レスカ長編 Take my revolithion!! 作:湯乃屋
最初こそ。レスカの手を引いてテンポよく走っていたのだが。
ゼェ、ゼェェ・・・
距離が延びるにつれ、時間が経過するにつれ。息があがり顎が上がり、腕も落ちて足も引きずるように。
「もしかして、絶望的に体力が無いジャン?」
さっきから、レスカに至っては普通に歩いている。言い返してくるかなと予想していたが反応もなく、こちらを振り返る事もなく、バッタリ。
「あ~あ。ぶっ倒れたジャン。レスカの体力が常人離れしてる事を差っ引いても」
「見栄っ張りのモヤシってトコね、まだ五分も走ってないんだから。でもチャンス!この隙にに石だけでも」
「と言いつつ財布を抜き取ってるジャン」
「って、アレ?おかしいな、アハハ!」
そういう癖が抜けないから、付け入られるんジャン。とは口には出さず。レスカは愛想笑いで財布を元通り内ポケットにねじ込み、改めて。予想通り!首からかけていた国宝のネックレスに手を掛けた時。
いたぞ!という声に辺りを見回す。遠く、カメラを構えた数人が走って来ている!
「ゲゲ!ちょっとアンタ、アドバイザーロボでしょ?何か無いの?」
「ウチはネコ型ロボットじゃないから、知~らないジャン!・・・と言いたいトコロだけど。ダーリンから頼まれてるし、今回だけジャン」
ヘビメタコはレスカの腕から滑り下りるなりキョロキョロと辺りを見回す。合わせてチカチカと目が点滅して・・・オッケー!現在位置確認。続けてインプットされているアララ城地図の中から隠れられそうな場所を検索。
「灯台もと暗し。そこの足元に窓があるジャン?今は倉庫になってるけど元は医務室だって。お誂え向きジャン」
「んもう最高!愛してるわ!」
投げキッスなど寄越されても・・・オエ。レスカは早速、窓に取りすがって、鍵がかかっていたのだろう。襟足からアメピンを取り出すなり、チョイチョイのチョイ。
「一国の姫君にあるまじき特技ジャン」
「役に立ってんだから、いいのっ」
言うなり、勢いを付けて侵入!続いてマキアを引っ張り込んで。
「何してんのよ、早く!」
ヘイヘイ。といい加減な返事でもってヘビメタコも。するりと身を滑らせた。
◇◆◇
「窓の真下がベッドだなんて。ラッキーだったジャン。ゲホ!・・・埃っぽい事さえなければ、もっと良かったのに」
「ちょっと気を付けてよね?アンタ精密器械なんだから」
言葉の割に。レスカは盛大にホコリを巻き上げて、今足場にしたばかりのベッドにマキアを寝かせる、というよりは乱暴に放り投げてようやく。むせ返りながらドレスに降り積もったホコリを手で払っている。
右、左と暗い室内を見回す。検索した地図には旧医務室、現倉庫とあったが。薄暗い天井に取り付けられた蛍光灯は用を足していない。明かりと言えば今、入ってきた窓くらい。半地下の室内には雑多にモノが置かれ、そのどれもにコンモリと埃が積もっていた。
「このベッド、誰かが意図的に動かした跡があるわね。おかげで楽に入れたけど」
「と言うか、この部屋おかしいジャン。だって出入り口が」
「今、入って来た窓しかないから足場に置いてあるんだろ。イテテ・・・」
背中をさすりながら起き上がるなり、その手にビッシリ付いたホコリに青くなり。よく見ると全身ホコリまみれという現実に・・・膝を抱えてうずくまってしまう。
「神経質ねぇ」
「アンタはいいよな。劣悪な環境で育ったおかげで神経が太く・・・って!」
壁にモノが刺さる音と同時にマキアの耳のすぐ横でパラパラと、漆喰がその肩に落ちる。目を動かすとエナメルの、細いヒールが壁に突き刺さっている?レスカはその足に体重を掛けて、刃物のような視線を鼻先まで近付けて
「だったらその繊細な神経とやら。どこまで耐えられるか、試してやろうか」
レスカ!とヘビメタコの仲裁で不精不精。舌打ち一つでヒールを壁から引っこ抜く。ようやく見えたマキアの顔は薄暗さのせいか色が無く、固まっている。
