レスカ長編 Take my revolithion!!   作:湯乃屋

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 吹きすさぶ風の中。

 ちゃぶ台を前に正座して、キモノ姿で何かをしきりにかき回しているのは。

 「納豆喰う?イカン!(なっとくいかん)・・・ってのはどーだ?おもしれーだろ、ぬわっはっはっはっ!って、どわぁ~っ!」

 突然、宙に放り出されて・・・ビヨヨヨンと。命綱の強力ゴムの慣性に従って側面に直撃!したのはモチロン、我らがダ・サイダー。当然、手に持っていた納豆もろともブチ当たった訳だから。

 「キサマ!イキナリ何をするのだ?」

 「嫌だ、顔じゅう納豆だらけ!ちょっとコッチに来ないでくださる?アタクシ、その匂い大っキライ」

 これ見よがしに鼻をつまんで、反対の手で何故かナイフを弄びながら、ギラリ!ニャイルの強い日差しが反射してそれがベッピーンの瞳に灯る殺気を増長させていて。ダ・サイダーはブルルっ、と犬のように身震いをしてそそくさと、ゴムを伝って甲板に這い上がる事にした。・・・切る気だ、絶対。

 改めまして。

 肌に刺さるような日差しと雲一つないターコイズの空は、今日も朝からニャイル晴れ。自動操縦中のベッピーンの私艇の甲板から見る町並みはもう、ずいぶん小さくなっていると言うのに。頬を切る風は容赦なく、アララ国はまだまだ遠いのが嫌でも分かる。

 「一週間、か」

 レスカ、へビメタコと別れて以来、ダ・サイダーはここニャイルに足止めを食らっていた。あの後。一味が逃げ去って、ニャイル観光協会としては一見落着と、盛大な酒盛が行われたのだがまさか。その裏で着々とコトが進行していようとは。

 「まさか。残党が残ってたなんてね。しかもそのまま宝物庫に居座りやがって。それをテレビがまた派手に騒ぎ立てるもんだから観光客は逃げ帰るわ、ホテルの予約は軒並みキャンセルだわ。大損よ」

 「ニャイルとしては手をこまねいている訳にも行かず、兼ねてから依頼していた傭兵団が今朝、ようやく到着したんでオレ様はラ・フランスになった、と言う事なのだ」

 「用無し!アナタたまにはウマい事言うじゃない」

 そんな心無い反応、求めてなどおらん!

 「結局、ただ居座ってただけだったけど。悪かったわね。ニャイルの警備兵だけじゃ心許無かったのよ、居てくれるだけでも助かったわ」

 「納豆喰う?イカ・・・いや、すんません。コホン。それは構わんのだ、そうじゃなくて。オレ様が納得行かないのは、何で!出発するってだけで何時間も待たされなければならんのだ?」

 何かトラブルが起こった訳でもないのに!と鼻息を荒くするとベッピーンは、またぞろ呆れた、と言うか。最大級の軽蔑プラズ、舌うちのフルコースで返してくる。

 「あ~あ、これだからお貴族サマは」

 「ンだと!?」

 「アナタ、今まで一度だって一般人として空港利用した事、無いんじゃないの?」

 ビシ!とナイフの切っ先を突き立ててくるベッピーンに、そのと~り!過ぎて、返す言葉もない。はぁ~と、またしても殺気立った目線を投げかけて来る。

 「普通はね、旅客機にしろ搬送機にしろ、アタクシみたいな個人船にしろ。航海予定表の提出が必要なのよ。それに今日みたいな長距離飛行の場合、空港を経由するのが原則。ドキドキスペースともなれば必須。ソラは広いつっても安全かつ最短ルートは限られてるし、みんながみんな、おんなじ道通ったら事故になるでしょ」

 「う~む。しかしオレ様はそんなしち面倒くさいコトした事、無いぞ?」

 「救世の勇者サマが専用機で飛んで来て、道を開けない奴は居ないでしょ」

 「う~~むう。しかし、それ以前だって。オマエだって、そうだったろ?」

 「世界征服を企む悪の軍団がルール守ってどうするのよ。それこそ強引に、ゴーイングマイウェイでしょ」

 うぐ!・・・ダ・サイダーとしては、しれっと澄まし顔のベッピーンに歯ぎしりするほど嫉妬していたのだが、そんな恰好悪いトコロ見せられるハズも無く。

 オレ様より面白いダジャレを言いやがって!

