秘密結社のバイトの日常   作:ライ麦小麦

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秘密結社…組織内での活動を外部の人間へ秘匿する会などを指す。


秘匿をするが故に活動内容は周りへ簡単に言えるものではない。
16歳になったばかりの学生である 上山(かみやま) (うみ) はとある事で秘密結社のバイトとして雇われることになった。

その秘密結社の名は " holoX "
宇宙からきた総帥を筆頭に5人から成り立っている組織である。


そんな彼らが掲げる目標は…


"世界征服"であった。




0.
総帥は威厳を取り戻したい


 

机の上で学校から課せられた課題を黙々とやっている僕に対して秘密結社holoxの総帥 "ラプラス・ダークネス" が話しかけてきた。

 

 

「吾輩、威厳を取り戻したい」

 

「…急にどうしたんですか」

 

 

突然の事に戸惑いながらも動かしていた手を止め、僕は言葉を返した。

 

 

「最近の吾輩、皆んなから子供みたいに思われてる気がするんだよね」

 

「気のせいじゃないと思います」

 

「…そこは否定しろよ。敬え吾輩を」

 

「いやだって…」

 

 

否定しろと言われても総帥の容姿は身長が140cm程で頭に角の様な物が生えており、側から見れば子供だと言われてもおかしくない。

 

 

「小さくて何が悪いんだよ!コンパクトで良いだろ!」

 

「いや別に悪くはないですよ。多分子供と思われている要因は見た目だけではないですし」

 

 

キョトンとした総帥が何かに気付いたのか

 

 

「お前今吾輩の事馬鹿にしたよな?中身か?中身の事を言ってるんだよな!吾輩だって立派なレディーだぞ!」

 

 

僕に対し怒りを見せてきた。

 

 

「うわははは!」

 

「笑うところじゃないだろ!!!」

 

 

笑い返しながらそう言いと僕のシャツの襟を掴み、ぐわんぐわんっと揺らしてきた。正直脳が揺れるからやめて欲しい。

 

 

「結局は子供って言われたくないってことですか」

 

 

頭は以前揺らされているが間髪なく聞くと総帥の揺らしていた手が止まる。

 

 

「間接的にはそういうことなのかな?」

 

「相手が思っている印象を変えるなんてそんな簡単な事じゃないですよ?ほら。ファーストインプレッションが大事ってよく言うじゃないですか」

 

「いったい吾輩のどこが子供っぽいんだ?」

 

「クッキー食べます?」

 

 

「そういえば」っとカバンの中に入れておいた自身のオヤツであるクッキーを取り出す。

 

 

「吾輩が物で釣られると思うなよ」

 

 

クッキーを取ろうとしながら言ってるという言動の矛盾…先程の言葉の信憑性が全くもって感じられない。

 

 

「手は洗ったんですか」

 

「あ、忘れてた。洗ってくる〜」

 

 

っと言いながらトテトテと洗面台の方へ歩いて行った。宛ら子供を彷彿とさせる行動、きっとこういう所なのだろうっと1人で勝手に納得しながら僕は机の上の課題を鞄へしまい、二つのコップに水を入れ総帥が戻ってくるのを待つ事にした。

 

数分後、何やら怪しげな小さな小瓶を持った総帥が姿を現す。

 

 

「おいバイト!面白いものを見つけてきたぞ!」

 

 

元気な声で近づいてくる総帥の手には()()()()姿()()()()()()と書かれた瓶。 なんて都合の良い薬だ。

 

 

「いったい何処で見つけてきたんですか?」

 

「博士の部屋」

 

「早急に元の場所へ戻してください」

 

 

あの人(博士)の薬なんて嫌な思い出しかない。

以前良かれと博士特製の薬を飲んだ日には体が虫の姿になったり、発光したりと摩訶不思議な体験はしたものの良いイメージが微塵もない。加え、虫の姿になった時、総帥に潰されそうになり軽くトラウマを植え付けられている。

 

 

「おかしいと思いません?あの博士がこんな都合の良い薬を置いとくと思います?」

 

「そうか?」

 

