レスカ長編 Take my revolithion!!   作:湯乃屋

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 漆黒の宇宙空間を鮮やかに彩る無数の星たち。まるで宝石箱のようなそれらの間を、一直線に迷い無く進む姿があった。近付いてみるとそれは、長い長い箒の尾を残してスピードを上げて、彗星のように・・・

 「はん!バッカじゃないの?」

 宇宙の神秘だのロマンだのを期待していたヒトにはゴメンナサイ。

 彗星にも負けないスピードでドキドキスペースの星々の間を縫って進んでいたのは、大型の宇宙船。威勢のいい、怒気と言うよりは抑えきれない歓喜に震える声音は良く知った

 「ちょっと!どうなってるの、傾いてるんじゃない?もうチョイ、そうOK!」

 「レスカのボス、ここの数値なんですけど」

 「ボス、シャワー使えます」

 「夕食は何がいいっすかね、ボス?」

 「もうちょい出力抑えて、長旅なんだからエコで行かなくっちゃ。給湯温度は45度、あんまり熱いのは嫌よ?夕飯はもちろん肉!」

 ラジャ!と腕を上げてまわれ右。駆け足でコクピットを出て行く後ろ姿は揃いのボーダーシャツという、典型的海賊仕様で正直、十束一絡げとしか言いようがない。それでも一応、努力をしてみるのが我らがボス、レスカ様!早速、今来た連中の顔を忘れないうちに・・・とはいえ。

 「ボス、シャツの替えはどこにあるんすか?」

 という具合に(多分)新たな部下がやって来るものだから。

 「んな事知らないわよ!も~う無理!!覚えられる訳無いでしょ、ったく!」

 一応努力はした。というタテマエを掲げての放棄。今来たばかりのシマシマボーダーを手で払うように追い帰しては、勢いを付けてシートにダイブ。うん、と伸びをして。

 でもま、満更でもない事は顔を見れば。それもそのハズ、体の節々に気持ちのいい痛みを感じながら改めて、正面に目を向ければ何と言っても。

 「いやにゴキゲンじゃないか」

 アンタさえいなきゃね、と喉まで出かかった言葉を慌てて飲み込んで。

 「当~然!だって宇宙よ?ドキドキスペースなのよ?ゴキゲンにならない方がどうかしてるわ」

 それは良かった、と。さっきのボーダーと入れ違いに入って来たのだろう。場違いなくらいに優雅なリラックスムードを醸しているのは、この船のオーナーであり、事の発端でもあるマキア。

 ふわり、甘いような暖かな香りに思わず視線が誘われて見ると、そのまま。ティーカップの一つをレスカの目の前に置いて自身も、静かに隣のシートに身を沈めて一息。

 「悪いけど。冷やかしならお断りよ、おぼっちゃん?」

 それには、意味深な笑顔を返して、一転。カップを置いて真剣な目をしたかと思うと手を伸ばし、無数のカーソルを操作し始める。と同時に正面モニターが。、外の景色、宇宙空間を映し出していた画面は次々に立ち上がる画面、表示される無数の数字の、記号の羅列の下敷きに。

 時折、目を落としては、一緒に持って来たタブレットで確認しているのか。見比べては微調整、こんなもんかな。その一言を最後に表示を航海図に切り替えてようやく。改めての場違いなくらいに優雅に気取って改めての一口。

 「進路も天気も上々。拍子抜けするくらいに順調だと、かえってツマラナイかな?キミの場合」

  ひょいと眉を持ち上げる嫌味になど、いちいち相手していられない。とでも言うように。レスカはため息一つで足を組みかえて。

 「今、どのくらい?」

 「無視かよ、釣れないな。・・・まだ十分の一も行ってないよ」

 言葉の割に気にするでもなく。軽い調子で操作するタブレットには表示されているのだろう。だがそれが目の前のモニターに表示される気配は無い、全然ない。期待はしていなかったとはいえ、レスカには進路も日程もなにも教える気すら無いようだ。