禁句なのだ。ヘビメタコはレスカの、こらえるような横顔を覗き見る。たとえ本当の事でも、レスカは青春時代、いや。人生のほとんどを過ごしたあの場所を大切に思っているし、それをけなされる事が我慢ならない。それは暗黙の了解としてこの四年、だからこそレスカは今の生活を続けて来られた。でも。
レスカはすうっと深く息を吸い、心を落ち着かせる。もう、ガキじゃないんだから。もう決めたんだから。嫌な事言われたからって、じゃあ辞めるなんて。
言いたくない。
「石を返しなさい」
再び開いた眼は静かに、理知を宿していた。それでようやくマキアの方も色を取り戻したが、声はかすれたまま。
「そ・・・れは、ボクの・・・あぁ、コレの事か」
服の下から引きずり出した途端にレスカの手が伸びる。今度こそ!しっかりとその手に掴んだ、のだが。今度はしぶとく紐部分を握り締めたまま、冴え冴えとした瞳を向けている。
「もう一度だけ聞く。本当に知らないんだな?」
「くどい男ジャン」
そう言った拍子にヘビメタコに視線が移る。思わず、の一言だったのに・・・見つめられ、目をそらす。頬に突き刺さる視線が
「じゃ、もういいや」
突然。アッサリ手を離した反動でよろけるも、バングルで繋がっているのでマキアも釣られる。まゆ根を寄せて改めて、アッサリ。いとも簡単に自身の手をバングルから抜いて無罪放免。・・・その手があったか。
レスカは今度こそ。自由になった腕を高く目の前に掲げ、その稀代の輝きにほっと胸をなでおろし、早速服の下に、元通りに戻している。
「本当はそれをダシに、聞き出すつもりだったんだけど・・・って、待てよ!」
マキアは慌ててレスカの腕を掴む?ようやく離れてせいせいしたハズなのに引きとめて、言葉を探すように目を泳がせている。
「もう用は無いんでしょ」
「ボクに!聞きたい事があったんじゃないのか」
「あるわよ。でもアンタと同じ空気を吸う方がもっと嫌」
乱暴に腕を振り払うなり、一瞥をくれてサッサと目の前の扉に手を掛ける。鍵は掛かっていないらしくドアノブを回しただけで簡単に開いて・・・
むっとする湿った土の匂いと更なる暗闇に思わず一歩、後ずさる。何だこれは、どうなっているのだ?
「出入り口はそこの、窓しかないって。言ったろ?じゃぁその道は何なのか、この部屋は一体どんな目的で作られたか。知りたくないか?」
振り返るといつの間に、レスカのすぐ後ろに立っていたマキアは薄く、勿体ぶるように笑ってみせる。
「案内してもいいけど?面白い昔話を聞かせてやるよ」
◇◆◇
アララ城の地下に、こんな隠し通路があったなんて。レスカは驚きと、それ以上のワクワクでむき出しの、土の壁に手を触れる。扉を閉めたその先には一ミリの光源も無く、今はヘビメタコの出した懐中電灯の明かりだけが頼り。
「この通路が作られたのは、今からざっと五千年前」
「って、先代勇者さまたちの時代ジャン?」
「妖神の支配がじりじりと輪を狭めて行く中、ここアララ城も例外なく危機に晒されていた。時の王ヨッコーラ一世は城下の民に、戦火に焼け出された人々に王城を開放し、養護していた」
いつか習った知識と潜在下の記憶、と言うほどもないおぼろなモノが浮かんで来る。
「その時使われていた?でも何で半地下ジャン?衛生面から見ても、もっと風通しのいい場所の方が」
「風通しのいい、外から見つかりやすい場所じゃ都合が悪かったんだな。それともう一つの理由。それがこの通路」
マキアは振り返って手を広げようと、すぐに壁にぶつかってしまう。大人一人が立って歩くギリギリの広さ。必要最低限の用途、余裕のない状況。
「城下の民を王城に集め、いよいよ後がないって所で伝説の勇者が現れ、窮地を脱する事が出来ました。でもコレには隠されたエピソードがあった。実はこの穴、町はずれまで続いているんだ」
そういえば。もうずいぶん歩いている気がする。上がったり下ったりの感覚のみで、時計の針も確かめられないから分からないが。あの場所からどの方角に、どれだけ歩いたのだろう?
