秘密結社のバイトの日常   作:ライ麦小麦

7 / 29
総帥、学校へ行く

 

 

 

目新しいものには興味が湧くからか、クラスの人が我が校の制服を着た総帥の周りに集まっていた。

耳を澄ますと何処から来たのか、何が好きなのかと質問攻めにあっていることが分かる。

僕が総帥の方を見ていると気が付いたのか隣に座るクラスメイトが僕の肩を叩く。

 

 

「やっぱり上山君も転校生の事が気になるのか?」

 

「…いやまぁ」

 

 

会うのが初めてでは無いなど僕の口からは言えなかった。

 

 

「背丈は小さいけど可愛いよなぁ」

 

 

下心を持つような発言に何故だか腹が立つ。少しだけ娘が取られそうになる父親の気持ちが分かったかもしれない。

僕は何も答えずもう一度総帥の方を見ると、どうやら家では何をしているのかと質問をされているようだった。

 

 

「家では好きなお紅茶を飲みながら読書をしてます」

 

 

ガンッ!

僕は机に頭をぶつける。

 

 

「上山君⁉︎」

 

 

続いて休日の過ごし方

 

 

「わが…私は綺麗好きで、休日は掃除とかしてますね」

 

 

ガンガンッ!

2発連続でぶつける。

 

 

「上山君!大丈夫⁉︎」

 

 

自分の額に手をやると血が付いてる事に気が付く。

 

 

「だ、大丈夫」

 

 

ふらふらとする中、僕は再度耳を澄ませ、聞こえてくる総帥の解答。

 

 

「健康を維持する為、毎日人参などの野菜を食べてますね」

 

 

ゴンッ!

トドメの大きな1発。

 

 

「すまん!俺の言い方が悪かった!頭大丈夫か!」

 

 

いつもの総帥とのギャップに頭がクラクラとする。

ふと教室にかかっている時計を見ると六限目が始まる時間になっている事に気が付き、その瞬間チャイムが鳴る。

総帥の周りに集まっていた人たちは自分の席に座る。

時間割を確認すると六限目は化学と書かれていた。

僕は自分の鞄からノートと教科書を取り出し机の上に置く、あとは先生が教室に来るのを待つだけだ。

すると教卓の方の扉が開き、先生が姿を表す。

 

 

 

 

 

「こんこよぉ!じゃあ今日の授業は…」

 

 

 

 

 

 

 

ここの学校のセキュリティーはどうなってんだ⁉︎

 

 

僕の大声が教室中に響き渡った。

 

 

「お前の精神がどうなってんだよ!」

 

 

そうツッコミを入れる隣に座るクラスメイト。

あと一人でholoxがコンプリートされる。

 

 

 

 

 


 

 

カッカッとチョークで黒板を叩く音が教室に響き渡る。

 

 

「これは分子間力によって…」

 

 

存外、博士の授業はとても分かりやすかった。

重要な点をまとめ、ノートに板書がしやすい書き方をする。偶に描かれるコヨーテのような可愛らしいイラストでポイントを説明してくれる。流石はholoxの頭脳だ。

 

 

「でもって正六角形の平面が重なってるのは…じゃあラプラスさん!」

 

 

名指しによる生徒の解答を聞く。

総帥の方に目をやる。

 

 

「ふほぁい!」

 

 

机の上に立てている教科書の後ろに弁当を隠し、箸を持っている総帥が居た。僕は手で顔を覆う。

何をやっているんだあの総帥わ。

 

 

「あれ?ラプラスさん?」

 

 

総帥が口に含んでいた物を飲み込む。

 

 

「お弁当たべてました」

 

「なんでだよ!」

 

 

もう嫌だ。

 

 

「授業中にお弁当をバレないように食べるのに憧れていたんだよ!良いだろ!」

 

 

"いや良くないだろ!"と言いたかったがこれ以上目立ちたくない。

 

 

「こより先生も食べる?」

 

「えっ!良いの!」

 

「ほれ人参」

 

「苦手なもんじゃねぇーかぁ!」

 

 

博士が総帥の箸を取り上げ、小さなハンバーグを掴む。

 

 

「あっ!それ吾輩の豆腐ハンバーグ!」

 

「ふはは!防御が甘いぞ!ラプちゃん!」

 

 

授業中に何をしているんだこの二人。

よく見ると二人とも僕の方をチラチラと、早くツッコメと言わんばかりの眼差しが向けられる。

 

 

「あと黒鉛です」

 

えっ!今言うの⁉︎ハンバーグの流れ何処いったんですか!

