【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法 作:塵塚怪翁
第55話 アルゴンソフト大阪支社ビル、突入
「僕も行きます! 友だちを助けたいんです!」
「どうしても行くのかい?」
「はい!」
「じゃあ、約束をしてくれ。
必ず華と一緒に行動する事と、現場では俺かなのはの指示には従う事だ。
約束できるかい?」
「…はい!」
「華、彼女の側を離れないようにな。
この子は、危なっかしいから見てやってくれ。なのはも頼む」
「はい、先生! 目を離さないようにするね」
「判ったの。飛び出さないように見ておくの」
「…うう」
会議の後に隆和たちは一度、華門神社に戻ると異界に行く準備をし移動を始めた。
デモニカーに乗って異界に乗り込むのは、隆和とトモエにカーマのいつものチームに、なのはと夜刀神華、それに立候補して来た岸辺奏多の現在前線に出られる3人だった。この6人と用意していたアイテム類を荷台に乗せると車は一路、異界側の合流地点へと走って行った。
移動中の車内で、隆和はなのはから奏多について話をされた。
「隆和くん、奏多ちゃんなんだけどこの件が終わっても家で住まわせあげて欲しいの」
「俺としては構わない。
確か、うちの神社の巫女のうち数人が相手を見つけて出て行ったから空き部屋はあると思うが、何があったんだ?」
「…………」
俯いている彼女をちらりと見てから、なのはは話し始めた。
「千早から聞いたんだけど、彼女のご両親が彼女の引き取りを拒否したって。
話は最初聞いてくれたんだけど、奏多ちゃんを見せたら鼻で笑われたらしいの。
『そんな馬鹿な話があるはずがない』って言われて!」
「元々うちの両親、性格が合わなくなって別れる寸前だったみたいです。
僕が高校を出たら離婚しようと、二人で決めていたらしくて。
二人とも、オカルト関係はまるで詐欺だと決めつけて信じない人達でした。
僕がいろいろと思い出を話しても、やっぱり駄目でした。
『どこで聞いたんだ!? 息子をどこにやった!?』しか言わなくて」
「まだ半年も経っていないのに、早々に失踪届を出して離婚調停中だって言うの!
まるで居なくなって良かったとでも言いたい様子なの!
最後には『金が目当てなのか?』って、通報までしようとしたらしくて!
自分の子どもを何だと思っているの!」
「奏多、元気だして。
僕や先生や皆んなは奏多の側にいるからね?」
「……うん」
話している内にヒートアップしているなのはと、訥々と語る奏多と隣で励ましている華。
トモエのナビに従いつつ、デモニカーの運転を監視している隆和はこう述べて締めくくった。
「うちは何人か君みたいに、こういうトラブルで身元を引き受けているから大丈夫だよ。
今回の件が終わった後に、うちでゆっくり今後どうするかは考えなさい。
俺やなのはに皆も相談には乗るから」
「そうなの。
今はこれから行く所で友だちの事にだけ集中しましょうなの」
「はい!」
†
隆和たちの車が大きなコンテナトレーラーが通るための橋を渡り指定された集合場所に着くと、そこは大変な光景が広がっていた。
周囲の人の話では、集合場所近くの港で大型のコンテナ輸送船が動力部の爆発で沈んだらしく、大勢の警察や救急車両が港側にいて現場でマスコミや見物目当ての野次馬の車など交通規制を始めていた。隆和たちのデモニカーも一時、検問で停められたがガイア連合の関係者だと判ると、バリケードの壁で囲まれた集合場所への道に通された。
そこは建設現場などでよく使われる簡易的な壁で覆われ、大型のテントの下に机や椅子が並べられ関西支部のスタッフと思われるメンバーが走り回っていた。目の前に街そのものを覆う大きさの雲の壁を見つつ、車から降りてきた隆和とトモエは受付らしい場所に向かった。
入り口にしている雲の壁の方には女性用の色取り取りの衣装を纏ったマッチョ集団の関西支部支部長率いる『シックスバックレディース』の面々が警護しており、受付を済ませたガイア連合のチームが続々とその横を通って中へと入っていくのが伺える。
隆和は受付にいたよく知る人物のもとに向かった。
そこには受付業務を手伝っていたナイスボートニキがいて、お互いに複雑な顔で挨拶すると話し始めた。
「…よう、ナイスボートニキ。ここにいたのか?」
「や、やあ、アーッニキ。たまたま、港の方でトラブルに巻き込まれてさ。
後から来た関西支部の人たちに手伝うように頼まれてここに居るんだ」
「……希留耶は? 一緒に出掛けたと聞いたんだが?」
「あ、ああ。
沈みかけた船から脱出する騒ぎがあったんでさ。
腐百合ネキがたまたま一緒にいたんで、彼女のトラポートで一足早く帰したよ」
「向こうの港のアレか。……無事なんだろうね?」
「も…、もちろん。
変なものを見たんでびっくりしていたけど、怪我一つしていないさ。
船が沈み始めると、船員たちが一斉に神に祈り始めるだなんてあの光景はホラーだよ」
複雑な表情の隆和の横で『全部知っていますよ』と言わんばかりの笑顔のトモエと車から彼を見るなのはの方は見ないようにしつつ、ナイスボートニキは答えた。