「王はずいぶん前から、この地下通路を秘密裏に作らせていた。町の構造から言っても、中心にあるアララ城が最後に狙われる事になるだろう。その時までは堅牢な避難場所として。そしていよいよとなった時には」
「敵を城に集中させておいて、その隙に民をより安全な、手薄となった町はずれまで避難させる」
「ご名答。結局、使われる事は無く、そのまま文献の奥底に眠る事になったんだけど」
「オマエは何で知ってるジャン?」
ふふん、とはぐらかす横顔が薄闇に見えた。・・・見えた?そういえば。
気が付くと道はいつからか薄明るく、わずかな傾斜を登っている。マキアは明かりを消して、行く先をレスカにも良く見えるように、脇へずれる。目の前には二つの道が、一方は今までと同じ土を掘り進めた穴が。もう一方にはレンガ敷きの、やはり古びた階段が延びていた。
一目。レスカの目を見て、口端を吊り上げる。それから一歩。マキアはレンガの方へ足を踏み出す。
◇◆◇
部屋の隅に鎮座する彫刻の、台座の裏に隠し扉があったなんて。身をかがめて這い出すまで思いもよらなかった。そこは今までとは一変して広大で、途方もなく明るい場所。
「肖像の間ジャン」
「世界が平和を取り戻して以来、しばらく忘れられていたけど。今はそれこそ縦横無尽の秘密通路になってる。道を増やしたんだ、ココに居る歴代の王の何人かがね」
言われて改めて、歴代の王たちを見上げる。今までは威圧しか感じたことが無かったけど。そう言われると急に親近感が湧いてくる。今通った道はこの中の誰かが作ったのだ、何のために?父、ヨッコーラも知ってるのだろう。・・・マキアは何で?
視線を巡らせると、いつの間にか移動して、あれは。一番新しい肖像、そこには現王と王妃、それと幼い姫君が描かれていた。
「昔の事は覚えていないのか?城で過ごした頃の」
「全然」
「ボクの事も?」
「・・・知ってるの、?アタシの事」
「少しだけ」
優しく、愛しむ目は、幼い肖像の中のカフェオレ姫を見ているのか。レスカも釣られて、かつての自分に向き合う。・・・コレが?全然違うんですけど。
今まで、幼いカフェオレの話はヨッコーラの口から語られるものがすべてだった。レスカ自身は全く覚えていないし、他の古参に聞いても、通り一遍の「大人しい幼いお姫さま」ばかりで、まるで実体を伴わない。まるで自分の事とは思えない、あまりに遠い。だからこそ、本心は取り縋ってでも聞き出したい!でも。
せめて、妹たちともっと歳が近ければ・・・って、んん?
「ちょい待ち。オマエ何歳ジャン?どう見たって年下、ラムネスやミルクと同じくらいジャン?」
「二十三だけど?」
って事は、カフェオレが当時三歳で、マキアが六歳。なーるほど。って、えぇっ!?
