レスカ長編 Take my revolithion!!   作:湯乃屋

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Intermission 3

 

 さて、どうしたものか。

 

 あの後・・・言えなかった。レスカ抜きで他の連中に話して、それこそダ・サイダーが頭となって一味を纏める。きっとそれこそがダ・サイダーの、連中の理想であり最善の選択だったろう。でも・・・言い出せなかった。その理由は

 

 ま、何にせよ。先ずはレスカだ。

 

 乗るにしても反るにしても、一言くらい言ってやるのが相棒ってモンだろ。そう思ったからこそ、わざわざ早起きして食堂で、レスカが来るのを待っていてやったと言うのに、だ。姿が見えない。午前中も、昼も、昼食後の散歩をしている今だって。

 

 イライラする!

 

 考えなが、振り上げたこぶしに手応えを感じて目を向けると。

 

 ワァッと湧き上がる歓声と共に、あおむけに倒れ行く対戦相手、興奮したような十重二十重のギャラリーを見ると。どうやら今日も快勝したらしい。呆然とこぶしを見つめていると「ダーリン」と。タオルを差し出しながら窺うヘビメタコの目が不安に揺れている。

 

 いつもは殺到するダ・サイダーのファンたちすら、距離を測りかねたままに今日は誰も近付いても来ない。

 

 そんな、つもりじゃないんだが。頭の後ろを掻きながら再び顔を上げた時だった。

 

 「あ~何という事を!」

 

 重量級の足音が近づいて来ると思ったら例によって。ギャラリーと入れ違いに現れた親衛隊長は大仰に天を仰いでからダ・サイダーを睨み付けるなり

 

 「ダ・サイダー殿、今日という今日はトンデもない事をしてくれましたぞ」

 

 「知るか。コッチは火の粉を払っただけだ」

 

 「いつもだったらもうチョット手加減してたジャン」ちらと目をむけると途端に、ヘビメタコが縮み込む。

 

 「いいですか?彼は今夜の重要なっ!パーティーの警備担当の任にある人物だったのに。こんな事になってしまおうとは、急いで代役を探さなくては。あぁ、わが輩どうすれば!カフェオレ姫のお披露目パーティだと言うのに・・・」

 

 「レスカが来るのか?」

 

 「ですから、カフェオレ姫の」

 

 「オレ様がやる」

 

 ダーリン!?と驚きの、ダ・サイダー殿!と歓喜の異音同意語でハモりながら、ダ・サイダーを見上げる四つの瞳に、片眉を吊り上げてふんぞり返る。

 

 「それとも。オレ様じゃ役不足か?」

 

 千切れそうなほどに首を振って。そうだろ、そうだろう。

 

 ・・・・・・

 

 代役って事は。オレ様は警備兵に変装するって事だろ。って事は、何も知らないレスカが澄ました顔でオレ様の前を通り掛かって。面白れぇ、死ぬほどビックリさせてやろうじゃねーか!でもってその流れで・・・その勢いに任せればきっと、レスカに話せるんじゃないか。

 

 あの場所の事。

 

 なのに、だ。日が暮れて、薄明かりの中をダ・サイダーは進んでいた。進みながら、窓ガラスに映る自身の姿に・・・完っ璧!

 

 「まっ白い糊のきいた親衛隊の制服に身を包み、蒼灰色の長い髪を半日がかりで苦労してブローして軽く纏めた、まさしく美青年!むむっまたまた格好いいポーズを思い付いたぞ」

 

 「ダーリン!そんな事してるから遅れたんだって、少しは反省するジャン。格好いい事はウチが保証するから、急がないと。ホラ、もう待ってるジャン」

 

 窓ガラス越しにヘビメタコの、何故か失望したような冷めた目に刺し貫かれて、名残は惜しいが。そう思って振り向いた視線の先には。

 

 「おじょうさん!遅れてしまって申し訳ない。はじめまして、オレ様は今日のエスコート役の・・・」

 

 「ダーリン!見境なく口説かないの。そんな事じゃウチ、安心して遠隔指示なんて出せないジャン!」

 

 ぐ、ぐるしい~・・・あまりの可憐さに思わず行動に出てしまったダ・サイダーの首を遠慮なくギュウギュウと首を締め上げる姿に、ギブ、ギブと洩らしていると。少女の方からクスっと控えめに聞こえる。とこちらも、苦笑いで返して。