「思い出してくださいよ。博士の薬は毎度何かしら起こしてるじゃないですか」

 

「…確かに…そう言われてみれば…この薬怪しくなってきた…」

 

 

薬の色は透明で一見無害そうではあるが見た目で騙されてはいけない。僕の助言に納得したからか総帥は持っていた小瓶を机の上へ置き、クッキーを食べ始めた。

 

 

「そんで、バイトは吾輩の事どう思ってるんだ?」

 

「…別に子供だとは思ってないですよ」

 

「やっぱりそうだよな!!あいつらが勝手に思ってるだけだよな!」

 

「周りのメンバー全員が子供だと思ってるかは知りませんけど、少なくとも1、2人ぐらいは思ってますよ」

 

「吾輩、そんなに貫禄がないか?」

 

 

しょんぼりとする総帥へ僕からのアドバイスを与えた。

 

 

「口調を大人っぽくしてみるのはどうですか?」

 

「私はラプラス・ダークネスでございます」

 

「今10歳ぐらい上がりましたよ!」

 

「さっきの吾輩何歳ぐらいだった?」

 

「16歳ぐらい?」

 

「やっぱり子供だと思ってるんじゃねぇーか!てかさっきの一人お前のことかよ!」

 

 

再度、襟を掴まれ揺らされる。

 

 

「じゃあ、"おっ!こいつ大人の魅力あるな!"みたいなカッコいい喋り方とかないんですか?」

 

「喋り方じゃないが掛け声的なのはあるぞ」

 

「掛け声?どんなのですか?」

 

 

一拍置いてキメ顔をしながら総帥はこう言う。

 

 

 

 

 

 

 

()()()()

 

 

 

 

 

言ってやったぞ言わんばかりにドヤ顔を見せる総帥。

 

 

「人生の中で初めて総帥を感じられました」

 

「お前なんかキモいぞ?」

 

「キモいとは心外な!でも的は当たってるんじゃないですか?」

 

 

それと同時に疑問に思ったことを口にだす。

 

 

「そういえばここにあった小さい冷蔵庫知りません?前にアイス入れてたんで食べたいんですけど…」

 

「あー、あの冷蔵庫ならもう売っちゃったぞ?」

 

 

何故にと疑問を持ったがすぐさま回答が返ってきた。

 

 

「実は…深刻な話なんだけど、今日holoxは財政難に陥っているんだよ」

 

「多分前からですね」

 

 

僕もクッキーを齧りながら反応する。

おぉ流石は自分で選んだクッキー。程よい甘味とこのサクサク感、オヤツとしては完璧に近いと自画自賛をしつつも総帥の言葉に耳を傾けた。

 

 

「いや今ほんとにやばいんだよ。吾輩たち今の食事はもやし炒めとかだぞ?」

 

「あれ?前は普通にお肉とか食べてたじゃないですか」

 

「いやね?この前の "餃子を生物にしたら強いんじゃね?" っていう会議開いただろ?」

 

「なんすかそのふざけた会議」

 

 

総帥の話を聞いたがそんな会議、僕の記憶に無い。そもそも有ってほしくない。

 

 

「あ〜そういえばバイトは不在だったな、家の用事がなんかで」

 

 

明らかに時間の無駄と分かる会議に参加しなくて良かったと心の底から思った。

 

 

「そんでさ博士に頼んで食べ物を生物に変える薬を作ってもらったんだよ」

 

「えっ?そんなの作れるの?」

 

「吾輩たちは2個の餃子にその薬を投薬し、自由奔放な餃子の完成ってわけだ」

 

 

自由奔放な餃子という意味の分からないワードの完成した瞬間だった。

 

 

「問題はここからだった」

 

「いや今の時点で十分問題ですよ?」

 

「餃子たちは反抗期を迎えてしまったのか家を飛び出してしまったんだ」

 

「餃子の反抗期?」

 

 

段々とワードが混沌としてきてもう意味が分からない。

 

 

「その後、餃子たちは町中の窓ガラスを壊してまわったんだ」

 

