【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法 作:塵塚怪翁
このお話の時間軸は、自衛隊と協力を始める少し前の本編終了後からさらに時間が飛んで終末後になった頃のお話になります。
カチッというスイッチ音が鳴り、画面に文字が浮かび上がる。
『このソフトに収録されている内容は記録映像を一部使用しているため、一部映像が荒く見える場合や音声が乱れている箇所があります。録画時の衝撃の為、音声のズレや画像のブレがあります。また、照明などによる光の変化の激しい部分があります。ご鑑賞にあたりましては注意してご覧下さい』
『このソフトに収録されている映像および音声の使用は、家庭内での利用目的に限って許諾されています。
許可無く、このソフトを複製、変更またはこれを使用した上映、上演、放送およびあらゆる転用、掲載、DDSネット上の公表、 または、転用出来る状態にすることは禁止されており、違反に対してはガイア連合基準による規則により刑罰が規定されています』
『この映像の提供は、ご覧のガイア連合の提供でお送りします』
権利関係の序文とガイア連合の広告CMが流れ暗かった画面が再び明るくなり、ムードのある音楽が流れたかと思うと夕暮れの浜辺に一人立つ男(ショタおじ)のシルエット映像が映し出され、夕暮れの海に場面が変わり『ガイア・エンターテイメント』の名称がロゴと一緒に画面に大きくスパンされた。
『チャーララチャーラララーラチャララーララン♪』
『京都大決戦~世界終末の日』
映像制作会社のロゴの次には、この映像のタイトルが浮かび上がり場面が切り替わりナレーションが流れる。
『これはあの終末の日、京都で起きた事件の記録映像を元にしたドキュメント映画である。
ショタおじが帝都にてメシア教最大の天使とぶつかり姿を消したあの日、ここ京都でも滅亡させうる危機は起きていた』
『キュアアアーーーーッ!!』
カメラが映しているのは不安に怯え足早に移動する人々がいる中、京都市内の中心部である晴明神社から女性とも獣とも取れる鳴き声が響き渡るとそこに全長30mの大きさとなる八尾の白狐が現れた。赤く怒りに染まった目で周囲を睥睨し、ゆらゆらと揺れる長さ15mに達する尾を振るうと周りの京都市街の通りという通りに姿が様々な妖怪の群れを出現させた。
『狂獣シノダギツネ・レベル80』
『百鬼夜行の群れ・レベル25』
テロップが出たシノダギツネがその力を振るい彼女の子である安倍晴明が手を加えた京都古都の結界を一時的にだが無効化し、喚び出した数多の百鬼夜行と共に伏見稲荷にいる宇迦之御魂に向けて周囲を破壊しながら前進を始めた。
彼女の目的はただ一つ、愛した夫“保名”と我が子“童子丸”と別れさせられた復讐。
ただしそれは、そう思考誘導され晴明神社で眠りに付いていた彼女を狂気に落とし暴れさせる目的の邪神の遊戯の一つであった。
『怨怨怨ォッ、我ガ怨ミ思イ知ラセテクレルワッ! ウカノミタマ!!』
場面は変わり、この日に備え伏見派出所に特設された指令所にてここの代表である『藤野槇雄(ふじのまきお)』は、両脇に京都神社庁理事の一条氏とシキガミ体のウカノミタマを控えさせモニターの画面に映るシノダギツネの姿をゲンドウポーズで見ながらオペレーターの女性に声を掛けた。
「終末前の占術で分かってはいたが、本当に来て欲しくはなかった。
方広寺のアーッニキ君に指令を発信したまえ」
「了解です! 方広寺に通達を! 秘密兵器、発進です!」
その声と共にまた場面が変わる。
場所は、京都市内の方広寺の境内の地下にある秘密工場だ。
地下にあるそのモビルスーツでも整備できるかのような施設のそこには、高さ20mほどの東大寺盧遮那仏像とウルトラマンティガの石像を混ぜたようなデザインの仏像の袈裟を着たウルトラマン姿のロボットがあった。
カメラがその姿をスパンしながらナレーションが入る。
『歴史の教科書には「国家安康」の鐘に刻んだ文字で大阪の陣の引き金になったとして名が残る方広寺(ほうこうじ)は、京都市東山区にある天台宗の寺院であると同時に奈良の東大寺の対になる木製の巨大な大仏があったのはあまり知られていない。その大仏は1586年の豊臣秀吉による寺の建立から火災で焼失する度に全部で4つ作られ、1973年に4代目の大仏と3代目大仏殿が失火のため全焼してから再建はされていなかった』
シキオウジが勝てない相手が現れた万が一の時のために、山梨のロボ部達を招いて開発されたそれの全身像が映され次のナレーションが流れる。
『うちの御神体をロボットにされるのは迷惑なのですが(東大寺関係者語る)』
『一部の山梨から来たロボ部の奈良東大寺の大仏の機動兵器化計画が当の仏神からも正論クレームで頓挫するに至り、そこで次に目を付けられたのが京都の方広寺であった。
伏見派出所の藤野氏とウカノミタマからも資金の提供と共にGOサインが出て、山梨支部のロボ部達が招かれて建造が開始された』
『寺で保管されていた今まで焼失した大仏の燃え残りを核心に組み込み、他の開発機体で培った技術による動力機関と制御機関を合わせた革新的な中枢機関【ホトケドライブ】を完成させた。
そして某鉄血のガンダムフレームを模した【ホトケフレーム】、制御機能として複座式モビルトレースシステムである【ホトケドリフト】によりその動きは人の動きをそのまま再現されるのだ!』
カメラが胸に青く光るカラータイマーにどんどんと寄り、胸部の中のコクピットが映る。
キラキラと周囲が光り輝く不思議な空間になっている操縦室のその中には黒のボディスーツを身に着けた【アーッニキ】と、その横には同じく黒とピンクのボディスーツを身に着けたFGO第2再臨姿のシキガミ体になった彼の仲魔である【カーマ】がそこにいた。
「私、ブッダの悟りを邪魔した方なんですけど?