 

 「いいジャン?ココから先ウチは一緒に居られないジャン。ココからはその、インカムから指示を出すから、ダーリンは・・・ウチ、信じてるジャン」

 

 うるんだ思いつめたような瞳はヘビと言えどいじらしく、可愛らしく。

 

 「わーったよ、可愛いヘビメタコのお願いだ、約束する」

 

 舌先三寸。

 

 さって。これで小うるさいヘビメタコは封じた。オレ様は晴れて自由の身!飽くまで指示通り。「昼間ブッ倒した相手がエスコートする筈だった少女」に手を添えられて改めまして、両開きの大扉を振り仰ぐ。と、その端に控える二人の門兵はダ・サイダーの姿に気が付くなり目をまん丸に、それから慌てて扉に手を掛けるといよいよ、会場へ!

 

 一気に、楽隊の演奏が大きくなる。目も眩むほどの照明に、無数の目、目、目!そのどれもがダ・サイダーを射抜き、値踏み、囁き合う。いい度胸じゃねぇか。こちらも負けじと美女チェック、美少女発見、艶っ々の熟女を確認しながら、マジメに仕事もします。えっと確か

 

 「そのまままっすぐ。エスコートしてるオンナを一段高い所まで連れて行って、そう。そしたらダーリンは降りて右角の柱の前で待機ジャン」

 

 へいへい了解。ちらと、名残を惜しんで少女に視線を飛ばす。いかにもお姫様と言った感じのドレスに背中で踊るクルクルと巻かれた髪。左側に残る彼女の名残、花のような香りを思い出す。名前、せめて聞いておくべきだった。後ろ髪を惹かれながら顔を戻した途端、天国から地獄!

 

 「ダ・サイダー殿、首尾は上々のようですな」豪快に笑いながら近付いて来る親衛隊長は上機嫌に続ける。「それにしても。やはりわが輩の目に狂いは無かった!今ならだれがどう見ても立派な親衛隊い、ん、んん~・・・」

 

 フェードアウト。ダ・サイダーが返す文句を用意する間もなく、目の前で突然湧き上がった波、人並みに流されて沖の方へ・・・何だったんだ、今のは。あっけに取られていると、間髪入れずに今度は横から声が飛んで来る。オレ様?

 

 「ダ・サイダー様!とうとう親衛隊に入られたのですね」

 

 「今日の昼間の。あれで主だった猛者はあらかた倒したのですから、当然ですな」

 

 「と言う事はこの国の安泰はもう未来永劫!」

 

 「カフェオレ姫の事といい、二重のお披露目になりましたな」

 

 ちょっと待て。オレ様は承諾した覚えは

 

 「今から待ち遠しいですわ、これからはカフェオレ姫がこの国を動かしてゆくのですもの」

 

 「きっと、我々などでは思いもよらなかった方法で、よりよい道を示してくださる事だろうよ」

 

 にこやかに夢見る顔。カフェオレ、レスカの話に切り替わるとダ・サイダーの口は自然、閉ざされて。耳を傾ける。

 

 「城下の者には未だ、反感を持っている者もいると聞きますが」

 

 「なに、ひと目お姿を拝見すれば気も変わるだろう」

 

 「ご覧になられたのですの?」

 

 「いや、それを楽しみに待っているのです」

 

 ダ・サイダー殿は・・・ギクリ、と身を固くした丁度のタイミングで。楽調が一転して軽快なワルツに切り替わった。すると、質問を投げかけてきた男はさも残念そうな顔をしながらも一礼して・・・行ってしまった?

