レスカ長編 Take my revolithion!! 作:湯乃屋
「一体ゼンタイ、ど~うなってるジャン?」
「ど~うもこうも」
言いながら、マキアは耳に付けていたイヤーカフを外して、見せる。
気を遣って、と言うか追い出されてと言うか。ヘビメタコ、クビョウ、マキアの三人は再びコクピットへ戻り状況確認という名のムダ話で時間をツブしているのだが。
「カフェオレからのプレゼント。なんとお揃い!羨ましいだろ」
そんなバカな!あのケチにかけては右に出るものの居ないレスカが?何か裏があるに違いない!ヘビメタコと、クビョウはそろって、今はマキアの手の平に乗せられた華奢なイヤーカフに鼻がくっ付くほど近付いて・・・ボソボソ、何か聞こえる?
「コレ、盗聴器ジャン?」
「だろ?いい趣味してるよな」
「それで!さっきオレさ、何~か扉の向こうが騒がしいって思ったら突然!後ろで物音、ギャー!!それまで寝てたハズの姐御が起きあがって、ギャー!!!正直、先週見たばかりのゾンビ映画を思い出してチビるかと思ったぜ」
「あ、それウチも見た。つっまんないB級だったジャン?」
「ちょっと待て、寝てた?船が墜落しかけたんだぞ?」
「そ~なんだよ、全く。ノンキなもんだよな、あははは!」
わずかに乱れた髪の隙間からプックリ顔を出すタンコブをさすって、渋い顔。ドレスに合わせるには先鋭的すぎるアクセサリーは見た目通り、痛むのだろうか。
「そうしたんです、ソレ?」
ココアの質問にはチラ、と視線を寄越しただけで、相変わらずダンマリ&しかめっ面を決め込んでいる。と思ったら一層苦り切るなり、吐き捨てる。
「どうしたのかしらね、寝てたからゼンゼン覚えて無いんだけどっ!今のうちに念仏でも唱えときなさいよ!!」
「盗聴先の相手ですか?」
さすがに、ぎょっと目を向いて見せるレスカだがそれも一瞬。ココアは自身の耳を再び指さして
「所々、聞こえにくい個所がありませんでした?」
「は~ぁ、おっしゃる通り。電波障害は計算に入れて無かったわ」
手で覆うと極端に聞こえにくくなる。耳飾りと言う繊細なカタチを模したタイプに起りがちなバグだ。逆に、それを利用して情報操作するという上級テクニックももちろん。マキアの場合、後者だろう。
「それより。久しぶり!でもないか。元気そうじゃない?アンタが助けてくれたのよね?アリガト。でもまさか、とっくに追い抜かれてたなんて、思いも寄らなかったわ」
「そのナゾはですね~わたくしが出発したのがお姉さまより先だから~ですわ。匿名の情報提供がありましたの。ここで、あの地点で待っていれば必ず捕まえられるからって」
「いかにも胡散臭いんだけど。それでも乗った、からココに居るのよねぇ。罠だと思わなかったの、危ない目に合ったらどうするつもりだったのよ」
「その時はその時」
「あっきれた!アンタそれでも姫?」
「お互い様ですわ」
それもそうね、と呆れて笑う姿はいつもと何も変わりなく見えて、もしかしたら・・・これが杞憂で終わればどんなにいいか。と思ったのもつかの間。
「でも。悪いわねぇ、こんな所で捕まる訳にはいかないのよね、アタシ」
羽手裏剣を構える。真っすぐ、ココアに向かって。
「実の妹にこんな事、気が引けるんだけどさぁ?とりあえずはそこの。腰から下げてる物騒なモンを渡してくれるかしら」
目が細められると、すうっと。ヒンヤリとした空気が流れて来る。だがココアとて引いては居られない。慎重な手つきで腰に、腰のベルトに固定してあった銃を外して
バン!
紫煙の揺らめきを長く残して、空になった薬きょうを取り出す。爆風にあおられたレスカの髪が散らばりそのうちの何本かは足元に、ばらばらと落ちる。新しい薬きょうを詰めて部屋の中を慎重に見渡すと一つ、二つ、落ち着いて・・・
言葉も無く・・・何かを言いかけて口を空けた隙にもう一発、二発!
