狩人少女はターフを走る 作:しがないヤーナム人
そして後半部分で何も思いつかないのを盾にして更新を遅らせたのはこのバ狩人です。申し訳ございません。
後今回はダンテス君の人の心が一層無いのとまあまあ雑いです。
悪魔との契約を交わし、貴方を配下としたゴールドシップは正しく破竹の勢いで侵攻を進めて行き──仮に現状の貴方を負かせられるのがいたのなら、そいつは最低でも上位者狩人並の実力がある事になる。そんな敵を一般人がどう勝てと? ──、その果てにとうとう魔王を打ち倒した。
魔術師ゴールドシップ改めウマ王となった彼女の隣、煌びやかに黄金装飾の施された椅子に対し、側近の座る物と言うには酷く貧相な木製の椅子に座る貴方。手元には彼女から賜わった宝刀、〘蛍雪〙──全体を白と金に塗られた、鞘付きの太刀──が握られている。
しかしそうしている貴方の表情には愉快では無く、退屈が現れていた。
というのも、魔王城で無双をしてから以降、彼女から大人しく待っているようにと言われ、そこから既に数十分は経過していたからだ。
何度も語られた事ではあるが、貴方は退屈を本当に厭う。その度数も重度レベルであり、太陽の登っている時は勿論の事、沈んでからも学園内での亡霊狩り、放浪、聖杯ダンジョンでの血晶石厳選など、行う事は多岐に渡る。
そんな貴方が待てと言われて素直に待ち、暇を持て余す事を良しとするだろうか。
否、当然の事だがする訳が無い。
今までに持ち掛けた提案──例えば城を古城カインハーストか時計塔の形に改装したり、罠の種類としてギロチンや火矢を追加したりなどだ──を全却下されていたのもあってか、溜まっていたストレスは相当な物であった。
貴方は滲み出ている不機嫌を隠せずに、彼女に向けて喋りかける。
……はぁ。生憎だがねゴールドシップ、この狩人はただ椅子に座して待つのを期待したが故に貴公に付いたのでは無く、面白くなりそうだから選んだのだよ。こうやって退屈に待っているのは嫌いなのだがね?
「まあ少し待ってろって。エルコンとグラスの二人もちゃんとレベリングしてたからさ……まあ、アイツらがいた所に幹部を襲撃させたけど。それに、アタシにもこの城に仕込みを入れたりだとか、決戦の場を整えたりとかでやる事はたんまりとあるんだからよ」
貴方の問いかけにゴールドシップはコンソールから目を反らす事無く答える。
貴方はそれにカチンと来る物があったのか、怒りを押し出すように言葉を紡ぐ。
ほぉう? それでそのいずれはいつ来るのかね? 十分後? 三十分後か? それともなんだ、一時間後か二時間に来るとでも? その間ただただ座って待てとでも言うのかね?
それはそれは、全く巫山戯ている話ではないか。
生憎、こういう退屈なのは好みで無い。これくらいでそろそろ離れさせて貰おうか。まあ精々どこかで会おう──。
同時に彼女へと着いていく事も見限り、一人でその二人を狩る事を選んだらしい。貴方は席を立とうとし。
「おっと、そうはさせねぇぜ!」
彼女が手を突き出すと、生成された八方の魔法陣から青い透明の鎖が貴方の四肢を縛る。
……一体、何のつもりかね。
「アンタはあの時にアタシの配下になるって誓ったんだ! そこから降りるのは許さねぇ! 自由なんて、渡す訳ねぇだろ!」
フハハハハ! と、彼女は大胆不敵そうに笑う。
……俯く貴方の表情は伺えない。
ただ、少なくとも。
…………そうかい。
自由など無い、ね。
……宜しい。ならば……切り飛ばしてでも奪い取る。
そう呟いていた貴方の内心は、欠片も穏やかで無かったのは確かであった。
貴公。
貴方の発する不気味な様子を察したのか、彼女は笑いを止め静まり返る。
なあ、貴公よ。
契約のカレル文字の一つも結びやしていないと言うのにこの獣女を操れるとは、何と凄い能力をお持ちのようではないか。
それに、どうやら自身の腕にも余程の自信があると見える。
褒めているようにも思える言葉に反し、その発する声からは、ああ、余りにも色濃い憎しみが溢れ出ている。
発する感情に押されて後退りする彼女を気にする事無く、貴方は続きを述べる。
ただね、貴公。
どちらの方がここの占拠に精力的だったのかね?
