レスカ長編 Take my revolithion!!   作:湯乃屋

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 ドーン!と、地響きと共に黒煙が湧き上がり、絵画のように美しい情景に文字通り影が差す。もうもうと、だが長い時間では無かった。これだけの絶景だ、煙の方も遠慮をしたのか再び晴れると、いっとき隠されていた大型船が再び姿を現す。そしてその時を待ってました!と言わんばかりに、いかにもガラの悪そうな連中がわれ先にと殺到する・・・光景を遠い所から観察しているのは。

 

 「あ~あ、ハッチが真っ黒焦げジャン」

 

 崩れかけた塀の陰からめいっぱい体を伸ばしてヘビメタコは、ついさっきまで乗って来た船が海賊たちの手によって占領、潜入される様を見ていた。

 

 「あ~あ、開けられちゃったジャン!ひいふう・・・えーい面倒、大勢!って、こんな事をしてる場合じゃ無かった」

 

 シュルン、と身をひるがえすと一目散。目指すはモチロン。

 

・・・・・・

 

 「大変ジャン、たいへん・・・て、何してるジャン?」

 

 慌てて戻って来たと言うのに、せっかく危険を冒してまで偵察に行って来たと言うのに。マキアと目が合うと呆れたように肩をすくめて、顎で指す。ヘビメタコも改めて視線を戻して。

 

 「ですから~お姉さまが一言『是』と言ってくだされば~。わたくし喜んで旗でもテープでも投げて送り出しますのよ~?」

 

 「な~にが!『是』よ、サムライじゃあるまいし。嫌ぁよ、絶対お断り」

 

 ベロベロバーとレスカが舌を出すとココアも。眉尻をションボリと垂れ下げて、そのくせどこまでも馬鹿にした態度にいい加減、限界とばかりに頬を膨らませ、本音とタテマエを器用に顔の上に乗せて。バチバチ!と火花を飛ばしている。ってアレ?この二人って。

 

 「仲直りしたんじゃ無かったジャン?どうなってるジャン?ココアは気持ちよく送り出してくれるって言ってるのに。レスカ、本当は捕まりたいジャン?」

 

 「んな訳無いでしょ」

 

 「そうですわ~よく聞いてからおっしゃってください」

 

 ピッタリ揃った噛み付かんばかりの剣幕に、ヘビメタコは思わず飛び上がり、不本意でも何でもマキアを盾に隠れて・・・ちらと窺い見るともう。そんな事は忘れたとでも言うように再び二人だけの世界。火花を散らして炎を燃え上がらせている。

 

 「鬼ババ!・・・て顔に書いてあるぜ?」

 

 ニヤニヤ笑いで見下ろして来るマキアに図星を突かれてニラみ付ける。だったらせめて状況説明くらい、と通じたのか。は~ぁとガックリ肩を落としてヘビメタコに、チラとだけ視線を寄越す。

 

 「盗んだ船を途中で乗り換えて、追手をくらましたいんだとさ。これが次期女王の発言とは、泣かせる話だよな」

 

 「人聞きの悪い事言ってんじゃないわよ、アタシはただ」

 

 「足手まといくらいにしか思ってなかった手下共は都合良く出て行ってくれたし、目の前にはちょうど手ごろな小型船がある。貸してくれないかしら?は口先三寸、本音は」

 

 「大人しく言う事を聞かないと。ちょぉっと痛い目見ちゃうかもよぉ?子猫ちゃん。って、何言わせんのよ!」

 

 「お断りしますわ~」

 

 「この通り、にべもない」

 

 茶番お疲れ様ですペコリ。でも、それって火花散らす程の事?ココアを見上げると我慢の限界を超えたのか、眉毛を吊り上げてでも声はいつも以上に慎重に。

 

 「あのですね~いかにもわたくしが根性悪みたいに言うの、やめて頂けません~?わたくしだって他ならぬお姉さまのお願いですもの~。お気に入りの船の一艘くらい」

 

 「だったら」

 

 「ですから~」

 