 「でもね~今日だったら高速のニャイル⇒アララ便に空きがあったみたいだから。ソッチの方が早かったかもね、アハハ!」

 「初耳だぞ?なぜソッチにしなかったんだ!」

 「バカねぇ、さっきも言ったでしょ。アナタなんかが一般人にまぎれてエコノミー乗ったら、何が起きるか。かと言ってファーストクラス?」

 「オレ様は無一文だっ」

 「ハイハイ。アララ国に着いたらキッチリ請求させてもらうわ、利子付けて」

 仕方なかろう!財布はヘビメタコの腹の中が定位置のダ・サイダーにとって、ヘビメタコを失うという事は。

 「って言うか。それこそ信じらんないんだけど!」

 「フッこれだから女は。いいか、耳の穴かっぽじってよ~く聞け。財布をパンツの尻ポケットに入れると、オレ様の完璧な脚線美が」

 ストン!とダ・サイダーのすぐ横で何かが過ぎ去り、弧を描いて甲板に突き刺さる。と同時に頬に一筋の赤い線が。・・・ベッピーンは気だるそうにナイフを引き抜き、腕を組む。

 「ったく。なんでアタクシがこんなバカの相手してやんなきゃいけないの?ヘビメタコさえ居れば!今頃はクイーンサイダロンでアララ国に着いてたんじゃない、あれこそ、ドコ行ったってフリーパスなんだから」

 「何を言う!困っている人がいたら手を差し伸べる、レスカが困るだろうと予測した、親切なオレ様、一流の判断ではないか」

 「解ってるわよ。本当、バカ!何でこんな奴がイイのかしら」

 「決まっておろう、オレ様は宇宙一強く、宇宙一かしこく、宇宙一格好いいダ・サイダー様だから!ぬわっはっはっはっ!!・・・って、どわぁ~っ!」

 再び。力任せに蹴飛ばされてビヨヨヨン。

 「キサマ、一度ならず二度までも!」

 「レスカが!アナタの何所に惚れてんのか!一ミリも理解できないって言ってんの!」

 つるっと、足を踏み外して三度目。今度はゴムが惰性の伸縮を止めてしまった後も、這い上がって来ない?って事は。

 空の色はターコイズから徐々に、わずかではあるがダ・サイダーの良く知る蒼に近づいている。ここは甲板の上よりもエンジンが近く、まるですぐ脇で轟音を立てている巨大なプロペラに誘われ・・・あわわ!と、あわてて再びよじ登る、巻き込まれたりしたら、さすがのダ・サイダーでもひとたまりもない。

 「あら?墜落死エンド期待してたのに」

 「レスカが?無い無い!だってオレたち、ガキの頃からずっと一緒だったんだぜ」

 「そう?だったらレスカにそう伝えるけど」

 慌てて手をばたつかせて、またしてもベッピーンのニヤニヤと嫌な笑い方に、慌てて手を引っ込める。と、不意に目の前に出されたコンパクトが視界を遮り、そこに映っているのは。見た事も無いくらいに狼狽したブザマなダ・サイダー自身が・・・オレ様は何をやっているのだ?

 「タブレットを置いてきたのが間違いだったわぁ、レスカに見せてやりたかったのに。アナタさ、いいかげん認めなさいな?」

 「れ、レスカは相棒だ、そういう不純な」

 「不純って?抱きたいとか」

 ・・・長い沈黙の末、ベッピーンのため息が風に流れて来る。

 「じゃあさ、アタクシとしてみる?」

 「反吐が出る」

 バキ!と、力任せに、いつの間に装着したのかメリケンサックで殴るなんて反則だ。更には、ダ・サイダーは頬を抱えてしゃがみ込んでしまったのをいい事に、はるか頭上から吐き捨てやがる。

 「冗談に決まってんじゃない、コッチから願い下げだっつうの!本当、馬鹿の上を行く大バカ、土手カボチャ!」

 「オマエ、良くそんだけ口が回るな」

 「それとも何?ハッキリ言われなきゃ分かんないって?好きだって」

 「あるぞ?」

 藪から棒に胸倉を掴まれて、目顔で促・・・脅されなくても、忘れようもない、思いだすだけで苦しいような、記憶。

 「で、でもノーカウントだ。アイツ、へべれけだったし、言うだけ言ってオレ様にゲロ吐いて落ちたから、たぶん覚えてない・・・と思う、し」

 「あ~!アッチも大バカ」

 はあ~と、特大のため息を落とすならもう少し静かにお願いしたい。ようやく解放、もとい乱暴に突き飛ばされて、あわや四度目?の落下をなんとか踏ん張り。あぐらに足を組み直すが、どうにも背筋がシャンと出来ない。

 「レスカは親友よ?ずっと見てたから分かるわ。アナタの・・・キモチなんて知ったこっちゃないけどさ、いい加減ハッキリさせてあげたら?でなきゃあの子が可哀想。アナタみたいなバカのせいで、貴重な適齢期を無駄に過ごすなんて」

 「ンな事言ったって」

 「アナタ、ダ・サイダーでしょ?宇宙一乱暴で、宇宙一バカで、宇宙一美しくないのが売りなんでしょ?イイとこなんて少しも無いんだから、一丁前ぶるんじゃないわよ」

 「一つだけ確かな事がある。・・・オレ様はオマエが大嫌いだ」

 嬉しいわぁ、と返す微笑みだけはその名のとおりにべっぴんなのに。

 気付けば、風もやわらかく、はるか前方に緑の深い、こんもりとした地形が見えて来る。ようやく、と言う気持ちと今は。ベッピーンの所為で、あんなに待ち遠しかったのに、少しだけ、いや半分くらい、モヤモヤしている。

 ・・・ンな事言ったって、なぁ?

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