リアルが多忙だったため、更新が遅れてしまい申し訳ありませんでした。
今回でやっと本題の序章に入れた気がしています。
湖畔は激しい戦火に包まれていた。
煌貴が
その様子を観察する者が二人。
一人は、『セレクション』社長秘書。名を|巻裂玲(まきさき れい)と云う。
そしてもう一人、『セレクション』の極秘実験の実行の為だけに雇われたフリーランスの化学者。名を|秋田耀(あきた よう)と云う。
二人は既に実験の第一段階を終え、次の段階へ移ろうとしていた。
そこに、煌貴達ーーー学園都市側の介入があった。
即座に下された命令は[所有している全合成獣を放ち、時間を稼いでいる間に撤収]というもので、実験器具の撤去や隠蔽工作などは全て部下がやるため、暇を持て余していたのだ。
「おもしろそーだな、あれ。混じってきてもイイ?」
「やめときな。見たところありゃあ前に報告にあった『鬼』だよ、お前なんかが行ったところで肉片になって計画がおじゃんだ」
『セレクション』側としては呑気に観戦している場合ではなく、さっさと撤収したいのだが、作戦の要である二人が動かなければ他の者達も動く事ができない。
安全装置を外したアサルトライフルに手をかけながら合成獣を物ともせず向かってくる戦鬼を見つめていた。
「ーーー手応えが無さすぎる。学園都市に反発してるような奴等の兵器には見えないが、どうなんだ?」
「そうだな、俺の見解を言わせてもらうとこれは罠だろう。時間稼ぎをして、その間に逃げ出すっていう古典的なモンだな」
言いながら、蒼甫は犬と蛇を無理矢理貼っつけたような合成獣の頭を捻り潰す。
「なら、どうする?」
問いながら、煌貴は粒子長剣を右に、左に
「どうするってそりゃあ、決まってるだろう」
蒼甫は、クラウチングスタートの姿勢になると、瞬時に地面を踏み締め、駆け出す。
煌貴もブースターで加速する。その過程でありったけの推進剤を用い、ブースターによる急加速でコントロールを失わないよう、スラスターで微調整をかける。
戦況が動くのは、本当に一瞬の事だ。
煌貴は遠くの方から何か乾いた音が聞こえた。
そして、次の瞬間。
凶弾は煌貴の駆動鎧のブースター、それも的確に真ん中を穿つ。
ブースターが止まった事で加速も止まったが、すんでのところで煌貴は駆動鎧から緊急脱出を試みる。
駆動鎧が物理法則に従い、地面に倒れ込む。
そしてそれをまたも凶弾が貫く。今度は心臓部を狙った一撃だ。脱出していなかったら確実に死んでいただろう。
だが、その二発で位置はわかった。後はそこへ行くだけなのだが、歩いていてはまた狙われてしまう。そして、今度は避けられないかもしれない。
ここで煌貴は一旦湖畔から離れ、近くの森に身を潜める事にした。
幸いにも
【こちら不要能力……煌貴、どうしたの?】
「ちょっとマズイ状況になっている……どうやら敵はスナイパーを雇ったようだ。俺でさえ間一髪で駆動鎧を脱ぎ捨てた結果、何とか避けられたというくらいの腕だ」
【そう……今からそのスナイパーの位置を割り出すわ。武器は何がある?】
煌貴の今持っている武器は非常用のナイフとハンドガン、そして出力の残り少ない
【まあ、貴方の腕ならナイフ一本でどうにかなるとは思うけれど。……スナイパーの位置がわかったわ。丁度蒼甫を狙おうとしているみたいね……ポイントはB-3、切り立った崖の上にいるみたい】
それを聞いた瞬間、煌貴は駆け出していた。
粒子直剣を取り出し、意識を集中させる。目標地点に到達するまでに倒れてしまっては元も子もない。そのため、周りにも十分警戒しつつ、煌貴は森を駆ける。
†
雇われの
これまで幾多の戦場で人を殺し、戦争が始まったと聞きつけると飛んで参加し、また人を殺した。そうして生きてきた。
