【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法   作:塵塚怪翁

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続きです。
いよいよ、事件開始。

現状の時系列は、本編第8話の間に飛んだ数年間の頃です。


第6話 異界突入 

 

 

  第6話 異界突入

 

 

 ここに来てから、2週間ほどが経過した。

 

 ここは依頼を取り扱う場所ではなく純粋に宿泊だけを目的にした施設のため、人員配備や仕事の割り振りなどで他の出張所より早く業務が流れるようになったのは、現場で不満を言っていた地方派遣の人員にはありがたい話ではあった。

 例えば、

 

『地方に派遣されて地元神社とかホテルで泊めてもらえても、1日休んだ程度じゃあんまり体力回復しないからなぁ』

 

『簡易式神買ってむりやりディア覚えさせたけど、地方だとわりと焼け石に水感が強い』

 

『式神側の回復は霊地によって回復力がもろ影響出るからなぁ』

 

『ガイアレトルトカレー以外では地方の回復効果のある食事は味が終わっている』

 

 などの不満や意見が掲示板や現場の愚痴で出されていた。

 それに対応するためにこの場所が用意された理由でもある。

 

 大阪の霊地は何と言っても、石山本願寺の本拠となり太閤豊臣家の象徴でもある大阪城が霊脈の中心である。そのためこの場所は、北から流れ込むラインの上にありちょうど霊穴が吹き出す所でもあったので、事故物件になって異界が出来かけていたのを抑えた物件だった。

 とにかく大阪で泊まれる場所を早くという意見から、箱だけ造って人員が揃い次第始められるようになっていた。

 スタッフも後から加わった転生者が事務と部屋担当の女性が3人で、彼女らはスタッフを直接見る立場になりサラリマンニキとなのはの直属になる。

 他の清掃やメンテナンスにカフェスペースなどのスタッフは、隆和たちと身元調査を終了した現地民を使っていて補佐として希留耶も手伝っている。

 あとは施設付属のシキガミとして、毒物の混入などを防ぐためにオスのアイルー型シキガミの『料理長』が配属されて来ているくらいだろうか。

 なお、地下の警備モニター室とサーバー室はナイスボートニキのテリトリーとなっている。

 

 仕事にも慣れ、そろそろ入れ替わりで異界でレベル上げなど修行を再開しようかと現場にも出たい組が話していた時にその依頼が来た。

 ガイア連合の査定を経由したちゃんとした依頼である。

 

 その内容は、『異界で行方不明になった人員の調査』であった。

 二日前に地元では高レベルの名家の男性が、郎党と傭兵を雇って現在は止められていた異界の浅層突入を強行して行方不明になったので痕跡だけでも見つけて欲しいというもので、依頼元の斉門珠希と言う女性が彼は知人で家でも優秀な跡取りだったので見つけて欲しいのだと個人的に報酬も用意したという内容だった。

 ただ、不可思議なのは隆和を名指しで指名している事と目的地の異界が大きいために依頼料もそのため高額になっているのに了承されている点だろう。

 添え書きに理由として、彼自身に過去に事件を解決して貰ったからだとあった。

 

 隆和は考えた。

 彼としては覚えがないが、ガイア連合の審査を通っている以上受けるつもりでいた。

 彼のレベルは今、39である。しかし、現状では師匠の異界の最奥に到達し約束を果たせない。

 守るものが出来た今ではかつてのように、あの仏像となのはの火力を宛にしてのがむしゃらなレベルアップはもう出来ないしするつもりもない。

 だが、今の自分ならば。ガイア連合での貢献を積んで異界攻略の手助けを求められたら、もしかするかもしれない。

 そしてその暁には、先日注文して取り寄せた簿記とマイクロソフト・オフィス・スペシャリストと秘書検定の参考書も無駄にはならないだろうと。

 

 

 

 

 翌日、彼らは社用の白の大型バンの車中にいた。

 運転しているのは隆和で、助手席にトモエがいる。

 後ろには、サラリマンニキとナイスボートニキがいた。

 後ろの二人が来たのは、依頼が捜索であって吹き飛ばしていい物ではないからである。

 指定場所への現地集合のために今は移動中であるが、ラジオやCDは付けないため静かな車内に耐えきれずナイスボートニキが話し出した。

 

 

「そういえば、安倍さんて恋愛対象は女性なんですよね?

