ONE PIECE FILM SILVER 作:名無しの海賊
勢いで書き始めました
“新世界”
『赤い土の大陸』付近──『海軍本部』。
二年前、白髭海賊団との頂上戦争の経験から新たに建造されたそれは正しく要塞であり、『徹底的な正義』をこれでもかと体現していた。
その最上階に位置する最高指令室のテラスにて現在、一人の男が水平線を睨み付けていた。
「……」
その男の名は“赤犬”サカズキ。
海賊からは恐れられ、海兵からは畏怖を集めるこの本部の“元帥”である。その瞳に宿る意志を計ることは何者にも不可能であろう。
──唐突に。
サカズキは体の一部をマグマに変え背後を一瞥すらせずに撃ち抜いた。そこには元帥の椅子があったが、彼は特に気にした様子は無かった。
マグマの焼ける音と破壊音が響く中、サカズキは振り返り問うた。
「おんどれは何者じゃ」
未だ煙を上げ視界が不明瞭であるにも関わらず、サカズキの視線は自らが攻撃したところに定められていた。まるでそこに誰かがいると確信しているように。
そしてやはり、サカズキの言葉に返す者がそこにはいた。
「いきなり攻撃なんて敵じゃなかったらどうしてたんですか?」
その声は可憐であり、言ってしまえば幸が薄そうであった。しかしこの人物は先程の攻撃をどのような手段を用いたかは不明だが凌いでおり、決して只者ではないということは確かであった。
「そこに座る奴はこの地にわししかおらん。もし座る阿呆がいようもんならそれこそ抹殺対象じゃ」
「成程、聞きしに勝る残忍さだね元帥」
そう呟くと煙から一歩前に出て声の主はその全貌を露わにした。
その人は黒のコートを羽織る女性であった。髪は白と言っても差し支えない銀髪でありショートで整えていて、瞳は金色に煌めいていた。
「私の名はネレイス。この度はロッキー合衆国兼銀斧海賊団のクルーとして貴方達に宣戦布告をしにきました」
そう言ってニコリと彼女は笑った。
その内容はサカズキをして驚愕に値するものだった。しかし彼は反応を眉を顰めるだけに留める。
「……銀斧とは、随分懐かしい名前じゃのう! ──“噴火”っ‼︎」
そう言いながらサカズキは再び攻撃する。最初の一撃とは違い、今回は面制圧を目的としたものである。轟音が響きサカズキの前方全てが吹き飛んだ。
そして今度こそ、サカズキは驚愕することになる。
「……っ!?」
「目的は果たしました。下が騒がしいのでそろそろお暇させて頂きますね」
そう言ってネレイスは先程と何一つ変わらない姿のままサカズキの横を浮かびながら通っていく。だがそれを黙って通す元帥ではない。
「待たんかいっ‼︎ 」
サカズキは今まで使い所の無かった銃を持ち去っていくネレイスへ向け撃った。
──パァン!
サカズキの攻撃による音と比べれば随分と頼りない音が響き、やはり何事もなかったかのようにネレイスは去っていくが、途中で何故か振り返った。
「とは言え何もしないんじゃ格好がつかないので、これは気の利いた挨拶だと思って受け取ってくださいね」
ネレイスはそれだけ言って腕を空に向けた後、振り下ろした。そして今度こそ振り返ることなく進んでいった。
「クソったれがぁ……!」
サカズキは空を見上げ忌々しく吐き捨てた。その視線の先には何十もの船が降ってきており、サカズキは燃やし尽くそうと攻撃の準備に入った。
「元帥殿っ‼︎」
「何じゃぁ‼︎」
サカズキのいる司令室は今ほとんどが吹き飛んでおり、轟音を聞きつけた部下達は階下に敷き詰めていた。そこから誰かがサカズキへと焦った様子で報告する。
「藤虎大将が本部近海にて任せてほしいと通信がっ‼︎」
「次から次へと……‼︎」
サカズキの機嫌はここにきて悪い方へ爆発し、それを表すかのようにマグマは煮え滾る。その様子に部下達は青褪めビビり倒した。
サカズキは歯をこれでもかと噛み締めギロリと電伝虫を睨みつけると、大声で命令する。
「さっさとせんかい‼︎ イッショウ‼︎」
『あい、わかりやした……!』
その声と共に降り注いでいた船の大群は動きを止めた。その全てに海賊旗が掲げられており、中には船員の気配があった。
「中の海賊共を拘束しろォ‼︎」
「「「「「は、はいぃ〜〜〜!!!!」」」」」
階下の部下達が我先にとイッショウが留めた海賊船へと駆けていった。
「随分とやっかいなことになったねェ〜……」
「泣き言は言ってられんボルサリーノ」