なんでこんなのに乗らないといけないのか理解したくないんですけどぉ!」
「その縁があるから俺のパートナーに選ばれたんだ。頼むよ、カーマ」
「シキガミの身体だってなるつもりはなかったんですけどっ!?」
「可愛いし、よく似合っていると思うぞ。相棒だろ、俺たち」
「……………………ああっ、もう! 行きますよ!」
「おうっ!」
『デュワッ!』
そう叫ぶと『ウルトラマン型盧遮那大仏』名付けて【ルシャトラマンガイア】は、膝を軽く曲げると天井に開いた方広寺境内の庭に出来た発進口から天空へと飛び立った。ルシャトラマンはそのまま百鬼夜行を率いて伏見稲荷に進軍するシノダギツネに急降下からの蹴りを叩き込んだ。
『デュウワッ!』
『ケェェーーン!?』
蹴り飛ばされたシノダギツネはそのまま市街地を飛び越し、追いかけるようにして飛んで来たルシャトラマンに再び蹴られ西の山地へと飛んでいく。それを切っ掛けに今まで周囲で待機していた京都近辺の黒札とシキガミと現地組織の異能者達が、指揮を失い勝手気ままに暴れ始めた数多の妖怪の群れに襲いかかった。
「今だっ! あいつらを叩くぞ!」
「「「おおおおーーーーっ!!」」」
その光景からカメラは外れ、西へと飛んでいく二体を追って画面は切り替わる。
山中にて対峙するシノダギツネとルシャトラマンが映り、専用のテーマBGMが響き始め戦いが始まった。
「さっきから何なんだ、この音楽はっ!?」
「ロボ部の人の仕様だそうです! ほら、前を見て戦って下さい!」
『キシャアッ!』
『デュワッ!』
シノダギツネは複数の尾を揺らし軽自動車大の狐火を3つ空中に出現させると放ってくる。ルシャトラマンはそれを額の白毫(びゃくごう)から光線を放って消し飛ばすと、走りながらシノダギツネに接近戦を挑んだ。
『キシュアッ!』
『デュオッ、デュワッ! ダアァァァッ!』
殴り掛かるルシャトラマンに対し、シノダギツネは尾を複数の槍のようにして繰り出して来た。その攻撃をルシャトラマンはカラリパヤット特有の動きで躱しながら拳や蹴りの連撃を決めると、突き出されてきた尾の一つを脇で抱え込みそのままグルグルと振り回し始めた。
『ギィッ、ギュワァァァァッ!!』
『ダァァァァァッ!』
振り回し続けていたその状態が尾が千切れる事で終わりその勢いで空中に投げ出されたシノダギツネは宙に留まると、血管が切れそうな憤怒の表情でルシャトラマンを睨み全身が赤熱し赤く光りながら大きく開けた口の中に高熱の熱線を溜め始める。
『ギュワァァァァッ!!』
『ヴァイローチャナ光線!!』
シノダギツネから吐き出された熱線と、千切れた尾を投げ捨てたルシャトラマンが両腕をL字に組んだ形状から放たれた光線が空中でぶつかりバチバチと拮抗状態になった。お互いが渾身の力を込めて放つその激突に周囲の空気や山々が揺れる。
その拮抗状態も、第三者の介入で崩れる事になる。
「【コンセントレイト】【メギドラオン】!」
『……ギッ! ガァァァッ!』
「隆和くん! 今よっ!」
離れた場所から放たれたなのはの万能属性魔法である光線がシノダギツネの頭部に命中し、その威力で熱線の威力が揺らいだ。その隙を見逃さずにルシャトラマンに乗ったアーッニキとカーマは、カラータイマーが赤く光りオーバーヒートで自壊を始めた腕の発射装置に構わず全力以上の勢いで光線を放った。
『ダァァァァァッ!!』
『……ガハッ! 妾ハイッタイ何ヲ……? オオオオオーーーッ!!!』
自身の熱線を押し切って炸裂したルシャトラマンのヴァイローチャナ光線に、シノダギツネはそのまま絶叫すると曲のサビの部分に合わせるようにして全身が大爆発を起こし消えていったのだった。
