し後押ししていた政府次官も退職となって、現在は再開発費用が捻出できない大阪府によって朽ちるに任せる状態となったはずだった。

 

 

「だけど、そうじゃなかった。

 てっきり本社の方と背後の連中を潰したから大丈夫だと、我ながら見落としていたんだろうね」

 

 

 そう関西支部の会議室で多くの黒札達を前に、ショタオジはいつになく真剣な顔で語っていた。

 

 

 

 

 隆和が狂神アラミサキと化した幸原みずきと戦った日の翌日の午後、関西支部では午前に手隙の高レベルの黒札に緊急案件としてショタオジ自身の名前で招集が掛けられた為、大勢のメンバーが会議室に集まっていた。

 

 ショタオジが分身とはいえわざわざここまで出張って来たのは、隆和のシキガミのトモエの救助を求める通報が原因だった。

 隆和が帰還後、華門神社に来ていた彼は、幸原みずきが持っていた仏像の欠片を受け取りしばらく見ると顔を歪めて隆和たちにこう言った。

 

『これは俺が預からせてもらうよ。

 明日、これに関係した事も含めて招集を掛けるから家で待機していてくれ』

 

 隆和の返事を聞く間もなく彼は姿を消し、翌日のこの招集となったのだ。

 子どもたちと華門神社の事は華門和と吉沢加奈の二人に任せると、隆和はなのはと千早にトモエを伴いここに赴いていた。

 議会進行役となったウシジマニキと壇上に座るショタオジに、サラリマンニキや大佐ニキなど顔見知りがちらちらと混じる室内を移動し隆和たちは後ろの方に座った。

 ある程度集まったと判断したのか、ウシジマニキが話し始めた。

 

 

「今回集まって貰ったのは、『ヒロインズバトル』とか言う携帯用のゲームについてだ。

 この中にも、何人か遊んでいた者もいただろう。

 急にこのゲームが販売中止になって、アンインストールを促す警告表示が出るようになったのは理由がある。

 このゲームをする事によって、とある条件を満たすと遊んでいた人物の意識と言うか【魂がどこかに連れさられる】からだ」

 

「その条件というのは何ですか?」

 

「『ゲームクリア時に最高評価を得ていた10代の少女』。

 これが被害者たちの共通した条件だった」

 

「ちょ、ちょっと待ってください。

 そんな危険なソフトが販売されていたんですか!?」

 

 

 ウシジマニキの発言に、思わず立ち上がって発言する者がいた。

 それは、隆和たちもよく知っている大阪の派出所の一つを任されているサラリマンニキだった。

 その真面目な彼の怒りの表情に、いつもの無表情な顔でウシジマニキは返した。

 

 

「ゲームの審査機関にこんな仕掛けがあるなどと見抜けるわけがない。

 それに、今の日本はオカルト抜きでも年間5桁の行方不明者が出ている。

 数年の内に、年間8万人を越えるだろうという予測もある。

 オカルトの要素が加われば1桁上がるだろう。

 俺たちやショタオジだって万能の存在という訳じゃない」

 

「すみません。

 うちに来ている若い子たちの間でもそのゲームをしている子がいたので、つい」

 

「そういう事情があるならしょうがないが、今は説明を続けさせてくれ」

 

 

 諭されて頭を下げるサラリマンニキが座り、室内がざわつく中でウシジマニキは話を続けた。

 

 

「このソフトの事が判ったのも、前にここで副支部長をしていた『幸原みずき』を監視していたからだ。

 彼女は追い出してからは、嫌がらせのような事しかしていなかったのは知っていると思う。

 特に現地の組織で子どもを作って、母親の実家で育てさせている者はよく知っているだろう?」

 

「…………」

 

 

 室内の何人かの者たちが思い当たる節があるのか、目を逸らしたり面倒臭そうな表情を浮かべている。

 かなり離れた場所に座っていた隆和によく似た姿の男性などは、「俺の所には十数人くらいまとめて来たんだよな」とうんざりした顔で思わず零していた。

 

 

「この幸原みずきだが、先日、悪魔に姿を変えて派出所の一つを襲撃して返り討ちに会い死亡した。

 蘇生は出来ない状態だったので死亡が確定した。

 この女は例のゲームの制作会社の顧問弁護士をしており、今の事態の収拾に走り回っていたのが確認されていた矢先だった」

 

「あのヒステリー女が?」

 

「俺なんか仕事の報告でネチネチ嫌味を言われて腹が立ったが、追い出されて笑っていたのにこれか」

 

「あの天ヶ崎千早とやりあっていた幹部だったよね?

