狩人少女はターフを走る   作:しがないヤーナム人

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ACVIおめでとうございます。いや本当に。私はACシリーズ自体はやった事は無いんですが、10年待っていた方は感無量でしょうね。ガトーの三倍ですから三倍。
それと、ランキング12位もありがとうございます。皆様方の支援のお陰で私が驚いてます。正直ランキングに入るとは思ってませんでした。
……実は支援絵も欲しいと思っていたりする(強欲)


第十七夜 初配信

 元日を超えて新年の初詣も終わり、漸く少し暇が出来てきた頃の事。

 

 基本的に手紙は全部読んで律儀に全て返す貴方の所に、一通の手紙が届いた。

 はい、と川添の手から手渡されたそれには。

 

『ダンテスファルサさん、いつもレースでの活躍を見て応援しています! ところでですが、ゲーム配信などをやるつもりは無かったりするのでしょうか? もしやってくださるのであれば、プーのホームランダービーをやってみてはくれないでしょうか!』

 

 と、書かれていた。

 貴方はネットに住まう人間でも無いので当然ながらそれについて知っているはずも無く、検索する。

 そうしてみれば、どうやらパソコン専用のゲームだと出ているではないか。

 現在の貴方はそれを持っている訳でも無く、あるのは工房用の器具と原料、そして加工の結果のみ。

 応えてやりたいが、どうした物か。

 貴方は少しばかり思案し、そういえば彼がいたではないかと思い出した。

 

 

 

 という訳でね、蝦塚。暫しパソコンを借りても良いか? 

「何がという訳でだ、要件を言え要件を」

 

 さて貴方は、その某ゲームをやる為に、彼の住む寮へとやって来ていた。

 

「で、何でここに来た。とりあえずいつもの目的って訳じゃあ無さそうだが」

 ああ、これを見て欲しい。

「ふうん、どれどれっと……」

 

 そして貴方の手から渡された手紙を取り、中身を読むやいなや顔に皺が寄り始める。所々で「まじかコイツ」だとか「最低かよ」と言っており、貴方はそれに如何な物かと感じていた。

 

「うっわぁ、人の心無いわぁ……」

 何だ急に。見もしていない人の事を罵倒するのは、いくら貴公とは言え見損なうぞ。

「いいや、これは断言出来る。これ書いたヤツアンチだぞ。それもとびっきり人の心を捨てたド畜生な野郎と見た」

 

 貴方はその暴言に眉を顰めていると、その様子に気付いたのか、彼が鬱陶しいとでも言いたいような顔をして手で止める。

 

「……あーわかったわかった。ちっとそいつについて説明しといてやる」

 

 そう言い、一度喉の調子を整えるように咳払いをした彼は、こんこんと語り始めた。

 

「この世には悪と善、混沌と秩序、アニメと昼ドラ、サラダとステーキ……そんなみたいに対極に位置してるモンは星の数程存在する訳だ」

 ……まあ、ああ。

「そんな感じでゲームにも神ゲーとクソゲー、ってのがあってな。神ゲーはゲームを齧ってない奴でもこれは面白い、これはずっとやってられる、な感じでずうっと出来る物の事を指すんだ。これまでにゃあFFにマリオ、ドラクエ、ACシリーズにガンブレ3……ああ、あの頃は楽しかったと今振り返っても楽しかったなって思える奴らばっかりだ。今までも生まれて来たし、これからもきっとそうだろうよ」

 

 そこから彼は一気に声のトーンを下げる。

 

「ただまあ、ゲームにも勿論アタリハズレってのはある。例えばあんまりにもバグが多すぎて遊ぼうにも全く遊べねぇゲーム、調整ミスレベルで敵が強すぎて全く勝てねぇゲーム、ただっただストレートにクソつまんねぇゲーム……そういうのはディレクターと開発陣との食い違い、予算の限界、納期の悪魔、やる気の空回り……様々な理由があって出来上がるモンだ。思えば件のヨンパチから広がったクソゲーの乱世、もしかしたらそこから予兆ってのは見えてたのかもしんねぇなぁ……」

 

 やたらと展開される気味の悪い動きで現在進行形で割とドン引きしている貴方を他所に、彼は目をかっぴらく。

 

「そしてそぉの中の一つッ! あんまりにも強いッ、強すぎるッ! ストライク? ヒット? ファール? そんな物は全てゴミィ! ホームラン一本、それのみが正義! オウカスティガカスロビンカスゥ! そいつらが挑んできたプレイヤー達を散ッッッ々に痛めつけてきたゲームゥッ! それがこのォ、〘プーのホームランダービー〙だァァァーッ!」

 

 …………。

 ……キッ──じゃない、間違えた。

 ……あー。その。

 蝦塚正人、御丁寧な解説、御苦労だった。

 気持ち悪い意味で熱意の入った解説のお陰で、現在貴方からは凄い目で見られている。ここ二百年でも見た事の無い、ある意味激レア物である。

 

 …………あ、あー、ああ、その……お疲れ。

「…………や、やめろよぉ、そんな目をすんなよぉ……本気で死にたくなって来るだろぉ……」

 ……その、熱意は、あったな。

「死体にガトリングスマッシャーする趣味でもあるんか?」

 

 彼の心は泣いた。

 

 

 〘◇〙

 

 

 とりあえず精神力を削るゲーム、という認識で大丈夫か? 