 あの金髪の子やトモエさんもいますし」

 

「……? そうだが、何かあるのかい?」

 

「ああ、いえ。深い意味はないんですが、現実の女性って疲れないかと思って」

 

「俺の親しい相手は、コレットにトモエ、希留耶ちゃんになのはだけだしなぁ。

 皆、悪くない関係だと思うけど」

 

「二人と親しくなり過ぎて喧嘩になりませんでしたか?

 どうやって仲裁したんです?」

 

 

 真っ赤になって俯いているトモエをちらりと横を見て、隆和は答える。

 

 

「俺のスキルもあるだろう。

 喧嘩しないように理解するまで、スキル込みで二人とも啼かせ続けて理解させた。

 コレットも昔、そうやって説得した事が何度もあったし」

 

「………………………主様の莫迦ぁ」

 

 

 耳まで真っ赤になって顔を覆い俯くトモエを見て、同時に「チッ」と舌打ちする後ろの二人。

 彼の腰にある封魔管も、何故か慄くように細かく振動している。

 親しくなるために自分なりに惚気けてみたが失敗して、努めて視線は運転に集中する隆和。

 嫉妬と悔しさで涙が出るが、呻くように語り出すナイスボートニキ。

 

 

「オレには出来ませんよ、そんな事!

 オレ、友達だと思っていた女の子に刺されて覚醒して記憶が戻ったんですよ。

 刺された傷を治すのに【ディア】を覚えて、

 その娘の友人に一服盛られた時に【パララディ】を覚えて、

 夜の街を彼女たちから逃げるのに【イルク】を覚えて、その足で山梨支部まで逃げました」

 

「「お、おう」」

 

「あの娘達、実は地元でも資産家で、おまけに片方は道場と神社の娘でこっちの世界の事も知っていたんです。

 どうやったのか富士山周辺まで追いついて来て、弁護士もお願いして匿って貰ってから高校を卒業するまでずっと山梨の結界の中にいました。

 帝都の学校ですから、さすがに大阪までは来ないと思いますけど」

 

 

 さっきとは違い、緊張した面持ちでナイスボートニキに質問するサラリマンニキ。

 隆和は運転とは別の意味で冷や汗が止まらない。

 

 

「その子らの名前は?」

 

「『桂川琴葉』と『清村雪菜』です。

 容姿もそっくりなんです、あのゲームと。

 オレは、横恋慕や目のハイライトが消えた女性は嫌なんですけど」

 

「もう一人、いなかったかい?」

 

「そっちは関わったらアウトだと何となく思って避けてました。

 結局、一服盛られましたけど」

 

「帰ったら、その子らの顔写真と名前を教えて欲しい。

 ホテルに来ても、会わせないように周囲に周知しておこう」

 

「ありがとうございます」

 

 

 泣きながらサラリマンニキに頭を下げるナイスボートニキ。

 少し疑問に思ったらしいサラリマンニキがさらに質問する。

 

 

「今はその子らは?」

 

「ショタオジが『知らなくてもいいようにしたよ』って」

 

「「ああ」」

 

 

 いろいろと察した三人は話題を変えようとする。

 

 

「そういえば、指定された場所って京都市内の住宅地の近くなんですけど大丈夫なんですかね?」

 

「うーん、どうだろう?

 指定された場所は【羅城門公園】らしいですけど、安倍さんは知ってます?」

 

「それ、【羅生門】じゃないですか? 渡辺綱と茨木童子の伝説の」

 

「「え?」」

 

 

 

 

 彼に指定した場所で待つ【斉門珠希】は、イライラと霊装である巫女の服装で待っていた。

 隣には、同じ格好でハニートラップでの諜報を得意とする家の出身の【鈴谷】がいる。

 血縁上では従姉妹になる彼女と、彼らが来る前の最後の打ち合わせをしていた。

 

 

「いい、鈴谷。この写真の『安倍隆和』と言う男性はわたしの獲物よ。

 婆様たちの言いつけだから、それ以外を狙って」

 

「年上やからて、そないに言わんでもええよ。

 出戻りでも才覚があるからて、調子にのんなや?」

 

「はあ? 

 こっちで都合の良い異界を探している時に、余計な真似をするのを出したのに?

