今回、最初の方は海君視点ではなく先輩の視点となっています。
───先輩side
屋上にてとある人物を待っていた。
あちらから呼び出しておいて五分の遅刻とは大した度胸だ。
屋上に設置されている椅子に座りながら夕日に照らされた街を見る。無意識にも「綺麗だな」と口から発せられる。
すると屋上に上がる為の扉が開く音が聞こえてきた為、そちらへ目線を向けると呼び出した本人が立っていた。
「悪いな呼び出したりして」
「…別に構わないよ。何?愛の告白?」
「見てほしいものがあるんだ」
華麗なスルーを披露されてしまった。
「うちの優秀な幹部に調べてもらった資料のまとめがここにあってな」
手に持つ一枚の紙を見ながら目の前の少女はそう語る。
「ええっと…なになに。…うわぁ…凄いなこれ」
あからさまに演技だと分かる表情をする。
「思いつく辺りの犯罪は殆どコンプリートしてるぞ?お前のパパさん」
「…何の話をしているんだ?」
「注目するのは違法に入手した武器の売買だな」
持っている紙をしまい少女は質問してきた。
「24。これ何の数字か分かるか?」
「…さぁ?」
「今年に入ってから約6ヶ月間で吾輩達が見つけた拳銃やらの物騒な物の数だ。つまりはこの街にそれらが出回ってるんだよ。まぁ殆どが粗悪品だったけどな」
「だから何の話を…」
「探すのに苦労したよ。なんせ名前、戸籍すら変更してんだから。ましてやバイトの通う高校の理事長を勤めてるなんて思いもしなかった」
コツコツとこちらへ目の前の少女は近付いてくる。
「本当に知らないだけか…しらばっくれてるだけなのか…」
「…」
「どんな手を使ってるのか知らないが、そいつの居場所だけが見つからなくてな。そこで吾輩、ちょっとばかし閃きましてね。内部から調べるのが手っ取り早いと思い立ちこの高校に潜入したわけよ」
そしてまた一歩近く。
「でも、悔しい事に理事長の方が一枚上手だったな。高校に潜入した時にはもぬけの殻。どうやら同じタイミングでその座を辞任したみたいだ」
また一歩。
「ここで重要なのが何故バレたかだ。この事に関してバイト以外のholoxのメンバーにしか言っていない筈なのに…。まぁこれは別に大した問題じゃない」
「…」
「100%機密を守るなんてほぼ不可能だからな。何らかでリークでもしたんだろう。…少し話が脱線した。お前を呼び出した理由だが結論から言うと…」
一歩近く。
「それ以上近づくな」
「ん?あぁそうだった」
「俺だって一応所持してるんだ」
護身用で隠し持っていた拳銃を少女へ向ける。
「目は口ほどに物を言う」ということわざがあるように人は無意識のうちに目で感情を表す事がある。特技と言えるものなのか分からないが自分はこれを読み解く力が長けていた。
だから基本的に嘘などは見破れるし、何を考えているかだって大抵は分かる。他人よりも優位な位置に立てると少しばかり優越感というのも感じていた。
しかし、目の前の少女。こいつだけは初めて会ってから何を考えているのか全く分からなかった。
流石のこいつでもこれを向けられれば動揺の一つや二つは見せるだろう。
その考えはどうやら合っていたようで、表情に変化が起きる。
しかし想像していたそれとはかけ離れていた。
撃てるもんなら撃ってみろと…そう目で語るようにこちらを覗く。気圧されたのは自分の方だった。
「おぉ、怖い怖い。幼気な少女に向けるもんじゃないだろ。それ」
「…それは本心なのか?普通狼狽えたりするだろ」
「ん?撃たないのか?てっきり躊躇いなく引き金を引くと思っていたんだが…吾輩の予想が外れたな」
見透かされたかのように感じた自分は何故か無性に腹が立ち、下唇を少し噛む。そして挑発に乗るかのように引き金に指をかけた。
…躊躇う気は毛頭ない。
「やめとけ。侍」
