レスカ長編 Take my revolithion!!   作:湯乃屋

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 「コレは。どういうふうに受け取ったらいいだろう?やっぱり敵意かな、それとも」

 

 コトバの意味を反芻してようやく、レスカは我に返る。

 

 細身の刀身を指先で突っつきながら、呆れ顔で見つめている。ほんの、目前の数ミリに迫っていると言うのに口端を吊り上げて、襲ってこない事を見越しているのだ。

 

 しんと、水を打ったように静まり返っている。レスカは気にしている、触れた部分から、嫌というほどヘビメタコにも伝わって来ている。どう見られているか。城を襲った悪漢を追っ払った英雄に刃を向けている事を、どう思われているのか。

 

 呆れ?驚き?それとも非難。白刃の切っ先、目に飛び込んできた自身の顔すら目をそらし、顔をゆがめるほどに。

 

 「それとも。今ココで貴方の騎士として、この剣に誓いを立てれば、満足ですか?」

 

 挑発的な物言いに、飛び出し掛けた言葉を急いで呑み込んで、口を真一文字に結ぶ。目をつむり、呼吸を整える。こんな、子どもじみた挑発に乗ってはいけない。

 

 ゆっくりと目を開け、震える手を抑えながら切っ先を下げてゆく。偽物は一瞬目を丸く、続けて満足そうに、いや。可笑しさを堪えるようにうつむいて、その切っ先に口付ける。

 

 途端に、ワッと割れんばかりの歓声が巻き起こり、場は再び華やいだ雰囲気を取り戻すと、ようやく。ずっと強張っていた力が抜けるのが伝わって来る。でも

 

 「レスカ、よく我慢したジャン」

 

 ちらと、寄越された目には紅蓮が渦巻き、内にくすぶるモノが嫌でも想像出来る。もう一度ゆっくりと息を吐いて、いつも通り。教えられた通りの洗練された動作で剣を、鞘に納める。決して納まらないモノを残して。

 

 アララ城のみんなを不安にさせた事、ベッピーン、ダ・サイダーへの仕打ち、それらに対する怒り。ついカっとなってしまったが、そんの結果がこのザマでは。

 

 よりによって、仇敵に助けられるなんて。

 

 「丸く収められるなら、どんな屈辱も?」

 

 クスリと漏れる声に再び、レスカの腕が強張るのと同時だった。

 

 「カフェオレお姉さま~ご無事ですか~」

 

 「剣なんか持ち出したから、血の海になってるって思ったのに」

 

 「まぁ~ミルクったら、忘れたのですか~?スケバンお姉さまの事ですもの~脅しだけで十分」

 

 「アンタたち・・・ハァ~好き勝手言ってくれるじゃない?」

 

 ようやく。落着きを取り戻せたレスカは緊張を解いてココア、ミルクに微笑みかける。が

 

 「それよりお姉さま~さっきの」

 

 「いいなぁあたしも服従を誓う下僕、欲しい」

 

 「騎士の誓い。本当に見てたのか?」

 

 割り込んで来た声に振り返って、じっと。不躾なくらい見つめる四つの瞳に若干たじろぎ、少し困ったような、やっぱり愛想のいい顔を作った途端に、あ!と声が出る。

 

 「あらあら~誰かと思えば、やっぱり~」

 

 「マキアでしょう?久しぶりじゃない」

 

 「ボクはそんなに印象薄いかな?穴が開くほど見ないと分らないなんて」

 

 だって、ね~と顔を見合わせる二人。・・・どういう事だ?どうなってる?だって

 

 「ボクはちゃんと覚えてるよ、ココア姫に、ミルク姫。キミにはいつも言ってるだろ?年上には敬意を払えって。本当はもう少し後で挨拶に行くつもりだったんだけど」

 

 楽しそうに、さも親しげに?

