秘密結社のバイトの日常   作:ライ麦小麦

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いつも読んでくださり誠にありがとうございます!本当に頭が上がりません!
感想など書いてもらえた日にはホワホワしながら喜んでます。
今後ものんびりと書いていきますのでどうぞよろしくお願いします。


kzmの大冒険

 

 

4限目の終わりを知らせるチャイムが教室に鳴り響く。

本日の学業は午前に終わる事を知っていた僕は先程使っていた授業の教材を鞄へとしまい帰宅の準備をしていた。

しかしそれを良しとしようとしない人物が目の前に現れる。

 

 

「バイト、吾輩と少し付き合え」

 

「…愛の告白?」

 

「違うわ」

 

「今日のholoxのバイトは休みの筈ですよね?僕、家帰ってやりたい事あるんですけど」

 

 

携帯でシフト表を確認すると今日の日付に休みという太字。ふとクラスメイトの視線が僕たちの方に向いている事に気がつく。

 

 

「なんだかここじゃ喋り辛いな」

 

 

腕をひっぱられそのまま教室の外へ連れ出されてしまった。廊下へ出ると同時に総帥は僕に言う。

 

 

「買い物行くぞ」

 

「えっ?拒否権…」

 

「だめっ」

 

 

毎回何かしらで僕の休日が無くなっているような気がする。

 

 


 

 

僕と総帥は学校の近くに建てられているそこそこ大き目なショッピングモールへと来ていた。周りを見渡すと平日だとは思えない人の数が訪れている辺りそれなりに人気があるのだろう。

 

 

「総帥、迷子にならないでくださいね」

 

「だから子供扱いするなって」

 

 

総帥から聞いた話によるとアジトの洗濯機が壊れてしまったらしく、替えの物を買うのが理由で此処へ来たとのこと。なんでも壊れた原因はどこかの総帥が洗濯機でスライムを作ったせいらしい。

 

すると総帥から唐突にとある話題をふられる。

 

 

「お前好きな人とか居る?」

 

「やっぱ総帥僕に気があるでしょ!」

 

あるわけないだろ!

 

 

そんなにはっきり言われると傷付く。

 

 

「バイトらへんの年頃だと恋愛エピソードとか沢山出てくるだろ?バイトの恋愛話はないのか?」

 

「僕のですか?」

 

 

思い返してみればそれなりに楽しく過ごせた学校生活…そんな中でも苦い思い出の一つぐらいはある。

 

 

「…一応、中学の時に好きな子は居ました」

 

「その話聞かせてくれ!」

 

 

ワクワクと目を輝かせる総帥は僕の話に興味津々のようだ。

 

 

「三年間クラスが同じで仲が良かった○○さんって人なんですけど」

 

「うん」

 

「趣味とかも同じで話がよく合うなぁみたいな…気が付いたらこう…好きっみたいな」

 

「お前が照れながら言うとだいぶきついな」

 

「これから悩み事を総帥には相談しません」

 

「それで?告白しちゃったの?」

 

「…夏に告白…してフラれました。」

 

「ひゃー…」

 

 

僕は真顔で言った。

 

 

「友達としか見られないって言われ、そっから一言も喋ってないです」

 

 

なんだろう…今日の天気は晴れのはずなのに顔が濡れてしょうがないや。

 

 

「んーーバイト……ドンマイ!」

 

「まじで一生相談しません!絶対!」

 

 

親指を立てる総帥に対して僕はそう決意した。

空気が気まずくなったからか総帥が別の話題をもちかける。

 

 

「思ったんだがバイト。お前もしかして友達居ないのか?」

 

 

瞬間、僕の動きが止まった。

 

 

「い、いーーや…と、友達の1人や10000人ぐらいは軽くいますしー…」

 

「桁数バグってるだろ。あと目をそらすな。数日だけしか見てないが、バイトが学校で人と喋ってるところを見たことがないぞ?」

 

「それは総帥が見てないだけでもしかしたら影で話してるかもしれませんし、それに学校以外の場所で友達の関係を築いてる可能性だってあるわけですので曖昧な根拠で物事を決めるのは良くないかなぁって僕は思いますけど…他にも…」

 

「すまん吾輩が悪かった!もう何も考えなくて良いからな!吾輩が居るからな!」

 

 

何かを察したのか慌てて口を塞がれてしまった。

そういう気遣いが逆にオーバーキルになるですよ。総帥。

 

