秘密結社のバイトの日常   作:ライ麦小麦

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気が付いたら2ヶ月経ってました。申し訳ないです。

それと同時にアンケートの投票ありがとうございました。取り敢えず今後は台本形式は無しの方向で行かせてもらいます。


飛び方を忘れた鷹

 

 

 

「…何してるの?海君」

 

 

僕の現状を見て別室から現れた鷹嶺さんがそう呟く。

 

 

「何って…博士の実験に付き合ってるだけですよ?」

 

「こんこよ~」

 

「いやぁ…そういう事じゃなくて…」

 

 

気まずそうに僕の頭の上に指を指す。

 

 

「…既視感あるんだよ。それ」

 

「これですか?」

 

 

僕はそう言いながら頭に付けている見た目は小型のプロペラのような形をしている機械を外し鷹嶺さんへ見せびらかす。

 

 

「これ凄いんですよ?空を飛べるんです」

 

 

今は充電されていない為、動きはしないが科学もここまで進歩したと思うと少しばかり感動してしまう。

 

 

「この発明品の正式名称ってなんでしたっけ?博士?」

 

「えっとね…タケ」

 

「ああぁあ!言わなくて良いから!」

 

 

いきなり慌てた様子を見せ、何故か博士の口が防がれてしまっていた。

そんな状態でも何か言いたげな博士は鷹嶺さんの手をどかし、目を光らせながら僕へ語る。

 

 

「これなら魔法に劣ってるなんて言われないはず!」

 

「劣ってる?」

 

 

戸惑いを見せる鷹嶺さんの為に僕は一つ補足した。

 

 

「最近"科学と魔法学のどちらが発展しているのか…"という論文で飛行手段の例が挙げられてたんですよ」

 

一長一短な部分があるなかで足並みを揃えながら成長しようとしたとしても、やはり様々な差は生まれてしまう。例えば箒一本か飛行機かのように。

 

 

「魔法学は便利だから優先的に発展させた方が良いって言われてるけど…それじゃ平等じゃないよ」

 

「あれは完全に才能の分野で使えなかったらそれでお終いですからね」

 

 

ある科学者が見つけた研究結果によると体内の血液中に普通は流れていない成分…人呼んで魔力というものがある場合、魔法を使うことが可能となるらしい。

 

問題なのは後天的にその成分が現れたという事例はないという事。つまり魔法の不可は生まれた時に選別されている。

 

それと比べると均等に分け与えられている科学は誰でも磨けば輝くモノになる。博士が没頭するのも無理もない。

 

そんな事を思っていると博士の発明品に興味を示す人物が1人。

 

 

「いや〜でもこれどういう仕組みで飛べるの?」

 

 

 

 

「あっ!駄目です鷹嶺さん!」

 

 

 

 

そんな何気ない質問にいち早く耳をピンとさせた人物が1人。

 

 

「気になる⁉︎ルイルイ!」

 

 

尻尾をフリフリと揺らす博士。

僕はその姿を見て「…遅かった」っと無意識に言葉が出る。

 

目線を変えると既に用意されていたホワイトボードを用い説明が始まろうとしていた。

 

 

「まずこんな小さなモノで飛べている原理を説明する為にも飛行機を例として挙げるね!そもそも飛行機は飛んでいるというより吊るされているって…」

 

「あっすごい情報量!」

 

 

…経験者だから分かる…きっと丸一日説明コースだろう。

 

長くなると確信した僕は近くに置いていた掃除機を手に取り、慣れた手つきで電源を入れ2人の邪魔にならないよう掃除を始めた。

 

ふと意味も無く窓を覗くと二つの羽で自由に飛んでいるいたって普通の鳥が視界に入ると共に掃除機の電源を止め、そういえばと鷹嶺さんへ一つ質問した。

 

 

「…飛ぶといえば鷹嶺さんは鷹ですよね?」

 

「そうだよ?」

 

「じゃあやっぱり飛べるんですか?」

 

 

瞬間、場が静まり返る。

…あれ?もしかして僕、変な事言った?

 

あたふたとしていると鷹嶺さんが僕の元へ近付き質問への回答を答えようとする。

 

 

「海君…私ね…」

 

 

深刻そうな表情から飛べない理由があるのかと固唾を飲む。

そして本人の口から衝撃の事実が告げられた。

 

 

 

 

 

 

「飛び方忘れちゃった!」

 

 

 

 

 

 

僕は掃除機の電源を再び付け直した。

 

 

「ちょちょ!なんで興味なくしちゃうの⁉︎」

 

「だってただの忘却のフライアウェイじゃないですか」

 

「忘却のフライアウェイって何⁉」

 

 

果たして鷹が飛び方を忘れてしまって良いのだろうか。

 

 

「勿体無くないですか?空飛べるなんてめっちゃかっこいいですよ?」

 

「いやー最近は歩く方が楽な事も多いよ?」

 

「僕なら飛びまくりますけどね」

 