 出戻りと言うなら、身内のアホの首に縄くらい付けておきなさいよ」

 

「ウチかて嫌やわ。

 あのアホ男、一族でも高位になれて物理技2つも持てて天狗になってたんやもの。

 ウチらの家、娼婦扱いなんや。近寄りとうないわ」

 

「それなら、引き入れるのは無理でも情報くらい持ち帰れるようしなさい。

 これで失敗したら、婆様からの小言はあんたが聞きなさいよ」

 

 

 関東の地元で、当時、年上の大学生の彼氏と年下の幼なじみの二人と同時に関係を持っていたのが周囲にバレて関西の実家に送られた珠希だが、全く懲りていなかった。

 今回の件では異界に勝手に行った馬鹿の事はどうでも良く、屈指の実力を持つらしいこの男を物にして一族で大きな顔をするか、場合によっては、管理する異界もほとんど無い今の一族に見切りをつけて『夫』の組織で成り上がるのも良いかもしれないとまで考えていた。

 ただ、抜け駆けも視野に入れている鈴谷も同じであったが。

 

 そうこうして彼女らが待っていると、公園の入り口に横に『ホテル・ガイア大阪』と書かれた大型バンが停まり、青い安全ヘルメットに白の作業着の上下に安全靴の隆和とナイスボートニキ、グレーの背広のサラリマンニキ、巫女服のトモエが各々カバンを持って降りてくる。

 ちなみに、彼らの着ている服は皆、法律やTPOに配慮した立派な防具霊装である。

 

 二人の方はというと、鈴谷の方がオカルト方面にも出資しているパパ(意味浅)から強請って貰ったガイア連合製のレベルだけ分かるビデオカメラ型測定器の画面の数字に引きつっていた。

 

 

「えっ、嘘っ!?

 この間、貴女が4であのアホが8でわたしは10って出たのよね、これ?」

 

「そうや。ま、あの男の子が3なのはまあええわ。

 あのどこぞの巫女が20とか言うんは、伊勢なり大きいとこの巫女とかならまだ我慢する。

 けど、一般人みたいな残りの二人が24と39って何やのん??」

 

 

 近づいて来る彼らに慌ててカメラを仕舞い、石碑の前で出迎える体勢になる二人。

 彼女らに皆を代表して挨拶をするサラリマンニキ。

 

 

「依頼主の斉門珠希さんですね?

 私は代表の服部、こちらにいるのがうちの安倍と伊東に、安倍の助手のトモエくんです。

 よろしく」

 

「はい、よろしくお願いします。

 こちらは同僚の鈴谷です。今回はここで結界の入り口の見張りをします」

 

「ウチは鈴谷といいます。よろしゅう。

 入り口の見張りと人払いの結界の維持、何かあった時の救援を呼ぶ役ですわ」

 

「中にはどうやって入るのですか?」

 

 

 サラリマンニキが聞くと、珠希はちらりと鎖骨が見えるようにして襟元から袋を取り出した。

 彼女が袋の中から取り出したのは、何かの金属片だった。

 

 

「これは、伝説の渡辺綱が茨木童子の腕を切り落としたと言われる【髭切】の破片です。

 一条戻橋と羅生門での説が有名ですが、うちの一族の家の記録には2回とも実際に切り落としたのが正解だそうです。

 その後の腕を取り返す話でうちの一族の祖先の安倍晴明が出てきますけど、その関係でここに異界が出来た時に茨木童子が嫌悪するこれを封印の鍵としているんです」

 

「それをどう使うんです?」

 

「こう、します」

 

 

 彼女が金属片を構え石碑横の空を上から下に動かすと切れ目が現れ、その向こう側にここの隣の資料館にあるのと同じ造りの【羅城門】が実物大で見えた。  

 振り返った珠希が、ガイア連合の連中に声をかける。

 

 

「準備が良いのなら、このままわたしも同行し中に入ります。大丈夫ですか?」

 

「それじゃあ、行きましょう」

 

「それでは気いつけて」

 

 

 鈴谷に見送られながらその空間の切れ目を跨いで全員が中に入り、中からもう一度珠希が逆になぞると切れ目が閉じられ、もうその公園には鈴谷以外誰の姿も無かったのだった。




後書きと設定解説


・関係者

名前:斉門珠希
性別:女性
詳細:データは後ほど
   容姿は、『同級生~Another World~』(R18)の「柴門たまき」を参照して下さい

名前:鈴谷
性別:女性
詳細:彼女もデータは後ほど
   容姿は、『アズールレーン』の「鈴谷」(赤い角なし)を参照して下さい


次回は、事件の続き。
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