「大丈夫だ、それで問題無い」

 ふーむ……まあ、何とかなるだろうよ。

 

 まあ、そんなこんなでどうにか自宅に上げてもらい、ひとまずとしてそのゲームの説明を受けた貴方。その様子を見るに自信があると見える。

 

「いや、ホントに良いのか? 俺からすりゃあ本気でやるべきじゃねぇと思うぞ」

 そこはまあ、多分大丈夫だろうよ。長期戦なら慣れている。そう易々とは癇癪をする事は無いだろうさ。

「おう一週間前にハメコン三タテして煽ったら死に腐れこの屑畜生がとか言って秒で癇癪ブッパした後マジモンの戦争になりかけたんはどこの誰じゃ言ってみろダンカス」

 それは元々貴公がそんな事しなければ良い話だったろうが。

「おうその前に勝ち方に外道も卑怯も無い言うて蛇でガン逃げクソ陰キャ戦法しとった上にこんなのにも勝てないのかとか煽っとったのは誰じゃウマカス」

 誰であろうダンテスファルサだがねハメコンに頼ってでしか勝てない雑魚人間? 

「ああん言ったなテメェ今度こそリアルスマブラすっかコノヤロォ!」

 

 彼はそう叫びながら立ち上がるが、少し考えていたのかそのままでいた後、何事も無かったように座り込む。

 

「……いや、これは水に流そう。不毛になる」

 ……まあ、そうではある。

「元々アンタが始めた話だったろうがよ……」

 

 眉をひくつかせながらも、彼は「まあ良い」と話す。

 

「とりあえず配信機材の方は元っから用意してあるんで、そいつ使ってくれ。使った後はちゃんと切ってくれよ」

 …………なあ蝦塚。

「何だ?」

 配信機材があるのは良いんだが……恐らくそれらはパソコンの初期機材、という訳でも無いと思うのだが──

「聞くな」

 ………………あ、ああ。わかった。

 

 その時の蝦塚は、人のはずなのにクリモト並の覇気があった。

 貴方はこの事を振り返った際にそう語っているそうな。

 

 

 〘◇〙

 

 

 

『あー、あー、マイクテストマイクテスト……大丈夫か? 映っているだろうか?』

 

【おっすーばっちぇ見えてますよー】

【FOEネキが配信してやがる……だと……?】

【こんにちは】

 

『……反応を見るに、どうやら音も聞こえていてしっかりと見えているらしいな。ああ、良い具合だ。さて、恐らくは初めて見るであろう者もいるのだろうから、自己紹介をさせてもらおう。名をダンテスファルサ、日本ウマ娘トレーニングセンター学園高等部に所属している者だ。今後とも、よろしく頼むよ』

 

【誰だお前】

【誰だお前ェ!?】

【誰おま】

【申し訳ないが本人騙るならもうちょっと塩対応してもろて】

【ママー誰この人ー?】

 

『誰も何もダンテスファルサその物に決まっているだろうが、のこぎりで残らず挽き潰してやろうか?』

 

【あっ(察し)】

【これは紛うことなき本人】

【この柄の悪さは本人ですわ】

 

『なぜ柄の悪さが本人確認のような物になっているのかね……まあ、そんな事は良い。さて、なぜこんな事でもやったのかと言うとだな、実はある者から手紙を頂いてね。その中にプーのホームランダービー? というのを配信でやってみて欲しいと言われてな。それ故蝦塚から機材を借りて──』

『あのー開始早々苗字漏らさんでもらえる?』

 

【草】

【(悲報)FOE、やっぱりインターネット弱弱だった】

【おじいちゃん名前お漏らしはアカンて】

【プニキは色々と人の心無い】

【こいつエビニキじゃねぇ!?】

 

『ああ、すまないな……あー、人間一号』

『何このウマカスネーミングセンスクソか?』

 

【人間一号www】

【ストレートにウマカス言ったぞこの人間一号】

【エビニキェ……】

【エビニキトレーナーだったんかはえー】

【ダンテスファルサに唯一ウマカスを言った男、エビニキ】

 

『なんだハメコンでしか勝てない雑魚人間一号』

『なんだぁテメェ戦争したいんか? ほーんそうかそうか、レイヴン無礼るなよ』

 

【FOEもまあまあカスで草草の草】

【なぁにこれぇ?】

【AC6おめでとうございます】

【トレニキさらっと傭兵だったの漏れてる】

【私は何を見せられているんだ……】

【夫婦漫才だろ】

 