 

 かしましく取り巻いていた連中も、次々にダ・サイダーに会釈をして、挨拶を交わし、ダンスの輪の中へ。そうか、曲がかかれば踊りに行く、それも彼らの"仕事"なのか。面妖な。でもま、助かった。

 

 はぁ~疲れた。

 

 気を張っていた体制を崩して壁にもたれかかる。ようやくひと目を気にせず振舞える。今や、来客のほとんどは広間の中央でくるくると踊り、それに外れて眺めているのはダ・サイダーと同じ警備担当の者ばかり。等間隔で立ち並び、リズムを取っている者、ソワソワと足が動いているもの、大あくびを隠そうともしない者・・・大丈夫かよ。

 

 視線を戻すとくるくる、くるくる。あの中に居るのだろうか?音楽に合わせて、せわしなく動き、入れ替わる面々。今日の主役の、金色の髪の・・・

 

 「ダメだ、わかんね」

 

 「え?ダーリン、何か言っ・・・ブツッ」

 

 ギブ。

 

 主電源を落としたインカムをジャケットの中に仕舞い込んで、さて、と。

 

 一歩、外へ出るとまだ冷たい風が、整えられたダ・サイダーの髪をすくって、抜ける。バルコニーには誰の姿もおらず、照明も、開け放たれた扉の形の外は真っ暗で、ますます丁度いい。隠し持っていた煙草に火を付ける。

 

 「ンだよ、レスカのバカ野郎」愚痴りながら、煙を吐き出す。

 

 遅れて来るのか、いつになったら来るのか。せっかく驚かせてやろうと思ってたのに、これではダ・サイダーの方が持たない。深く吸い込むと、目の前の赤い光が強く、燃える。

 

 ぼんやりと浮かび上がる、煙草を挟んだ指の、延長にある手首。見慣れないまっ白いカフスが闇夜に眩しく映る。目をそらそうと顔を向けると自然、吸い寄せられる光の洪水。会場はひたすらに明るく、正しく、まっすぐで。ダ・サイダーのような影の存在には強すぎる。こんな格好・・・

 

 「ガラじゃねぇよなぁ」

 

 たゆとう紫煙を眺めながら、想う。本当に大丈夫なのだろうか?・・・大丈夫じゃねーだろ、オレ様と似たり寄ったりなんだから。でも同時に、レスカは愛されている。期待されている、この場所で必要とされている。それに応えようとしている、返そうとしている。退屈で窮屈と文句を言いながらも頑張っている。

 

 ダ・サイダーは?

 

 顔を上げると、漆黒の夜空が、その先にある大宇宙が視界いっぱいに広がる。ベリィ・グレート・ドリーム計画。それとも、アイツの傍にいて、支えてやりたいと思っている?

 

 オレ様は・・・

 

 頭を振って余計なモノを振り落とそうと、その時だった。

 

 「キャァァ!」

 

 慌てて切り替えて顔を上げて、火を消す。焦る気持ちに足を取られながら、会場へ。そこには。

 

 「いよ~し、全員注目!動くなよ、もし指一本でも動かしたら、どうなっても知らないからな」

 

 油断した!舌打ちと共に・・・へぇ、ちったぁ面白ぇ展開になって来たじゃねーか。

 

 暗がりに身をひそめながら、くまなく視線を廻らせる。会場の奥、一段高い場所で一人の少女が囚われているのが見える。あれは、他でもない。ダ・サイダー自身がエスコートして来た少女だ。それに刃物を突き付けている、今さっきの声はあの男か。

 

 もう一人。そこからタップリ距離を置いて、十重二十重に寄り固まったギャラリーを舐めるように、刃物を突き付けながら周遊している。二人とも頭がらスッポリと布を被っていて、どんなツラをして居やがるのか判らない事が残念だ。

 

 「いよ~し動くな?おれたちはいい方の盗賊団だから、大人しくしていれば悪いようにはしない。ただし」

 

 刃先が光を反射した、と思ったら髪が。少女の髪飾りがバラバラと音を立てて散り、その瞬間・・・

 

 「何で止める!?」

 

 嬉々として飛び出そうとしたダ・サイダーは伸びてきた腕、親衛隊長にがっちり掴まれて、取り巻くギャラリーの最外周、そのまた外にまで押し出されてしまう。手加減なしで睨みつけるも、こちらを見ようともしない。じっと、会場の中央に目を向けて、耳を澄ましている。

 

 「ちょっとでも変な動きをしたら、いい盗賊じゃいられないかもなァ」

 

 再び聞こえて来る声は、さっきよりずっと遠い。とたんにダ・サイダーの血が逆流する、と再び。親衛隊長の腕がダ・サイダーの胸倉を掴んで、一拍。じっと、ダ・サイダーの目を見つめて静かに。

