狩人少女はターフを走る 作:しがないヤーナム人
原作準拠? そんな物は無い。あるのは〘ウマネスト with Bloodborne ~フロムゲーの幾つかを添えて~〙です。
VRウマレーター、ねぇ……。
貴方はいつもの工房内にてカフェから拝借した、新しく導入された機械の事を記す紙について読んでいた。
「何でも、色々な事ができるらしいんですよ」
そう言うカフェの目は今までの比にならない程に輝いており、それに対する期待の度数としても現れているようだ。
ふむ、と貴方は頷きながらそれを読む。
今ある【VRウマレーター】と呼ばれる機械はレースの為に造られたシミュレーターであり、距離ならば1000mから4014mまで、バ場もダート、芝、洋芝、重馬場、良馬場と設定可能であり、本番さながらのレース体験が可能。
更に、提携してある様々なオンラインゲームに接続して『ウマ娘』のままでありながらゲームのプレイが出来、更なる没入感が味わえる──。
貴方は一通り読み終わった後、貴方はそれをカフェに手渡した。
「……で、貴方から見て、どうでしょうか?」
貴方はそうさね、と、珍しく悩んでいる顔で一言呟く。
……まあ、何とも言えんな。生憎精密機械には疎い身である故、そうどうこうとはわからんよ。
ただまあ、試行回数を増やせるというのは、仮想空間──一種の夢のような世界の出来事とはいえ、実に良い事さ。数を熟せるというのは、即ち様々な行動に対応出来る可能性が高くなる訳だからな。
後は……そうだな、ゲームが出来るのは悪くはないとは思うな。……だが、『ウマ娘で』という状態で放り込むのは如何な物か、とは思うがね。
「そこですか……?」
何故そこを、といったような感情で彼女は貴方に聞く。
ああ、そりゃあそうさ。人というのは皆、不公平を厭う。しかして努力が報われる事を願い、報われないのを不公平以上に厭う。貴公も恐らくはそうであるはずだ。
故にゲームを開発する企業はなるべく最初の地点で差が出ないようにし、かつプレイヤーの努力で評価されるようになるようにするのだよ。まあ、金を入れる事で戦力を手に入れる方法もあるが、そこは一旦省いておこう。
「ああ、はい」
さて。それ故基本ゲームにはウマ娘という族は出ないようにされているらしいが……そこに提携したのだから、と称して追加されてはどうだ? どう考えても不公平になる訳さ。それではそうなった者は何を考える? 少なくとも自身の努力不足、誠意の不足とは思わんだろうよ。自身が考えるなら、そう……勝手に提携した企業を恨む、その話を通した人物を恨む、その話を持ちかけた人物を恨む……そう繋がっていき、最終的にはゲームをしている人物をも恨むだろうな。
「でもそれ、ただの八つ当たりじゃないですか? そんなのはあんまりかと……」
そうさ、ただの八つ当たりでしか無い。しかしね、人間はそういう物さ。その本人に直接の関係が無くとも、ほんの微か、どれだけ微量の僅かであろうとも、元凶と何らかの繋がりがあるのなら、そこに自身の有する感情をぶつけてしまえば良いと思う。そう思ってしまう物さ。
そんな人間は、星屑の数程見てきた。
貴方は脳裏に異邦の人物に対して偏屈的であったあの老婆を思い出しつつ、カフェに語る。そうしている貴方の瞳からは、星々の輝きは失せ、いつにも増して暗く、酷く灰に曇り切っている。
……だからね、マンハッタンカフェ。レースのシミュレーション機能を使用するのは良い。しかして、ゲームをしようとするでは無いよ。人から不要な恨みを受けたり、罵詈雑言は受けたくないだろう?
「……は、はい。わかりました」
頷くカフェに貴方は安堵して瞳の色合いを取り戻し。
まあ、自身はやるけども。
「……へえっ?」
尚説得をしていた当の本人である貴方はやる事を宣言した。
「い、いや、貴方さっき人から要らない恨みは買わない方が良いって、罵詈雑言を受けたくないならやっちゃいけないって……へっ?」
ほう、アレ如きで「ダンテスファルサに対する罵詈雑言」? 「あまりにも酷い誹謗中傷」?
クッハッハッハ! 温い温い! あんまりにも生温い! あんな物如きで怯む訳なかろうよ!