「……やったな」
「もうこういうのはこれっきりにして欲しいです」
オーバーヒートを起こし膝をつき全身がガタガタになったルシャトラマンの中で、アーッニキとカーマは安堵したように座り込み笑いあった。そして、その様子を映したままエンディングが始まりテロップが流れ始めた。京都市内で百鬼夜行を全て退治し喜び合う黒札と現地民達、事態の沈静化に安堵して椅子に座り込む藤野と司令所の面々などを流しつつエンディングが終了した。
†
「…………何だい、これ?」
「不在の間の各地の支部の様子を聞きたいって言ったのはショタオジじゃないですか。
これは実際に京都で起きたことを、実質的に“京都支部”の支部長になった藤野さんが確保していた太秦映画村の映画関係者も動員して映画にしたものですよ?」
「いや、そうだけど。あの大仏みたいなウルトラマンは何?」
「文字通り、大仏とウルトラマンを基本デザインにした京都支部の切り札である機動兵器『ルシャトラマンガイア』だそうです。
それに元々大仏の元となった神格の【毘盧遮那仏】も、大日如来と同一視される“光輝く者”という名のアスラ神族の王様なので戦いは得意だそうで衆生の味方をするならと前向きに助力もしてくれていますから」
山梨支部の奥にある星霊神社の一角で、終末後に帰還したショタおじに京都関係の報告をナイスボートニキこと【伊東誠】は説明をしていた。報告書の資料として二時間ほどの製作映画を鑑賞し、ショタおじは苦笑いしながら彼に聞き返していた。
「……それで、京都の方は大丈夫だったのかい?」
「はい。
あの二体が京都市街上空を西へ通過後に京都南の新結界を起動し、京都北の古都結界も再起動し魔界落下時への衝撃にも耐えられました。
画面では映ってませんが京都市街の百鬼夜行と湧き悪魔殲滅後に、関西支部の応援及び京都付近の各寺社仏閣と各シェルターと連絡及び連携し生き残りの市民を保護しました」
さっき見た作品のDVDのパッケージを指さしてショタおじは尋ねた。
「あれを運転していた彼らの方は?」
「動力部のオーバーヒートで停止中の機動大仏内で再起動まで籠もっていました。
途中、全身を綺麗に焼いて確保したシノダギツネを連れて魔王ネキも合流しています。
魔王ネキ曰く、戦闘中に切り離した尾を分霊化し女性の姿で逃亡していた所を上空から発見し、万能属性魔法のビームで焼いて行動不能にした後で確保したんだそうです」
「その後はアーッニキが仲魔にしたんだね?」
「……ええと、その場で大人しくさせるために再起動を待つ間に強制的に説得(意味深)して完全に行動不能にし屈服させて手持ちの封魔管に封印しています。
方広寺に機動大仏を置いた後は3人とも、拠点の華門派出所に帰っていますね」
「それじゃ、京都近辺の情報を教えてくれるかい?」
その問いにナイスボートニキは京都と淀川の地図をカバンから出し、彼の前に広げて説明用の資料を読みながら解説を始めた。
「まず、京都結界と付近の派出所及び各寺社仏閣シェルター群を便宜上、“京都支部”と呼称します。
京都支部は淀川を霊道化し船舶をもって、河口の関西支部と連携しています。
淀川霊道は川底の各地に埋めた結界用の要石と、『高槻派出所』と隣接する三島鴨神社及び宗像三女神でもある比咩大神を祀る岩清水八幡宮の2つの河口運輸の守り神としての権能で維持しています。
船舶の乗り降りは関西支部側は河川側地下に造った港からで、京都側は平等院近くの宇治川観光船の施設を使用しています」
「小型船舶中心になるだろうけど、荷物の運搬とかしているのかい?」
「主な荷物の運搬は、関西支部と岩清水派出所にある大型ターミナル中心ですね。
