【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法   作:塵塚怪翁

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続きです。


第57話 聖女マリア

 

 

  第57話 聖女マリア

 

 

「【ラピッドニードル】!

 よう、こっちの状況はどうだ? 大佐二キ」

 

「ああ。見ての通り、多少は数が減ったが前に進めん。【マハラギ】!」

 

 

 隆和たちがビルの中に突入した頃、異界の入り口付近ではガイア連合の黒札たちがエンジェルのあまりの数の多さに強力な範囲魔法を持つメンバーがいる彼らでも攻めあぐねていた。

 

 彼らの前にいるのはアナライズするならば、レベル40【軍勢エンジェルの群れ】である。

 HPとMP以外の強さやスキルは個々のエンジェルとそう変わらないが、軍勢ゆえの行動回数の多さとタフさに加えて奥にあるアルゴンソフトビル付近から天使が湧き続けていてまったく数が減らない状態が続いている。

 彼らの目的がこちらの足止めであるならば、こちらの火力以上に数が減らないのだからこれ以上の適任はないだろう。

 軍勢ゆえの密集率により範囲攻撃や全体攻撃の方が減りは早いが、減らした分が向こう側からすぐに合流して来るのでデモニカーのような高速移動手段が無いとじりじりと進むより他になかった。

 

 現在、ガイア連合側の左右はそれぞれ他の地域から来てくれた応援のメンバーが攻めており、大佐二キを中心とした関西支部の面々は中央を受け持っていた。

 指揮をしながらも時折自分も火炎の範囲魔法を放つ大佐二キに、ここに参加していたくノ一姿のシキガミを連れたサラリマンニキが話しかけた。

 

 

「おう、サラリマンニキ。

 少し前に、アーッニキが魔王ネキと一緒に車で突っ込んで行ったぞ。

 こっちに来る数が若干減ったのは、彼らのおかげだな」

 

「これだけ大量に召喚しているんだ。

 さぞ大量のMAGの備蓄があるんだろうが、どれだけいるんだか」

 

「でも、召喚するのも種切れが近いようだぞ」

 

「どうして分かるんだ?」

 

 

 サラリマンニキがそう聞くと、チャクラドロップを噛み砕きつつ大佐二キは一番奥のビルを指差した。

 

 

「あれを見ろ。

 天使共、ビルの周りを囲うように飛び回りながら歌を歌っていたのがもういない。

 こっちに来て合流するか、ビルの入口に殺到しているかだ」

 

「そういえばこっちに攻撃している連中も、足止めを止めてこっちに攻撃しているな」

 

「中で何かあったんだろう。

 しばらくすれば、我々もあのビルの入口まで行けるだろう」

 

「心配だから早く向かいたいんだがな……」

 

 

 そこまで話した途端、大きな爆発音と小さな地揺れが発生した。

 二人が見ると、離れた場所にある最奥のビルの入口の外側で粉塵が舞っているの見えた。

 

 

「魔王ネキの【メギドラ】か。巻き込まれるのはゴメンだ」

 

「ああ。うかつに近づき過ぎると巻き込まれかねん。

 近くまで行ったら、声を掛けるなりしないといかんな」

 

「それじゃそのためにも」

 

「目の前の害鳥を駆除しないとな」

 

 

 そういうと彼らは、お互いにエンジェルの軍勢へと攻撃を再開した。

 

 

 

 

「【メギドラ】! 

 こっちは手が離せないから、そっちの人たちはお願いなの!」

 

「わかった!

 奏多、この機械の止め方って判る?」

 

「華ちゃん、僕にも解んないからとりあえず叩いてみたら?

 こっちは、この辺のテントとかの布を破って手足を縛ろうか?」

 

「縄とか無いしそれでいいんじゃないかな?

 この人達には丁寧にする必要もないし。

 こっちもやろうかな。……あ、力入れ過ぎた?」

 

 

 隆和たちが地下でジェレミエルと戦っている頃、入口付近ではなのはが例の白いドレスのような霊装を纏い仁王立ちして入り口から入り込もうとする天使たちを吹き飛ばしていた。

 また、隆和たちが突入した際に天使たちは倒して行ったが、その場にいたメシアン達は岸辺奏多と夜刀神華の二人の少女たちによって殴り倒されて拘束している途中だった。

 なお、天使を召喚していた機械類は気持ち悪く思っていた二人によって、止め方も解らないのでとりあえずにと華が雑に叩いた結果全部殴り壊されていた。

 倒れ伏しているMAGの材料にされていた男達は既に痙攣するのみだったので、二人に雑に飲料型の傷薬を全身に振りかけられて放置されている。

 

 

「あの人たち、大丈夫かな?」

 

「先生たちの事?