 

 レスカは王室に入って間もなく、教えられた言葉を思い出していた。三姉妹の前に現れる人間の行動は二種類しかいない。いわく膝を折ってかしずくか、こちらが膝を折るか。

 

 「お~い、カフェオレ。大丈夫か~?怪我などしとらんな?全く、危ない事はホドホドにしてくれと、いつも言うとるじゃろうに。・・・ありゃりゃ?ココアにミルクまで。それに君は」

 

 ヨッコーラが駆け付けたというのに、硬直したまま。すぐ目の前の事なのにまるで遠い。息を落ち着かせるなり、一人ひとりの顔を見て破顔して見上げているヨッコーラも、ココアも、ミルクも。

 

 カフェオレ姫に膝を折らない人間はほんの一握りです。誰かがそう言った。

 

 「王様、お久しぶりです。長いことご無沙汰してしまって」

 

 「おお~久しぶりじゃの!いつ振りになろう?」

 

 「四年ちょっと、かな」

 

 「ありゃ?という事は。カフェオレとは初めてになるか」

 

 財産があり、中枢機関に通じてるかもね。ベッピーンの声を思い出す。ヨッコーラに促されていすまいを正し、軽く頭を下げる。レスカと同じ、金色の髪。仕立てのいい服、洗練された物腰。

 

 「王妃、カプチーノの姉の息子じゃよ」

 

 「キャラメル・マキアート。マキア、で構わないよ」

 

 「・・・従兄弟?」

 

 王位継承で言うと微妙な立ち位置のイトコ。笑いながら、からかうミルクの声など耳に入らない様子をヘビメタコは頬のあたりから漂う並々ならぬ熱で感じた。偽物、マキアはそれを満足気に、しかし無視するように早々に顔をそらして

 

 「それはそうと、王様。この度はおめでとうございます。これでアララ国も安泰ですね」

 

 「それを言うならカフェオレにじゃろう」

 

 「いえいえ。王様の苦労を思えばこそ、ですよ。という事は国宝も、もう?」

 

 「ウン。今はカフェオレが肌身離さず守ってくれとるよ」

 

 ふうん。と言いながら再び、思わず固まったレスカを透かし見る。ヨッコーラパパには海賊遊びの事は話してないの。卒倒しかねないからさ、と苦笑していた事を思い出す。これが目的だったのか?今ココで・・・

 

 「一度、この手に取って見てみたいと思ってたんだけど」

 

 「あたしも!ねね、お姉さまぁ、いいでしょ?」

 

 「ってミルク、レスカの服に手を掛けて、ストリップでもさせるつもりジャン?」

 

 「はしたないですわよ~。それに~別に今スグじゃなくてもいいじゃないですか~」

 

 虚ろに見える。だがその内には何が渦巻いているか。何をキッカケに爆発するか分からないレスカのフォローに追われながら見ると。ミルクの方はココアに首根っこを掴まれながらムクれている。当のマキアは第三者の体で笑いをこらえて

 

 「そうそう。国宝は逃げも隠れも、盗まれもしないんだから。そういう子ども染みたワガママもいい加減卒業しないと。伸びたのは背だけ、なんて悔しいだろ」

 

 「あら!それはマキア兄が、あたしのこと知らないだけよ、フフン」

 

 「そうかのう?」

 

 「何よ、お父様まで!」

 

 「ココア姫なら分かるよ。美しさにさらに磨きが掛かって。お見合いの申し込みが凄いんじゃない?」

 

 「おべんちゃらも~ココまで来ると嫌味ですわね~」

 

 「この通り、自覚がないのが悩みのタネじゃよ」

 

 「その点あたしには、ちゃぁんとラムネスっていう将来を誓い合った・・・あ~!お姉さま、いま何時?」

 

 「えっと~ラムネスと約束してたっていう時間から~三十二分と五秒経過しましたわ~」

 

 「そんなに!どうしよう?ラムネス、あたしに会えない寂しさの余り自殺とか考えないで!」

 

 「ゲームでもしてるんじゃないですか~」

 

 「こうしちゃいられない!お姉さまたち、ミルクは愛に生きます!」

 

 「会いに行く~の間違いでしょ。それじゃわたくしも~船の最終のメンテナンスと~お見送りに行ってまいりますわ~」

 