「そうか。
それで港の方に、テレビ局のヘリも飛んでいるけど大丈夫なのか?」
「こっちの雲の方は未覚醒の人には認識できないみたいでね。
警察の監視もあるし、こっちには来ないと聞いているよ。
アーッニキたちも中に行くんだな?」
「ああ。
俺とトモエとカーマに、なのはと夜刀神華と岸辺奏多にデモニカーの7人だ」
「既に何人かの人たちが先に行っています。
たくさんの天使が中で飛んでいるらしいので気をつけて」
「ああ、ありがとう。
それと、今度時間を作って欲しい。
希留耶の事について色々と話し合おう、な」
同じ側に来た相手を見る目の隆和にポンと肩を叩かれて硬直したナイスボートニキを後に残して、ニコニコと笑顔のトモエを引き連れて隆和は車に戻るとデモニカーに乗ったままその中へと続く道路を通り雲の中へと走って行った。
†
「何だこりゃ?」
「訳が分からないけど、天使がいっぱいいるなんて碌なことにならないの」
デモニカーごと異界に侵入した彼らが見たのは、一種異様な光景だった。
一面の曇り空の中を廃墟と化したビル群が中央の4車線の道路を挟んで並ぶその異界は、無数の【天使エンジェル】が空を舞う様子がまず目に入った。その天使たちは口々に賛美歌を口ずさみながら、異界に侵入したガイア連合のメンバーたちが奥に向かうのを邪魔している。
それもこちらからの攻撃を避けはするもののその場を動くことはなく、ただひたすらに『アヴェ・マリア』や『レジーナ・チェリ』などを歌い続けながらこちらの侵入を阻むという異様な行動を取り続けている。
そして一番目につくのは、その異界の奥にある最もビルの形を残している『アルゴンソフト大阪支社ビル』だろう。
30階建てはあるだろうそのビルを取り囲むように天使たちが舞い、曇天の空からそのビルにのみ雲の切れ間から光が差すという聖書に載っているかのような光景がそこにあった。
女神転生の世界において天使が群れ集うこのような光景はメシア教の信者以外には悪夢の象徴でもあり、ガイア連合のメンバーにとっては大きなトラブルが起こる前兆でもある。そう考えているからこそ他の地方から応援に来ているメンバーも含めて突破しようとしているが、数が多すぎて手をこまねいている状態であった。
その複数の集団の一つに、隆和は顔見知りの大佐ニキを見つけ車を寄せた。
彼らはいつもの戦術の通りに、大型の装甲服に大きな盾を持たせた数名の隊員を壁にしながらジリジリと前進を続けているようだった。
「大佐ニキ!」
「おっ、アーッニキに魔王ネキも来たか。
しかも車に乗っているとはな、どこで手に入れたんだ?」
「山梨支部の車両開発班で手に入れたよ。
それより、状況は?」
「見ての通り10レベル前後のエンジェルしかいないが、前進するのにも湧いてくる数が多すぎてあのビルまで近づけない状態だ。
空が4で、害鳥共が6だ。
続々と応援は来てくれているが、それ以上に湧いて来て人手が足りない状態だよ」
「ここは俺らが突破してみるつもりだ。
こうやって車もあるし、火力もうちのなのはがいるしな」
「任せて欲しいの」
「それならとりあえず、あのビルの入り口を確保してくれ。
俺たちが後に続く。幸運を」
「わかった。なのは」
隆和に声を掛けられ車の窓から上半身を乗り出したなのはが、両手を突き出し叫んだ。
「いくの! 【コンセントレイト】、【メギドラ】!」
「よし、出るぞ!」
「なのはさん!」
「待ってな、わひゃああ!」
なのはの放った範囲万能魔法により前方に広がっていた天使の群れに穴が開いた。
そこを目掛けて隆和が声を出すとデモニカーが大佐ニキたちの隊列の横をすり抜けて走り出し、バランスを崩したなのはを華と奏多が慌てて引っ張り込むとデモニカーは急速にスピードを上げて、そのまま直線で道路を突っ切り群れの間をくぐり抜けて躍り込んだ。
デモニカー自身の【押しつぶし】による体当たりで前方に出て来た天使を跳ね飛ばし、窓から体を出して放たれた華の【ファイアブレス】やカーマの【天扇弓】で近づいてくる天使の群れを排除しながら彼らは進んだ。
見えてきたビルの正面入口には、多数の天使たちが群れて集まりその身をもって障害となろうとしているのが見えた。
それを見た隆和はなのはに声を掛けた。
『我々のその身に変えてもあの方の降臨の邪魔はさせるな!
おお、主よ! 御身、照覧あれ!』
「このままあそこに突っ込むぞ!
なのは、もう一度頼む!」
「わかったの! 【コンセントレイト】、【メギドラ】!」
再び、なのはの範囲万能魔法がビルの入口付近に炸裂し大爆発が起きた。
そして、入り口ごと吹き飛びマグネタイトの霧に消えようとする天使の群れを突っ切って、デモニカーはそのスピードのままに彼らを乗せたまま入り口の中へと突入したのだった。
後書きと設定解説
家族が仕事先から持って来たコロナにかかって、自身も体調不良が続きゴタゴタしていたので遅くなりました。
また、そのコロナで高熱を出した家族が緊急搬送で入院し、続きは今より不定期になるかもしれません。
続きは暇を見て終わりまで書いていくつもりです。
読んでくださった方がいるならありがとうございます。