今度はレスカとは反対方向。ココアは煙のたゆとう室内をまっすぐ横切ってしゃがみ込んで拾って、ようやく振り返って。
「この部屋に仕掛けられていた盗聴器はこの通り、破壊いたしましたので。ご安心くださいね、お姉さま」
「盗聴、器?」
「気が付かれませんでした?この部屋に来るまでにもいくつか、分解しておきましたけど」
歩きながらの”作業”。ココアとてまさか、お守り程度に持ち歩いているドライバーやらペンチやらを本当に使う事になるとは思ってもみなかった。
「マキアさんの言を借りると、お姉さまを良く思っていない連中、の仕業でしょうね」
いわく
「気まぐれで始めたカフェオレの都合が悪くなったから、レスカに戻る」
「何ですって!?」
「グズグズ言ってる場合じゃありません事よ!」
締め上げられながら、睨み上げる。レスカの手が、ココアの襟をきつく締めあげている手が、迷っている。揺らぐ瞳の色も、目線ががち合えば隠すように伏せられ、それに合わせて手も。ストンと音がするくらいに呆気なく解放されたココアは少しむせて、落ち着いて・・・背を向けられてしまった。それでも、もう一度見つめる、逸らしてはいけない。
「言い返したいと思っているなら、ご自分の口で言っておやりなさい。それとも・・・恐いですか?」
「だれが」言葉の割に、なんて弱々しい声。
「これで良かったのか、本当は間違ってたんじゃないか。今更・・・何を迷っているんです?」
レスカの背中に投げているのか、自分自身に言い聞かせているのか。
「そんな軽い気持ちでここまで来たのですか。自信が持てませんか?最善だと思ってあなたが選んだ道なのでしょう、だったら」
わたくしも。意を決して・・・決し切るなんて、そんな強いニンゲンじゃない。それでも思い切って一歩、レスカの背に、手を添える。
「もう少し、ご自分の心を信じてさし上げてもいいんじゃありませんか?」
とん、と背中を押す。あの時も今も・・・見当違いな事をしているかもしれない、でも今は、自分の心に賭けて。
・・・・・・
「ぶっは!・・・あっはは!あ~ハイハイ、負けた負けた!あ~あ」
くるり、と正面を向いてくれた姿はいつもの、今度こそいつものカフェオレお姉さまで。はぁ~あ。といかにも気だるそうに片足重心で腰に手を当てて、他人を馬鹿にしたような目を斜に構える。
「アンタが?心だなんて!それこそ最っ高にらしくない!!け、ど。そこまで言わせちゃったらねぇ。・・・悪かったわね、心配かけて」
「そ・・・そうですわ!何ですか、お姉さまともあろう方が、らしくも無い」
悪い悪い、と頭を乱暴にかきむしられる、なんて。・・・やばい、泣きそうだ。でも絶対見られたくない!から歯を食いしばる、と。
突然、緊急警報が鳴り響く。跳ねるように顔を上げたレスカは早くも警戒態勢に入っている。耳を傾けて、盗聴先のマキアから事情を聞いているのだろう。ココアはその間に何とか気持ちを切り替えなければ。熱くなった目をこすりながら顔を見ると丁度、燃えるような瞳が踊っている。
「緊急の救助要請ですって、行くわよ」
言うなり駆けだそうとするから思わず!レスカのドレスの裾を引っ張る、とこれまだ面白いくらい綺麗にすっ転んで
「ココアっ!アンタやっぱアタシに腹を立ててるんじゃないの」
「違います、こ、腰が」
「抜けたぁ!?ちょっとマジで言ってんの?っはぁ~呆れた、エラそうな事言って、ビビってたんじゃない」
「だって!」
「だってぇ?」
わざわざ屈みこんでニヤニヤ・・・やっぱり腹が立つ!
「へ、平気です!行きますわよ」
ヘイヘイ、と悠然と立ち上がるレスカの横で何とか、立ち上がったものの。まるで試作品の自立歩行ロボットのようによろけながら、レスカの差し出した手を払いのける。
平気と言ったら平気なんです!と言い張るからレスカはレスカで仕方なく、ツマラなさそうに舌打ちしながら件の耳飾りを外すと、音量を上げてココアにも聞こえるようにしてくれる。
「・・・着陸予定だったがコントロール不能につき、墜落の恐れ、だとさ。対象は小型のガレー船だ」
「要するに、この船でクルーやってたけど、ヤバくなったからサッサと逃げやがった三下連中って事?」
どうする?
シュン、と扉が開くと先刻、ココアがメンテナンスをしたばかりのコンピューターが全身で歓迎してくれる。対してマキアは。インカムに傾けていた注意を体ごと、こちらに向け直して。
「大人しく感謝を寄せる相手じゃないぞ」
「バッカねぇそんなの・・・グズグズ言ってる場合じゃありません事よ!」
お姉さま!?
場違いなモノマネに瞬間、その場にいた全員が目を丸くして、もちろんココアも。それなのに当のレスカはふふん、と胸を反らせて澄まし顔で。バカにしている位に嘘っぽく目を輝かせて、ココアの方に手を差し出すなり。
「力を貸してください?」
・・・全く、この人は!
「もちろんですわレスカさん、いえ、カフェオレお姉さま」