秘密結社のバイトの日常   作:ライ麦小麦

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少し投稿が遅れてしまいました。申し訳ないです。


今回、最後の方に残酷な描写があるので、残酷な描写が苦手な方は「ここを押せば読み飛ばせます」という所を押していただければ読み飛ばせるようにしています。




文化祭と書いて非日常と読む part2

 

 

「「…」」

 

 

現在、僕らは窮地という場面に出くわしていた。

 

発砲音が鳴ったと共に音源から死角となる場所へ隠れた咄嗟の行動で僕らの存在は気付かれていないだろうっと顔だけをそっと出し、レジの方を見る。

 

そこには黒の帽子を深く被り、顔にはサングラス、マスクをつけた"いかにも"と言える強盗犯が銃口を店員に向けていた。確証はないが僕は肩幅から男性だと推測する。

 

 

「…あれってコンビニ強盗ですよね?」

 

「それが妥当だよね」

 

 

規制が厳しい世の中で銃とはまた恐ろしい。

そう思いながら携帯に備わっている緊急SOSの信号を送ったと同時にタイミング良く鷹嶺さんが僕へ質問してきた。

 

 

「警察に連絡はした?」

 

「たった今携帯に備え付けのSOS信号を送った所です」

 

 

質問に答え携帯を握りながら僕の脳裏を一番によぎったのは身の安全などではなく総帥であった。

 

 

「少しだけ後悔しています」

 

「ん?どうして?」

 

「僕が通報した事によって文化祭が中止になるんじゃないかと危惧していまして…」

 

 

この距離感での犯行だ。可能性は0ではない。

 

 

「僕はただ総帥に文化祭を楽しんでほしいだけなので…何というか…」

 

 

僕が言葉を選ぶのに悩んでいると鷹嶺さんに手で口を塞がれてしまった。

 

 

「海君の気持ちは伝わった。警察の事は私に任せて!どうにかして誤魔化してあげるから」

 

「…そんな事出来るんですか?」

 

「むむむ?私を信用してないと?」

 

「い、いや信用はしてますけど」

 

 

頼りになる事は間違いないだろうが自分の我儘で迷惑をかけていると思うと申し訳なさを感じてしまう。

 

 

「まぁ今は文化祭以前にあの店員さんを助けないとね。あと頼もしい応援も呼んどいたから」

 

 

っと言いながら誰かへメッセージを送っている。

誰へ連絡をしたのか疑問に思っている質問が飛んできた。

 

 

「何か作戦とかない?実は手からビームが出るとか」

 

「出来るわけないでしょ!そりゃ小学校の時、授業中に教室へ入ってくる不審者を倒す妄想とかしましたけども!」

 

 

ぼーっとしている時によくやっていたと思い出す。懐かしさを感じていると鷹嶺さんが耳を疑うような事を言い放った。

 

 

「…数発なら避けれるかな?」

 

「今なんて言いました?」

 

 

「数発なら避ける」。そんな現実的ではない言葉が耳へ入ってきた。銃弾の速さは音速を超えるとも言われている。そんな速さを見切るなんて限りなく不可能に近い。

 

そう思っていると鷹嶺さんが秘策を語り始める。

 

 

「私、目が良いからさ。相手の視線とか動きである程度は予測できるんだよね」

 

 

瞬間瞳の色が水色から黄色へと変化し、見てと言わんばかりに鷹嶺さんは自分の目を指差す。そして

 

 

 

 

「この目のことを人呼んで()()()()()!!ドヤァ…」

 

 

 

 

小声で言い終えた顔はやけに満足げだった。

 

 

「途中までかっこよかったんですが最後のドヤァで減点ですね」

 

「辛口審査員め」

 

 

どんな時でもしっかりと審査するのが僕のポリシー。

 

 

「…目を主張したって事は何か作戦があるんですか?」

 

「よくぞ聞いてくれました」

 

 

待ってたと僕が持っていた紙コップを人と見立て説明が始まる。

 

 

「まず初めに、どうにかして店員さんから距離を離さないと。そんなお困りの貴方!」

 

 

───この感じ…あれだ。通販番組のやつだ。

 

 

「今回ご紹介するのはこちら!こより印のこんこよブザー!」

 