どうしてそこかと言うと、京都市内では大型倉庫を敷設出来そうな場所やジュネスがないので岩清水八幡のある山の地下ぐらいしかないからだそうです。
岩清水派出所の地下には人形簡易シキガミの工場もあって、その人海戦術で淀川水系の巡回も熟しながら運搬用の小型船の操舵も担当しています」
「……他の俺達は?」
「概ね、他の支部と同じく実務を担当する者と実働の戦力を担当する者に分かれて連携が取れていますよ。
問題はありません」
そこまで語り喉が渇いたナイスボートニキがペットボトル入りのお茶を一口飲んだところで、満足そうに頷いていたショタおじは彼に語りかけた。
「それじゃ、あの時手掛けた異界はどうなっているんだい?」
「“人工異界・華門島”ですか? 今はですね……」
†
「……そういう訳であそこの周りの悪魔達を何とかしてくれませんかね?」
「よくもまあ、抜け抜けと来れたもんだな鬼童丸?」
「いやあ、俺っちにも生活がありやすから。そこをなんとか……」
愛想笑いを浮かべてここまで来た京都付近でマグを得るために嫌がらせを行なう酒呑童子の子である【鬼道丸】は、やって来た先の隆和を始めとする華門派出所の面々を前にして直立した姿勢から直角に頭を下げてながらに訴えていた。
大阪湾埋立地でのメシア教との一件(本編最後の事件)以降、半終末時の茨木童子との一戦やついこの間起きた信太狐との一戦を除けばアーッニキを始めとする華門派出所の面々は、事件だらけの東の支部と違って自衛隊との協力開始から終末時までの長い間平和に過ごしていた。
より強い霊地を求めて島の異界ごと引っ越して桂川沿いにある淀城跡にある淀神社と隣接するように公園跡に建設された『華門派出所』は、主要メンバーのレベル上げのために山梨の異界への遠征や日本神封印解除の戦いへの参加、島の異界にある畑の8割を占める大根畑の世話、レベルが上がりマーラの如く女性特攻となった隆和と伴侶の女性達が房中術と仙術も使った睦み合いによる覚醒段階と位階の上昇を伴う子作り、隆和の複数の妻との子や所属メンバーの夫婦達の子も含めた大勢の子供たちの子育てなど半隠居状態でスローライフしているアーッニキこと【安倍隆和】とその家族が暮らす場所であった。
「それで何とかして欲しいのは京都競馬場の悪魔だったか?」
「へえ、そうです。
終末になった今じゃ、馬の姿をした悪魔がレースをして走り回り屍鬼やら悪魔やらが賭け事をして盛り上がるそんな場所になっちまってやす。
最近じゃ俺が手下として喚び出した鬼共も、喚び出した端からあそこに行って賭け事に夢中になって困ったもんでさぁ」
そう言ってヘコヘコと頭を下げる鬼童丸。
鎌倉時代の説話集『古今著聞集』などに登場し酒呑童子の子とされ仇の頼光を襲い返り討ちにあったという鬼であるが、このパンクロッカーのような姿の個体は鬼が好む自分への恐怖という感情のマグを得るために、ガイア連合に討伐されないギリギリのラインを狙って人間を脅したり後遺症の残らない怪我をさせるなどの行為を繰り返している変に小賢しいタイプである。
今の京都競馬場では半終末による結界のない場所での悪魔の跳梁跋扈による弊害でレースは行われておらず閉鎖され、終末突入時の魔界へ落下した際に施設そのものも損傷し放置されていたはずだったのだが、彼らの目の前にいる鬼童丸が言うには何者かがあの場を統率し悪魔を使って競馬の真似事をしているという事であった。
「あそこを仕切っている悪魔が何だかは知りやせんが、イバラギの姉御を情婦にした兄貴なら負けるなんて事は無いっすよ。
それと成功した時のお礼はどこかで女でも拐って……ひいっ!
