秘密結社のバイトの日常   作:ライ麦小麦

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台本形式のタグを付けていませんでした。
申し訳ないです。

(追記・本作は台本形式なしに変更しました)

あっ今回、じゃっかん沙花叉さんの圧があります。


こよとクロ

 

 

「だからなんで協力しないんだよ!」

 

「ぽえぽえ〜?」

 

「…二人ともゲームぐらい仲良くやったらどうですか?」

 

 

放課後、アジトに居るのは僕と博士、沙花叉さんの3人だけ。他のholoxのメンバーはそれぞれ用事があると出かけてしまっている。

 

何もしないのは暇という事でゲーム同好会の部室から借りてきたとある協力ゲームをやっているのであるが…何故かこの2人、うまく噛み合っていないように見受けられる。

 

 

「コンビネーションが悪いんですかね?」

 

「これ完全に狙ってやってるだろ!」

 

 

博士はそう言いながら画面に表示されている沙花叉さんのゲームの中での裏切り行為を指差す。

 

 

「ぽえ〜〜?」

 

「くぉあ"あ"!そのぽえ〜腹立つ!」

 

 

2人とも仲が悪いというわけでもない。

むしろお互い信頼してるからこそこんな言い合いが出来るのだろうかと思うとその関係性が少しだけ羨ましい。

 

 

もうこよクロは" 解散 "だぁああ!!

 

 

たった今、その信頼関係が崩れそうになった。

 

 

「こよちゃん。沙花叉から逃げれると思わない方が良いよ。いつまでも、ず〜〜〜っと一緒だよ?」

 

「怖いわ!」

 

「シャチジョークですか?」

 

「シャチジョーク!」

 

 

沙花叉さんが満面の笑みでピースをしながらそう言う。

 

 

「なんというか会話をしようとすると、お互い" どうもこんにちは、さぁ思う存分殴り合おうぞ! "みたいな感じになりますよね」

 

「何その物騒な例え方」

 

「出合い頭、右ストレートです」

 

「沙花叉はコークスクリュー・ブロー!」

 

「そういう事じゃないんですよ」

 

 

睨み合う2人を横目に僕はバックからホッチキスで止めてある紙の束を取り出した。それが気になったのか沙花叉さんが声をかけてくる。

 

 

「海くん、それ何?」

 

「これですか?クラスでやる出し物の台本ですよ」

 

 

とは言ってもどのタイミングで照らすのかが書かれた照明係用の物である。本番に間違わないよう覚えるまで読むつもりだ。

 

 

「そういえば海君は演技が上手じゃないんだっけ」

 

「自分以外の気持ちや考えを体で表現出来ないんですよ。昔から嘘をつくのも下手くそでした」

 

 

博士の質問から思い出す中学生時代、怪我をしてないと嘘をついたら一瞬でバレたのは良い思い出だ。あの保健室の先生は今頃何をしているのだろうか。

 

 

「それに比べて、2人は様々な事を演じる能力が長けてますよね。尊敬してます」

 

「そ、そうかな〜」

 

「うへへへ〜」

 

「どっちの方が上手いんですかね?」

 

 

 

こより!」「沙花叉!

 

 

 

それぞれ自分の名前を叫ぶ。

 

 

「あぁ…」

 

 

今の状況で聞く事ではなかったと反省する。

自分の誤った質問に後悔しているとアジトのドアを誰かが開ける音が聞こえてきた。

 

玄関の方へ視線を向けると手に買い物袋を握った鷹嶺さんの姿があった。

 

 

「ただいまぁ…って、何してるの?」

 

 

ギャーギャーと言い争う2人を見て鷹嶺さんが僕へ質問してきた。

 

 

「あっ。おかえりなさい。実は…」

 

 

重たそうにしていた買い物袋を受け取りながら僕は鷹嶺さんに事の発端を説明した。

 

 


 

 

「なるほどね…」

 

 

現状を理解したのか再度、博士と沙花叉さんの方を見る。

どうやら未だ話は平行線のままのようだった。

 

 

「僕の方が良いもん!」

 

「いいや沙花叉の方だよ!ほら!茶柱だって立ってる!」

 

「沙花叉さん、それは縁起です」

 

「水に溶けたら水酸化物イオンが生じるし!」

 

「博士!それは塩基!」

 

「今日はキノコ料理だよ」

 

「エリンギ!って何言わせてんですか鷹嶺さん⁉︎

 

 

このバイトをやり始めてからツッコミの技術だけが上がっているような気がする。

そう思っていると鷹嶺さんがとある提案を出す。

 

 

「このままじゃ埒が開かないし、どうせなら海君にどちらが上手いか決めて貰えば良いんじゃない?」

 

「ちょっと待ってくださいよ!なんで面倒事を僕に押し付けるんですか⁉︎」

 

「だって火種は海君なんだよね。それになんだか面白そうじゃない?」

 

「いやまぁそうですけど…」

 

「沙花叉は賛成!」

 

「こよも!」

 

 

確かに責任を負うべきなのは僕であるが、果たして無事に終わらせる事が出来るのだろうか。いや、あの人たちのことだ。終わらせられる気がしない。

 

 


 

 

机の上に置かれた2枚の小さなホワイトボード。

どのような方法を用いて決めるか話し合った結果、それぞれの演技の上手さを数値化し、書かれた点数が高い方が勝利といった単純なルールが採用された。

 

採点者は僕、鷹嶺さんは審判をやるらしい。

 

 

「やるからにはしっかり採点します。最初はどちらからですか?」

 

 

僕がそう聞くと自信があるからか、元気よく沙花叉さんが手をあげる。

 

 

「沙花叉から!」

 

 

博士もそれを了承しているようだった。 

 

 

「じゃあ沙花叉さんからでお願いします」

 

 

僕がそう言うと沙花叉さんが近付いてきた。

 

 

「海くん」

 

「はい、なんですか?」

 

 

一拍おいたのち沙花叉さんが口を開く。

 

 

 

沙花叉が一番だよね?