 それなら大丈夫だよ。だって、強いんだもの」

 

 

 一段落ついて、奏多がふと地下に続く階段の方を眺めているのに気付いた華が話し掛けた。

 

 

「うん。それは知っているよ。

 でも、単純な強さだけじゃ相性が悪いと勝てないって教えてくれたのは華だよ?」

 

「私の知っている事も先生やなのはさんたちから聞いた事だから、あまり偉そうに言えないけどさ。

 あの人を見てよ」

 

「なのはさん?」

 

 

 華は入り口付近で天使たちを粗方メギドラで吹き飛ばし、休憩がてら手を腰に当ててチャクラポットをラッパ飲みしているなのはを指差した。

 

 

「あれだけの威力の魔法を連発するなのはさんを奥さんにして、数日置きにベッドで愛でまくって子どもまで作ったのが先生なんだよ?」

 

「うん。そう言われると確かにすごい人だね。隆和さん」

 

「…? なに?」

 

 

 二人に見られている事に気付いたなのはが振り返って問いかけた。

 

 

「「何でも無いです」」

 

「そう? じゃあ、そっちが終わったらこっちの方も手伝って欲しいの」

 

「「は~い」」

 

 

 首を傾げて不思議そうにしているなのはにそう答えると、二人はなのはを手伝うべく歩いて行った。

 

 

 

 

 金庫のような扉を潜り緩やかに下る廊下を、隆和とトモエそれにカーマたちは奇襲を警戒しながらも足早に下りて行った。

 既に走り去った賀来の姿はなく、薄暗い廊下を弱い灯だけが照らしている。その廊下の先にまた金属製の扉があったがそれは開け放たれ、中からは二人の男の言い争う声がして何か機械が作動する音が聞こえてきていた。

 その音を聞きながら隆和たちがその部屋に入ると、そこには異様な光景が広がっていた。

 

 その部屋の広さは学校の体育館ほどの広さだろうか、入り口のある面を除き全ての壁一面には少なくとも百以上の金属製のバスケットボールが収められる位の大きさの円筒形の筒が埋め尽くしており、リノリウムの床の先の一番奥には人間一人が収められる金属製のポッドとそれに付随した機械類が置かれた部屋であった。

 彼らは知らない事だが、周囲の壁を覆い尽くしている金属の筒はマグバッテリー代わりのクローン培養された脳が収められているメシア教由来の悍ましい技術の産物である。

 

 

「おお! 聖母よ! 降臨されし救いの母よ!

 我らが前にまた救世主を遣わし給え! エイメン!!」

 

「違う! 彼女は僕のためにここに来てくれたんだ!

 お前らや天使どもの為じゃない!

 ああ、マリア! 僕の伴侶として生まれたマリア!

 僕の手を取って微笑みかけてくれ!」

 

『…………はあ』

 

 

 その部屋の一番奥には、機械の端末の横で“それ”を狂喜の笑みで見つめるハワードと思われる白人の男と“それ”を目の当たりにしてこちらも狂信の笑みで手を広げて喜ぶ賀来、そして蓋が開きそこから出て来たと思しき白い花嫁衣装を纏った人形のような白人の少女が立っていた。

 その隆和の目にはレベル??【デモノイド マリア】と映る少女の姿の悪魔は、人とかけ離れたその美貌で周囲を見渡して状況を大まかに把握すると大きくため息を付いた。

 その反応に疑問の顔の二人と自分に対して警戒している隆和たちを見ると、彼女は彼らに声を掛けた。

 

 

『貴方がたの要望を受け入れる事は出来ません。

 本来ならば、私は主の御元にて召喚されること無く見守るつもりでした。

 なれど、このような形でこの地へと呼び出されてしまいました。

 それは、この地に大いなる災いを招くのですよ?』

 

「な! 私は主の威光を新たに示すためにも貴女が必要なのだ!

 あの四大天使共を掣肘し従えられる救世主を再び!

 そうすれば災いなど抑えきれる!」

 

「だから、彼女は聖母自身でなく僕の技術で生まれたマリアだ!