 「いいけどさ。流石に、傾いてたり見るからに変な事になってたりしたら助言くらいはするけど。アンタ、連中にはどこまで教えてあるのよ?」

 「ハラハラワールドからまっすぐ北北東上方25度にXXキロ」

 「丁度今いる辺りね、それが・・・まさか」

 薄い笑いは肯定と取って間違いないだろう。

 「だから今、ここにボクが居るんじゃないか。ここから先はまぁ、黙って付いて来な。って」

 「はぁ~呆れた。まだ十分の一も行って無いんでしょ?そんなんで本当に黙って付いて来るんだから。よっぽど信頼されてるのね、そうは見えないけど」

 「雇用契約の範囲内です。オコサマ向けのお仲間意識を期待してるなら、お門違いだぜ」

 「って、ちょっと待って。仲間じゃないっての?」

 「必要無い」

 あまりにあっけらかんと言いきるものだから、思わず・・・ゲホッ!

 カップを傾けたまま思わず固まってしまったせいで、熱い紅茶は容赦なくレスカの喉に流れ込んで。屈み込んで、むせかえる様子に、オイオイ大丈夫か?と呆れているが、レスカの方は、それはこっちのセリフ!

 「あ、アンタこそ、そんな連中で本当に大丈夫なの?」

 「拍子抜けするくらいに順調だって、言ったろ?」

 そうだけど!

 その通り、ぐうの音も出ない。ムスっと眉根を寄せて正面に向き直る。あれから、まだ何時間も経っていない。それでも、今頃とっくに手配されているだろう、いわゆる追手は今の所、影も形もレーダーにも映らない。べらぼうに早いのだ、スピードだけは。

 スピード以外は。

 答えるように、遠くから怒号が聞こえてくると自然、ため息が落ちてしまう・・・またか。やる事が無くなったらすぐコレだ。まだ数時間、の間に一体いくつのケンカを仲裁しただろう。正直もう

 「だから、放っておけばいいんだよ、ただのコミュニケーションなんだから」

 ダメだこいつ。

 頼りない、どころじゃない。これじゃ、初対面のレスカをいきなりボスに仕立て上げようとする訳だ。ハァ~ぁ。ダルい腕を持ち上げるとしゃらん、と鈴を転がすような音色がせめてもの救いになる。

 「アンタじゃ無理よ。それに、コレを持ってる奴がボスなんですって」

 「だったら返せよ」

 「嫌ぁよ」

 伸びてきた手から逃げるように引っ込めると、明らさまにムっと膨れる頬が横目に、ガキか。でもまぁ、分かりやすいに越したことは無い。意を決したのか諦めたのか。レスカはため息一つでいきなり。

 ギョッと目を向くマキアなどお構いなしに胸のあたりを探ると、あったあった、と。あまりのはしたない行為に頭を抱えている鼻っ面にポン、と放り投げる。手を出すと思っていたが、転々と転がるソレをじっと見つめて。・・・鼻を近づけて言葉に詰まっている。

 「これは?」

 「イヤーカフってのよ」

 「見れば分かる。何でこんなものが胸元から出て来るかと聞いている」

 「細かい事は気にしない!それよか、アタシとお揃いよ、可愛いでしょ」

 ふふん、と髪を掻きあげて見せると今度は、不自然なくらいにゴキゲンなレスカの顔と、目の前のブツとを見比べ、ウラを探っている、マズい。慌てて、レスカの方も急かすように