もしも罵詈雑言を向けたいのであれば、そうさね、人に溶け込む獣畜生だとか頭の狂った獣女だとか、あるいは自立思考の無い人でなしとでも言うと良いさ!
まあ、少なくともこちら側を下してから言ってもらいたいがね! と貴方は暴言の数だけは無駄に高いボキャブラリーを活かして例を出し、快活だと示すかのように笑う。
……ああ、実に貴方という狩人らしい。常人なら辛く苦しい面でやたらと強く、そして一般人であれば何の変哲もない所で酷く脆い──とはいえ、社会常識に当てはめるのであれば強い側といった所。
メンタルが脆いか強いかであれば断然強い方が良いが、しかし今回のは少し悪い出し方とも思える。現にカフェは貴方の事を憐れんでいるかのような視線で見ている。
──ああ、この人は今までずうっと評価されなかったのだろうな。本当に、大変だったろうな。
きっと彼女はこう考えている事だろうよ。
〘◇〙
まあ、そんなこんなで貴方はVRウマレーターの鎮座されている部屋の一角へと赴いた。
秘書と理事長からの長ったらしい説明をふんふんと聞き流して貴方は四台ある内の一台──クリモトの平行世界では三台であった。こちらの理事長は資金に余裕でもあったのだろうか──に入り込み、中に内蔵されていたヘルメットを被り、スタートボタンを押す。
そうすると貴方の意識は一瞬闇に消え、気が付いた時には既に見知らぬ世界。
辺り一面は広大な草原が広がり、遠くに見えるは木組みの家だらけの村、空は無限に水色と白い雲のコントラストで埋め尽くされ、鳥も飛び、しかし現実と違うとすれば四つ足の生物がそこにいる事。
服こそ狩人の装束──しかも勝負服仕様──のままではあるが、馴染みのある物なので寧ろ好都合だと言える。
結果として、貴方は狩りの時とは違う気分の昂りを隠せないでいた。
さて、このような物はメニュー画面かステータス画面のどちらかに移行するのが定石ではあるが。
ゲームに入った貴方はひとまずそう考え、貴方は頭で念じてステータスを見ようとしてみたが、当の開いた画面は酷いエラーとノイズで埋め尽くされ、全く何も見えていない。
貴方はふむと適当に拾った石ころを広い、ゲーム内インベントリにしまおうとしたのだがどうやら不可能らしく、未だ掌には石ころの転がったまま。
この様子を見るに、どうやら貴方はファンタジーに満ちた世界で、ただ一人ファンタジーもへったくれも無い状態でいる事を強いられてしまったらしい。
……まあ、当の本人たる貴方は現在進行形で狩人であり、物品を血の遺志にしまったり、半ばスキル紛いの能力──即ち秘儀の事を指す──を使えたりなどの行動が全く出来ない訳でも無いので、大した問題でも無いのだが。
貴方が確認に血の遺志から出した〘爆発金槌〙を持っている時点で、とどのつまりはそういう事である。
……どことなくその行動自体が、というよりも上位者である貴方の存在そのものがこのゲームをバグらせていそうなのを察したように思えるが、そこは無視する事にしたらしい。
まあ、貴方にしては優良な選択を選んでいる。そこまで考えていたら、貴方は〘生まれるべきでは無かった〙存在なのだと考えてしまう。ただでさえゴミのように低い自己肯定感が更に低くなるのは勘弁だ。
まあ、良い。とりあえず狩り武器と銃器を持ち込めるのなら万々歳だ。後はさて、どうしようか。
そう考え思考を巡らせる貴方の脳。もう暫くはこの状態のままだろう。
数分後。
未だ考え込んでいた貴方の目の前に敵の群れが現れる。数にして九と、決して少なくない。
それらは貴方を見かけた瞬間に下衆な笑みを浮かべ、ある一人が「私がやる」とでも言うように前へ出る。
哀れな彼はどうやら新人らしく、新品の鉄剣で腕試しをしたいと見える。
鉄製の剣は頭部目掛けて振り下ろされ──
刹那、彼は剣を持っていた腕に鋭い痛みを感じ、同時に地面へと膝を付く。
一体、何が?