 ひたと視線を合わせて。

 

 「『勇者のお勤め』という名目で、かの地に調査をしに行く。そう報告する事に何が不満だと言うのです~?」

 

 もしかしてバランスを取っているのだろうか。今度は語尾にだけわずかに非難の色を添えてレスカをまっすぐニラみつける。レスカはレスカで不機嫌ほんの一瞬。おどけた調子に再び戻って。

 

 「当ったり前でしょ!アタシはアタシの勝手で出て来たんだから、そんなもっともらしい嘘、つけるわけないでしょ」

 

 ちら、と。そっぽを向いた癖に窺い見る。対するココアは至って冷静、平常に見える。けれど押しも引きもせずに、むしろ冷淡なまでのオーラを立ち昇らせて、まさに一触即発。

 

 「と言う次第だ」

 

 「この状況で?」

 

 「そこ!何騒いでんだ」

 

 思わず、再びマキアを盾に隠れる、声が大きかったらしい。

 

 突如割り込んだ声はどかどかと足音も威圧的にマキア、レスカ、ココアの順にニラみ付けるが。女子二人はつーんと、揃ってそっぽを向いて。マキアが愛想笑いで何とか乗り切ったものの再び。行ってしまうやいなや火花散らして。・・・全く、ため息をつきたいのはウチの方ジャン、はぁ~あ。

 

 予想通りと言うか何と言うか。前回末尾で助けたガレー船から続々と出てきたのは竜宮城の亀でも何でもなく、手に手に武器を携えた海賊連中で。その先は当然、案の定。

 

 風通しはいいし、緑の天然芝も、遠くに見える雪山もいい感じ。ロケーションは最高なのに。

 

 「捕まって、縛られてるって言うのに。ノンキなもんだよなぁ?」

 

 「アンタの所為でしょ!」

 

 「あなたの所為でしょう」

 

 再びピッタリ声が揃う。仲直りしたんだか、ケンカしてるんだか。仲がいいのか悪いのか。とにもかくにも、話の通じる状態には見えないから仕方なく、妥協するしか無く、はぁ~あ。

 

 「んじゃ、報告するジャン。実はウチことヘビメタコは、連中が襲ってくるって直前に密かに抜け出して連中の目的、さらにはこの廃城の構成などなどを調べて今さっき、戻って来たんだけど」

 

 「一瞬、あのヘビ逃げやがって!と思ったけど、さすがはアドバイザーロボ。さ、ナワを解いてくれ」

 

 「そんな事より!聞いたジャン?さっきの爆発音。アイツら、大型船のハッチを壊して略奪する気満々ジャン」

 

 言いながら、急かすように顎で指し示した方向に思わずつられるマキア。途端に苦い顔を作って、当然だろう。丁度、大型船から出てきたと思われる先頭集団、と言うよりは一列が規則正しく、手に手に戦利品?を持って嬉々として城の中へ入って行く所だった。

 

 それと入れ替えに、やっぱり同じように手足を揃えて城から大型船の方へ向かう一列。そのどれもが判で押したようにボーダーヒゲ面満面の笑顔エンドレスで。

 

 「エンドレス系アニメーションにしてはアクが強すぎるな。っておい、それはダメだ、枕は!それが無いとボクは眠れない・・・あ、それも!あぁ~自宅からわざわざ持って来たお気に入りのスタンドライトなのに!」

 

 途端に泣きっ面になっているマキアをぺっと吐き捨て・・・じゃなくって。ぺっ、と黒板とチョークを吐き出しては地図を描きながら。

 

 「城の中も一回りして来たけど正直、物資は底をつきかけていたジャン。ウチら、アイツらにとってはまさしくベストタイミングのカモネギだったんジャン」

 

 「おいおい、まさかココを根城にしてるって言うのか?」

 

  城だけに。・・・ダーリン!