瞬間、首元に光る何かが現れた。
漫画とかを読んでいると気が付かないうちに背後を取られたなんてシーンがあるが現実ではあり得ないだろうっと実体験するまではそう思っていた。
現実でもあり得るに訂正だ。
今…自分の命は背後の少女に握られていると悟る。
「…銃刀法違反だろ」
「お前が言うな」
何度か博物館などで見た事はあるが本物の日本刀を見るのは初めてだ。それにこんな近くで…
「悪いがそのままで良いか?そうじゃないと撃たれそうで怖いんだ」
「…こんな状態、こっちから願い下げだ」
自分は拳銃を握る手の力を弱める。
重力に従いそれは地面へと落ち、カタンと音が鳴ったと同時に首元に向けられていた刀もなくなり「続けるぞ」っと少女が言う。
「結論から言うと先日、幹部とバイトを襲った事件の首謀者及び現在の理事長の居場所を教えてくれ」
「…先日の事件?あぁコンビニでのやつか。それだとまるで裏で操ってる奴が居るみたいな言いようだな」
「そりゃそうだろ?ここ最近上手く出来過ぎている。吾輩の見立てはこうだ」
そして少女は語り出す。
「まず初めに吾輩らの資金源とのコネクションを遮断。協力関係を結んでいた所も買収し、吾輩らを孤立。その次により確実に潰す為、司令塔である幹部を無力化を企てようと先の事件を起こしたんだろ?しかし2人の前にイレギュラーな
「…」
「次に吾輩らを狙う理由だが考えられるのは2つ。1つはただ単に邪魔な存在であるから。2つ目は吾輩の組織に欲しい人材が居る。つまり手段を選ばない強引な引き抜きだな」
「…それはただの予想に過ぎないだろ?根拠もなしに言うのはどうなんだ?」
「根拠なんてどうでもいいんだよ。傷付けたっていう事実だけが残ってんだから」
「…何が言いたい?」
ため息を吐きながらまた一歩近付く。
「良いか?簡単にまとめてやる」
少女は目の前に立ち、肩に手を置く。
「っ⁉︎」
瞬間、何もされていないはずの足の力が抜け膝から崩れ落ちる。
そして校則として付けていたネクタイを少女によって捕まれ、少女を見上げる体勢になった。
少女は見下ろしながら怒気が込められた言葉を放つ。
「お前らが営利目的でばら撒いた物で吾輩の周りに居る大事な奴らが傷ついてんだよ」
目の前にある冷たい眼に恐怖を覚える。
言葉を言い合えた後、少女によって掴まれていたネクタイは自由を取り戻した。
「…まぁこれを言ったところでただの八つ当たりになるかぁ」
自分の足は依然、力が入らないままだった。
「今…何をしたんだよ」
「何もしてない。お前が勝手に倒れただけだ。それで情報は?ないんだったら吾輩帰るぞ?時間の無駄だからな」
「…先日の事件に関しては何も知らない。親父は…ここ1年間は会ってない。ただ目星はいくつかある」
「なんだ。素直に答えれるじゃないか」
「意地を張ってただけだ。あんたの手の上で踊らされてるようで気に食わなかったんだよ。だけど実感した。無駄な足掻きだったって」
「…なんというかお前らって似てるな」
「何の事?」
そう言うと「何でもない」っとかいつままれてしまった。
「いやでもこれじゃ吊り合わないな。おいお前。お肉奢ってくれお肉」
「えっ?お、お肉?」
「そうだよ!言っただろ資金源のコネクション切れてるって!吾輩、美味しいお肉を最近食べてないんだよ!」
「いやまぁ別に良いけど」
「うおおおおお!やったな侍!」
「風真はナスが欲しいでござるな!」
喜ぶ2人を見ていると数字が書かれた一枚の紙を渡される。
「まっ話は以上だ。お前とは友好関係を続けたいしな。気が向いたら連絡でもしてくれ」
そう言いながら校舎へ戻ろうとする2人へ質問をする。
「なんなんだよ…あんた」
「ん?自己紹介をしてほしいのか?だから田島…」
「ラプ殿…。多分偽名じゃない方だと思うでござるよ?」