「…海君は翼で空を飛びたいの?」

 

 

翼の生えていない僕からすればそれは夢物語でしかなく、鷹嶺さんの問いの意味を深く考えずに定型文の様な返しをした。

 

 

 

「まぁ飛べるものなら飛びたいですけど…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ教えてもらう?」

 

 

 

 

 

 

 

「…えっ?」

 

 

数分後、言葉の意味を理解した。

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「うおおぉおお⁉︎」

 

 

 

 

 

 

現在、僕はholoxの屋上、すなわちビルの六階ほどの高さの位置にて体に巻かれた紐により吊るされていた。軽薄な発言を後悔しながら足場の無い浮遊感を体感する。

 

 

「いやいやいや!飛びたいとは言いましたよ!ええ言いましたとも!でもこれは違いますって!」

 

 

涙目をしながら訴える目線の先に鷹嶺さんと抱えられている一匹の鷹 がんも。

 

がんもの大きさはリンゴ約三個分。

まんまるとした可愛らしいフォルムを持ち、キリっとした目で僕を覗く。あと特徴はかっこいい…。男の僕が惚れそうなほどイケメンな鷹だ。

鷹嶺さんとの付き合いは長いらしく、風真さんのぽこべぇ的存在である。

 

先程の「教えてもらう?」は、がんもから学ぼうという意味。

確かに翼を使いこなしている者から教えてもらうのは合理的だろうが…

 

 

「おかしい!これは絶対おかしい!」

 

 

そろそろ労基って言葉が出るぞ?僕の口から。

 

 

「がんも曰く、体で覚えるのが一番早いとの事」

 

「僕羽生えてないんですよ!某ネコ型ロボットの力がないと飛べないか弱い一般市民なんです!」

 

「がんも曰く、黙って従えとのこと」

 

「がんも怒ってる⁉︎僕もしかしてなんかした⁉︎」

 

 

ふいっと顔を背けるがんも。絶対怒ってるじゃん。

心からの訴えが周りに響くと同時に強風が僕を襲う。

紐一本で吊るされている為か振り子の様に体が揺らされた。

 

 

「無理無理無理無理!」

 

「風を感じるんだよ!海君!」

 

「風感じてる暇なんてないんです!このままだと風と一緒にさよならですよ!一緒にランデブーですよ!」

 

 

風の力で揺れは増す。

 

 

「がんも大先生!僕飛べなくて大丈夫です!」

 

「"つべこべ言わず羽を動かせ"とのことです」

 

 

 

「だから羽生えてないつってるだろ!」

 

 

 

…いやもう考えるのは止めよう。

早く終わってほしい一心でどうにでもなれと腕をパタパタ動かす。

ビルの下を歩くおば様が僕の姿を見ているがプライドなんて履歴書と共にholoxへ置いてきている。怖いモノなんて僕には無い。

 

僕の哀れもない姿を見て鷹嶺さんが助言を授ける。

 

 

「別に落ちても大丈夫だからね?」

 

 

そう言いながら何食わぬ顔で地面の無いはずの空を歩き始めた。

 

 

「…透明な…床?」

 

 

安全を証明する為かガラス板のような床をコンコンと叩く。

足場がある事に対し、安堵はするが

 

 

「…これただ僕が惨めな姿を晒しただけじゃないですか」

 

「いいや?そうでもないよ」

 

 

僕を吊るす紐を解きながらとある事を言い出す。

 

 

「海君が体を張ったお陰で今度利用するこの紐の強度が分かったからね」

 

「強度実験なら他のやり方でも良いでしょ!」

 

「やっぱりスリルって大事じゃん?」

 

「いらない!今絶対いらないです!」

 

 

ツッコミを入れながらも"利用"というワードが気になり、何に使うのかと尋ねても「まだ言えない」っとはぐらかされてしまった。

 

 

「というか…いつの間にこんな床設置したんですか?」

 

「だいぶ前からあるよ」

 

「えっ?そうなんですか?」

 

「壊れないほど強度な床を作ろうって意気込んでたら本当に壊れなくなっちゃった奴なんだ。この床は」

 

「発案者はもしかして角が生えてますか?」

 

「ご名答」

 

 

的中した僕は発案者に感謝しながら地面の有り難みを噛み締める。

 

空を散歩していると思わせる床に感動を覚え、辺りを歩き回った。そんな一瞬の出来事の中、足で床を踏んでいたはずの感覚が無くなる。

 

 

 

「…あれ?」

 

 

 

突然の浮遊感。

…体が下へ落ちている。

 

 

 

 

 

 

「海君!!」

 

 

 

 

 

鷹嶺さんの叫びと共に僕の脳内はパニックに陥る。

 

 

まずいまずいまずい!