 わたしはほとんど面識はなかったけど」

 

「私も嫌いだったけど、死んで欲しいとまでは流石にねぇ」

 

 

 さらにざわつき始めた室内を余所にウシジマニキは、後ろにプロジェクターを出すとある映像を流し始めた。

 そこには埋立地の人工の一部、夢洲の本来なら壊れたビル群のある場所の周囲が霧か雲のようなものに覆われている姿だった。

 その光景に隆和たちも含めて室内の者が視線を奪われる中、ショタオジとウシジマニキが説明を始めた。

 

 

「これは今朝から確認されたものだよ。

 この映像は関西支部のメンバーが中継して監視している映像だ。

 今、あのエリアは異界になりつつある」

 

「警察の方から前々からここは不良たちのたまり場になっていたので、警らや巡回も多くしていたそうだが出かけて行った者が戻って来ないらしい。

 アメリカから来たコンテナ船『サンズ・オブ・マリステラ』からコンテナが廃墟内にいくつも持ち込まれていると報告もあったそうなので、調査の依頼も来ていた。

 コンテナ船の方は、公安と入国管理局の連中と一緒に調査に行っている者がいる。

 今監視している連中は、その調査依頼を引き受けて慌てて引き返して来た者達だ」

 

「死んだ彼女の事が今回の引き金になったのではと思われる。

 つまり、目的は不明だけど、確認されているだけで千人を越える少女のマガツヒを集めて何かをしようとしている連中があの中にいるんだ。

 そこで皆んなにはあの異界の調査と攻略を頼みたい。

 山梨支部や俺の方は、今は全国的に進めたい計画を進行中で手が離せないんだ。頼む」

 

 

 ショタオジがそう宣言すると、皆一様にしょうがないなという表情になり動き始めた。

 仲間内で相談を始める者やどこかに連絡を始める者などが出る中、ウシジマニキが皆に声をかける。

 

 

「俺たち関西支部は、港湾の一区画に待機所を設置中だ。

 1,2時間で完了するだろう。

 準備の出来た者から順次、そこに寄って突入を開始してくれ」

 

「ああ」「分かった」「了解だ」

 

 

 各々がそう答えると、皆、足早に部屋を出ていく。

 隆和たちも準備のために一度戻ろうと立ち上がった時、ショタオジが声を掛けてきた。

 

 

「アーッニキ」

 

「どうした、ショタオジ?

 これから俺らも準備をしに戻るつもりなんだが?」

 

「今回の一件、アーッニキの周囲から全部始まっているのは判るよな?

 そういう場合は得てして、事態の解決の最後にまで絡むことになるよ。

 うちのメンバーは、何人もそういうパターンを経験しているから気をつけるんだ」

 

「ああ、ありがとう。

 最大限の準備をしてから行く事にするよ」

 

「必ず戻ってきてくれよ。

 国内にちょうどよく出来たいつでも行ける夏の浜辺の秘密の休憩所とか、他に無いんだし」

 

「それが本音か!」

 

「ハハハ。それじゃ、頑張って」

 

 

 そこまで言うと、ショタオジはウシジマニキと部屋を出て行った。

 それを見て、千早が声を掛けてきた。

 

 

「隆和はん。

 うちでは戦場に一緒に行くのは出来へんから、ウシジマはんの手伝いをしてくるわ。

 必ず戻って来てな。

 ショタオジが出張って来るなんてただ事やないんやから」

 

「ああ。分かっているよ。千早、ここの事は頼むよ」

 

「判ってるで。

 なのははんとトモエには彼の事を頼むわ」

 

「もちろんなの」

 

「主様を絶対に守ります。もうはぐれません」

 

 

 そう言い合うと、彼らも各々の目的のために部屋を出て行った。

 

 

 

 