もう言いやせんから、トモエの姐さんにイバラギの姉御も殺気は止めてくだせぇ!」
「主様、口が軽いのも良し悪しですね。次は斬ります」
『軽々しくそんな事は妾の前で言うなよ、鬼童丸』
「へえ、それじゃ貯め込んだマッカでよろしいですか、兄貴?」
「……うーん、まあいいだろう。
周囲に出てくる悪魔の湧き潰しはしていたんだが大掃除にはちょうどいい機会か。
あそこは宇治川沿いにあって船の往来の邪魔になりかねないしな」
隆和の専用シキガミであるトモエと彼が持つ封魔管内の茨木童子に対して頭を下げる鬼童丸に隆和はそう言うと出かける準備を始めるのだった。
そして、派出所から京都競馬場まで徒歩10分。
ここへ来たのはアーッニキこと隆和、シキガミのトモエ、同じく昼寝をしていたシキガミ体のカーマに案内役の鬼童丸の4人である。
「なのはは上空から湧き悪魔を焼いて回る仕事があるから家で待機だ。
前に見た時は数は多くても、そう手こずるレベルの奴らではなかったしな」
「それなら私は連れて来る必要はなかったんじゃないですか?」
「カーマとトモエだけが頼りなんだ。頼むよ」
「…………ふうん。まあ、そういう事ならしょうがありませんね。
ご褒美は期待していますからね」
「……カーマ、閨の催促? 順番は守ってくれる?」
「違・い・ま・す! 欲しいのは、京都のお高い銘菓ですよ!」
「仲がいいのはよろしいんですが来ましたぜ?」
終末前は素晴らしい建築物だったそこもいまでは廃墟に変わり悪魔が彷徨く場所になった京都競馬場の正面入口から彼らは乗り込んだ。狭い通路やホール内には馬券を買った観客やここの関係者が元になった屍鬼達やここのマグに狂わされ観客の一部となった鬼やモヒカンなどの悪魔の姿も散見される。
そいつらは乗り込んで来た隆和達を見ると、馬券を外した鬱憤を晴らすかのように一斉に襲いかかってきた。
『あの馬、また4着かよ! ああ、いらいらするっ!』
『今日は勝てると思ったのに! 何だよ、あのレースはよぉっ!』
『オレは最初からこれに決めていたんだよぉ! なんで来ねぇんだよぉ!』
「蹴り散らします!【攻撃の心得】【タルカジャ】【疾風斬】!」
「人間、ああなったら死んだ後でも終わりですよね。【天扇弓】」
「出番だぞ、イバラギ!」
『おうさ、旦那見ていてくれよ! 吹き飛べ、【大江の鬼暴れ】!』
向かってくる悪魔の群れに、トモエの無数の剣閃とカーマの無数の矢が炸裂し薙ぎ払う。
そこへ、封魔管から隆和が限定召喚した鬼女イバラギの鈎爪が4回振るわれ残った悪魔を文字通りに引き裂いた。
そして、悪魔達を引き裂くとイバラギはまた封魔管へと姿が消えた。
これはイバラギを封印した封魔管の管理を長時間説得(意味深)して屈服させた隆和が引き受けた際に、山梨の術研究者から教わった限定召喚による【召還魔法】の技法である。これはソウルハッカーズに登場した“ナオミ”という女性ダークサマナーの流派の魔法を再現したもので、以前に現地組織から彼女を献上された黒札によって山梨に保護されていた彼女自身から提供された魔法であった。
これらを繰り返し彼らは奥へと進み、観客席に出て同じ様に悪魔達を薙ぎ払った。
『『『ブヒヒヒーーンっ! レースの邪魔はさせないぞ!』』』
すると今度は馬場を走っていたユニコーンやバイコーン、ケルピーにオロバスや馬頭観音まで馬の姿の悪魔達が襲いかかって来る。それを京都競馬場の馬場の中央にある池の真ん中、そこにある小さな島にある祠から目の血走った形相の弁財天である、隆和のアナライズにはレベル47【狂神サラスヴァティ】と映る女性型の悪魔が煽っていた。
『レースの邪魔をする奴らは排除するのよ! 我が芸事の邪魔はさせないわ!』
「主様の邪魔はさせません!
