麦わら帽子とぬいぐるみSS 作:緋色
☆
あの時の事を忘れたことはない。
『歌が好きなのか!なら名前はウタだ!』
わたしの事を覚えてないのはわかっている。
あの後何度も何度も覚えてる限りの事はやった。
でも奇跡は何度も起きなかった。
「行っちまったなぁ。シャンクス達」
キィ……
シャンクス達はフーシャ村から旅立った。そこに私の居場所はなく、私はここに残る事にした。
「一緒に立派な海賊になって見返してやろうぜ。ウタ」
キィ!
奇跡は何度も起きないと私は知っている。
でも私は奇跡をずっと待っている。
☆
「――コンパスや六分儀、海図を使用して航海していくわけです。天体観測やその地域の生物相は知識で何とかなりますが、風向・海流などは知識があっても経験がなければそれとはわかりませんし、適切な対応も難しいものです。こればっかりは経験でしょうね……」
「キィ……」
コビー君を海軍基地に届ける間の航海中は、航海術を習うことにした。
「うーん。わからん」
「ギィギィ!」
「いやー。こういうの苦手で……」
まさか、海賊になるために船で出航したのに航海術を習得してなかったとは……。
思い返すと山でずっと技の修行かサバイバルで肝心の航海に関しては何もしてなかった……。
「ルフィさん。何も知識なしで海に出るなんて無謀すぎますよ。よく生きてましたね」
「いやー。大渦に呑まれたり死ぬかと思ったな!」
肝心のルフィがこれである。
私がしっかりしないと!
「キィ!」
3人の珍道中はもう少しだけ続く……。
☆
『なんだこの紙?』
『それ掌に乗せてみて』
渡された紙切れを疑問に思いながらも掌に乗せると。
『うわ!?動いた!?』
『この紙が動く方向に私がいるんだよ。すごいでしょ!?』
『へー。世界には不思議なものがあるんだなー』
『それがあれば会いたい時にまた会えるんだよ。ロマンチックだね』
『そうか?よくわかねえけど。また会えるってのはいいな!』
――バラティエ
「あの女を追いかけるにしたってどうするんだよ。行先さえわかんねえんだろ?」
「ナミの居場所はわかんねえけど。ウタと一緒ならこれ使えばわかる」
「なんだこれ?UTA?」
「これを掌に乗せるとウタの方角がわかるんだ」
「なるほど。準備ができたらすぐ出発すんぞ」
「わかった」
「……すぐ行くからな」
☆
わたしはあのマークを知っている。
「おいルフィ……」
「?」
「…ベラミーのマーク!」
違う。
あれは…。
『ファミリーにならないなら消えて』
ドクンッ!
「手伝おうか」
「いいよ一人で」
「ダメよ!ルフィ!バカな事考えちゃ!出港予定まで3時間ないんだから!」
「ギィギィ!」
「ほら!ウタも止めてるでしょ!」
「ギィ!」
「朝までには戻る」
行かないで――!
日が完全に登ってもルフィは戻ってはこなかった。
「キィ……」
「なんて悲しげな雰囲気なんだあのぬいぐるみ」
「心配なんだろうか……」
「おーい!」
「キィ!」
「ヘラクレス~!」
「「「何しとったんじゃーー!!」」」
「ギィギィ!」