どなたか助けてください
学校の面談は闘いである
アジトで学校から配られたプリントの整理をしていると一つの紙に目がいく。
上の方には"三者面談のご案内"っと書かれた保護者宛の内容だった。
両親とは通学の関係上離れて暮らしている為、無論唐突な事で参加は出来ない。故に僕には必要のないものだと思いアジトのゴミ箱の中へその紙をまるめて捨てる事にした。
学校のチャイムが鳴り他の生徒はそれぞれ部活や帰宅などをする一方、僕は自分の面談の番が来るのを教室の前で待っていた。
保護者が来れない為、面談自体出来ないと思っていたが先生いわく「保護者が来れなくても問題はないから」とのことだ。
廊下の天井を見ながらボーッとしていると、教室の扉から「ありがとうございました」と感謝の言葉を述べながらクラスメイトとその親が出てくる姿が見え、僕の番が来たと悟る。
僕は教室の扉を数回叩き扉を開け、先生と対面するよう設置してある椅子に座る。自分だけなのか分からないがこういった場面になると何故か緊張する。
「最後は上山君だね。大丈夫、今日話すのは学校に慣れたかどうかだけだから」
「…分かりました」
僕が緊張してることに気が付いたのか気遣いの言葉をかけてくれた。
「じゃあまず始めに…」
先生がそう言い出した瞬間、前方の扉がガラッと勢いよく開いた。
「遅れてすみません!」
その声に聞き覚えがあった僕の背中から、汗がどばりと出てきた。
「あっ。お母様でお間違えないですか?」
「はい!母のかざ…上山いろはでござる!」
「えっ。ござる?」
「先生違います!全然知らない人です!追い出してください!」
「なんでぇー⁉︎邪険に扱わないでよ!」
「お、落ち着いてください!貴方はお母様ではないんですか?」
すると今度は後方の扉が開く。
「面談室はここで合ってますか?」
「ルイ姉⁉︎」
「ど、どちら様で…」
「先生!一回席を外します!」
両手に花なんて言葉を忘れながら僕は風真さんと鷹嶺さんの2人を連れて教室の外へ出る。
「なんでここに居るんですか⁉︎」
僕は1番の疑問も2人に問いただした。
「風真は応援したくて…」
「私は優勝してほしくて…」
「学校の面談を大会と同等に分類にしてる文明の方々ですか?」
事情を聞くと先日、僕がゴミ箱に捨てたあの紙が目に入ったらしく、面白そうだからという理由との事で僕はあの紙をアジトに捨てたことを後悔する。
2人の格好を見るとピシッとしたスーツを着た就活生のような鷹嶺さんと冠婚葬祭の場面で着るフォーマルな和服を着た風真さん。
「まさかルイ姉も来るとは思っていなかったでござるよ」
「私もいろはが来るとは思わなかったなぁ。ネタが被っちゃったね」
「僕の面談をネタ呼ばわりしないでもらえます?」
今度から学校の書類は家で捨てることを徹底しよう。そう思いながら僕たちは今の状況の打開策を考える。
「どうするんですか?今、浮気現場の修羅場みたいな絵面になってますよ?」
可哀想なのは困惑しながら待たされている先生である。
「僕の高校、バイトは原則禁止の決まりなんで"バイトの人でした!"なんて言い訳出来ませんよ?」
故にholoxでバイトしているという事は誰にも言っていない。そもそもバイトがokだとしてもこんな場面には絶対ならないだろ。
「こうなったらフォーメーションCだね!」
「そうでござるな!」
「なんですかフォーメーションCって!僕そんなの知りませんよ!」
僕の知らない作戦を決行しようと鷹嶺さんが僕の背中を無理矢理押し、教室の中へ入れる。
「えっ!ちょっと!」
フォーメーションCという概要を教えられず、僕は先程と同じ席に座り、鷹嶺さんは隣の席に座った。先生の方は魂ここにあらずの様な状態。
無理もない、自分の生徒のお母様と名乗る二人が面談に乗り込んできたなだらか。本当ごめんなさい。
「…戻ってこられたということは今、上山君の隣にいる方がお母様ということですか?」
鷹嶺さんの方を見るとその問いに"肯定してほしい!"っと伝わってくる頷きを見せる。
「はい、そうです…」
「じゃあ最初の人は誰っ⁉︎」
予想してた通り、先生は風真さんへの疑問を持っていた。
僕は隣に居る鷹嶺さんへ小声で質問する。
「どうするんですか?先生の不信感をどう解消させるんですか?」
「大丈夫だよ。そろそろ来る頃だから…」
「来るころ?来るころってなんですか?」
すると勢いよく開く扉の音と、数分前に感じた冷や汗。まさかと思い後ろを振り返ると
「風真のルイ姉に何しくれちゃってるでござるかぁ⁉︎」
「自ら修羅場創りにきたよこの人!」
目線を風真さんから先生へ変える。
あっ、駄目だ。頭の処理が追いついてないのかポカーンとしていた。贖罪の意味も込めて僕この人授業だけはしっかり聞くことにする。