「あぁ。そう言う事…」
一拍置き、こちらを振り返る少女は自信に満ちた顔で言う。
ーーー海視点ーーー
「…来て良かった」
体育館のステージで行われた現役のアイドルによるワンマンライブが終わりを迎えていた。感動から出たのか涙により、持参したハンカチがびしょ濡れだ。やはり音楽プレイヤーなどで聴くのと生で聴くのでは違うんだなと理解する。
この感動を共有と言うなの自慢を友人のメールに送った。
ふと総帥のメールを見ると数十分前に僕が送ったメールにまだ既読が付いていない事に気がつく。結局、後夜祭が終わるまでに戻ってこなかったな。あの人。
後夜祭の残すプログラムは閉会の言葉のみ。
進行役がマイクスタンドの前に立ち、閉会の言葉を述べようとする。
「これをもちまして…」
突如、マイクがスピーカーの音を拾った事で生じる「キーン」っとなる現象、所謂ハウリングが体育館内に響き渡る。
突然そんな音が鳴った事により周りはそちらの方へ視線を変えていた。するとハウリングをやったであろう張本人がマイクを使い声を出す。
『あっ。あっ。あ〜〜。えっ?これ聞こえてる?』
…なんか聞き覚えがある気がする。
『違うよ!これ押しながらだって言ったでしょ!』
『押しながら言ったぞ?なんなら今も押し続けてる』
『これ…声入ってるって』
『えっ?まじ?やべ』
…ちょっと待って…
『ごほん。すー』
『やぁやぁお集まりの諸君。何やら騒がしいくなっている所悪いが、
一人称、声、喋り方。完全に僕が知っている人と一致している。
『えっ?急に何言ってるんだ?この人?って思った奴も居るだろうが質疑応答の時間は設けてなくてね。その言葉はぐっと胸の中にでもしまっといてくれ。あっ因みに言うと諸君らは今はここから出れないからな』
その発言を聞いた入り口付近の人が扉を開けようと試みる。しかし扉は開かなかった。勿論、その影響で体育館内は大混乱だ。
『はいはい落ち着いてねぇ。今はって言ったでしょ。別にこれからデスゲームとか始めてもらわないから』
嫌な予感がする。
『先程のライブ。もう本当に良かった。いやね?吾輩のハンカチびしょ濡れだもん。この熱狂をこのまま終わらすのは勿体ないと思わないか?』
同感したからかパニックだった館内は盛り上がりを見せる。
『嫌な事が多い世の中かもしれないが、微小でも面白い事はある。そんな時間を全力で楽しまなきゃ損だ。中途半端になんてさせない』
「…っ」
『まぁ吾輩自体、目立つのはここの生徒だって言及してたけど…やっぱ主役ってのは憧れるものでね。今この学舎の主導権は吾輩にあってこの来客数ときた。こんな好条件は滅多にない。諸君、延長戦といこうじゃないか!』
そして声の主は大きな声でこう言う。
『こっからは吾輩達が
いっきに館内の人々のポルテージが上がる。
「おいおいおいおいおい!!」
瞬間、体育館の電気が突如消える。
騒ついていた館内が静かになった。
次にはスポットライトによりステージが照らされる。
そこには5人分のシルエット。
静まり返った体育館には似合わない音がスピーカーから流れ出すも、無論、観客全員はステージの方を見ていた。
混乱で頭が回っていない僕を差し置いて容赦なく彼女達は始める。
「いやもう秘密にする気ないだろ!」
見事に息のあった連携を見せ、観客の盛り上がりを加速させる。一方僕は目の前の景色が現実なのか疑い始めた。
「あ、あれ?これ夢?」
すると僕の足を何者かに叩かれる。
「ぽ、ぽこべぇ⁉︎」
そこには「風真命!!」っと書かれた鉢巻を付け、両手にペンライトを握るぽこべぇの姿があった。どうやら僕の分のペンライトもあるらしい。
取り敢えず僕はペンライトを受け取り、ステージの方を見る。輝く5人を見ながら僕は少し考え込んだ。思い返してみればあの5人と比べて僕は何も持ってい。