道中の屑を引き潰し、反抗する獣共を処分し、ふんぞり返っていた大物を狩り……どれもこれも、こちらが悉くを担っていたではないか。
攻城戦でもう少し目に見える働きを見せてから自由を云々と言って貰いたい物だがね。
それに、貴公。メンシス学派にも医療教会上層部に属してすらもいないような、挙句二十年程度すらも生きていないような無知蒙昧の人間風情でしかないじゃあないか。
それ程度の、所詮一生命体に過ぎない存在がだぞ?
上位者を、支配する?
神に等しい存在を、人間風情の配下にする?
人間風情の、仮想でしかない一立場に縛り付ける?
クハッ、クハハッ、クハハハハッ……!
クハハハハハハハッ!
ああ、なんとも酷く笑えた話じゃあないか! なんとなんとも可笑しい話だ!
「アンタ、一体全体何を言っ──」
刹那。
刃の風切り音が鳴った。
そこにあるのは、右手に持たれた〘シモンの弓剣〙と笑顔の失せた貴方、引き千切られた魔法の鎖、後は──
──体力の消し飛んだゴールドシップ。
騙すような形になって悪いが、貴公は今この瞬間排除するべき敵となった。
大丈夫だ、一応は仲間だったよしみ。そう甚振って引き潰しはしない。
まあ、とどのつまりはだな。
大人しく死ね。
貴方は直前とは違う、冷めた瞳で彼女を睨みつける。
「巫山戯た事、抜かしてんじゃねぇ……そう簡単に降伏してたまるかよ……! 根、じょおぉぉぉっ!」
……ふうん、そうか。立ち上がるか。
さっさと楽になれば良かったと思うが。
貴方はそう思いながら弓剣を持ち替え逆手持ちにし、背を向けて逃げ出すゴールドシップ目掛け、腕をしならせ勢い良く投擲する。
投げナイフや毒メスにも精通している貴方が当然外す訳も無く。
「ぎゃあっ!?」
頭部から弓剣の刃を生やして倒れ込み、断末魔を残し霞となって消えていった。
完全な一発勝負ではあったが、成功したようで何より。
……クハハッ、こうとなったのは貴公の言動が悪いのだよ。
貴方は地面に刺さった聖剣を引き抜いて遺志の中へとしまい、ゆったりと玉座の前まで歩いた後に〘教会の石鎚〙を取り出し変形させ、かつての王権を模していた黄金の椅子、辺りに散乱する食料を全て叩き潰し残った木の椅子へと座り込む。
さあて、今からここの主はこちら側になった訳だ。
なればこちらのやりたい様に、好きな様にやらせてもらおうじゃあないか。
そう独り言を言い、貴方はゴールドシップから奪い取ったゲームの操作実権を用いて設定画面を開く。
エラー─―削除。
許可無くの退出──オフ。
痛覚表現──オン、百パーセント。
人体欠損──オン。
流血表現──。
貴方はそれをオンにしようとした所で、指を滑らせるのを止める。
今選択した物は一つ目と四つ目を除き、全体に効かせる訳で無く全て貴方へと限定して向けた物。極限までリアリティを求めるが故の行為である。
とはいえ、ゴールドシップに連なる三人は仮にも一般人。幾ら覚悟して来ているだろうとはいえ、素人に血はキツいだろうと考えたらしい。
……あの畜生寄りな性根だった貴方がとうとう人の事を考えて行動するとは、冥利に尽きる。
まあ、とはいえだ。これは少しばかり無理が過ぎるだろう。
レベリングをしていたとはいえ戦いは素人なのが三人と、数の利も文字通り叩き潰してきた上位者狩人一人。
何をしたって後者が勝つに決まっている。
故にこそ、バランス調整を入れなければならない。
ただ強いだけでは長期戦でやり口を見定められ、ただ負ける時間が長引くだけ。なればこそ強く、かつ技術も優れ、そして貴方──ダンテスファルサの弱点を突く者。
ならばそれは、あの狩人しかいないだろう。
老ゲールマンの弟子であり、落葉を持ち獣を狩った、加速使いの古狩人。
──即ち、〘時計塔のマリア〙。
ただ彼女一人を指している。
さて、視聴者諸君。唐突な配信で申し訳無い。ただ、ある用があってね……所謂急募という物さ。
諸君。聞かせてもらおう。
どのような奴でも良い。狂った性格をした敵を教えて頂きたい。
例えばそう……戦争か、もしくは殺し合いに悦びを見出すような、性根の狂った役回りのね。
見返りには、そうだな。
この後に繰り広げられるであろう、戦いの様子を見せよう。
彼らの生き様を模して戦い、最後には狂人の悪役らしく散る訳さ。
確実に面白くなる事、大請け合いだろう?