サカズキの横にはいつの間にか海軍大将“黄猿”ボルサリーノが立っていた。
「銀斧、ねェ……。今頃になってェしかも宣戦布告とは俄に信じ難いがねェ……」
「その確認は政府に任せる、が……」
サカズキとボルサリーノは並び立ちネレイスの去った方を見つめていた。
「サカズキの背後に来るまでわっしら見聞色に引っかからない気配の絶ち方ァに」
「殺す気で放った攻撃に海楼石の弾さえ透かし、あの数の船をここまで運ぶ力か……」
サカズキとボルサリーノは互いに意見を交換する。そしてそれは政府の確認を待たずして、二人が臨戦態勢に入った証だった。二人の中では世迷言とも取れる海軍への宣戦布告は、既に確定事項として対策を立て始めていた。
「“自然系”、“超人系”じゃあァないねェ〜」
「十中八九“動物系”、それも“幻獣種”じゃろう」
「けどそこからは解析班の出番、か……」
そこまでは割り出せるものの、それ以上は現状の情報では判別が難しかった。
「ボルサリーノ、ここから先は時間との戦いになる……‼︎ 『セラフィム』の本格投入に加えジジイ共の尻を叩かにゃあならん……‼︎」
「各地に遠征に出ている海兵も何割かはこっちに戻ってこさせないとねェ。センゴクさん達は問題ないだろうけど」
来る日の戦争に備え、二人は着実に事を進める段取りを整えていった。
ONE PIECE FILM SILVER
──富・名声・力。
この世のすべてを手に入れた男、“海賊王”ゴールド・ロジャー。
彼の死に際に放った一言は、人々を海へ駆り立てた。
「おれの財宝か? 欲しけりゃくれてやる。探せ! この世のすべてをそこに置いてきた!」
男達は、グランドラインを目指し、夢を追い続ける。
世はまさに、大海賊時代!
「め〜〜〜〜し〜〜〜〜!!!!」
「わかったから静かにしてろ!!」
ゴロゴロと転がりクルーに蹴られる“四皇”の一角“麦わら”のルフィ。今やその名を言えば泣く子も黙ると恐れられる大海賊の代名詞ではあるが、今の姿は呆れるほどに平和であった。
「ちょっとルフィ! 四皇になったんだから落ち着きくらいつけなさいよ!」
「んなこと言ったって腹減ったんだ〜〜!!」
「ワッハッハ! これくらい豪快な方がルフィらしいじゃろうて!」
「ジンベエはルフィを甘やかし過ぎよっ‼︎」
「うお!?」
サウザンドサニー号の甲板にて最早定番となった掛け合いにロビンは行儀良く笑った。
「ふふっ。そうね、私もお腹が空いたわ」
「ぅはぁ〜〜〜ーい♡ ロビンちゅわ〜〜〜〜ん♡」
その言葉に耳聡く反応したサンジは先程まで渋々といった感じであったが、目にも止まらぬ速さで甲板を駆けていく。
「サンジ! おれはス〜〜パ〜〜コーラを使った飯が食いてぇ!」
「野郎が料理に指図すんじゃねぇ‼︎」
「ヨホホホ! では私は一曲弾きましょう!」
ブルックは手にしていたバイオリンで曲を弾き始める。展望室にて見張りをしていたゾロは聞こえてきた演奏に笑みを深めた。
「ヨホホホ〜〜♪」
そしてドンチャン騒ぎが始まる甲板を横目に二人の、いや一人と一匹は釣りに興じていた。
「なぁチョッパー……実はおれこのまま平和が続かないと死ぬ病なんだ」
「えぇー!! そうなのか!?」
「いや嘘だけど」
「嘘かよ!!」
そんな掛け合い最中、ウソップの内情は実にブルーだった。四皇になったことによりその座を求めてやってくる脅威のことをずうっと考えていた。
「なあチョッパー……実はこのまま安全に次の島までつかないと死ぬ病なんだ」
「ええー!! そうなのか!?」
「いや何回騙されんだよ!?」
「嘘なのかよ!?」
「くふふ」
「「ん?」」
突然聞こえた聞き覚えのない笑い声に対し、チョッパーとウソップは互いに顔を見合わせた。
「なんか、聞こえたよな?」
「う、うん」
しかし周りを見渡すも甲板で音楽に浸っている仲間以外に人は居なかった。なんだか薄気味の悪さを感じた二人は、取り敢えず仲間のところへ行こうと顔をまた見合わせる。
「な、なあみんなのところへ行こうぜ?」
「お、おれもそう思ってたところなんだ」
「どこへ行くの?」
「「へ?」」
二人の耳元に囁くような声が聞こえた後、ギギギ、と音がする程にぎこちない動作で振り返った。
「ばあ!」
「「ぎゃあああああああああああ!!」」
二人の叫び声はどこまでも、響いていった。
続くかは未定