「へぇ窓ガラスをって…いや何してんの⁉︎

 

「そんで吾輩たちはなんとか餃子たちを捕まえる事が出来たんだが…後から来た窓ガラスの請求が…」

 

「…話の最初から最後までさっぱり分からなかったです」

 

「因みに捕まえた餃子はあそこにいるぞ」

 

 

と総帥が指差した方向に小さな檻に閉じ込められた2個の餃子の姿があった。見た目は至ってシンプルでついつい手が出てしまいそうな程の餃子のビジュアル。自由奔放っというオマケが無ければ100点満点だろう。

 

 

「因みに名前は右がハネツキで左がスイギョウザだ」

 

 

僕はあえて何も言わなかった。

というか空いた口が閉じず何も言えなかった。

 

 

「…餃子の暴走で財政難って…これからどうするんですか?ぶっちゃけ威厳取り戻すとか言ってる場合じゃないですよ」

 

「一応メンバーにいろいろと稼ぎ口を見つけてもらってるからある程度したら軌道は戻ると思うけどな」

 

「早く戻してもらわないと困るんですよ。僕の給料いつになったら払ってくれるんですか」

 

「ほんとすんません…。もうちょっと待ってくれませんか?」

 

 

2ヶ月ほどの給料がまだ支給されていない現状への謝罪を僕は受け取ることにした。

 

 

「今の状況から金を取ろうなんて事はしないですよ。それより僕のアイスはいずこへ?」

 

「…」

 

「あれ手に入れるの大変だったんですよ。食欲を原動力に朝から並んで買ったやつなんで」

 

 

限定販売されていた絶品で噂の商品。

苦労したという話はまた語るとして僕は目を逸らしながらポリッとクッキーを齧る総帥へ目線を向ける。

 

 

「…まさか食べました?」

 

「っ!!」

 

 

総帥は食べていた物が喉に詰まったのかゴホゴホと咳をした。

 

 

「ゴホッ!…ちょっ!み、みず!水!」

 

 

喉に詰まったものを流し込むために水を取ろうと、あたふたと総帥は机の上に置いてあった物を手に取る。

 

 

「あっ総帥!それ水じゃ…」

 

 

総帥が手にしていたのは水の入ったカップではなく、先程の怪しげな薬。僕が言った時には既に飲み込んでしまっていた。

 

 

「あっやべ」

 

「ちょっと!ぺっ!ぺってしなさい!」

 

「お前は吾輩のおかんか。というかもう飲んじゃったし……」

 

「大丈夫ですか?何か体が虫になったりとか…」

 

「いや別に何ともないが…」

 

瞬間、「うっ…」と唸り声を出しながら総帥は床へ倒れ込んでしまう。異常事態な事は明白であり、素早く駆け寄り「総帥!」と呼びかけながら近づいたがそこには総帥の姿はなく散乱した総帥の服だけが置かれていた。

 

 

「そ、総帥?」

 

 

僕の頭の中は先程の餃子の話で埋まっており、「総帥が消えた」という更なる情報が押し寄せてくる感覚に動揺していた。その時右足からモゾモゾと違和感を感じた僕は右下の方へ目線が行く。

 

 

「わがはい!らぷらすだーくねすだ!」

 

総帥⁉︎

 

 

そこには服の中から顔を出し、小さくなった姿の総帥。今、情報過多により頭がポップコーンの様にボーンっと爆発した。

 

 

「わがはい、おなかしゅいた」

 

「幼くなっちゃってる!」

 

 

絶対わざと成長する薬とか書いて置いといただろあの研究者。今の体では大きすぎる服を引きずりながら総帥はある場所へと歩き出した。目線の先にあったのは囚われの餃子。瞬間、総帥のハイハイのスピードが上がる。

 

 

「ちょっと!待ってください!」

 

 

なんやねんあの速さ。なんでハイハイであんなスピードを出せるんだよ。気づいた時には総帥は既に檻から餃子を取り出し手に持っていた。『キィーーー』と餃子の鳴き声が聞こえる。その鳴き声やめてくれ。

 

 