 

 「どうするおつもりでした?きゃつ等めは、動くなと言った。それなのに貴殿は・・・人命が掛っておりますのじゃぞ?」

 

 「じゃぁ、どうしろってんだ!」

 

 「先ずは状況を判断です」

 

 ンな事!あの一瞬で、それだけあればダ・サイダーには充分だった。その千載一遇のチャンスを失ったのだ。やり場を無くした怒りは行動に。力任せに壁を殴り付けると血が、まっ白い袖口に染みを作る。

 

 それを横目で見て、見ただけ。親衛隊長はほんの一瞬、目を向けただけ。巨体を出来るだけ縮めて中の様子を窺いながら

 

 「きゃつ等の目的はおそらく・・・」

 

 「おれ等の目的は単純。カフェオレ姫サマに王位を退いてもらう事。いや、この国から出て行ってもらうこと」

 

 「一切の権利を放棄してこの城を出て行かないと、近いうちに実力行使。マジだったのかよ」

 

 記憶の中のレスカの声に、自身の声を重ねる。親衛隊長の驚き開かれた目とぶつかって・・・知っていて、分かっていて。予測出来た、防げた事だったのに。

 

 油断した。だらりと垂らした腕の先から熱い、血潮が垂れている。おかげで・・・ダ・サイダーはようやく冷静を取り戻す。

 

 「おれ等の目的は、今ここで国王に、その誓約を立ててもらう事!」

 

 シンと静まり返る、誰も一歩も動けない。呼吸すら・・・最悪だな。だが落ち込んでいる暇はない。顔をあげる、今ダ・サイダーが動けば間違いなく、彼女に危害が及ぶだろう。目的を考えればコケおどしにすぎない事は明白と言えど、なにしろオレ様だ。他でもない勇者ダ・サイダー様なのだ。そんな人物がいきなり出てきたりしたら。手元が狂わないとは限らない。

 

 張り詰める空気・・・最悪だ。誰か・・・・・・何か!

 

 その時。

 

 「ハァ~あ。そんなの許可出来るわけないでしょ、却下よ、却ぁっ下!」

 

 今だ!

 

 勢いを付けて飛び出したダ・サイダー、一瞬遅れて気付いた賊がこちらを向くが、遅い!人垣の隙間を縫って中央へ。今更こちらに刃先を向けたって・・・何だと?

 

 急ブレーキで見上げたダ・サイダーの目に映ったモノは。おいおいマジかよ?他ならぬ囚われの少女自身が、崩れたヘアセットの襟足から抜いた櫛で賊の目玉を寸止めに!

 

 ひゅう!思わず口笛を吹いて称賛する。と「はんっ」と。いかにも気だるそうな答えと、待っていたかのように返す手と言うか肘でみぞおちに一発!体重を掛けた一撃は賊の呼吸の自由を奪い、慌てたもう一人の方が少女の背後から・・・んじゃ、オレ様の出番だな。

 

 少女が気が付くよりもわずかに早く、ダ・サイダーの右ストレートがきれいに決まり、これまた景気良くフッ飛ぶ!

 

 「後ろ!」

 

 わーかってるって。振り向きざまにもう一発、ビンゴ!・・・と、こりゃいい!ピッタシのタイミングで少女も。賊の後頭部を、思い切り振りかぶったワインボトルが見事命中して、前後からの強打でノックアウト。派手な音を立てて・・・

 

 一丁あがりっ!

 

 割れんばかりの歓声に手を振って応える。いえ~いダーリン!って、ヘビメタコは居ないんだっけか、チェ、つまんねーの。それにしても。

 

 隣を見ると件の少女が、すっかりザンバラになってしまった髪を掻きあげて、露わになった横顔・・・んん?