「早くルイ姉から離れるでごさる!」
「えっ⁉︎僕⁉︎」
風真さんは僕の方へ敵意を向けてきた。
「さっ!帰るでござるよ!」
「やめてよ!私は海君と優勝するって決めたのよ!」
「だから何を勝ち取る気なんですか⁉︎」
「風真と一緒に学校の面談出るっていったのは嘘だったんでござるか⁉︎」
「今、行われてる僕の面談と向き合ってくださいよ!」
「面談室の砂を取ろうって約束したでござるよな!」
「クラスの清掃係のおかけでピカピカの所から砂が取れるわけないでしょ!取れるとしたら僕がさっき落とした消しカスぐらいだわ!」
「鉛筆と掛けまして、消しゴムの角と解く」
「その心は?」
風真さんの掛け声と共に鷹嶺さんが言う。
「どちらも書ける(欠ける)でしょう!」
「もう帰ってくれません⁉︎」
僕は2人を教室の外へ押し出し、扉の鍵をかけ、目線を先生の方向へ向ける。
「…先生…バイト駄目な理由分かったかもしれません」
「…先生は少なくとも今さっきの光景とは関係ないと思うよ」
教室の中に静けさが戻った。
面談も終わり、いつものようにアジトの扉を開く。
一番最初に目に入った光景は総帥が頭に付いている二つの角を扉の方へ向け、うつ伏せで倒れているところだった。その見た目は、まさにクワガタであった。
「どうしたんですか?総帥…」
「…」
黙ったままだが見たところ、怪我などが原因でうつ伏せになってるようではない。
「い…た……かった…」
「えっ?」
「うがあーー!吾輩も幹部のようにバイトの学校に行きたかった!」
うつ伏せのまま手足をジタバタとさせる総帥。
「なんで鷹嶺さんが僕の学校に来たのを知ってるんですか?」
「…大会優勝させたんで迎えに来てくださいってバイトの学校から電話が来たんだよ」
もうどうでもよくなってきた。
僕あの学校あと3年も通わないといけないと思うとなんだか億劫な気持ちになるな。
「今、博士と新人で迎えに行かせてるけどさ…なんだよ大会って⁉︎」
「いや、僕が聞きたいですよ」
「そんな楽しそうなことを吾輩抜きでやるなんてずるいだろ!」
うつ伏せになってた顔を上げながら大きな声を出す。先程の光景を思い出してみたが、楽しいと思えた場面は一切なかった。
「吾輩だって青春感じたいよ!地球の学校でやる"体育祭"やら"文化祭"を体験してみたい!」
どうやら宇宙から来た総帥は地球の文化に興味があるらしい。総帥が発したワードで一つ、引っかかるモノがあった。
「文化祭ですか?それなら再来週に僕の高校でやりますよ?」
僕が言い放った言葉を聞き、総帥はぴょいっと飛び上がる。まって今どうやって飛んだの?
「本当か⁉︎吾輩、皆んなで行きたい!」
キラキラと目を輝かせる総帥へ僕が言葉を投げかける。
「僕は構わないですけど…うちの文化祭、他所から入れる人数が限られてるらしくて、事前に応募しないといけないんですよ」
僕の高校は学業は勿論、行事にも力を入れている。
その為か、体育祭や文化祭といったイベントは地元では人気であり、毎年多くの人が見に来られる。僕はスマホで学校のホームページを開き、文化祭抽選応募の欄をタップし人数分を選択する。
「…取り敢えずこれで応募は出来ましたけど本当に人気なんで当たるか分かりませんよ?」
「なんでそんなに人気なんだ?」
僕はある一つの理由が思い浮かぶ。
「多分、ライブ公演が大きな理由ですね」
「ライブ?」
「なんでも有名なアイドルの方が毎年来られるらしいですよ」
学校がどのような事でアイドルを呼べているのかは知らないが、アイドルが来るとなればそれは人気になるだろう。
僕がそう言うと総帥がへぇーっとボタンを押す動作をする。
「まぁ後は運に任せましょう。当たらなければ残念でしたということで
「吾輩良い子だから絶対当たるぞ!」
自信があると言わんばかりに胸を張る。
「良い子は人のアイス食べないですよ」
「いやだからごめんて…」
僕は恨みを込めて総帥へ言った。
その数分後に、"ルイ姉の浮気者!"と言う沙花叉さんとトロフィーを持った風真さんたちが帰ってきた。
昼ご飯を食べた後の授業というものはどうも眠くなるもので僕は5限が終わる頃にはフラフラとしていた。次の6限が始まる前に担任の先生から話があると前を向かせられる。
「ちょっと急で悪いんだけど、転校生を紹介します」
周りが騒つく。僕は先生の言葉で目が覚める。
えっ?今のタイミングで?普通朝のホームルームとかでやるものじゃないのかと疑問に思っていると担任は外で待っているであろう転校生へ中に入るよう促す。
───そして次の瞬間、僕の思考は一瞬にして止まる。
「じゃあ自己紹介から」
「どうも田島ダークネスです。よろしくお願いします」
僕は自分の頭を机の上に自らガンッとおもいっきりぶつける。
夢ではなかった。