『…………いや、待とう。そういやアンタの配信だったわ。ほれ、さっさと集中してやれ』

『貴公が元から人間一号呼びに怒らなければ……否、もう面倒だ。わかったから一旦引っ込め』

『引っ込めってなんだよ、ここ俺の部屋なんだわ』

 

【FOEさん???????】

【FOE恋愛強者か??】

【悲報、FOEトレーナーラブ勢】

【FOEのトレってkwzeネキじゃなかった?】

【ナチュラルにトレーナーの部屋いるのこっっっわ】

 

『ああわかってるわかってる、それでは……すまない、待たせたな──うわっ、何だこの流れの早さ』

 

【結局FOEのトレ誰なん?】

【zeやろ】

【あの感じエビニキと違う?】

【トレインタビュー見てもろて】

【エビニキなん?】

【kwzeだろjk】

 

『……ダメだな、全く読めない。……まあ良い、とりあえず進めるか。落ち着いた時にでも見ておこう。それでは、スタートしていこうか』

 

 そこからゲームを開始して数分。

 

『ふむ、この熊畜生を操作してこの来る球を打つ、と。最初の所は簡単そうではあるが』

 

【熊畜生は笑う あながちここにいるの森の畜生共だけども】

【そこら辺は簡単やから】

【問題はオウカスら辺からよな】

 

『まあ、遅いな。何だあの人間一号、嘘吐きか?』

『俺人間一号じゃねぇから! ちゃんとエビリオンっつー仮名あっから!』

『センス腐れてるな』

『なんだとウマカスとっつきで潰すぞ! あーもー決めた! 俺お前が苦しんでる時ぜってぇ煽ってやるからな!』

 

【とうとう自分からお漏らししてて草】

【火の玉ストレート暴言やめたれ】

 

『な、上下移動している!?』

『へっ、打ててねぇでやーんのー! プークスクス』

『……あ、これ見かけだけか? なら打てるな』

『なんで見切んだよぉ!』

 

【引っかからなかったぞコイツ】

【エビニキまあまあ性格腐ってて草 まあ普段からあんな事やってるからわかってたけど】

【上手いなやっぱ FOEだからか……】

 

 そんなこんなで攻略していき、五匹目。ここで貴方は一度手詰まりになる。

 

『…………おい、打てんぞ。左右に振れる球などどう打てと?』

『あっ、そこまあまあ運ゲーだから頑張れ!』

『つまり詰みと?』

 

【運ゲー=詰みは草なんだ】

 

 途端に動きが少なくなり、十分経過。顔にも疲れが見えて来ている。

 

『……はあ。疲れた。凄まじく時間の浪費をしている感覚がする』

『そんなアンタにサプライズだぜ! たまたま売ってたから買ってきた、はちみー固め濃いめだ! 感謝して飲め! さあ、画面のプニキの如くハチミツをキメるんだな!』

『……おい。おい。甘いのは柿以外好みじゃあ無いのをわかってやったな?』

『そらそうだが? 煽ったのはアンタからだぜぇー! ふっふー、お残し厳禁だぞー!』

 

【甘いの好きじゃないのか 意外】

【割とそれ感はあったと思う】

【柿は好きなのね】

 

『……まあ、出された以上は飲むが──……ッ……甘すぎるだろう、もう少し薄くても良くないか……?』

 

【まじで不味そうな反応で草】

【あれ本気で甘ったるいからなぁ……甘みで舌焼けそうになる】

 

 しかしハチミツ効果からかどうにかオウカスを攻略し、ティガカスも球速自体は変わっていないのに気付いてからは速攻で攻略し、件のロビカス戦。

 そこで今度こそ詰まり、なんと五時間が経過。ハチミツをキメ切ったプニキイン貴方であっても尚七匹の畜生の繰っていた全ての変化球をランダムに投げ込んでくるロビカス相手は相当に難しく、最初こそ煽り散らかしていた蝦塚もこの長期戦は予想出来なかったのかあまり顔を見せなくなっていた。

 

『………………何だもう……疲れた……早く終われ……』

 

【死ぬ程疲れとるなぁ】

【流石は無法者のスレ民のお正月を溶かした悪魔だ】

【五時間耐久は普通に精神力やばい】

 

 と、その瞬間。

 単なるストレートボールが投げられ、貴方は刹那打ち返した。

 

『……あっ!? 当たった!? 当たったか!? 終わりか!? 終わりだな! …………はああああああああぁぁぁ……もう、二度だ! 二度とやらんこんな糞汚物!』

 

【おおおおおおおおお】

【お疲れ様でしたぞ】

【おつおつ】

 

『おー、お疲れさんー……いや、ホントお疲れ……大変だったな、今日はもう遅いから明日ゲーセンで沢山自爆祭りしような……』

『貴公の金でなら行く……後核派だ』

『じゃあ沢山核撃とな』

 

 その疲れっぷりを見せ、配信は終了した。




この次の日はめちゃくちゃ遊び倒した。

ウマネスト回

  • いる
  • いらない
  • そんな事よりヤーナムしろ
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