 災いなんて知らない! 彼女は僕の花嫁とするんだ!」

 

 

 彼女が否定しても自分の考えのみをまだ叫ぶ彼らから、彼女は隆和たちの方に視線を向け話しかけてきた。

 

 

『貴方がたは少しお黙りなさい。

 ……ふう。

 それで、そちらの方々は私に何か要望でもあるのですか?』

 

「俺たちガイア連合にはあんたに求める事なんぞない。

 強いて言うなら、呼び出されるつもりがなかったのなら消えてくれ。

 この事態を引き起こした後始末してな」

 

『…なるほど。そうですか』

 

「……それだけか?

 この天使だらけの異界のボスだろう?

 『主の威光を~』とか言って襲ってこないのか?」

 

『? 何故、戦う必要が?』

 

「え? メシア教や大天使の関係者ならここは襲ってくる所だろう?」

 

『貴方がたは貴方がたで失礼ですね?

 過激派の天使たちと一緒にしないでください』

 

「主様、変です。メシア教の関係者なのにすごい理性的です。

 あと、違和感もすごいです!」

 

「私みたいに女神と地母神に近いようだから、理性的なんじゃないですか~。知りませんけど」

 

「基本的に敵対するかすり寄って来るかしか見た事がないから、俺も対処に困るな。

 ……さて、どうするかな?」

 

『本当に失礼ですね』

 

 

 戦力として警戒すべきマリアの方を見つつ相談を始めた隆和たちを見て、彼女は取るに足らないと賀来とハワードを視界の外に置いた。

 彼女の視線が外れ意識が彼らから他に向けられたと知った賀来とハワードは、この状況を己の有利なものとすべく行動に移った。ハワードは機械の端末に飛びつきプログラムを起動し、賀来は今まで多くの相手に通用した切り札を使い彼女に干渉を始めた。

 しかし、その行動は逆に彼ら二人に不利なものとなった。

 

 

『…………』

 

(何だ、おかしい? 

 彼女の肉体に仕込んでおいた制御コードが反応しない!? 何故?)

 

(私の【チャームアイ】が一切効かないだと!?

 あのジェレミエルでさえ、こちらの意見を飲ませる程度には効いたのに!)

 

『…愚か者』

 

「……は?」

 

 

 彼女にとって理解の出来ない事をしているハワードはともかく、自分を直接魅了して支配下に置こうとした賀来は許しがたいものだった。

 マリアは衝動的に左手に持ったままだった衣装のブーケをそのまま賀来に叩きつけた。覚醒しているとはいえレベルが2桁になったばかりの彼にそのレベル差からくる力の差に耐えられるわけもなく、彼に当たって散弾銃の弾丸のようにはじけた花束によって上半身をずたずたにされ賀来は呆気なく意識を失った。

 賀来を取り押さえようとしていたトモエと必死に端末を操作していたハワードを取り押さえて捕まえた隆和、倒れた賀来に傷薬を掛けて足で突ついているカーマ、最後に自分に対し愛情というより執着を見せていたハワードを冷たく見下ろすとマリアはさっさと終わらせる事にした。

 

 

『ガイア連合の方、それでは私はそろそろ戻る事と致します。

 この件で被害に合われた方については、この分霊の一命を持って救い上げる事と致します。

 ただ残念ながら、この体の元となった二人の蘇生は叶いませんのでその魂はこの地の黄泉神にお任せするように渡しておきます。

 では、後始末はお任せしますのでよしなに。【リカームドラ】!』

 

「いや、ちょっとま……」

 

 

 隆和が止める間もなくマリアは自己犠牲蘇生魔法のリカームドラを唱えてしまう。

 そして、一礼をするとマリアはそのまま赤いマグネタイトの粒子となって肉体諸共に消えてしまった。

 隆和たちにとっては何がなんだか判らない内に消えてしまった彼女だが、ハワードにとっては自らの恋人となるべき女性を永遠に失う事になったこの事態に彼は絶叫を始めた。

 

 

「ア、アア、アアアアアアアアアアーッ!!!」

 

「お、おい。静かにしろ!」

 

 

 火事場の馬鹿力か突然の絶叫に隆和が驚いた結果か、右腕を自由に出来たハワードは端末のキーボードに素早くある語句を打ち込んだ。

 

『Love is as strong as death,My feelings for only you are as unchanging as the grave.

 (愛は死のように強く、あなただけを思う気持ちは墓と同じように変わることはない)』

 

 隆和が慌てて取り押さえたが、語句を打ち終えたハワードは笑い出した。

 

 

「ハハハハハッ!

 彼女は失われた! もう二度と戻らない!

 それならば、いっそ全てを灰にしてやる!!」

 

「何をしたっ!?」

 

「貴様らには何もくれてやらない! 天使たちにもだ!!

