レスカ長編 Take my revolithion!!   作:湯乃屋

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 ようやく。しらじらと明け始めた空の下。遺跡のすぐ脇に留めた装甲車の周りをせわしなく動き回る影が、一人。

 「数多のトラップをかいくぐるルートなんて、遠慮するっての♪」

 ベッピーンはもうずいぶん前から、正確にはレスカと偽物を遺跡の入り口で見送ったすぐ後からずっと。運転してきた車の荷台にセッセと、何かを詰め込んでいるのだ。

 「素敵!やっぱ純金は輝きが違うわっ宝物庫へのノートラップ最短ルートなんて、とっくの昔に調査済なのよね~アタクシ。でもって、職人に作らせておいた金メッキのバッタもんを用意してぇ~毎日セッセとすり替えて。んふふ~これだけあれば一生遊んで暮らすのも夢じゃない?そのための苦労だったら、骨の一本や二本!どうよっこのベッピーン様にかかれば、ざっとこんなモンよ、ホーッホッホッホ・・・おうぇっ!?」

 調子に乗りまくって高笑いに絶好調の時だった。ゴウン!と音に、見上げると大型バイクが空を飛ぶ?目をこすって、もう一度しっかり見・・・と思った時には哀れ!すり替えたばかりのホンモノのお宝の上にバウンドして着地&クラッシュ!

 「レスカは中か!?」

 「キャ~~!!だ、ダ・サイダー、アナタ・・・どーしてくれんのよ?」

 「ダーリン、どうやら今バイクでペシャンコに踏みにじってるのは、ベッピーンのお宝ジャン」

 と言っても一向気にする様子ナシ。むしろ、聞いたきり、誰の答えも聞く気が無かったのか、早々にバイクを乗り捨てて・・・バイクが倒れた拍子に更にお宝がつぶれるのも、モチロンお構いなし。手際良く、搭載してきた武器弾薬類を身に付けるなり、ヒラリと荷台から飛び降りる。

 「言った傍から!何なのよ、アナタ?その、町いっこ消滅させようって装備も!まさか、遺跡に手をかけようなんて思ってるんじゃ無いでしょうね」

 「ったく。オレ様の忠告を無視しやがって。どこにいるか知らねえが、コイツで道を作りながらまっすぐ進めば」

 「ストップ、ストーップ!」

 手を大きく広げて、立ちはだかって、ようやく。ダ・サイダーはベッピーンを視界に入れる。

 「アナタばかじゃないの?遺跡なのよ、ニャイル保護地区なのよ?そんな事したら、取り返しのつかない事になるって、分かんないの」

 「今のダーリンには何言っても無駄ジャン」

 「あーもう!じゃ、アナタがやみくもに爆破して、それてレスカが怪我したらどうすんの」

 ようやく。それまで静かに燃えていた瞳が揺れて、改めて。唇を噛み、睨み付ける。と、ベッピーンは顎を引いて言葉を飲み込んで・・・だがそれも一瞬。深く、息を吐いて。だてに品行劣悪な学生時代を乗り切った訳じゃない、と言った所か。

 「分かったわよ、アタクシがレスカの所まで案内したげるわ」

 「どうやって?」

 「そんなの決まってるじゃない」

 言いながら、タブレットを起動させる。

 「依頼主の端末をチョイチョイっといじらせてもらうわ、レスカと一緒のハズだから、JPSで位置確認すればいいんでしょ」

 「ハッキングするジャン?」

 「情報の共有・・・結構進んでるわね。行くわよ」

 踏み出した時だった。

 ドーン!と突然の爆音と共に、たち現れる巨大なキノコ雲。それに合わせて何かが空を・・・大小織り交ざったガレキが天空に弧を描いて落下して来る。

 「コレって、ウチたちがフッ飛ばされたトラップジャン?」

 「って事は、もう宝物庫前まで来てるって事かしら。って、あ!ちょい待ち・・・ブロックされたわ」

 「どういう事だ?」

 「相手にバレちゃって、もう勝手に覗けないって事ジャン?」

 「待って・・・解除した?」

 ほんの一瞬、ブラックアウトした画面はまた元の通りに、目の前の遺跡の地図を表示している。ベッピーンはその中で、点滅する赤いポイントと、ダ・サイダー、ヘビメタコとを交互に見比べる。どういう意図だ?覗かれていると分かっていながら

 「招待されてるって事か?おもしれーじゃねーか!」

 そう言うダ・サイダーの目はギラギラと獣のように、時折見せる色だ。こう言う時は決まって・・・相当腹を立てている。これは、どうにも血を見ない訳には行かないだろう。ベッピーンも同じ空気を感じたのだろう、嫌そうな顔をしながらも、クリックで画面を切り替える。

 「そういう事なら、オススメの最短ノートラップルートがあるんですけど」

 食らいついてくる獣、ダ・サイダーを避けるように顎を引いて荷台の、バイクの下敷きに潰されてしまったお宝を恨めしそうに見つめて、

 「アイツラにバッタもんつ掴ませてやろうって、調べたのよ」

 「そうかオマエ、ニャイルの観光の仕事って言ってたもんな」

 「狙われたお宝を事前にすり替えて守ったジャン?見なおしたジャン」

 「え?あ~・・・き、決まってんじゃない!コッソリ売っ払ってアタクシ一人のマル儲け計画なんて、これっぽっちも!は~ぁ~」

 思わず出てしまった本音に肩を落とすベッピーン。悪いコトはするモンじゃない。

 