 

 

体が急速に落下しているのが分かる。

六階という高さから落ちればまず助からないのは確実。

 

何かないかと自分のポケットを漁ると例の機械と充電器があった。

…少しでも飛べればそれで良い。僕は藁にも縋る思いで充電ケーブルを刺そうとする。

 

…しかし僕の願いは叶わなかった。

それもそのはず、対応している充電器は…

 

 

 

 

「タイプcじゃないのかよ!」

 

 

 

 

タイプcとは別のモノだった。

 

 

 

 

まさか最後に言った言葉がタイプcになるとは思いもしないだろ。

 

 

 

なんか走馬灯の様なモノが見えてきた…。

 

 

楽しかった学生生活。

 

初恋の人に振られたあの日。

 

色々とあったholoxのバイト。

 

波乱の文化祭。

 

そして山田さん。

 

 

おい待て最後の誰だよ。

もしかして最後の思い出が山田さんで終わらないといけないの?

 

 

 

 

そう諦めていた瞬間。

地面に向け、落下し続ける僕の体を覆う黒影。

 

 

逆光を浴びながら近付くそれは今まで見てきたどの鳥よりも明媚な翼を羽ばたかせていた。

 

 

近付くにつれ逆光も弱まりはっきりとその姿が目に映る。

 

 

 

 

 

「…綺麗だなぁ」

 

 

 

 

 

ポツリと言った言葉と自分の体は上へと持ち上げられる。

 

 

「あっ待って…意外と海君重いかも…」

 

 

前言撤回。

ふらふらと降下しています。

 

 

「た、鷹嶺さん⁉︎今結構良い雰囲気なんですよ!久しぶりに飛べたっていう感慨深い場面なんです!勝手な事言いますけど頑張ってください!あと助けてくれてありがとうございます!」

 

「そ、そんなこと言っても!わ、私久しぶりに飛んだから…あっまずい!」

 

「何が⁉︎何がまずいんですか⁉︎」

 

「もうしょうがない!海君!アジトに投げ込むよ!」

 

「投げ込む⁉︎」

 

 

いきなりとんでもない宣言をされ時には投げる体制は既に整っていた。この人、本気でやる気だ。

 

 

「待ってください!まだ心の準備が!」

 

「よいっっしょぉお!」

 

「おぉおお⁉︎」

 

 

間髪入れずに僕は空いている窓へ投げ込まれる。

 

運が良い事に着地した地面に何故か置かれているゴミ袋がクッションになったのか体は全く痛くなかった。

 

そんな安心も束の間、目の前には部屋の住人らしきシャチ。

頭に鍋を被り手にはお玉が握られていた。

 

 

「ま、まったかねぇ?」

 

 

 

 

「待ってないわ!」

 

 

 

 

投げられたお玉は僕の頭に命中した。

 

 


 

 

 

アジトのリビングにて僕は頭に出来た傷を鷹嶺さんに治療してもらっていた。

 

 

「ありゃたんこぶ出来てるね」

 

「…それで済んだだけマシです」

 

 

頭以外に目立った傷がないのは紛う事なきこの人のお陰だ。

 

 

「にしても床がある場所からなんで落ちたんだろう?」

 

 

…僕の間違いじゃなければ足を滑らし落ちたというか…急に床が無くなったように思えたが…多分ただ単にドジをしてしまっただけだろうと割り切る。

 

ふと机の上に置かれているあるモノに目がいた。

 

 

「鷹嶺さん。この封筒、なんですか?」  

 

 

指を指す方にはA4サイズの茶封筒。

どうやらポストに入っていたらしく、博士が持ってきていたとのこと。

 

 

「中身は確認したんですか?」

 

「いいや?まぁ多分仕事依頼とかなんだと思うけど…」

 

「holoxに仕事の依頼なんて久しぶりな気がします」

 

 

「中身を確認する」と言い、封筒を手に取り中身を確認した鷹嶺さんの表情が変わる。

 

眉間にしわを寄せ、何やら意外なモノを見た時の様なしぐさを露骨に見た僕の興味はその封筒の中身へといった。

 

 

「どうしたんですか?」

 

「…いやぁまさかここから来るとは思っていなくてね」

 

 

余裕のない表情を見せながら確認するかの様に過去の出来事を振り変え始める。

 

 

「えっと…餃子を生物にしたら強いんじゃね?って覚えてる?」

 

「財政難に陥った元凶のヤツじゃないですか」

 

 

僕自身、加担したい為かどれぐらいの被害、何処の窓ガラスが割れたかなどの詳細は知らないが…

 

 

 

 

 

 

…いや待て。

 

 

 

 

 

何故鷹嶺さんは今その話を出したんだ?

 

 

 

意味も無く関係の無い話題を出すタイミングであったとも考えられない。

憶測が絡まる嫌な予感を感じ鷹嶺さんから目線を外した僕は手に持つ封筒を見つめる。

 

 

「お呼び出しくらっちゃった…窓ガラス破った所から」

 

 

無意識に震える手を無理やりにでも抑えようとしながら封筒に書かれている内容を確認する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『hololive』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

書かれていた名は今や知らない人など居ないアイドル事務所だった。

 

 




そういう事で次回、星の方が登場します。
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