「こ、こんこよブザー?」

 

「防犯ブザーのこよりのボイスが収録されているバージョンです」

 

「あの博士何でも作れますね」

 

 

聞くところ巷ではそれなりに人気らしい。

ピンを抜けば物凄い音が鳴る一般的な防犯ブザーと同じ仕組みだ。

 

 

「そして今回使うのは多少改良されてまして普通のやつよりも倍以上の音が鳴ります。あっあとこれ耳栓ね」

 

 

鷹嶺さんは二つの耳栓を僕へ渡してきた。

 

 

「要は音響スタングレネードみたいなもんって事ですか」

 

「その通り!しかも何と特別ボイスx8本付きです!試しにこのボタン押してみて」

 

 

渡されたこんこよブザーをよく見ると隅の方に赤い小さなボタンが付けられていた。試しに僕はそのボタンを押してみる。

 

 

こんこよで〜す

 

 

ブザーから博士の声が聞こえて来た。

 

 

ちょちょちょ!

 

 

思った以上に大きな音に僕は動揺する。

 

こんな大きい音が鳴れば強盗犯に聞こえるのは当たり前だ。レジの方から「誰かいるのか!」っと声が響く。

 

 

「いやぁ押すとは思いませんでしたよ!」

 

「押してみてって言ったの鷹嶺さんじゃないですか!」

 

 

押した僕が悪いと思うけれども。

 

 

「どうするんですか!凄い怪しまれてますよ!」

 

「落ち着いて。確か収録ボイスの中に『これは防犯ブザーです』って言葉があるはず。それで誤魔化せるかも」

 

 

人って焦るとこうも冷静な判断ができなくなるモノなんだな。

 

 

「そんなんで誤魔化せます?…まぁ一応やってみますけど…その音声はどうやったら出せるんですか?」

 

「赤いボタンからランダムで出ます」

 

「8分の1⁉︎えっ?運に任せろって事ですか⁉︎」

 

「ほら!早く!自分の運を信じて!」

 

「もうどうなっても知りませんからね!」

 

 

藁にも縋りたい思いでボタンを押す。

そして8つのうちの1つのボイスが流れる。

 

 

『スンドゥブが食べたい!』

 

 

なんでだよ!

 

「スンドゥブが食べたかったんだろうね」

 

「ちょっと待ってください!もしかして他のボイスもこんな感じだという説が浮上してきましたよ!」

 

「ほら!早く引き当てて!」

 

「まだやるんですか⁉︎」

 

 

もうここまでくればやけくそだった。

僕はもう一度、ボタンを押す。

 

 

『スンドゥブどこ!』

 

 

「スンドゥブ探し始めちゃいました」

 

「こよのスンドゥブ大冒険譚だね」

 

 

もう一度押す。

なんだか楽しくなってきた。

 

 

『スンドゥブ見つけました〜!美味しそうですねぇ』

 

 

「なんかスンドゥブ見つけちゃってますわ」

 

「良かったねこより」

 

 

果たしてこんこよ以外にまともなものはあるのかともう一度押す。

 

 

『プルコギ美味しい!』

 

 

スンドゥブわ⁉︎スンドゥブはどこへ行った!

 

「韓国料理にハマってるのかな?」

 

 

こうなればスンドゥブの行方が分かるまでボタンを押したいがそうは問屋が卸さなかった。

 

背後に立つ人物で造られた人影が僕らを覆う。咄嗟に目線を上へ向けると銃口が僕らの方へ向いており、それに先に反応したのは鷹嶺さんだった。

 

 

 

 

 

 

「海君危ない!」

 

 

 

 

 

銃声と共に鷹嶺さんに押された方へ僕の体は倒れる。

 

 

「鷹嶺さん!」

 

 

僕は立ち上がり、鷹嶺さんへ視線を向ける。

 

 

「大丈夫!当たってないよ!」

 

 

弾が当たらなかった事に安堵しながらも残念な事に肝心のこんこよブザーは押された衝撃で手から離れてしまったようだった。

 

よく見るとブザーは強盗犯の背後に転がっている。

 

 

「いやぁ真正面で拳銃とやり合うなんて場面、そんなないぞぉ」

 