 “我が魂は聖母のもとに!”」

 

 

 隆和が襟首を掴み怒鳴りつけるがそれを無視し、ハワードは叫び終えると全身が炎に包まれた。

 それは元々は作り出した人造悪魔を処分するのに体内に埋め込む為の発火装置であったが、基本的に周囲を信頼しなくなった彼が万が一のために自分の体内にもそれを埋め込んでいた物である。この世で唯一信頼していたマリアに拒絶された彼に躊躇する必要は無くなった結果、彼はこの装置を作動した。

 

 

「ハハハハハッ!」

 

「くそっ!」

 

「主様! 周囲の様子が変です!」

 

「ここ、崩れるんじゃないですかっ!?」

 

「ちっ、脱出するぞ! そこの神父は担いでいく!」

 

 

 隆和が笑いながら炎の中に消えていくハワードを見ていると、周囲が揺れ始め壁から崩れ始めた。

 そして倒れていた賀来を掴み上げると隆和たちは、脱出するために入り口から走り出して行くのだった。




後書きと設定解説


・敵対者

【軍勢エンジェルの群れ】
レベル40 耐性:火炎耐性・電撃耐性・衝撃耐性・破魔無効
スキル:マハジオ(敵全体・小威力の電撃属性攻撃)
    マハンマ(敵全体・低確率で即死付与)
    メディラマ(味方全体・HP大回復)
    2回行動
詳細:
 ここの異界で召喚された「天使エンジェル」のみで構成された軍勢
 軍勢のために行動回数が増え、通常攻撃も3~4回となる
 また、最奥のボスを倒さない限り召喚が続きHPが自動回復する
 ただし構成の都合上、HPとMP以外の強さはレベル10エンジェルと同じ 

名前:賀来美知夫(がらいみちお)
性別:男性
識別:異能者・32歳
職業:メシア教穏健派司祭
ステータス:レベル12・マジック型
耐性:破魔無効
スキル:ディア(味方単体・HP小回復)
    マハンマ(敵全体・低確率で即死付与)
    リカーム(味方単体・戦闘不能をHP半減で回復)
    チャームアイ(敵単体・高確率で魅了付与)
    説得・引き止め
詳細:
 穏健派に所属する司祭である美形の日本人の神父
 マーテルの養父であり、広野勇気の身元責任者もしている
 主のご意思のもとに全てを利用すべきと考える狂信者
 彼の思う「主の意思」とはジェレミエルの教育(洗脳)によるもの

名前:ハワード・ヒューイック
性別:男性
識別:異能者・38歳
職業:メシア教所属技術者
ステータス:レベル10
耐性:破魔無効
スキル:銃撃(敵単体・小威力の銃属性攻撃)
    アイテム作成(専門の霊装アイテムの作成技術)
    コンピューター操作(プログラム作成含む技術)
    心霊手術(霊的な要素も含む外科的処置が可能な技術)
    適切な処置(戦闘時以外で味方一人の状態異常を医療処置で回復)
装備:呪殺や状態異常を無効化するアイテム類
   自裁用の体内埋め込み式発火装置
詳細:
 メシア教過激派に協力していたが発明品を守るため逃げ出した技術者
 ボサボサ髪で痩せぎすのメガネを掛けた如何にもナードな白人男性
 聖母マリアを至高の女性として創り出して恋人にする理想を持つ夢想家
 デモノイドの開発者で、「マリア」の依代に相応しい至高の肉体を探している
 賀来神父と大天使ジェレミエルの導きで脱出した

【デモノイド・マリア】(ボス)
レベル?? 耐性:電撃無効・衝撃弱点・破魔無効・呪殺無効
スキル:マハンマオン(敵全体・中確率で即死付与)
    無原罪の祈り(敵味方全体・全ての補助効果を打ち消す。
           自身のHP小回復)
    子守唄(敵全体・中確率で睡眠付与)
    リカームドラ(味方全体・HPを完全に回復した状態で蘇生する。
           使用後、術者は死亡する)   
詳細:
 未熟な諸々の技術で受肉降臨した劣化している一神教の聖母
 ハワードが求めてやまない至高の恋人の化身となるはずだった
 様々な手に入ったマリアに関する物全てが材料として使われている
 天使と化したマーテルと広野勇気の素質ある身体が肉体の素材
 ※ボス補正によりHPとMPは増大し、破魔・呪殺は無効化、状態異常も耐性がある


次回、最終回。
読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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