 

 「さって。このアタシに楯つきやがった非国民、ツラをおがませてもらいましょうか・・・って、アンタたちは!?」

 

 背中合わせに、ぐるぐるに縛られた二人の賊の、顔を隠していた布をはぎ取った、その中身は。

 

 「カンベンしてくれよ~」

 

 「オレたち、金に目が眩んだだけなんだよ~」

 

 無残に腫れ上がって心霊写真のようになった顔の兄と、ヒョロリとノッポの頬を引きつらせた薄笑いをうかべる弟。ライアー兄弟ではないか。はぁ~と、腰に手を当ててジロリ、と睨みを利かせる。

 

 「ど~ういう事か。説明してくれるわよね?場合によっちゃ、顔見知りサービスしてあげてもいいんだけど」

 

 「そう来なくっちゃ!オレ等、ある人物に頼まれたんだ。高額報酬、ちょろい仕事だって言うから受けたのに。ぜんぜん割に合わない!」

 

 「慰謝料に治療費、追加料金お願いできますかね、親衛隊長?」

 

 「あのねぇ。そんなに簡単にゲロしちゃったら、いい仕事が来なくなっちゃうわよ?だからアンタらはダメなまんまなのよ」

 

 ナルホド!と目からウロコをぼろぼろ落としている兄弟に最大級のため息でもってたしなめて。それからギロリ!控えていた主犯こと親衛隊長ををニラみ付ける、が。

 

 どこ吹く風、だと?

 

 「いやはっはっは!バレてしまいましたな。ほんの冗談、ちょっとした余興です。ダ・サイダー殿があんまりにも釣れないので。いかにもっぽいシナリオでしたろ?わが輩が三日三晩掛けて考えました。しかしお見事でしたぞ!やはりわが輩の目に狂いは無かった。彼ほどの適任者はこの国、いやさドキドキスペースじゅうどこを探したって見つかりますまい。改めましてダ・サイダー殿、受けてはくれまいか、わが輩の後任・・・って、およよ?」

 

 きょろきょろと、首を動かして。むぅと唸って考えるポーズ。先ずは状況を判断です、十数分前に自身で言った言葉を実行している。この、垂れこんだ重苦しい空気、熱気、殺気。

 

 イヤ~な予感。

 

 「おや?もうこのような時間か。老獪は先に失敬させてもらうとしよう。とぉウッ!」

 

 「ホラホラさっさと追う!」手を叩きながらの声に急かされて、ようやく動き出した衛兵たちはバラバラと、親衛隊長が飛び去ったバルコニー方面に、アッチは何とかなりそうだな。にしても、だ。

 

 何だ今の茶番は。

 

 「それはこの、ライアー弟が説明しよう。今回の事件はまるっきり、親衛隊長の狂言だったって事。これだけ多くの人を巻き込んで、迷惑を掛けて。当然、明日には責任を追及されるだろう。それだけの事をしでかしたんだ、職を追われるだろうね」

 

 「おっとその先は。兄にもに花を持たせてくれよな。そいで、まんまと空席になった親衛隊長職。かと言って空いたままにしておく訳にも行かない、むしろ早々に埋めなければいけない。さて、誰が適任だと思います、みなさま?」

 

 縄を打たれたまま、漫談師がお客に相槌を求めるようにぐるりを見渡して。ひたと止められた相手は仕方なく、呆れ半分感心半分の顔で応える。

 

 「はぁ~良く考えたわね。連日の快勝で名実共に最有力候補。本番だってこの通りですよって、これだけの大人数の前で見せつけたら。加えて宇宙イチのお調子者。ねぇ?なかなか切れ者じゃない、あのジジイ」

 

 「ちぃと強引過ぎるのがタマに傷。だってホラ」

 

 顎で指されて振り返る、視線の先。本日のMVPことダ・サイダーはあんぐりと口と目をまん丸に開けっぴろげて

 

 「れ、レスカぁ?」

 

 「今更かよ!」とユニゾンツッコミも、ダ・サイダーの耳には届かない。

 

 囚われて大立ち回りを演じた少女、レスカは思い出したように眉間のシワを深く刻み、そっぽを向いて。でも長い耳の先は赤く、癖の強い髪でも隠しきれない膨れた頬に口をとがらせて

 

 「ジロジロ見るな!どうせ・・・似合ってないわよ」

 

 「いやいや~まさかあのレスカがここまで化けるとは」

 

 「可愛いよ、似合ってるって!」

 

 「うるさい、うるさぁ~い!誰か!早くコイツ等連れて行ってちょうだい!」

 