 砂煙を盛大に捲き上げで爆走するミルクと、あくまでノンビリ、去ってゆくココア。それぞれの背中を困ったように、照れ笑うヨッコーラと、手を振り見送るマキア。愛想のいい笑顔は能面のように、裏を疑わない限り、暗転もしない。何を考えている?窮地に追い込んでみたり、かと思ったら助けてみたり。レスカをなぶりものにしようと言うのか。

 

 「やっぱり相変わらず。どうです、勇者殿も」

 

 「ウン?そうじゃな。あの子は末っ子じゃし、少しワガママな所があるんじゃが。仲良くやってくれとるよ」

 

 「そう、ですか。いえ、その・・・もう一人の。親衛隊長殿とカフェオレ姫との事とか」

 

 来た。そう思って身構えたのが分かる。今は気持ち悪いくらいに落ち着いて、冷めている。自棄を起こしているのか腹をくくったのか。ここで、ギャラリーを証人に暴露しようと言うのか。

 

 何を言い出すつもりか知らないけど。このレスカ様を躍らせようなんざ・・・

 

 「正式な婚約のお話とか」

 

 「そうなのか?」

 

 「えぇ?」

 

 途端に真っ赤に、身構えていたエネルギーがみるみる蒸発するのが見える。力一杯、手と首を横に振ったもんだから、目を回して・・・つくづく残念な女ジャン。

 

 「でも、付き合ってるって聞いたよ」

 

 「つ、付き合ってるって言うか」

 

 「戦友で相棒ジャン」

 

 「好きなんだろ?」

 

 「って言うか・・・」

 

 「ウチのダーリンへの愛に敵うヤツなんていないジャン」

 

 ふうん。

 

 「ね、王様。ボクが息子になったら、今よりもっとアララ国を発展させられると思わない?」

 

 もう一度、えぇ?とのけぞったレスカの替わりに横顔をまじまじ見つめる。

 

 「冗談ジャン?」

 

 「どっちだと思う?」

 

 ヘビメタコに向けていた視線をレスカに、改めて、真剣な色を宿して

 

 「・・・それとも、もう手遅れかな?この胸の内、受け止めてはくれないだろうか」

 

 キザったらしくレスカの手を取り、自身の心臓の上に押し当てる。侍女たちから嬌声が沸き上がるが、当人たちには届いていないだろう。だって、そこには。

 

 服の下の固い感触にレスカには覚えがあった。つい昨日まで肌身離さず守ってきたモノ。マキアの目を覗くと、間違いない。でもそれも一瞬。たちまちニコっと、人懐っこい笑顔に切り替えて

 

 「つきましては。これから二人っきりでどうかな」

 

 「はん!受けて立とうじゃない」

 

 「か、カフェオレ、おぬし・・・」

 

 キョトンと振り返るとヨッコーラが、色を無くしていつも以上にオロオロと。視線を辿るとレスカの手は繋いだまま、マキアの胸の上!?慌てて引っ込めたものの・・・

 

 「あれ?バングルが絡まってる」

 

 マキアの手まで一緒に付いてきた?知恵の輪の要領でつながった二連のバングルの一方がレスカの腕にスッポリ。これではまるで手錠じゃないか。幻滅した途端にひときわ大きい、ほとんど超音波黄色声に、目が回りそう。

 

 「ちょっと!この腕環、外れないの?」

 

 「女の割に手がデカいんだな。鍵を取りに行かないと」

 

 「ハタ目には、手と手を取り合っての逃避行ジャン」

 

 「ヘビメタコ、ニッパー出しな」

 

 「バカ言うな、コレお気に入りなんだぞ」

 

 「痛っ!引っ張らないでよ」

 

 そういうレスカの右手には早速ニッパーが。

 

 「冗談じゃない!」

 

 言うなり、レスカの手を引っ張って、走る!途端に、いつの間に湧いた?カメラを抱えた報道陣が後を追うのだが。

 

 冗談じゃない?こっちのセリフだっつうの!

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