だから、このような平和すぎる戦闘というのは退屈で仕方ない。敵の二人は相当なやり手と聞き、感情が高揚していたが、そのうちの一人が簡単に逃げてしまい、心底落胆していた。
戦争では、例え狙撃手と言えど安心は出来ない。そう、戦争とはどのような人物であれ、参加した者を喰らうのだ。時には歴戦の戦士が死に、時には優秀な指揮官が死ぬーーーこのような事は日常茶飯事だった。だから、退屈などしなかった。否、
常に緊張感がつきまとう。トリガーを絞る時にも、死を考える。銃弾が射出され、丁度敵兵の頭部を穿った時も然りだ。一人倒したからと言って油断をしていてはいけない。狙撃手は警戒されやすいため、居場所がバレた途端に全力で潰しにくる。
戦争で力というのは関係なかった。全ては『運』なのだ。
ピンチに陥ったところで仲間が『運良く』救援に来てくれた。
戦争の起きた地域に近い村に住んでいて、『運悪く』流れ弾が当たって死んだ。
戦争は力と力のぶつかり合いだが、実際力なんていうのは関係無い。運が、戦争を左右するのだ。神様というのは戦争が起きた時にどちらが勝ち、どれだけの犠牲が出るということを知っているのだろう。戦争においても、最も強大な力を持っている。それが、人類の崇拝する『神』なのだ。神など居ないという輩がいるが、そういう奴等に限って『運命』とかいうものを信じる。それも全て、神が決めた事なのに。
狙撃手は、神を信じている。いや、狂信若しくは妄信と言ってもいいかもしれない。神という一つの依り代を作り、安心しているだけなのだ。
だが、その安心感が、狙撃手に数々の栄誉を与えていた。
神を信じた結果、フリーランスの狙撃手として世に名を轟かせ、莫大な金を手に入れた。
今回も神に祈りを捧げ、望んでいる。
きっと、神が守ってくれる。
そう信じ続け、スコープを覗く。
人間では到底出せないようなスピードで走りながら合成獣をなぎ倒していく巨躯の男。スコープの位置を微調整し、狙いを定める。目標は、アタマ。いくら筋肉を強化していても、頭部を守る事は出来ない。そこは一般人と同じだ。そして、目の前の合成獣を倒す事に精一杯なのか、狙撃手に気がついていない。今がチャンスだ。トリガーを引き絞る。完全にトリガーを引く前にもう一度祈る。『神よ、私を護り賜え』と。
トリガーが更に絞られる。もうすぐ、発砲音と共に亜音速で、銃弾が射出される。
トリガーを完全に引いた。
はずだった。
「……え?」
トリガーを引き絞っていた右手の感覚が無い。何が起こったのかわからず、スコープから顔を離す。するとそこには、先程狙撃し、それに恐れをなして逃げたものだと思っていた少年がいた。
少年は銀髪を靡かせ、粒子直剣を提げていた。
ぶすぶすと肉の焦げる音がしたと思った半瞬前、少年の粒子直剣が愛用の狙撃銃を持った左手を焼き切っていた。
袈裟斬りから元の位置に剣を戻すように二撃目を入れる。それによって、狙撃手の体は真っ二つに割かれ、最早生存しているなど考えにくい状態になっていた。
その時狙撃手は神なんていなかったのかと、心の中で疑問を抱いた。だが、それは違った。そう、この少年こそが神なのだ。自分は『神』を信仰している気になっていただけで、実際には神など信じていなかった。だから、その罰を神自らが与えに来たのだ。やはり、どのような時でも、最も強大な力を持つのは神だ、と死ぬ間際に結論を出し、とある狙撃手の人生は幕を閉じた。
最初は狙撃手に名前をつけたかったのですが、ポンポン名前付きのキャラを出しても面倒になるだけだと思い、とある狙撃手ということにしておきました。設定としては戦争で良い功績を残し、金と名誉を手に入れた狙撃手という感じです。
かなり久々にちゃんとした時間に投稿できて満足しきっています。