クハハハハッ!
〘◆〙
これから一体どうしたモンか。
アタシ──ゴールドシップは過去に魔法で設定しておいたリスポーン地点でリスポーンし、これから先を思い悩む。
というのも、アタシの城──厳密には元魔王城だったのを勝手に乗っ取った物だけど──を横からアタシの配下であるダンテスファルサ──攻城中に名前を聞いた──がどうこうと言って強奪したからだ。
まあ、彼女の言っていた事にも一理はある。
確かにアタシは少し下がり気味だった──これから戦いに来るエルグラ戦を向かえるので温存する為──し、攻城の殆どをファルサがやってたっていうのは認める。
でも、アタシが進める前にもう倒してるのがやばいというかなんというか。例え相当レベルを上げてたとしても魔王城であんな蹂躙劇は普通起こらないし……こう、相手の動きが全部見えているかのように最小限の動きで回避する上に持ってる銃で体勢を崩してくる。
謀反を起こされた時もやたら拘束を解き慣れてるみたいに直ぐに動いて、しかも丁寧に首の部分を狙っていた。
さながら、いつもやり慣れてるみたく。
多分あの時、触れちゃいけない琴線に触れたんだろうが……それは後で謝るとして。
まずは、どうやって攻略すれば良い?
アイツのお陰でログアウトも出来ない、そうされた以上は挑んで勝たなければいけないんだろうけど……正直勝てるビジョンが見えない。
覚えている限りで、剣と刀、爆発するハンマー、ピザカッターっぽい電ノコ、ウォーピック、車輪──最後のは武器かも怪しいが、まあ置いといて。
とにかく武器はやったらあるからそれ一つごとに対応しなきゃあいけないし、しかもアイツ自身も相当強いし……。
そうやって考えていた時、ふとインベントリの中に変な鐘と紙があるのに気付く。
取り出してみれば、それは古いハンドベル。紙は酷く茶色に変色していて、かなり年代が経っている──とはいってもゲーム換算だが──というのがわかる。
ファンタジックな世界観とは違い、不気味なくらいリアリティのあるそれには、
『助けが必要であれば、この〘古狩人呼びの鐘〙を鳴らしたまえ』
と書かれていた。
つまる所、救援アイテムのような物という事だろうか?
…………ま、こんな所で考えていても仕方ないっか。
どうにかなーれと、アタシは鐘を鳴らす。
カランカラァ──ン
カランカラァ──ン
そんな、不気味だけども綺麗な音色が鳴り響く。
それが鳴り止み、少しした後。
オオオォォォ──
地の底から何かが這い寄るような、背筋を凍らせるような音が聞こえ、それは現れた。
目に付いたのは、その身長。
170cmあるアタシよりも更に大きく、頭一つ分──つまりは25cm──くらいは優にある。
ファルサの服のような、しかしそれ以上に優美な格好をしていたその女性はこちらに向けて。
「こんにちは、君」
そう、頭を下げて挨拶をした。
あ、お……おう。アンタ、なんて言うんだよ。
「私はマリアと言う。まあ、所謂NPC……で、合ってるかな。そういう物で認識すると良い」
ふぅん……まあ良いか、それじゃあよろしくな、と私は言う。
まあ、兎にも角にもさっさと取り返さないとだ。NPCならある程度は着いていくのに頑張ってくれるだろうし。なんか世界観とは掛け離れているような気もするが、まあこのゲームのNPCである以上はどこかでテレポートとかを使うはず。
そう考え、アタシは元ウマ王城、元々魔王城目掛け走る体勢を取る。
「……所で、君。彼女ら二人とは合流しなくても良いのかな?」
ん、あー……ま、アイツらなら大丈夫だろ! どうにかなる!
質問してきた彼女に適当な言葉を返し、城をいち早く取り返す為にアタシは走り出した。
マリア様って、何だ……? 私は雰囲気でマリア様を書いている……。