あら、もしかして私をお捜しで?
はい、はじめまして。その通りですわ。
よくこの場所がおわかりになりましたわね。
ああ、確かに。
今の幻想郷でどこにも属していない墓地と言えば、この辺りにしかありませんわね。ええ、ええ、ですから私もよく顔を出すのです。なるほど、それを見越したと。
貴方様は……ああ、お噂はかねがね。
うふふ、何を驚いていらっしゃるのですか。貴方様が私について調べるように、私にも里の奇人を調べることができるのです。失礼、奇人は言い過ぎでしたか。
ですが、変わり者であるとは言われておりますわね。あら、素直にお認めになられる。 ええ、ええ。知っておりますとも。
里一番の才人であると、上白沢さまの寺子屋では「出藍の誉れ」とまで言われていたと。 まあ、そのようなご謙遜を……
はぁ、そうですわね。確かに貴方様の才は人の才。霧雨のご息女や御阿礼の子、貸し本屋の小娘、そして巫女たちとはまた違う才。
それは〝程度の能力〟と呼ばれることもなく、純然たる人間の能力としての才。
ですが、決して捨て鉢になるようなものではありませんわ。才とは純然故、才と呼ばれるのですから。貴方様の才には霧雨も御阿礼も小娘も、博麗も守矢も及ばないでしょう。
はい。はい、それはもう。
わかっております。その優れた才は幻想郷の人里では使えぬ才だと。いえ、使えぬのではなく、早すぎる才と言うべきでしょうか。
その才を認められる者も、有効に扱える者も、里のために働かせることができる者もおりませぬ、この幻想郷には。
才だけでは口に糊することすら難しい。それが幻想郷というもの。
それでも貴方様は自らの才を信じて、才を磨き伸ばし続けることを自らに課した。
お母様も貴方様の才を信じて、お父様亡き後も支え続けた。麗しき家族愛だと思いますわ。
そのお母様が亡くなったのですね。貴方様の背負う桶の中から、気配を感じます。
ああ、わかります。だからこそ私を探したのだと。
お母様の死を認めたくない、いえ、覆したい。それが貴方様の想い、いえ、お母様への愛。
はい。誤魔化すことなく言いましょう。
可能ですわ。
お母様を蘇らせること。
本当によろしいのですか?
念のためにうかがいたいのですが、お母様をお母様として蘇らせたいのですよね。
どうされました? 今、何かを言い淀みに……
まさかお母様を一人働かせ、自分は才を磨くと称して閉じこもっていたいと。
あら、どうされました? 今までそのようにして過ごされてきたのでは?
うふふ、先ほども申しましたが、私も里を調べることくらいできますわ。
ああ、勘違いなさらぬように。
別にそれは良いのです。貴方様とお母様の関係に口を出す気など毛頭ありませんわ。
ですが、ただ……
いえ、これは私の想像なのですが。
お母様の死後の安寧を捨ててまで貴方様の面倒を見させると。有り体に言えば、死んだ後までこき使うと。
いえいえ、良いのです。そうだと仰るのならそれはそれで別に良いのです。
ただ……蘇ったお母様が何と仰るか、そこまでは私にはわかりかねます。
これまで通り貴方様の面倒をみるのか、あるいは、永劫の労苦を憎み恨むのか。
うふふ、ごめんなさい。
お母様と貴方様の関係を考えれば答は見えてますわね。お母様は死ぬまで貴方様の栄達を信じていたのでしょう。貴方様は才を磨き続けているのでしょう。ならば、答はわかっています。
貴方様は、生前のお母様を裏切ることなどなかったのでしょう?
疲れ切ったお母様に詰られ、カッとなって手を上げたことなど一度もなかったのでしょう? ましてやそれが死因だなんて。
あら、どうしました?
寒いのですか? 顔色もお悪いような。
まあ、そうですか。きちんと弔うと。
はい、ではこの話はなかったことに……、ええ、ええ、聞かなかったことにしておきますわ。
それでは、ごきげんよう。
「うふふ、そんなことはしませんわ。善とやらを騙……いえ、語る方々に目を付けられるのは面倒くさいものですから」