【物理ハイブースタ】に【タルカジャ】最大にしての【疾風斬】!」
「同郷の女神としては見ていられない姿ですねぇ。はい、【天扇弓】と」
「あの女神は火炎弱点か。なら、出番だぞ信太狐!」
『あら、うちの出番やろか? ほな全部燃えてもうてな、【うらみ葛の葉】』
『『『ギャアアアアッ!!』』』
トモエの剣閃がカーマの魔力の矢が、そしてイバラギと同じ様に隆和に使役されている信太狐の広範囲に焼き尽くす狐火が襲ってくる馬型悪魔の群れを薙ぎ払い蹂躙しマグへと消し去っていく。
悪魔達を煽っていたサラスバティも自分の弱点の火炎で大怪我を負うと、慌てて池の中の祠に逃げようとするがそこへ隆和が駆け寄り追いついた。
「お前がボスだろっ! 逃げるなっ!」
『ひっ、ひいっ来るな! お前、マーラの関係者だろう! 【ブフダイン】!』
同郷の悪魔のニオイを感じ取ったのかサラスバティは氷結魔法を放つが、隆和は【アリ・ダンス】で上体を傾けてそれを躱すと左の拳を彼女の胴体へとレバーブローを放つ。
「【地獄突き】!」
『ぐふぅ!』
現在の隆和の【地獄突き】のスキル効果は『敵単体への1~3回の中威力の貫通物理攻撃』である。
よって、その攻撃によりくの字になったサラスバティの体へとさらに次の拳が突き刺さる。
「次の【地獄突き】! おまけに最後の【地獄突き】!」
『ぐげっ! ……あ、ばばばば。ぐほぉっ!♥』
隆和はボディを殴ったその左の拳をそのまま前屈みになったサラスバティの顎へとフック気味のアッパーを当て、その一撃でスキル【煩悩掌】により魅了と至福の状態異常を付与され行動不能になった所へトドメに振り下ろした右の拳が彼女の顔面に叩き込む。
その攻撃で他人には見せてはいけないような快楽に染まった表情をしたまま、そのサラスバティは地面に崩れ落ちるようにして消えていった。
「主様に掛かればこうなりますね。うんうん」
「私が言うのもなんだけど、やっぱりエグいスキルですよねぇ。それ」
『……うへぇ。あんな顔して死にたくねぇなぁ』
周囲の悪魔を掃討し終えてサラスバティの消える様を見ていた彼女らのうち、トモエがさもありなんと頷き、カーマが自分も経験したスキルの威力を思い出して引き、最後に鬼童丸がドン引きの表情でポツリと漏らしたところで隆和の声が辺りに響いた。
「敵を無力化するするのに効率的なんだからいいじゃないか!
それに、俺は見境なしに誰でも襲うような真似はしないんだからいいだろう!?」
その後、しばらくして。
「……それじゃ新しい弁財天を連れて来たから、ここの面倒はお前が見るんだぞ鬼童丸」
『……ええっ!? 何で俺が!?』
「この弁財天は新神でまだ弱いし、誰かが面倒見ないといけないだろう?
それにちょうどいい強さの悪魔がここにいるしな。
ケツ持ちは俺がしてやるから、この契約書にサインしろ」
『逆らってあんな顔で死にたくないし受けますよ。……本当に何かあったら助けてくださいよ?』
「俺の家はすぐそこだから助けに来るよ。
そのうち長野の馬の専門家の黒札にも相談してここの活用も考えるから、それまではここの霊地の面倒は頼むぞ」
京都競馬場はその後京都から新しい弁財天を連れて来る事で彼女に周辺の管理を任せることにし、その護衛として鬼童丸と元気に馬場を走っているその手下のモヒカン鬼達に警備を任せる事となった。
こうしてトラブルを解決した隆和は終末後も変わりなく生活していくだろう。
†
「……と、まあこんな感じですね。
あの家の女性陣はいつも誰かお腹が大きいとか、魔王ネキは相変わらず上空からメギドラオンの爆撃で襲ってくる悪魔を焼いていますし、千早さんは子供が出来ていない時はいつも京都と関西に行っては書類整理を手伝っていますし、オレはこうして渉外担当として外を飛び回りつつカエレルダイコンの営業をしていますよ。ショタおじ」
「……うん、みんなが元気そうでよかったよ。また機会があったらあの島の浜辺でゆっくりさせてもらうよ」
「はい、お待ちしていますね。今日はこれで失礼します」
ナイスボートニキが一礼し部屋を出ていった後でニコニコ顔で一息ついたショタおじに、無情なお付の担当者の声が響く。
「ショタおじ、休憩を兼ねた面会に時間をかけ過ぎです。
次の仕事はまだありますので、帰還早々ですが仕事に入ってください」
「帰って来てまだそれほど経っていないんだし、もう少し気を使ってくれてもいいんじゃないかな!?」
山梨の星霊神社にショタおじの叫びが今日も響いた。
後書きと設定解説
・主人公
名前:ナイスボートニキ(伊東誠)
性別:男性
識別:転生者(ガイア連合)・29歳