そう考えさせる間も無く、腹の内から激痛が走る。
そのまま彼は投げ飛ばされ、最後に彼は貴方の右手にある物を見、それが何かかわかる前に気を手放した。
さてと。
下衆な笑いの声で無理やり現実に引き戻された貴方は不機嫌な様子で早速敵一人を狩り、先程まで彼のあった場所、そこから視線を移動させ、貴方は冷徹な目をして集団へと言葉を吐く。
貴公らよ。仮にも人である存在が思案をしていたと言うのに、何も言わず攻撃を仕掛けようとはあまりに野蛮だと思わぬのかね?
貴方は冷たい笑顔をしてそれらに対応する。
「そ、それが何だ! 我らは全てを無に帰す魔王軍なのだ! 最終的に、勝てば良かろうなのだ!」
ほぉう、そうか。
直後、鼻で笑い。
ならばこちらは上位者さ。
死を予感させる笑顔を貼り付け、走り出した。
〘◇〙
時間にして僅か五分。
たかがそれっぽっちの時間しか経っていなかったが、さりとてフィルターが無かったとしたら、辺り一面は酷くグロテスクで惨憺な光景へと化していた事だろう。
ある者は爆発金槌で上半身から上を消し炭にされ。
またある者は回転ノコギリで全身を散らし。
更にある者は獣肉断ちで左と右を乱暴に断たれ。
そして今、最後の一人であった誰かがまた肉片になろうとしていた。
「ま、待ってくれ、見逃してくれ! 何が欲しい、金か? それとも力か? 自分の持つ幹部としての権力なら、そいつ全部を叶えられる!」
……命乞いのつもりかね。
貴方は酷く嫌悪している顔を浮かべ、それに問う。
その鼻を見れば分かる。豚だろう。
「違う、自分はれっきとした──」
喧しい黙れ。
貴方は豚の発そうとした言葉を一蹴する。貴方にとっての豚は糞の極まった屑畜生、唯一貴方が未来永劫呪う事を決めた生体。
それと似通った存在など、当然慈悲をくれてやる道理も無かった。
なあ貴公よ、貴公を見逃す事に何の価値が、否、そもそも貴公を見逃す事を考える価値すら一体全体どこにあるのかね? 個人的には一切無いと思っているのだが。
さぁて交渉決裂か、宜しいならば死ね、怯えて竦んで自身の何もかもを活かせぬまま惨めに骸を晒して死ね。
早口に全てを言い切った貴方は勢い良く腹に手を突っ込み、臓を掴み投げ飛ばす。
最後まで絶望を浮かべていた顔を全力で踏みつけ、〘貫通銃〙を持ち出し脚の甲諸共弾丸を頭蓋に叩き込み、ついにデータの塊となって消え失せたそれに向け、ぽつり呟く。
ああ、こんな奴に使う時間も、輸血液すらも勿体無かった。
そう言って大腿に輸血液を刺し、貫通の痕を回復していた所、ふと後ろ側から声を掛けられる。
「なあそこのアンタ! さっきの戦い、すんげぇ圧倒してたなぁ!」
白髪の彼女はどうやら貴方の呟きが聞こえていなかったらしく──その方が好都合ではある──、いたって普通の様子で話掛けている。
「あっと忘れてた、アタシはゴールドシップっつーんだ。よろしくな!」
そうか。よろしく頼む。……で、そのゴールドシップとやらが、このに一体何用かね?
「あのよアンタ、アタシと一緒にウマ王軍を立ち上げねぇか!?」
……ほう。
貴方はその魅力的に聞こえるその提案に関心を抱く。
「ってのも、今いる魔王軍ってのはどうもつまんなそうでなぁ。そろそろエルコンとグラスの二人が来そうなんだが、だからいっその事アタシがトップに立ってやろうって魂胆よ! だからよアンタ、そのとんでもねぇ戦闘力がありゃあ、そうするのだって夢じゃあ無い!」
ああ、成程。
……だとするなら、面白い事になりそうだ。
宜しい。
その提案、乗った。
貴方は先程とは違う、愉悦に満ちた笑顔で頷いた。
純ウマ娘の戦闘経験皆無VS上位者ガンギマリの実力エベレスト狩人、これで勝てるのだろうか。
うん、どう考えても無理。なので原作ブラボキャラを助っ人に入れます。
〘リア10爆発46〙さん、誤字報告ありがとうございます。
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