 

 「それ以外の何に見えるジャン?でもま、オマエが持って来た、くっだらないオモチャの山のおかげで見ての通り。海賊は総出、ウチはジックリしっかり城の隅々まで調べられたから。感謝してやってもいいジャン」

 

 「くだらないとは何だ、どれもいい品だぞ?それに総出と言われても」

 

 尻すぼみに途方に暮れた声でもう一度、エンドレスに目を向ける。途方に暮れた横顔に釣られて見るヘビメタコだって判ってる、皆まで言わずとも。どう見てもも無限にループしているようにしか見えない。要するに、敵がどのくらい居るのか、という最重要項目が全く判らないのだ。はぁ、と描き終わってチョークを置く。

 

 「地下は無かっただろ」

 

 「それらしい扉は・・・って、知ってるジャン?」

 

 「この廃城は保護対象候補だからな。放っといたらガレキと化すけどそれは惜しい。でも現状保護するとなると先立つモノが莫大っていうので、現在国際会議真っただ中だ」

 

 ついでに不法侵入の罰則は何だったかな~と。興味深そうにたった今書いた見取り図を覗き込んでは、時々顔を上げて確認している。

 

 「そんじゃアイツら」

 

 「バレたら宇宙規模の大罪人だな。へぇ、こうなってたのか」

 

 「もしかしてウチらも?」

 

 「バレたら、な。・・・という状況なんだけど。どうする、レスカのボス?」

 

 満足したのか、勢い良く顔を上げてレスカに視線を送るも・・・いい加減にするジャン?

 

 「とーにかく!それだけはダメ、絶対、却下!!もっと何かあるでしょ?例えばさ、有名コスメブランドの新作発表会があるとか、有明で新刊の発売日だとか」

 

 「いいんですか~?そんな理由で」

 

 「冗談に決まってんじゃない」

 

 はぁ~とひときわ深く息を吐いて、ぐっと背をそらして。顔を上げた拍子にメガネが光る。これは、相当・・・コワ!

 

 「さっきも言いましたように~ココでこうしてお姉さまに会ってしまった以上。わたくしは立場上、国に帰って報告をする義務が発生しているんです。みんなを納得させられるだけの口実が必要なんです」

 

 それは判るんだけどさぁ、と。それでもヘラヘラ笑いを浮かべるレスカに対して。すっと、顎を引いてヒヤリとするくらいの声音で。

 

 「そこまでおっしゃるのなら、お姉さま自身が考えてください。わたくしの船が欲しいのなら。みんなが、わたくしを納得させられるだけの理由を聞かせてください」

 

 「だから、それは」

 

 「モッチロン!お宝目当てだよな、姐御っ!」

 

 と、突然割り込んで来るなりレスカの肩になれなれしく手を置いてはピースサイン!ただしココアに向かって。相手が目を丸く言葉を無くしている事なんて、一切お構いなし。一方的なラブコールを送っているのは当然。

 

 「クビョウ、遅い!ったく、何処ほっつき歩いてたのよ」

 

 「見ての通り、定番の便所掃除さ!」

 

 キラっと白い歯を輝かせてデッキブラシでポーズを決めて・・・言うセリフじゃないだろうと、毎度毎度すぎて、突っ込む気力も失せるジャン。居ないとは思っていたが。

 

 「オマエまさか、また寝返ったジャン?」

 

 「まっさか!オレを誰だと思ってんだ?そこにおわすっ海賊レスカいちの子分、クビョウさまだぜ」

 

 ギロリ、と見張りの視線が飛んで来て慌てて、クビョウを二人と一匹で抑え込む。が、レスカ一人は知らん顔だし、クビョウもめげずにノーテンキ。

 

 「ここもやっぱ、海賊レスカの一味だって言うじゃん。姐御は本っ当、手広いな」

 

 「だからそれは!偽だって言ってるジャン。てか、どんだけコピられてるんジャン?」

 

 「流行ってるからなぁ」

 

 他人事のように言うマキアに噛み付いてやろうと思って口を開けてマシンガンセットしたのに、クビョウの声が被る。

 