「そんなに驚く事かな?キャラメルの家系はみんな・・・聞く機会が無かったのか。眠り巫女の家系なんだ、予知夢を見る力がある。他の人より長く眠るし、その副作用か、見た目の成長が遅い。特に女性、中でもカプチーノ様は別格だった。眠っている時間も長ければ、見る夢も」
「自分が聖なる三姉妹の母になる事、結婚する前から知ってたって。以前会った時に話してくれたわ」
本当だったんだ、と目を丸くしている。聞いた時はレスカも同じ事を考えた。カプチーノはいつもの柔和な、眠たそうな目を細めて微笑んでいた。こっちが注意していないと、そそっかしいくらいの可愛いひと。
「ボクは男だし、何の力もな無いけど。それでも見た目が幼いのは家系だろうね。アンタたち三姉妹だって、受け継いでるじゃないか。ココア姫はたぶん、一番顕著に出るんじゃないかな?ミルク姫は人並み程度の睡眠時間の割に異常な食欲だし、アンタは」
「・・・どうせ、似てないわよ」
◇◆◇
再び。今度の通路は不揃いのレンガ造りの危なっかしい道を抜けて、出た場所は。
「ココは常連よ、何たって次期女王さまですもの」
「じゃ、いくつか読んだんだ?」
途端に詰まって・・・マキアは遠慮なく、クスクスと口に手を当てている。
「ミルクなんかより、よっぽど品がいいジャン?」
「それ言ったら皮剥いで丸焼きにされるわよ」
「それは傑作!後で伝えておくよ」
「性格はレスカよりヒネくれてるジャン!」
どういう意味よ!と、レスカとヘビメタコのいつもの問答など無視して。マキアはぐるりを見渡して、視線を戻す。扉以外の壁は四面とも、天井まで届く書架になっていて、インクの匂いよりもホコリ臭い方が勝っている事から、相当古い資料である事が分かる。
「古文書の資料室よ。半分以上が古代語で、地下通路の資料もココで見つけたんじゃないの」
「これからは、ああいう秘密の資料はせめて閉架にしておくべきだね。ま、ココは地上階にある普段使われてる資料室とは違って、滅多に人も来ないし、好んで来たいような場所でも無いけど」
言葉の割に慣れた様子で早速、物色し始めている。マキアは好きでココに何度も来ているのだろう。
「ちなみに地下通路の資料は古代語だったから、相当苦労したよ。おかげで他の本も少しは読めるようになった。さすが歴史あるアララ国の資料室、見る価値のあるモノばかり。って言っても、その様子じゃ図解専門かな」
さっと視線を逸らす。嫌味から呆れ顔に変わるのに時間は掛からなかった。
「まったく本には手を付けずに?何しに来てたジャン」
恥ずかしそうに頬を染めた、視線の先。部屋の中央に据え付けられた古く、おごそかな机の上に全くそぐわない真新しい紙束?
「アララ城観光計画?」
「ココなら誰も来ないし、静かだから!一人で考えたい時には丁度いいのよ」
手に取り、ぱらぱらとめくっている。
「誰が言い出したの」
「アタシよ」
「このフルオートマチックも?」
「それはココア」
「うん、面白い!早速実践してみよう。って、違う違う。フルオートマチックは没なんだろ?そうじゃなくて普通に観光の方」
目を通しただけ、に見えたが。キラキラと目を輝かせ、そうしていると、とても年上に見えない。
「机上の空論ばっかりじゃラチが明かないだろ?こう言うのは一度、試してみなくっちゃ。さ来月の祝日あたりがいいかな。それまでに想定しうる限りの大小トラブルが発生した場合の対処マニュアルを用意して、広告デザインも発注しないと。
ま、事の次第をカルダモン王国に相談するすれば、見通しも立つだろう。あそこは先王の時代から王城の公開をしているから、いろいろ参考になると思う。そのときはボクの名前を使いな、あそこの王子は同窓だから、スムーズに行くハズだよ」