 「要るの?要らないの?」

 「安物だな」

 「ムカ!・・・じゃ無かった、落ち着けアタシ。お、お気に召さないかしら、ホホホッ!」

 「せっかくだ、貰ってやらなくはない」

 「その顔・・・何よ、浮かれてんじゃない。スナオじゃないわねぇ?」

 「誰が!・・・こっちは乗っ取られ真っ最中でそれ所じゃないってのに」

 「何が?」

 「この船」

 「誰に」

 「海賊レスカに」

 首を60度ばかり傾けてハテナを飛ばしまくっているレスカなど気にも留めず、結局。イヤーカフを耳に飾り付けては早速ご満悦。

 「事実はどうであれ、そう考えるのが自然な流れじゃないかぁ?あの状況だったらさ」

 知りたい?と調子に乗った様子で、タブレットをこちらにも見えるように立たせて見せる。そのままの状態でタップして切り替わった画面は、何かの記事だろう。

 振り切るように顔を逸らす。と、呆れたような、鼻先だけで笑う音に思わず噛み付いてやろうとニラみ付けた顔は、続く声音は。

 「そうだね、キミはもうしばらくは知らない方がいい」

 「どういう!」

 「少し落ち着きなさい」

 思わず浮かしかけた腰の勢いは、突然切り替わった声のトーンと軽く挙げられた手によって、いとも簡単に制されてしまう。

 「他意は無いよ。このご時世だ、氾濫する情報に流されないように必死になるのも大切だけど、たまにはノンビリさ、休むのもいいって事。キミの場合は特にね」

 「・・・余計な、お世話よ」

 どすん!と音を立てて勢い付けてシートに座り込む。何もかも分かってる風な口調なのに、卑怯なくらいに柔らかい声音に・・・腹が立つ。

 カップに残っていた、冷めてしまった紅茶を一気に飲み干すと、ホンの少しだけ落ち着く。切れそうな糸を紛らわそうと、逸らした視線の先には。いつ切り替えたのか、モニターに表示されていた航海図は切り替わり再び船外の様子を、愛すべき宇宙空間が映し出されていた。

 ・・・いや。外界は暗く、船内は明るい。鏡のように映って見えているのはレスカ自身だ。清楚な印象のピンクのドレスに、きれいに結いあげられた髪の、カフェオレがこちらを見返している。

 酷い顔。

 「やっぱり、無理してるんじゃないか」

 そんな事!言おうと、勢いを付けようとした指先に何かが当たって、見ると。一枚の、これは・・・カードキー?

 「プレゼントのお礼。少し休みなさい、この船で一番の部屋だ。本当はボクが使うつもりだったんだけど。ボスはキミなんだ・・・ろ!?」

 ひゅ、と喉が鳴る、この手に感じる。鷲掴みにしたマキアの喉仏が上下している、なにが起きたのか理解出来ずに戸惑っている、思ってもみなかった事態に戸惑っている。マキアが?それともアタシが?

 ・・・伏せた視線の先には赤いコートが見える。見慣れた色、いつもはもっと近い、いつもならこの身にまとっているハズの色。

 はん!

 「そうよ!この船はこのアタシ、海賊レスカが乗っ取ったんだからアンタは。・・・安全運転にだけ注意してればいいの。お判り?」

 振り切るように乱暴に突き飛ばすと、どん、と音を立てて肘掛けにぶつかる。せき込みながらも精一杯レスカを睨み付けながら、ようやく自由になった喉をさすっている。そう、それでいい。

 「いい事?連中も、アンタも!今度下手なマネしたら容赦はしないわ」

 「・・・こん、ど?」

 「アンタがどういう指示を出したかなんて、知ったこっちゃ無いけど。このアタシの下着に手を付けようなんざ!・・・ツラさえ分かってれば殺してやるのにっ」

 一瞬・・・レスカは吐き捨てるように視線を逸らしたから見ていなかったが、確かに一瞬だけ。

 だがレスカが視線を戻した時には例の、嫌味な薄笑いに戻っていた。

 「関係ないね」

 「っ!アンタそれでも」

 「ああ、ボクはしょせん偽物だからね。でもキミなら無理じゃないんだろ?だったら見せてくれよ、本物の海賊レスカの手腕とやらを。・・・不安なら、降りてもいいんだぜ?今ならまだ」

 「今更!・・・」

 「それを聞いて安心した!」

  ヨシ!と勢い付けて立ち上がっては、満面の笑顔を咲かせるものだから、レスカは。出かかった言葉が喉につっかえてしまう。あまりの豹変に付いて行けないでいるこちらなどお構い無しで、お茶が冷めてしまったと愚痴っては一口、渋い顔を作っている。

 「さしづめ、ボクはキミのパトロンってとこかなぁ?それも悪くない。ん?だったら!やっぱりこの船のオーナーはボクじゃないか。今回のプロジェクトリーダーはボクだし、計器はボクの専門分野。一番ブロも夕食のメニューを決めるのもボクでしかるべきじゃないか。それなのに何故、だれもボクに指示を仰がない?」

 「アンタね」

 「まぁ見てな。キミは・・・今くらいはゆっくりお休み、カフェオレ」

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