 

 

 

瞬間、周りの空気が変わったことに僕は気がついた。

背筋がゾッとするような感覚、僕が今まで経験したどの感覚とも一致しない…そんな思いをさせる声色を放つ。

 

 

「さ、沙花叉さん?」

 

「ねぇ」

 

 

気がついた時には沙花叉さんの顔が僕の目の前に来ていた。恥ずかしさからきたのか僕は自分の顔を沙花叉さんの顔から逸らす。

 

 

「目を逸らさないで」

 

 

しかし、そんな行動も無意味だったようだ。

 

沙花叉さんは僕の顔を両手で掴み、無理矢理自分の顔を見せるように動かしてきた。僕の目と沙花叉さんの目が見つめ合う。よく見ると沙花叉さんの目からハイライトがoffになっている。

 

ただ今感じるのは沙花叉さんから放たれる圧力と顔を掴んでいる手の暖かさだけであった。 

 

 

「海くんは沙花叉のこと好き?」

 

「えっ?好き?す、好き⁉︎

 

 

思いもしなかった唐突な質問から僕は動揺を見せる。

 

 

「好きっていうか…えっ?びょ、平等な審査を…」

 

「海くんは沙花叉以外の女の子をとるの?」

 

 

顔を逸らそうにも動かせないもどかしさが僕を襲う。

 

 

「は、博士のものを見て決めないと…」

 

「ねぇ。なんで別の女の子の話が出てくるの?今話してるのは沙花叉だよね?関係ないよね?ねぇ……なんで?

 

レ、レフリー!レフリー!!

 

 

鷹嶺さんへ助け舟を求めたが両手を広げセーフのポーズをしていた。

 

 

「セーーフ!」

 

「こんなのありですか⁉︎」

 

「ほら早く沙花叉が一番だって証明してよ。ここにあるホワイトボードで」

 

 

すると沙花叉さんは僕へ油性ペンを握らせてきた。

 

 

「満点だよね?」

 

「い、いやちょっと…」

 

「返事は" ぽえー "だけだよ?」

 

「ぽ、ぽえ〜…」

 

 

僕は気がついた時にはホワイトボードに100という数字を書いていた。

 

 

「やっったぁ〜!こよちゃん見て!見て!沙花叉100点取ったよ!」

 

「ぐぬぬぬぬ!!」

 

 

博士が悔しがる一方、僕は膝から崩れ落ちていた。

なんかよく分からないけどこう胸がギュッとなる感じで苦しいんだよ。

 

 

「た、鷹嶺さん…ぼ、僕は、これで良かったんですか?」

 

「よく頑張ったよ海君」

 

 

慰められる僕の目から涙が溢れそうになる。

 

 

「だけどまだ1人残ってる」

 

「僕の精神がどうにかなります」

 

 

僕があの発言を再度後悔する時間を博士は遮ってきた。

 

 

「次はこよの番だね!」

 

「心の準備をする為にコンセプトを教えてもらっていいですか?」

 

「あっ!海君!その前にこの薬飲んでくれない?」

 

 

そう言うと博士は緑色の液体が入った試験管を僕へ渡してきた。

 

 

「…何ですかこれ?」

 

「こよが言ったこと何でも聞く薬!」

 

「おい!おい!薬とか卑怯だろ!審判!」

 

 

この博士、勝負は建前で僕を実験台にしようとしていたな。

そして沙花叉さんの訴えにレフリーは答える。

 

 

「まぁ使っちゃダメっていうルールは無いからね…」

 

「この審判だいぶ適当だぞ!可哀想だろ沙花叉が!」

 

 

それは納得できる。

 

 

「実は親友が最後に残した薬で…海君に飲んでほしいって頼まれてたの…」

 

「重さのジャンルが変わりましたね。嫌ですよ。その薬飲むの」

 

 

僕はバッサリと拒否したがそれがまずかったのだろう。

 

 

こよの薬が飲めないってのか⁉︎

 

 

探究心に火がつき、ヤケになった博士はその試験管を飲ませようと僕へ近付く。

 

 

「審判!これは止めてくださいよ!失格ですよこんなの!」

 

「あっ夜ご飯の準備をしないと」

 

審判⁉︎

 

 

そう言うと鷹嶺さんは台所の方へ行ってしまった。

 

 

「さ、沙花叉もやる事あるんだったぁ」

 

 

身の危険を感じ、どさくさに紛れて逃げようとする沙花叉さんを博士は見逃さなかった。

沙花叉さんの腕を博士はガシッと掴んだ。

 

 

「こ、こよちゃん⁉︎」

 

 

引きずった笑顔で沙花叉さんがそう言う。

 

 

「クロたんにも試したい薬があったんだよ。こよクロでしょ?」

 

「か、解散!」

 

「却下!」

 

なんでだよ!

 

「…沙花叉さん。こうなった博士はもう止められません。ここは笑って薬を受け入れましょう。ワッハッハ!」

 

「お前本当は演技上手だろ!ぽえっ!」

 

 

 

 

「あっ実験が終わった後はこよクロ解散で」

 

 




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