 

 

───あっ。

 

 

クラスの人たちの目線は急に立ち上がった僕へ集まる。

 

 

「…上島ぁ。」

 

 

僕は隣の席に座る上島君の名を呼び、覚悟を決めた。

 

 

「あとは任せた。」

 

「えっ?」

 

 

僕は立ち上がった状態から頭を机へ思いっきりぶつける。きっと今日1番の衝撃音が教室内に響いただろう。グッパイ。僕の平穏な学生生活。

 

 

 

お前、机と頭に何の恨みがあるんだよ!!

 

 

隣の席の声を聞きながら僕はそのまま気絶した。

 

 

 

 


 

 

 

 

目が覚めると僕はベッドの上に寝ていた。

見渡すと見覚えのある天井が広がっており、ここが保健室であることに気が付く事に時間はかからなかった。

 

僕はベッドを仕切る為の間仕切りカーテンに手をかけ開ける。

 

 

「あっ起きたか?それ…」

 

 

シュッとカーテンを閉める。

 

 

「おい!変なもの見たみたいな感じで閉めるな!」

 

 

無理に開けてこようとする総帥とそれに対抗する僕。

 

 

「うおおー!勘弁を!ご勘弁を!」

 

「何をだよ!」

 

「なんで僕の学校にいるんですか⁉︎もう怖いよ貴方達!」

 

「説明するから一回開けろ!」

 

 

そう言いながらカーテンが勢いよく開く。

辺りを見渡すと当部屋の先生は席を外していた。

 

 

「取り敢えず先生の代わりに包帯巻き直してやるから。ほれ」

 

 

ここに座れと椅子をぽんぽんと叩く。

僕は指示に従い椅子に座り総帥へ質問する。

 

 

「…それで総帥は何しに学校へ?」

 

 

先生の代わりに僕の頭に包帯を巻いてくれている総帥へ質問をする。

 

 

「抽選落ちた」

 

「はい?」

 

「だからぁ、文化祭の抽選落ちたからバイトの高校に入学した」

 

「"汚れ落ちたから掃除を辞めた"みたいなノリで僕の高校に入らないでもらえます?」

 

 

先日、応募した抽選結果が落選という悲報であったらしい。確かにここの生徒なら無条件で文化祭は楽しめるがあまりにも脳筋過ぎる考えに頭が更に痛くなる。

因みに博士は総帥が"一人じゃ寂しい"との事でついて来させられたらしい。

 

 

「他の高校の文化祭に行けば良かったじゃないですか。僕の高校に固執する理由とかあります?」

 

「いや、知らない人の学校に入るのは抵抗あるだろ。バイトの文化祭に行きたいんだよ!吾輩わ!」

 

 

よっぽど悔しかったのかぎゅっと包帯を巻く力が増える。力があまりないからかさほど痛くはなかった。

 

 

「ほれ、巻き終わったぞ?」

 

「ありがとうございます」

 

 

しかし僕の疑問は全て解消されていなかった。

 

 

「それで…どうやって僕の高校へ入学したんですか?」

 

「在籍証明書とかを偽造して、博士の薬で記憶改竄」

 

「総帥、僕も罰を受けるんで自首しましょう」

 

 

やっている事が思ってた以上にえげつなかった。

 

 

「2週間ほどの短い付き合いだから良いだろ?」

 

「僕の高校とは遊びだったんですね!」

 

「その言い方やめろ!」

 

 

頭を叩かれてしまった。

 

 

「そういえば田島ダークネスでしったっけ?…なんでラプラス消してダークネスは変えなかったんですか?」

 

「お前!吾輩の大切な苗字を消せるか!」

 

「ダークネスが苗字だったんですね」

 

 

初めて知った情報だった。

正直、名前はあまり気にならなかったが質疑応答に関しては別だ。少なくともあの回答では僕の知っているラプラス・ダークネスは紹介されていない。

 

 

「それよりなんですか!皆んなの質問に対してのあの返答!あのせいで今僕の頭に包帯巻かれてるんですから!」

 

「大人っぽかっただろ?幹部がカンペをくれたんだよ」

 

 

総帥はポケットから一枚の紙を取り出した。

 

 

「幹部が"これ言えば間違いない!"って言ってたからな」

 

 

内容を確認するとそれぞれの質問に対しての回答が書かれていた。

最後の方には"これを言えば人気者間違いなし!鷹嶺ルイの駄洒落集!"と書かれていた為、僕はその部分だけ破いた。

 

 

「あっ!返せよ〜!それ吾輩のだぞ!」

 

「総帥!これ絶対言っちゃ駄目なやつです!」

 

 

初日で駄洒落なんてハードルが高過ぎる。

自分のスマホを見ると下校時間に近づいている事に気が付く。

 

 

「そろそろ帰りましょう」

 

「バイトは頭怪我してんだからもう少し休んだ方が良いだろ」

 

 

そう言うと総帥は保健室のベッドに僕を寝かせつけようとしてくる。

 

 

「いやもう大丈夫なんですけど」

 

「吾輩の優しさを素直に受け取っとけ。なんなら子守唄でも歌ってやろうか?」

 

 

ニヤニヤと僕の方を見ながら言う総帥。

 

 

「…見守られるならスタイルの良いお姉さんが良いです…」

 

「もう一生、バイトなんかに子守唄なんて歌ってやんねぇからな!!バイトのバーーーカ!