 「大型船はあのとおり、軽くブッ壊されて好き放題されてるけどさ。小型船の方はどーにもこーにも。で今、結構な人数がソッチ行ってるんだ」

 

 「セキュリティーも装甲も万全ですから~」

 

 「でさ、裏切り者のオレになら話すかもしれないから行ってこいって、来たんだけど。裏切りってどういう意味だ?ここを仕切ってんのは姐御だし、オレは姐御のイチの子分だよな」

 

 自身の鼻先を指さして首を傾けて、純真そのものの目をレスカに向けている。言葉も無く蒼白になっているココアなどお構いなしに。・・・ココアにはちょっと天然刺激が強すぎるみたいジャン、震える声で

 

 「お、お姉さまこの子、修理が必要なんじゃ」

 

 「修理に出して直るモンならラクなんだけどねぇ。でも、ナントカと箸は使いようって言うじゃない?」

 

 「スプーンの事か?テーブルマナーなら任せろ」

 

 絶好調。ココアが完全にフリーズした所で。

 

 「で、も。これでハッキリした訳ね、ここは海賊レスカの根城。って事はぁ?」

 

 「ここのボスは姐御!今日も昼間っから縛られプレイでMっ気全開っ」

 

 「誰が!・・・じゃなかった、後で覚えときなさいよ。え~コホン。って事は、ココのすべてはアタシのものよねぇ?」

 

 「何でそうなるんですか!?偽物って、要するに敵・・・」

 

 シャラップ!と、また。見張りが目を走らせる。今度こそ逡巡して・・・行ってしまう?これはひょっとするとヤバい流れかも。でも、ここに居る誰も、気にも留めていない。レスカに至っては絶好調を通り過ぎてハイテンション突入!

 

 「んなモン決まってんじゃない、このアタシが!海賊レスカだから」

 

 「それはそうかもしれませんけど!現に捕まってるじゃありませんか」

 

 コレの事?と言うや否や。するりと音を立てて縄が足元に落ちる。レスカがう~んと伸びをして、凝り固まった肩やら腕やらをグルグル回して深呼吸。仲間を連れて戻って来た見張りを含む全員の、あっけに取られた顔をタップリ楽しんだ後で。

 

 「こんなモンでこのアタシを縛ろうなんざ、百年早いっての」

 

 言いながら、素早くしゃがんで、未だ呆気に取られているココアのウエストポーチを探って・・・見付けた!盗られた本人が我に返って声を出そうとした時にはもう遅い。妖艶なまでの微笑みをたたえるレスカ、その指には銀色に光るシリンダーキー。クルクルと指先で弄んだ勢いを付けて、クビョウの手のひらにパス。

 

 「これで!アンタの船もアタシのモノ。なんたってココは海賊レスカの居城で、アタシはレスカ、アンタは捕虜。捕虜のもんは?」

 

 「姐御のもんー!」

 

 「卑怯です!」

 

 「何とでも」

 

 フフンと格好を付けて澄ましているが。いよいよ集まって来た海賊連中に肩を掴まれて・・・裏拳でKO。「ひゅう!姐御、格好いい~」て、クビョウは本当に何にも考えていないジャン?調子に乗りすぎて危うくカギを落としそうになるが、レスカのひとニラみで、持ってますチャンと!

 

 「んじゃ。アタシは通りすがりのトレジャーハントを楽しんでから、ゆっくり出発するとしましょうかねぇ」

 

 「トレジャーも全部姐御のモンなんだろ?言ったばっかりじゃないか」

 

 「そうだったわね、おーっほっほっほ!」

 

 「そんなの認められません!盗品なんですよ?持ち主に返すべきです」

 

 「だったら、止めてみな」

 

 レスカはヘビメタコをひっつかむとドレスの裾を翻し、悠々とヒールを鳴らして行ってしまう。クビョウはわずかに逡巡、というかキョロキョロして・・・んじゃまた、と手を上げて一応の挨拶だけ済ませると。

 

 「姐御、待ってよぉ!」

 

 ・・・どうする?

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