 「お手柔らかに~」と揃うニヤケ顔も。レスカの号令でリクエスト通りお手柔らかに、連れて行かれると、ようやく。ぐん、と伸びをして、疲れ果てた顔で肩を回してストレッチしている姿は、なるほどレスカかもしれん。だが・・・

 

 つと、目が合った途端にニヤニヤ~。嫌~らしい笑いが顔面に溢れ返って、再三イヤ~な予感。

 

 「ね、ね。ダ・サイダーさ。もしかして見惚れてる?」

 

 「うるせー!」

 

 「あはは!照れること無いじゃない?いいわよぉ、賛美されたげる!」

 

 腰に手を当てて踏ん反り返る。このアマ・・・いい気になりやがって!文句を言おうと、思いっきり息を吸い込んだ所だった。ふっと、花がほころんだように微笑んで

 

 「アンタも。格好いいじゃない?」

 

 「と、当然だ!」今度はダ・サイダーが踏ん反り返る。

 

 「でもさ本当。あの場でとっさに動けたのはアタシと、アンタだけだってのは事実なんだし。アタシとしては、アンタが居てくれたら心強いし、タイクツでキュウクツな姫サマも、ちったぁ楽しくなるんじゃないかな~って。思ってるんだけど」

 

 「・・・それは何か?オレ様が傍に居ないと寂しくて死んじゃうから、どうかダ・サイダー様お願いしますハートマーク。という事か?ふふん、面白い。キサマが泣いて懇願すると言うならオレ様も・・・がはぁっ!」

 

 「調子に乗るんじゃねぇよ、ボケ!」

 

 そのまま肩を怒らせながら、プリプリ湯気を立てながら・・・冗談なのに。

 

 

◇◆◇

 

 

 先に言っておく。

 

 レスカの為にやってやるんじゃねーぞ。弱みなんて一ミリだって意地でも見せない、あのレスカが、ガラにもなく弱音なんて、吐きやがったからじゃねーぞ。思わず抱きしめたくなっちまうくらいカワイイ上目づかいで、お願いして来たからでもねーぞ。

 

 オレ様が傍に居て、ベリィスペシャルなダジャレを披露してやりゃ、ちったぁ息苦しいのも解消してやれるかな、なんてゼンゼン思ってねぇからな!

 

 だって考えてもみろ?親衛隊長なんて華やかで、格好いい役。オレ様以上の適任が他に居ると思うか?

 

 ったく、仕方ねーな!

 

 「でもダーリン、ベリィ・グレート・ドリーム計画はどうするジャン?」

 

 「ま、こーなっちまったモンは仕方ねぇ、暖めておくとするさ」

 

 やっぱ、レスカが一緒の方が断然面白れーし。それに、アイツ抜きで経理とか、事務とか、イマイチ不安なんだよな。とまぁ、そんなこんなで結局。オレ様は親衛隊長を引き受ける事になった、までは良かったんだが、なぁ~。

 

 「コレが、親衛隊だ、とぉ!?」

 

 初任務、顔合わせに揃った面々はダ・サイダーの予想を遥か宇宙の彼方にスっ飛ばした感じで。ヘビメタコ!今一瞬と言わず結構な時間、見惚れてただろ、この浮気者!とにかくまぁ・・・麗しい事っ!あいにくの曇天なのに何故かキラキラ眩しいわ、意味不明の斜めキメポーズだわ、バラ持参だわ、つうか飯食ってんのか?モヤシ過ぎだろ。

 

 あげく

 

 「兵役って、ボクたち貴族の子息には無駄意外の何物でもないんですよね」

 

 「だからさ、どうせ消化するんなら格好いい部署がいいよね」

 

 「親衛隊なんてぇ~、結局は式典を華々しく飾り立てるだけのイケメン集団なんでしょぉ?」

 

 「この通り。国内隋一の軟弱揃いゆえ、鍛え直してくれまいか」

 

 またしても。

 

 自慢のヒゲと頭髪をすっかり剃り上げの刑に処された前・親衛隊長は、相変わらずの豪快な笑いで軟弱揃いの親衛隊員を軽く一メートルは引かせながら。

 

 対する新・親衛隊長、ダ・サイダーは。

 

 「お、おもしれーじゃねぇか!てめぇら、カクゴしやがれ!!」

 

 苦難の日々が始まる。

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