資料をレスカの前へ、思わず受け取ったが。・・・何だこの急展開は。レスカがあんなに悩んでいたのは何だったというのだ?まだ五里霧中ではなかったのか。
「さて。ここの常連なら、帰り道も分かるだろ」
言いながら、くるりと背を向けて再び書架に、その中の一冊の背表紙を引くと、がちゃん、と。すぐ脇に取っ手が現れて、その先はまた。レンガの道が見えている。
「・・・何で付いて来るのかな」
「ココはアタシん家よ、ドコへ行こうが勝手でしょ」
そう言う、レスカの頬にはいつしか興奮が、抑えきれないワクワクが現れていた。対するマキアの方もやっぱり、呆れと諦め。プラス、どこか状況を楽しんでいるようにも見える。視線の先にはらせん階段が、上へ上へと延びている。
◇◆◇
突然、開けた視界に飛び込ん来たのは色とりどりの色彩と、鼻をくすぐる芳香だった。
アララ城の南端にある通称、空中庭園。城内で最も日当たりのいい場所に当たる広いバルコニーを庭園に作り替えたのは父、ヨッコーラと聞いている。
「あの扉、内側からしか開かない仕組みだったんジャン」
「どうりで。おかしいとは思ってたけど気にもしなかったわ。ところでさ」
指を差す先に目を向けると遠く、マキアが常駐の庭師と話し込んで、花を選んでいるのが見える。
「アタシにくれるのかしら?ちったぁカワイイ所あんじゃない」
「レスカはバカジャン?アイツは一人でココに来るつもりだったんだから、そんな訳ないジャン」
途端に。苦虫を噛み潰した不機嫌顔を作っては、ふてくされている。えーえーそうでしょうとも。でもこんなに沢山咲いてるんだから、いいじゃない、等々。聞こえないからって、言いたい放題していた時だった。
「ありゃ?カフェオレ、こんな所におったのか」
声を掛けてきたのは他ならぬヨッコーラ?付き添いも付けずに、一人で歩いて来る所だった。
「そうか、彼と見舞いに来てくれたんじゃな」
「見舞い?」
「どうじゃ?マキアはなかなか食えないじゃろ。物言いも辛辣じゃし、ちと悪ふざけが過ぎる。根は優しいな子なんじゃがなぁ」
温厚が服を着て歩いているヨッコーラにしては辛口の評価に目を丸くしていると、向こうでも気が付いたのか。ぺこりと頭を下げてから急いでこちらに来る。
「おぉ!オシャレな花束になったな、やっぱり若者が選ぶと違うのぅ。どうじゃ?カフェオレはカプチーノに良く似とるじゃろ」
突然の問いにはどこかバツが悪そうに、むりやり笑った顔を作って。言葉に詰まり、詰まり・・・長い時間をかけてようやく、はい。とだけ答えて、それから。マキアはたった今、褒められたばかりの花束をヨッコーラに渡す。
「王妃さまのお見舞いは、また今度にします。邪魔しちゃ悪いから」
レスカの視線を感じたのだろう、マキアは気の抜けたような顔で後ろに広がる花園に目を向ける。
「ここは、王さまが王妃さまの為に作ったんだよ。眠っていても季節を感じられるように。いつでも、枕元に王妃さまの好きな花が飾れるように」
初耳だった。ヨッコーラの顔を見ると、照れたように微笑んでいる。そうか、カプチーノの元へ行くつもりだったのか。それでそんなに。
「そう言うコトだったら、ウチも遠慮しようかな」
「そう、気を使わなくても構わんのに。仕方ないの、カフェオレにお供を頼もうかの」
レスカの腕から離れ、見上げる。レスカはうつむいて、テレた顔でヨッコーラから、花束を預かる所だった。妹たちほど頻繁にカプチーノの、母の元を訪れない理由は知っている。気恥しいからと、忙しさにかまけているだけで、本当はもっと。
連れ立って歩く後ろ姿は紛れもない親娘で、それをどう思っているのか。
「何で、そんな顔するジャン?」
「バングル、外れたら返してくれって。言っといて」
ヘビメタコの問いには答えす、背中を向ける。ひとり、誰も居ない方向へ。