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その後、何事もなく総帥の学校初日は終わり、僕と総帥はアジトへ戻っていた。

制服からいつもの服装に着替えた総帥は喉が渇いたのか飲み物を要求してくる。

 

 

「バイトぉー、コーラってまだ残ってたっけ?」

 

 

僕は冷蔵庫の中を確認する。

しかし、総帥のお目当てのものは入っていなかった。

 

 

「ちょうどきれてますよ。昨日まで一本残っていたんですがね」

 

「うぇー…吾輩この為だけに今日の学校頑張ったのに…」

 

 

残念そうに項垂れる総帥を眺めながら僕は椅子に座る。

 

 

「なぁバイト」

 

「なんですか」

 

「なんでコーラって無くなるんだろうな」

 

「総帥が飲んでるからです。哲学みたいに言わないでください」

 

 

総帥は空を眺めながら何かを思いついたのか「あっ!」っと声を出し、部屋の端っこに置いてあるホワイトボードと総帥が使う為の足場を持ってきた。

すると足場の上に乗りそのホワイトボードに何かを書き出す総帥。

 

 

「コーラ育てるか!」

 

「却下で」

 

 

ホワイトボードには"コーラは育ててなんぼ"と書かれていた。

見解は昔に使った博士の力作、木に食べ物を生やす薬を応用し、コーラを生やそうとのことだ。

 

 

「普通に買ってくれば良いじゃないですか。下の自販機にペットボトルのやつ売ってましたよ」

 

「バイトは分かってないなぁ…キンキンに冷えた缶のやつが美味いんだよ」

 

 

こだわりがあるからかそう言う総帥。

ここから近くの缶ジュースが売っている場所は少し離れたコンビニだと察する。

決して遠くはないが面倒だと言われれば納得できる。

 

 

「バイト買ってきて!」

 

「嫌ですよ!総帥が行けば良いじゃないですか!」

 

「自転車漕げばすぐ着くし別に良いだろ!5円やるから好きなの買ってこい!」

 

「お使いで報酬は5円はおかしいでしょ!だったら50円くださいよ!穴空いてるよしみって事で!」

 

「お前5円玉様なめるなよ!チョコレートとか飴買えちゃうからな!侍は喜んで受け取ってたぞ!」

 

「もしかしてまだ風真さんの給料5円チョコなんですか⁉︎いい加減、しっかりとした金額を与えてあげてくださいよ!」

 

 

昔に"風真は5円チョコが給料でござる〜"と聞いたときには涙を流した。

僕は言い争っても何も変わらないと思い、総帥へ提案する。

 

 

「分かりました!じゃあジャンケンで決めましょう!」

 

「良いだろう!吾輩、ジャンケンではグーのラプラスって異名がついてたからな!」

 

「えっ?それ心理戦に持ち込もうとしてるんですか?」

 

「いくぞ!ジャンケン!」

 

 

ぽんっと同時に手を出す。

 

 

僕がパーを出し、総帥が服の長い袖を出す。

 

????

 

 

「やったぁ!吾輩の勝ち〜!ガハハ!」

 

「いやずるくないですか⁉︎袖で隠れて何出したか分かんないですよ!」

 

「負けた人は早く買ってきてもらって良いですか?」

 

 

真顔で言われる。

 

 

「ちょっと袖の中見させてくださいよ!」

 

「やだよ!吾輩の袖ギャラクシーは安くないぞ!」

 

「なんですか袖ギャラクシーって!カッコよく言えばなんでも良いってもんじゃないんですよ!」

 

「吾輩の袖の中には宇宙が広がってるからな」

 

 

袖ギャラクシーが何かを詳しく教えてもらえず、総帥に背中を押され、アジトの外へ出されてしまった。

携帯の着信音からメールが届いている事に気が付きメールを開くと、総帥から"買ってくるまで中に入れない"と書かれていた。

 

 

仕方なく買いに行った僕は腹いせに買ったコーラを思いっきり振り、総帥へ渡すと見事に命中したが、帰ってきた風真さんにこっぴどく怒られてしまった。

 

 

 

 

 




ラーメン屋とかにある瓶コーラってなんかわくわくしますよね
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。