 

鷹嶺さんは笑いながら言っているがその声からあまり余裕はなさそうだ。

 

犯人と5m程の距離で対面する鷹嶺さんの頭へ銃口は以前、向けられたままだった。

 

 

「そういえばまだ作戦言っていなかったね」

 

「えっ?こんこよブザーが作戦じゃないんですか?」

 

「あれは店員さんから犯人との距離を作る為の物であって本当の作戦は今から!スマートにいこう!」

 

 

瞬間、鷹嶺さんの雰囲気が変わった。

 

 

「いい?相手の手には飛び道具。こんな時、一番信じられるものは…」

 

 

手を握り締め啖呵をきる。

 

 

己の拳だけだあぁああ!

 

 

 

 

何がスマートだ!結局脳筋じゃないですか!

 

 

鷹嶺さんは瞳の色を変え、強盗犯に向け走り出す。

それと同時に一発の発砲音。

銃口は向けられていた。しかし放たれた銃弾は鷹嶺さんへ当たることなく、後ろに設置されているドリンクコーナーのガラスを貫いた。

 

バリンと破れる音と共に鷹嶺さんの強く握られた拳は強盗犯の顔の前にある。

 

 

たかねぇパーーンチ!

 

 

決まる。と思ったが

 

 

「あっ、そこジュースの缶が…」

 

「えっ?」

 

 

カロンとジュースの缶に躓き、地面に倒れ、拳はからぶってしまう。

 

 

瞬間、僕は何を考えて行動したのだろう。

 

 

鷹嶺さんの身が危険だと感じた故なのか…きっとあの時は陽動になればとかそんな理由だ。気が付いた時には既にこんこよブザーの方へ走り出していた。撃たれたらどうしようなど懸念は今の僕にはない。

 

 

僕が走り出したと共に銃口は僕へ向けられ、躊躇いなく引き金を引かれる。運が良いのか悪いのか、銃弾は僕の足をかすめただけで済んだ。しかし痛いものは痛い。

 

僕は衝撃でよろけるも手にはブザーを握りしめられていた。

 

店員さんは強盗犯が僕らへ意識が行っている隙に逃げている事は確認済み。つまり今、このコンビニにいるのはこの3人だけ。

 

誤って隅にある赤いボタンを押してしまったが気にせずピンを抜こうとする。

 

 

鷹嶺さん!耳塞いでください!

 

 

鷹嶺さんが耳を塞いだ事を確認し、ピンを抜く。そして投げると共に博士のボイスが聴こえてきた。

 

 

 

 

『スンドゥブ美味しい!』

 

 

 

 

「あっ。スンドゥブ食べれたんですね。」

 

 

瞬間、ブザーからの轟音。

 

耳栓をつけ耳を塞いでいてもこの音は辛い。

 

ブザーは10秒ほどで鳴り終わり、直であの音を聞いた強盗犯の足はフラフラとなっていた。

 

 

「鷹嶺さん。とどめ、お願いします」

 

「任せな!」

 

 

鷹嶺さんは容易く強盗犯の背後を取り、首へ手刀をする。すると相手は眠るかのように気絶した。

 

 

「最後は拳じゃないんですね」

 

「流石に可哀想でしょ」

 

 

時計を確認すると学校を出てまだ20分ほどしか経っていないという事実に驚愕する。体感では1時間ほどであった。

 

鷹嶺さんは気絶している強盗犯をガムテープでぐるぐる巻きにしながら僕へ聞いてきた。

 

 

「足の傷は大丈夫?結構血が出ちゃってるけど…」

  

「思った以上には痛くないですよ」

 

「…ごめんね?私がヘマしちゃったから…」

 

「いや鷹嶺さんが意識を逸らしてくれていたから銃弾に貫かれず取りに行けたんですよ。命の恩人を咎めたりはしませんって」

 

「息子…成長したね。何か食べたいのある?」

 

「スンドゥブでお願いします」

 

 

 


 

 

 

 

 

僕は学校へ戻る事を伝えコンビニの外へ出た。

鷹嶺さんは警察からの事情聴取や犯人の素性調査の為に、残るとのこと。

 