職業:ガイア連合華門神社渉外担当
ステータス:レベル30・ラッキー型
耐性:物理耐性(装備)・破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:ディア(味方単体・HP小回復)
パララディ(味方単体・麻痺を回復)
イルク(味方全体・自身を含めた数人を透明化)
トラフーリ(一部の戦闘を除いて確実に戦闘から逃走する)
黒子の歩法(敵から狙われにくくなる)
応急処置(戦闘時以外で味方単体・HPと一部の状態異常回復)
コンピューター操作(プログラム作成含む技術)
交渉術(実地で身につけた我流の交渉術)
装備:物理耐性のペンダント
呪殺無効の指輪
男性用スーツ一式(霊装防具)
ケブラーベスト(霊装防具)
ドルフィンヘルム(霊装防具・精神無効)
ニューナンブM60(破魔弾と呪殺弾)
COMP(アナライズ、百太郎、エネミーソナー)
詳細:
某ゲームの主人公に容姿や家庭環境がそっくりに生まれた転生者
前世はブラックな現場専門のSEだったのでPCは得意
関東の高校で女性トラブルから逃げ出して山梨支部へ逃げこんだ
現在は華門神社の婿のような立場に納まり渉外担当をしている
嫁✕2と嫁式神の3人と子どものために日夜働くお父さん
・関係者
名前:アーッニキ(安倍隆和・あべたかかず)
性別:男性
識別:超人・30代
職業:ガイア連合華門派出所代表
ステータス:レベル73・フィジカル型
耐性:破魔無効・呪殺無効・精神無効
スキル:悪魔召喚(封魔管✕2)
アナライズ
マッパー
妙技の手管(状態異常時の相手へのダメージ25%増加)
不屈の闘志(HPが0になった際、一度だけHP全快で復活する)
アリ・ダンス(攻撃を受ける際、敵の命中率が半減する)
地獄突き(敵単体・1~3回の中威力の貫通物理攻撃)
(貫通:反射を除く物理相性を持つ敵に通常通りのダメージを与える)
煩悩掌(通常攻撃・物理系スキル使用時に発動する。
高確率で魅了と至福の状態異常を付与する)
愛神の加護(加護の対象の位置と状態が常に把握できる。
女性への交渉成功率が上がり、与えるダメージが上昇する)
大江の鬼暴れ(敵全体・対象ランダムに4回の中威力の物理攻撃)
うらみ葛の葉(敵全体・大威力の火炎属性攻撃。
中確率で炎上を付与する)
(炎上:しばらくの間、火炎属性による小威力の継続ダメージを与える)
装備:アーッニキのツナギ
(回避強化と麻痺無効が付与された青いツナギの霊装)
チャラ男のゴールドネックレス
(活脈と女性悪魔への挑発効果が付与された金のネックレス型霊装)
追跡者の安全靴
(転倒防止とステータスの速が上昇する効果のある革のブーツ霊装)
ギリギリブーメラン
(MPを消費して【チャージ】が使用できる効果があるが、
使用者の股間もチャージ状態になる副作用もある男性用水着型霊装)
エンゲージリング
(全ての伴侶の名前が刻まれた呪殺無効と精神無効が付与された腕輪)
詳細:
身長178cm、体重80kg、1人称は俺
落ちぶれた陰陽師の一族の血筋で、16歳まで霊能関係の施設で成育された
力と技術に育ての姉のような相手をくれた師匠と再会するのを目標としていた
周囲の人たちとガイア連合の助けを得て目標を果たし家族を得る事が出来た
本編終了後、周囲の女性十数人と関係を持ち実働戦力として忙しく動き回っている
茨木童子と妖狐の信太狐も打倒・説得後に封魔管に入れて持ち歩いている
女性特攻となったマーラのようなその異能は彼にマ◯カル◯ンポを齎した
そのため、彼の相手をする女性は伴侶達により厳しく管理されている
スキル変化詳細:
【愛神の加護】は、文字通りカーマの主人公に対する自己主張スキル
女性への交渉成功率が上がり、与えるダメージが上昇する
【大江の鬼暴れ】は、封魔管の鬼女イバラギを限定召喚し使用するスキル
茨木童子のかぎ爪で敵全体へ対象ランダムに4回の中威力の物理攻撃を行う
【うらみ葛の葉】は、封魔管の妖狐シノダツマを限定召喚し使用するスキル
大量の狐火で敵全体へ大威力の火炎属性攻撃を行う
中確率で相手を炎上させて、消えるまで継続ダメージを与える事がある
名前:トモエ
性別:女性
識別:シキガミ
職業:アーッニキの専用シキガミ
ステータス:レベル71
耐性:物理耐性・衝撃耐性・破魔耐性
スキル:マハンマ(敵全体・低確率で即死を付与する)
タルカジャ(味方全体・攻撃力を1段階上昇させる)
黒点撃(敵単体・大威力の物理攻撃)
疾風斬(敵全体・中威力の物理攻撃)
物理ハイブースタ(物理攻撃のダメージが25%増加)
