麦わら帽子とぬいぐるみSS   作:緋色

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この国を訪れた者たちはいくつかの事に心を奪われるだろう。

一つは香しき花々とこの国自慢の料理の香り――

――また一つは…疲れを知らぬ女たちの情熱な踊り

――そしてもう一つは町に溶け込みごく自然に人間と共存する命を持ったオモチャ達の姿である。

 

「ギィ……」

「なんだこの国!?ウタみたいなオモチャ達がたくさんいるぞ!」

「この国出身だったんだろう。ベガパンク級の天才でもいるのか?」

「……ウタ?」

 

男が刺されたという騒ぎが日常とされる愛と情熱の国

 

――ここは愛と情熱とオモチャの国

”ドレスローザ”

 

 

この国を訪れた時にこの国が歪だと気が付いた。

一つは町に溶け込みごく自然に人間と共存する命を持ったオモチャ達の姿。

 

「ギィ……」

 

楽しそうな雰囲気とは裏腹に人に縋るようにオモチャとして振舞うオモチャ達。

 

「なんだこの国!?ウタみたいなオモチャ達がたくさんいるぞ!」

「この国出身だったんだろう。ベガパンク級の天才でもいるのか?」

「……ウタ?」

 

ここでは忘却と支配が蔓延っていた。

 

――ここは絶望と諦観の蔓延るオモチャの国

”ドレスローザ”

 

 

『おれのパンチは銃みたいに強いんだ!』

本当に強くなった。

追い抜かれてもう追い付くこともないだろう。

「なに笑ってるのよ!?若の邪魔をして私の邪魔までするっていうの!?今度は動けない玩具にしてあげる!」

「ししっ!今度はないよ!今回は私が守るからね!」

だからちょっとだけ力を貸して

勇気が負けないように

「『銃(ピストル)』!!」

 

「なんだあれは?」

遠くにいるのにやけに目立つ小娘が無視してはいけないと最大限の警鐘を鳴らし続けている。

「うちのファミリーが反乱しているのか?」

あり得ない。下っ端とはいえ俺の為に死ねるように教育は十分していたはず。なら考えられるのは

「能力か」

小娘はずっと何かを歌っているようだ。おそらく声を媒体とした能力なのだろう。なら話は簡単だ。

「さっきからどこ見てるんだドフラミンゴ!」

「フッフッフッフ!この鳥籠の唄い鳥だ!」

「……?……!?待て!」

「もう遅い!」

声を聴いた者を操るなら声が聞こえない範囲から撃てばいい。

「”弾糸”」

糸の弾丸が小娘の身体を貫き、そして倒れた。

「ウターーーー!!」

 

 

熱い……?

なんか流れてる……?赤い……血?

あ、そうか私

生きてる!

「ウタちゃん!今は動いちゃダメ!止血しないと!」

「……大丈夫だよ。だって生きてるもの。それに……」

 

「ドフラミンゴオオォォ―ーーー!!」

 

国中に響き渡るような声が、私のやるべきことを教えてくれる。

 

「変な人、マイク貸して」

「変!?いやマイクは」

「いいから貸して!」

「はい」

 

痛いけど大丈夫だ

きっとみんなもこれくらいずっと経験してきたんだ

 

『ルフィ!そいつ私の分もぶん殴って!』

 

ちょっと眠ろう。

力を使い過ぎたのか妙に眠い。

でも大丈夫。

ルフィを信じてるから。

 

 

魔法は解けた。

ドレスローザは玩具と共生する町じゃなくなった。

ドフラミンゴもシュガーも海軍に捕まって、能力を使わせないよう厳重に捕まったそうだ。

……あれから長い時間が経った。

魔法にかかる前に過ごした時間より魔法にかかってから過ごした時間の方が長い。

だからこそ恐い。

『私』の事を覚えていますか?

『私』は望まれてますか?

頭の中でぐるぐると空回りする。

息が苦しいし、胸が痛い。

……それでも『私』は

 

「ルフィ……」

久しぶりって笑おうとした。けれど言葉は上手く出なかった。今私笑えているのかな。

「……」

沈黙が怖い。逃げ出したい。やっぱり『私』は望まれてn……

「ウタ?」

その顔は今まで見たことのない顔だった。でも

「こ゛へ゛ん゛。お゛れ゛す゛っ゛と゛忘゛れ゛て゛た゛」

「泣゛き゛虫゛た゛な゛あ゛」

ただその日は泣き疲れて眠るまでずっと抱きしめ合って泣いていた。

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