 間もなくして。

 苦もなく宝物庫の中に辿り着く事が出来た。が、そのルートとはどうやら、ベッピーンが実録、苦労して何日も掛けて地面を掘り進んだであろう抜け穴で、案内した当の本人は終始、涙を堪えるように文句をブツブツ・・・聞かなかった事にしておいて。

 勢いを付けて地面に飛び上がり、身に付いた大量の土砂を払いながら辺りに目を配ると、これは見事!ロクな明かりも無いはずの庫内には所狭しと、目もくらむばかりの金銀財宝が。ベッピーンの話ではすべてバッタもんと言うがそれでも。それぞれが反射をしていっそう明るく、まばゆく見えた。

 だが、人の姿は?肝心のレスカどころか、誰の姿も見えない。見ると、巨大なトビラは開かれたままに、向こう側が薄明るく見えている。こちら側ではないのだろうか。そう思い、ハビメタコはベッピーンと連れ立って、いぶかしりながらも外に出るとまさに、数日前に苦労して行き着いた場所だった。

 「広いホールに、天井の大穴。この爆破トラップ大扉の向こうが目指すゴールだったんジャン」

 「そこら辺にくたばってるのが、爆発に巻き込まれて飛ばされなかった奴らって事ね」

 「こいつらに聞いた方が早いかもしんねーな」

 振り返るとダ・サイダーが、むっつりと口を真一文字に、引き縛ったまま。せっかく一人、居残って探したというのに

 「居なかったジャン?」

 「もしかして、吹っ飛ばされた方じゃ」

 言いかけた時だった。カツン、と耳に響く音に三人が、そちらに顔を向ける。薄明かりになれた目には金銀はいっそう眩しく、シルエットでしか見えないが、その姿は。

 らしくもなく、宝物庫から出てきたというのに何も持たず。こちらに来るでもなく突っ立ったまま。いぶかしりながらも、目が慣れるにつれ姿がハッキリ・・・日よけにしては派手なマント、その足元に見え隠れしている赤い裾、華奢な線。

 「レスカ!どこに隠れてたのよ、アナタのせいでアタクシ大損・・・え?」

 近づいて行ったベッピーンがゆっくりと、・・・崩れ落ちる。あらわになったその、華奢な手には小さなキカイ、スタンガンが。電撃の余韻を不気味に、火花を散らせている。

 「オマエ!・・・誰ジャン?」

 ダ・サイダーは一気に身を固くする。何となく、違和感を感じていたのかもしれない、反応が思ったより早い。すう、と纏う温度を下げ、戦闘態勢に入る、が。

 「ごめんなさいね」と、膝を折ってベッピーンの髪を撫でる指、立ち上がり、こちらに向き直る一瞬、顎をそらす癖、片足に重心を置いて、いかにもダルそうに腰に手を当てる、一手一挙動。そんな、筈・・・

 その一瞬の迷いが命取りとなった。

 すっと、腕を上げたと思うと同時に、なにかが破裂するような音。一瞬後には腕に、刺すような痛みに目を向けると、針?認識した途端に、しびれとなって動けなく、体の自由が徐々に奪われて、膝が・・・地に付いてしまう。

 続いてもう一発。今度はダ・サイダーのすぐ耳の横、ヘビメタコに命中して、バランスを失い肩パットから落ちてしまう。

 「驚いた!片膝でも立っていられるなんて。鍛え方が違うって?で、も」

 嘲るような言葉。歩を進め、ダ・サイダーを見下ろす。軽く、つま先で小突くと簡単にバランスを崩し、腕を上げることも、睨み上げる事しか出来ない。くつくつと、満足そうな声に改めて腹の上に、足の重みを感じる。と同時に何かが舞って、視界をかすめる。これは・・・札束?

 「でも。こうなったらオシマイだよね。本当はさ、ソコのお宝で一括払いって思ったんだけど。あれ、偽物なんだって?」

 言いながらマントの下から宝石を引き出す。良く見えるように、レスカが肌身離さず持っていた筈のアララの国宝が朝の光を反射している。

 「コイツは頂戴するよ、こんな金額じゃ足りないかもしれないけど。それから。彼女のコトは心配しないで、ボクが責任持ってウチまで送り届けたげるからさ」

 足をどけると、それを合図に天井の大穴から、宇宙船が降りてくる。いつの間に、倒れていたハズの男たちが偽物を取り囲むと、マントを翻し悠々と。タラップに足を懸け、男たちがそれに続く。最後の・・・男が担いでいたモノこそ

 「メタコ、動けるか」

 「クイーンサイダロンジャン?いつでもオッケー!メカにあんな注射、効くわけないジャン!」

 「レスカを・・・頼む!」

 ダ・サイダーの腕から針を抜くなり、目を丸く、思わず何度かしぱたく。口を引き締め、うつむいて・・・力強く頷いて応える!

 渾身の跳躍でもって、既に浮き上がり始めている船に飛び移る。なんとか!思った途端に揺れて、滑り落ちそうになる。タラップの収納が始まったのだ。ヘビメタコは体を二重、三重にからめ、落ちないように慎重に、しかし素早くスルスルと。何とかハッチが閉まるギリギリに滑り込む事が出来た。

 ゴウっと、エンジンの逆噴射で、機体がいっそう浮かび上がるのを感じる。船底の覗き窓からは下の様子が・・・気絶して横たわったままのベッピーン。力なく、しかし力強い瞳を寄越しているダ・サイダー。こちらの姿など見えるはずもないのに一つ、頷いて・・・ヘビメタコはそれに、しっかりと頷き返して答える。

 ヨシ!こうしちゃいられないジャン、ダ・サイダーの為に。

 「レスカのドジ!見付けたらかみついてやるジャン」

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