攻撃の心得(戦闘開始時に自身のみタルカジャが発動する)
愛の猛反撃(主人への全ての物理攻撃を確率で反撃。
愛情の深さで確率と威力が変化する)
ミナゴロシの愉悦(クリティカル率が大きく上昇する)
シキガミ契約のため主人以外からの精神状態異常無効
スキル(汎):家事・会話・食事・房中術・剣術
装備:名刀ムラサマ(ゲーム風のSF日本刀。【準物理貫通】付与)
改造ミニスカ巫女服(破魔無効。ガイア連合謹製改造巫女服霊装)
黒色のチョーカー(呪殺無効の霊装)
詳細:
隆和の無二の愛妻忠犬を自認する黒髪ロング巨乳巫女型専用シキガミ
敵対者には見敵必殺(サーチ&デストロイ)で真っ二つ
準物理貫通は物理耐性を無視し無効と吸収にはダメージが半減する
名前:魔王ネキ(安倍なのは)
性別:女性
識別:転生者(ガイア連合)・3X歳
職業:ガイア連合京都支部警備部門幹部
ステータス:レベル69・マジック型
耐性:破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:メギドラオン(敵全体・特大威力の万能属性攻撃)
フレイダイン(敵単体・大威力の核熱属性攻撃)
コンセントレイト(使用後の次の魔法攻撃の威力が一度だけ2倍になる)
シバブー(敵単体・中確率で緊縛を付与する)
万能ハイブースタ(万能属性攻撃のダメージが25%上昇)
魔導の才能(全属性の魔法攻撃力が25%上昇)
魔術の素養(魔法スキル使用時のMP消費量が半分になる)
三段の賢魔(ステータスの魔が15増加)
大虐殺者(全体およびランダム攻撃スキルで与えるダメージが20%増加)
不屈の闘志(HPが0になった際、一度だけHP全快で復活する)
装備:呪殺無効の金の指輪
精神無効のピアス
レイジングハート(魔法杖。使用する魔法の威力を大きく上昇する)
ナノハ・バリアジャケット(魔法少女衣装の専用霊装。飛行可能)
アクティブシールド✕3(かばうスキルを付与された盾型の簡易シキガミ)
詳細:
隆和の正妻を主張する2児の母親である魔法火力の権化の魔王ネキ
もう一人の正妻を主張する千早とは仲の良いケンカ友達
栗色の髪のサイドテールが目立つスタイルの良い家庭的な技能も万全な美女
絡み酒の酒癖とストレスが溜まると魔法をぶっ放す習慣がある
片親の母親(覚醒者)は山梨支部の食堂でパティシエをしている
子どもは長女の「梨花」と次女の「舞」
名前:カーマ
性別:女性
識別:シキガミ
職業:アーッニキの専用シキガミ
ステータス:レベル69
耐性:物理耐性・火炎弱点・破魔無効・呪殺耐性・魅了無効
スキル:天扇弓(敵全体・大威力の銃撃属性攻撃)
魅了の神弓(敵単体・大威力の万能属性攻撃。
中確率で魅了を付与する)
ムドオン(敵単体・中確率で即死を付与する)
ディアラマ(味方単体・HP大回復)
アムリタ(味方単体・状態異常を全て回復する)
真・夢幻の具足(障害物を無視した移動が出来る。
使用すると味方の隣接距離に移動も可能)
シキガミ契約のため主人以外からの精神状態異常無効
スキル(汎):会話・食事・家事・房中術・カラリパヤット
詳細:
隆和の愛神を主張していたアーッニキの専用シキガミになった悪魔
元はマーラ様から褒美として贈られたいい感じに調整された劣化分霊
元の霊器と転生者が思い浮かべる姿からFGOの少女の姿になった
シキガミ体での新しい契約で独鈷杵無しのFGO第2再臨の姿に変化した
強くなる為と言われインド神の基本格闘術カラリパヤットを彼に教えている
隆和のスキル全開の強力な麻薬のような性行為には内心では危機感がある
シキガミの仕様上、彼にとうとう抱かれてやばいと改めて思い知った
・敵対者
【狂神サラスヴァティー】(ボス)
レベル47 耐性:火炎弱点・氷結無効・破魔無効・呪殺無効
スキル:ブフダイン(敵単体・大威力の氷結属性攻撃)
マハブフーラ(敵全体・中威力の氷結属性攻撃)
子守唄(敵全体・中確率で睡眠を付与する)
リカーム
(味方単体・瀕死及び戦闘不能状態をHP半減で蘇生させる)
チャクラの具足
(自身・移動する度にMPが少量回復する)
詳細:
京都競馬場のレース場の池にある島の祠で祀られていた弁財天
競馬狂いの感情のマグに汚染されここの主となっている
※「ルシャトラマンガイア」の容姿は大仏の服を着たウルト◯マンガイアです。
なお、拙作「俺たち閑話集」の第14話の【英雄の歌】スキル使用でバフを掛けるためにあの主題歌がコクピットにも響いています。
読んでくださった方がいるならありがとうございます。