するとぽこべぇが再度僕の足を叩く。
「えっ?僕はあの舞台に出ないのかって?」
…よく考えてみれば何故僕はあの人達と一緒に居られるのだろうか。
総帥みたいに統括できる力は無い。
沙花叉さんみたいに強くはない。
風真さんみたいに刀は使えない。
博士みたいに頭は良くない。
鷹嶺さんのように仕事は出来ない。
なんでバイト採用されたんだろ。いや本当に。
…でもこんな何の取り柄もない僕にも役目はある。
あの人たちが主役で僕は舞台に立たず総帥達を照らすスポットライト。スポットライトだって重要な役割だ。その役目で一緒に居られるならそれだけで十分。
「…僕はただのバイトだよ。少しでも総帥達の助けになれればそれで良いんだ。照らしまくるのが僕の役目なので」
そして総帥達によるライブは終盤に差し掛かる。
「さぁっ。ぽこべぇ。一緒に応援しよう」
観客のポルテージは最高潮。
そしてステージに立つ総帥は観客に向い声を出す。
「返事は yes my darkだ!」
「あっ!それ僕のネギ塩牛タンですよ!我が子のように育ててたのに!返してくださいよ沙花叉さん!」
「へへーんだ!隙を見せるのが悪いんだよ!」
「海君。我が子を食べようとしてたんだ。私も食べよう」
「鷹嶺さんは悪ノリしないで!」
「こよちゃんこれ美味しいよ。ほれあーん」
「あーん。うん!おいひぃ!」
「おい誰だよ!吾輩の牛カルビ食べたの!」
文化祭の後、僕らは打ち上げとしてアジトの中で焼き肉パーティをしていた。後日聞いた噂によると総帥達のライブはSNS上で少しだけ有名になったそうだ。
あとクラスでの打ち上げがあったらしいが僕は呼ばれてない。もう一度言います。僕は呼ばれてない。
「今のholoxに焼き肉が出来るお金なんてあったんですね」
「まぁちょっとだけボーナスが入ったんでね」
何かあったようだがあまり深掘りはするなと言わんばかりの顔つきを総帥は見せてきた。
「文化祭が終わったという事は総帥達はもう僕の高校には来ない感じなんですか?」
「まぁそうだな。特にやる事もないし」
「僕はもう少し教員として残るよ。教えるのが意外と楽しかったからね!」
そんな会話をしていると総帥からある紙を渡される。
「…何ですかこれ?」
「何って退職届」
「うぇっ!海君バイト辞めちゃうの⁉︎僕聞いてないよ⁉︎」
「あんな事があったからな。辞めようとしている事を視野に入れている可能性があると思ってな」
そう言うと他のメンバーは黙ってしまった。
僕はその紙を受け取り、少しの間考え込んだ。
そして…
「…総帥、最近鷹嶺さんに了承を得ずお菓子とか食べてましたよね?」
「えっ!なんでお前それ知ってんだよ!」
「博士。夜な夜な風真さんの部屋に忍び込んだとか…」
「えっ⁉︎」
「こよちゃん⁉︎風真にいったい何したの⁉︎」
「つ、続きはWebで…」
「鷹嶺さん最近発注ミスをしたらしいですね。何でしたっけ…」
「あぁー!ダメダメ!それ言っちゃ駄目!」
「風真さん。最近ぽこべぇを吸うのにハマってますよね?」
「…ナンノコトデゴザルカ?」
「沙花叉さん…のを言うのはやめときます」
「おいなんでだよ!そういう気遣いが一番怖いんだよ!」
「てなわけで今はバイトとしてリークしないようにしますがこんな総帥達の情報を持った怪物が世に放たれちゃいけないと思いません?」
すると総帥は紙を僕から取り上げ、退職届はビリビリに破かれてしまった。
「お前のそういうところが気に入ってんだ。つまりは辞めたくないって事だろ?」
「これからもよろしくお願いします」
「吾輩たちを退屈させるなよ」
「ラプラス…一週間、おやつ抜きね」
「えっ⁉︎ふぇええ…幹部ぅ」
課題が終わったら何があるって?
新しい課題だよ。