身体能力チート貰っても転生先が超次元だったら意味ないだろ! 作:村岡8bit
一年生達が入部してから、それなりに時間が経った。最初こそすぐに音を上げていた一年坊共だが、数ヶ月もすれば特訓に慣れ、余裕綽々とまではいかないがまぁ着いてこれるようにはなった。
「よっしお前ら、そろそろ時間だ。今日はこのへんで終わるぞ」
「だー!やっと終わったー!」
「流石にまだ疲れるッス……」
「当たり前だ、この運動量で疲れねぇやつはいねぇよ」
「でも亭慈さんは息も上がってないでやんすよ?」
「あいつはもう別次元の生き物だ。無視しとけ」
「なんだ染岡、喧嘩してぇのか?」
俺からしてみればお前らのほうが別次元なんだよなぁ……染岡はドラゴン出るし*1半田は訳わからん挙動でシュート撃つし*2円堂は金ピカの右手出てくるし*3……あれ?半田は普通にシュート撃ってるだけじゃね?
やっぱ半田は俺の味方かもしれん。いっちゃあ失礼だが、このメンツだと一番低次元だからな。
「ジグザグスパーク おっ出来た、おーい!亭慈!円堂!染岡!新必殺出来たー!」
「半田、お前は今日から俺の敵だよ」
「ハァ?何いってんだよ亭慈、そんなことよりも見ててくれたか?俺のジグザグスパーク!」
あぁ神様、あなたはなんて無慈悲な方なのですか?セーフ判定下した直後にそれはないでしょうよ。くそったれがよ。
「俺は見てたぞ!すげぇじゃねぇか半田!遂にドリブル技も使えるようになったんだな!」
「あぁ!MFなのにドリブル技を一個も使えないっていうのもおかしな話だったからな!やっと完成してよかったよ」
は?俺は必殺技一つも使えないんだが?ポジションに拘らずとも使える必殺技が一つもないんだが?
これ半田くん俺のこと泣かせに来てるよね?かなり前に、はやく必殺技使えるようになれよwって毒吐いたこと根に持ってるよね!?
「ふっ、また一歩先を行かれちゃったね」
いつの間にか背後へ忍び寄って来ていた優が俺の肩をポンポンと叩いてくる。は?うざ。
「うっせーよ。基礎体力じゃあ俺に分がありすぎっからまだイーブンだ」
「いいわけおつー」
「言い訳じゃなくて事実だ!」
「相変わらず仲いいねー。二人共」
若干呆れも混じっているような声色で苦笑を溢したのは、最近入部した松野空助、通称マックス。
入部理由がここなら退屈しなさそうだから、というなんとも強キャラっぽいものだったので、多分コイツは主要キャラだ。
「そりゃあ幼なじみだからな。それよりもどうよ?サッカー部の特訓には慣れたか?マックス」
「うーん……慣れはした……かな?流石にまだキツいけどね」
もう一度言うが、マックスは最近入部したばかりだ。だというのにこいつ、もう特訓に慣れたと言いやがる。やっぱし超次元じゃないかぁ!