引き金を躊躇いなく引いた点など気になる事は沢山あったが、取り敢えず、報告は大事だと言う事で僕は総帥へ連絡をする事にした。

 

 

 

 

僕が携帯を耳に当てたその瞬間

 

 

 

 

ここを押せば読み飛ばせます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お腹に鋭い痛みが走る。

 

僕の携帯は手からするりと離れ、地面に落ちた。

 

 

横を見るとコンビニに居た強盗犯と同じ格好の人物が僕のお腹に何かを刺していた。 

 

 

ゆっくりと抜かれるそれが小さなナイフだと理解するまでに数秒もいらなかった。

 

 

手から落とした携帯を踏んで壊している人物を見ながら、刺された箇所を手で触れると生暖かい液体の感触、いっきに鳥肌が立った事を理解する。

 

 

赤い色をした小さなナイフ。全てを悟った僕は痛みからなのか膝から崩れ落ち、地面に倒れてしまう。

 

 

元から2人居た、お腹を刺された、何故刺された、鷹嶺さんへ連絡を…

僕の頭の中は混乱状態であった。

 

 

ふとナイフを持った人物を見ると、コンビニの中へ入ろうとしていた。

 

 

 

…それを見た時だった。

 

 

 

 

 

僕は地面に倒れている状況で、相手の足を掴む。

 

 

 

 

 

「鷹嶺さんの所へは行かせない」

 

 

 

 

 

ただそれだけの理由で僕は意地を張る。

 

 

16年間の人生の中で一番、力を入れたんじゃないだろうかと思うほどの力で足を引っ張る。勿論そんな事をされれば相手も抵抗するだろう。

 

 

強引にも片方の足を掴んでいる手を離させようと企てたのか、もう一方の足で力強く腕を何度も踏みつけてきた。

 

 

 

…きっと最初の3回程度で既に折れていたのだろう。

 

 

 

はっきり言ってアドレナリンドバドバの状態の僕には痛みなどとうに無くなっている為、折れているかどうかなんて分からなかった。

 

 

しかし痛みが無かろうと蹴られれば腕の力は次第に弱くなる。そうなると必然的に手は相手の足を離してしまう。

 

 

もう一度掴もうと試みるも僕の腕は鉛のように重く、上げたくても上がらなかった。

 

 

どうすれば良いか思考を巡らせる中、頭の中には一つの言葉。

 

 

 

 

 

「絶対に行かせない」

 

 

 

 

ただその言葉で埋め尽くされてた脳内が僕へ指示を出す。きっともっと良い策があったはずだろうにと思いながら操られたかの様にそれに従った。

 

 

カッコわるい悪あがきだと理解しているが相手のズボンの裾口に噛み付く。噛む力を謝ったのか少し口の中から鉄の味がした。

 

 

少年漫画とかならここで覚醒して、盛り上がり、最高にカッコいいシーンだろう。しかし生憎僕はただのholoxの()()()だ。悪あがきぐらいがちょうどいい。

 

 

すると僕は胸ぐらを掴まれ倒れ込んでいる状態から無理矢理起こされてしまった。

 

 

散々、足止めを食らい続けストレスが溜まっていたのだろう。

 

 

そのまま相手の拳は僕の顔を殴る。

 

 

感じるのは口の中が切れた事により、さっきよりも増した鉄の味。

 

 

ぶらっと腕が垂れるなか抵抗する事も出来ず、意識が遠のいていく。

 

 

そんな事はお構いなしにそれは続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

何度も…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何度も…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何度も

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何度目だろうか…ピタリと僕を殴る2人目の強盗犯の拳が止まった。

 

 

目は開けられないが声が聞こえてきた。僕はその声に聞き覚えがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ばっくばっくばく〜ん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声ではっきりと理解した。

 

あぁ…鷹嶺さんの言っていた頼れる応援ってこの人の事か…

 

僕は捻り出した声で話しかける。

 

 

「…()()()さん。バトンタッチでお願いします」

 

 

微かに開く目にハーフマスクで目を隠した沙花叉さんが視界に入った。かっこいいマスク…。後で何処で買ったか聞いておこう。

 

僕の意識は沙花叉さんの一言と共に失っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まかせな」

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は文化祭要素マシマシでいかせてもらいます。
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