「いただきましゅ」

 

 

食材に感謝を込めそれを口の中へ運んだ。

 

 

『キィイーーッ』   

 

 

奇声と共に餃子が食べられる音が部屋に響く。

 

 

「ハネツキ!夢に出るってこんなの!」

 

 

目の前で友人が食われてるみたいな臨場感。多分これ数日間は夢に出る。しかし総帥の暴走はそれで終わりではない。別の部屋へ移動した総帥はクローゼットから身の丈に合わない服を周りへ撒き散らした。

 

「あ!ダメです服を散らかしちゃ!」

 

「わがはい、オシャレになりたい!」

 


 

「ちょっと!博士の部屋で暴れないでください!危ないですから!」

 

「うおお!わくわくしゅるよなバイト!」

 


 

「かたなだぁ」

 

「なんで持ち上げれるんですか?重さとか約1kgですよ?」

 


 

「なんだ?えほん?このひとたちはだかだぞ?」

 

「それは総帥には早すぎます!」

 

「これなんてよむんだ?」

 

「ちょっと!広げないで!」

 


 

 

 

数時間後、暴れ疲れたのか総帥は僕の腕の中で眠りについていた。時計を見れば針は7時を指しており、気づけば外は暗くなっている。

 

 

「わがはいわ…そうすいだぁ…」

 

 

寝言を言いながら気持ちよさそうに寝てる総帥を見ながら、ようやく休めると思うと急な倦怠感が押し寄せてきた。「…疲れたぁ」と勝手に口が動く。総帥を片手で抱き抱えながら、ぐちゃぐちゃになった服などを直していた。

 

今はこんな姿ではあるがこんな僕を雇ってくれた恩はある。

それに他のメンバーからの信頼は厚く、何気に頼りになることも多い。僕自身、総帥の事は尊敬してるし力になりたいとは思っているが…こんなおもりをしている姿を他のメンバーには見せたくないと切実に思う。

 

しかしそんな願いも叶わず

 

 

「…海くん…何、してるの?」

 

 

背後から聞こえた声と共に僕の鼓動が上がるのが分かった。

ギコギコとなりそうなほどぎこちなく首を後ろへ向ける。

 

 

「は、博士…」

 

 

総帥をこの姿へ変えた原因である博士がドアの前に立っていた。

 

 

「ねぇ海くん…その子供…」

 

 

ぷるぷると震える指で総帥を指差す。

 

 

「いったい誰との子なの⁉︎」

 

「いやこれは違くて!」

 

 

焦りからきたのか声が勝手に出た。

 

 

 

 

 

「 は、博士の子供です!!

 

 

 

「ふぇっ⁉︎」

 

 

博士は持っていた荷物を地面に落とした。

瞬間、腕から先程とは違う重さを感じる。

 

 

「…お前なんで吾輩を抱き抱えているんだ?」

 

 

自分の腕へ目線をやると元の姿になった総帥の姿があった。

 

 

「総帥⁉︎もうこれどういう原理なの⁉︎」

 

「え⁉︎ラプちゃん?ラプちゃんが僕の子供⁉︎」

 

「違う!さっきのは言葉の綾で!」

 

「誰が子供だ!」

 

「総帥は話がややこしくなるからもう喋らないで!」

 

「じゃあ海君がパパ⁉︎」

 

 

よく分からない考察を言い出す博士。

 

 

「薬でああなったんだからパパもママもあんただろ!」

 

「おい!博士!吾輩のドコが子供なんだよ!」

 

「こら!ママに向かってそんな言葉遣い駄目でしょ!こよのことは"こよりママ"とお呼び!」

 

「博士たち話が噛み合ってないんだよ!」

 

 

 

「「パパは黙ってて!!」」

 

 

 

息ぴったりに噛み合う2人の言葉。

 

 

「なんでそこだけ噛み合うの⁉︎」

 

 

狼狽えながらも何度思ったか覚えていない言葉が僕の口から出てくる。

 

 

 

もうやだ!ここのバイト!

 

 




こんな感じの小説を書いていこうと思います。
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