「あそうそう、最近必殺技できたんだよねー。ちょっとやってみせたいからさ、相手お願い出来る?副キャプ」
「もう好きにしてくれ……」
「……流石に同情するよ。源……」
◆
転校生が来た。名を豪炎寺修也と言うらしい。
まぁバチバチに知り合いなんだが。
教室で豪炎寺と知り合いだということをポロッと口から零すと、円堂がとてつもない勢いで詰め寄ってきた。いやあの、近いッス。
何やら円堂、先日河川敷で小学生のサッカークラブと一緒に練習していたところを不良に絡まれたそうなのだが、たまたまその場に居合わせた豪炎寺に助けてもらったらしい。
その時の豪炎寺のシュートがとてつもなく強烈だったから、どうにかしてサッカー部に引き入れたいんだとか。
「多分勝手に入部してくるから変に勧誘する必要はないと思うぞ。あいつ、円堂に負けず劣らずの筋金入りのサッカーバカだからな」
「えぇっ!?そうだったのか!?」
「ごーえんじはクールなふいんき出してるけど、実は熱血タイプのサッカー野郎だからねー」
「ふいんき、じゃなくて雰囲気な。バカ露呈してんぞ」
「あー、あー、なーんも聞こえなーい。別にふいんきでも伝わるんだからいいじゃん。べー」
聞こえてんじゃねぇか。そう出掛かった言葉を飲み込み、円堂に向けて口を開く。
「気になるなら声掛けてみりゃいいじゃん。ほら、そこの席に座ってんだろ」
「あぁそっか!確かに!ちょっと行ってくる!」
「いってらっしゃ~い」
……なんつーか、本当に忙しないやつだな。豪炎寺に熱烈なアタックをかます円堂をボンヤリ眺めながら、そう思った。
◆
豪炎寺と出会ったのはもう一年近く前のことになる。
優と一緒に中学サッカーの全国大会の決勝の観戦に行ったときの話だ。
スタジアムに向かう途中、トラックに轢かれそうになってた女の子が居た。
俺はチート転生者だから女の子を颯爽と救助したわけなんだが、なんとその助けた女の子が豪炎寺の妹だったんだわ。
お前の妹が轢かれかけてんだど!?という旨の連絡を豪炎寺の妹、夕香ちゃんのケータイを使って豪炎寺本人に寄越すと、豪炎寺は自分が大会の決勝に出るチームのレギュラーなのにも関わらず、試合を放棄して夕香ちゃんの元へとすっ飛んできた。妹思いのいい兄貴だ。
しかし俺が取った豪炎寺へ連絡するというこの行動、正直やらないほうが得策だったと後悔している。
旗から見れば、あぁ、兄妹愛やなぁ……で済む話なのだが、豪炎寺の所属していたチームからしてみれば、全国大会決勝直前に試合ドタキャンして無傷の妹のところへかっ飛んでいくとか、たまったもんじゃないだろう。
何か大怪我をしたとかなら試合をそっちのけにポイしてもまぁしょうがないとなるのだろうが、無傷だったのだ、夕香ちゃんは。
いやはや、ほんっとーに申し訳ないことをしたな。豪炎寺のチームの人には、何だっけ、井戸から青龍みたいな名前の学校だった気がするけど。
だめだ、思い出せねぇや。
っと閑話休題、話を戻そう。夕香ちゃんの元へ爆速で駆けつけてきた豪炎寺だが、俺を見るやいなやぶちかましてきたのはスライディング土下座。ここだけの話ドン引きした。
『妹を助けてくれてっ……!本当に……!ありがとう……!』
そう言って土下座したまま涙を流す豪炎寺の姿があまりにもみっともなかったもんなんで、いやちょっと重いっす。それは重いっす。みたいな感じで顔を上げさせた。
俺は当たり前のことをやっただけだ。ちょーっと動けば助かる命があるんだったら、ちょーっと動くくらいだれでもするでしょう?別に大したことじゃない。それはそれとして感謝されることではあるが。
夕香ちゃんを一応病院で見てもらおうってことになってそのまま豪炎寺パパが運営する病院に行った。
そんで移動している間に豪炎寺のサッカー事情を聞いたり、逆に俺のサッカー事情を話したりして、かなり意気投合した。そして豪炎寺の話を聞いている内に一つ分かったことがある。
コイツ、円堂と合わせたら化学反応が起きるな、と。そして今まさにそれが成されようとしているわけなのだ。正直クソ楽しみ。
でもって、夕香ちゃんを病院まで送り届けたら、なんか豪炎寺のオヤジらしき人が出てきて、この人にもドン引きするくらい感謝された。血筋か……?
その後、夕香ちゃんの体に何も異常がないことを確認が取れたので、普通に家に帰った。その日は夕焼けがとてもキレイだった覚えがある。
あの日以来、豪炎寺とは一度も会っていなかったのだが、まさか雷門中に転校してくるとは思いもしなかったな。
この先がどうなっていくのか、今から楽しみだ。
豪炎寺救済and尊厳破壊(スライディング土下座)パートでした。
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