 一方その頃、夢洲の南にある貨物コンテナ用のターミナル港では、公的機関の人員をサポートするために一緒に大型コンテナ船『サンズ・オブ・マリステラ』の査察に踏み込んでいるナイスボートニキたちの姿があった。

 

 彼の側には宙に浮く球形のロボット型のシキガミのコズワースに、先日の16歳の誕生日に無事彼を押し倒して正式に突き合い出した百々地希留耶、狙っていた彼女が男と付き合い出して心のなかで泣いているが心配なのでついて来た腐百合ネキの姿があった。

 

 警察や公安など多くの人員と一緒に来た彼らだったが、オカルト的なものは一通り発見できなかった為にこの船のブリッジクルーを見張るために操舵室に来ていた。

 4人は少し垂れたのか、雑談を始めていた。

 

 

「そ、それでキャルちゃんからアプローチを掛けちゃったの!?」

 

「そうだよ。

 なのはさんも千早さんも徐々に距離を詰めて一気に行けって、アドバイスくれたの。

 準備とかも色々してくれて、こうやって正式に彼女に成れたんだ」

 

「へ、へー。そうなんだぁ。そうなんだぁ、ハハッ」

 

「その話は別の機会にしよう!

 今は仕事に集中した方が良いとオレは思う!」

 

「旦那様。

 後回しにしても過去は変えられませんよ?」

 

「分かっているんだよ、わかっているんだ。コズワース。

 それでも視線を逸らしたい時はあるんだよ。

 そ、それより、あれは何か解るか?」

 

 

 ナイスボートニキはあまり触れて欲しくない話題を避けるように、操舵室の窓から見える島の上に掛かった分厚い雲のようなものを指さした。

 体から突き出たカメラでコズワースは分析した。

 

 

「詳しい事は判りかねますが、異界の外殻の可能性があります。

 山梨支部のデータベースに前例がございました」

 

「あれが異界の外側だって?」

 

「雲にしか見えないね」

 

「それじゃ、隆和さんたちみたいな実力が上の人達はあそこに行くんじゃないのかな?」

 

 

 腐百合ネキがそこまで言った時、船の最下層で閉じられていた動力室の扉がこじ開けられた。

 それと同時に船内放送が鳴り、船長を始め船内の船員たちが一斉に叫び始めた。

 

 

『時間です。

 さあ、奇跡の始まりを告げる鐘を高らかに鳴らしましょう!』

 

「「「天にまします我らの父よ。

   願わくは御名を崇めさせたまえ。

   御国を来たらせたまえ。

   御心の天になる如く、地にも成させたまえ。

   アーメン!!」」」

 

「何か、ヤバい! 早く逃げ……」

 

 

 ナイスボートニキがそう叫んだ瞬間、大きな揺れが襲い船が傾き始めた。




後書きと設定解説


・関係者

名前:腐百合ネキ(桂木美々) 
性別:女性
識別:転生者(ガイア連合)・17→18歳
職業:ガイア連合山梨支部連合員
ステータス:レベル14→15・スピード型
耐性:破魔無効・呪殺耐性(装備)
スキル:トラフーリ(戦闘脱出)
    トラポート(長距離転移)
    エストマ(敵遭遇率低下)
    スクンダ(敵全体・命中と回避低下)
    迅速の寄せ(素早さと先制率上昇)
    逃走加速(逃走確率の上昇)
装備:軍用バックパック(耐刃防弾仕様)
   呪殺耐性の指輪
詳細;ガイア連合員専用の物資の配達をする部署の関西方面担当の一人
   テレポート地点はBL本を買った思い入れのある場所が基点となる
   最近は視界内に複数人まで転移するなど成長をしている
   異能ではなく趣味のことで家族と疎遠になり家を出た
   友人の手で腐海に引き込まれ、貴腐人と百合モノ好きになった。
   実家は地方の大病院で黒医者ニキが親戚で身元引受人
   

【挿絵表示】

腐百合ネキのイメージ図

ナイスボートニキの現在のデータは、37話を参照して下さい。
百々地希留耶の現在のデータは、43話を参照して下さい。

現在、コロナ療養中につき、しばらくお待ち下さい。


次回から、異界突入。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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