 

「てかなんでこんな話題を振ったんですか⁉︎僕の心の傷に大ダメージですよ!もう瀕死ですよ!」

 

「いやだって恋愛話なんて定番だろ?吾輩一回やってみたかったんだもん」

 

「修学旅行とかのノリを今持ってきます?」

 

 

確かに高校に友達は居ないが、中学の時には多少そう呼べる人物は居た。

殆どの知人は別の高校へ進学してしまった為、"今"は話せる人が居ないだけである。しかし僕はある事を思い出し小声で呟いた。

 

 

「…いやでも1()()()()まだ連絡を取り合ってる子が居たな」 

 

「何の話だ?」

 

 

思わず口に出してしまった為「なんでもないです」と言い、はぐらかすと総帥の携帯がけたたましく鳴り響く。総帥がポケットから取り出した携帯の画面には"サムライ"とかかれた電話番号が表示されていた。

 

 

「そう言えば侍も来るって言ってたの忘れてた」

 

 

すかさず総帥は携帯をスピーカーの設定に変え僕にも声が聞こえるように電話に出る。

 

 

 

ここどこでござるか!

 

 

 

今にも泣き出しそうな風真さんの震えた声が携帯から聞こえてきた。

 

 

「…風真さん迷子になってません?」

 

「あいついつも道迷ってるよな」

 

『たすけてぇ〜』

 

 

僕らは現状を打破する為にも情報を集める事を目的に風真さんに今周りに何があるかを問いただす。

 

 

『ええっと…目の前にお城があるでござる』

 

「お城?もしかして東京の外行ってます?」

 

『いや日本のお城というか…西洋のお城なのかなぁ?』

 

「総帥、ついに風真さん…迷子で海越えました」

 

「あいつ凄いな」

 

 

今までの記録を凌駕(りょうが)したな。

 

 

越えてないでござるよ⁉︎流石の風真もそこまでは出来ないよ!』

 

 

風真さん曰く、気が付いたらお城の前に着いていたらしい。風真さんにとってそれが日常なのだろうか。

 

 

「近くの人に話しかけたりとか出来ませんか?そこで風真さんの現在地が分かるかもしれません」

 

『…分かったでござる』

 

 

了承したと同時に近くに居た人と会話を始めたのか風真さんの声が遠くなる。会話をしている相手は声から女性だと分かった。話終えた風真さんが会話の内容を説明し始める。とある女性の発言を要約すると風真さんの現在地はとある王国の城下町とのことだ。

 

問題なのが風真さんの口から発せられた王国の名はこの世界にはないこと。

 

 

「…総帥これ多分あれですよ。風真さん異世界転生してます」

 

「海越えるじゃなくて次元越えてきたか…あいつやべぇな」

 

『意味分からないでござるよ!なんで道に迷ったら異世界転生してるでござるか⁉︎』

 

 

そんな事僕らに聞かれても答えられるわけがない。

何したら次元を超えられるんだろう。

 

 

「取り敢えず近くの家の中に入ってビンを破ったり、タンスを物色してみるのはどうですか?」

 

『風真を山賊か何かにしたいのでござるか?』

 

「確かに最初のやる事と言ったらそれだよな。偶にお金とか手に入るし」

 

『あれ?それが普通なの?』

 

 

よく考えればゲームの中とはいえ、やってる事は結構えげつない。普通に住民からしたら溜まったもんじゃない。

すると先程の女性の声が再度聴こえてくるが話の内容は聞き取れないまま。数分後かにやっと風真さんの声が近づいた。

 

 

『もしもし?聞こえるでござるか?』

 

「大丈夫だ。聞こえるぞ〜」

 

 

風真さんは先程の女性との会話を話す。

 

 

『先程の女性この国の聖騎士団の団長を務めているらしく、今から魔王を討伐しに行くらしいでござる』

 

「イベント入った?」

 

「イベント入りましたね。その団長さんはどんな見た目の人ですか?」

 

『見た目?え〜っと、鎧を着てて、腰に見たことない武器を付けているでござるな。こんぼう?のような…』

 

 

僕は携帯で"中世ヨーロッパ こんぼう"と調べ、とある武器の名前が上がっる。

 

 

「もしかしてメイスですかね?」

 

「他に特徴とかあるか?」

 

『特徴でござるか?う〜ん…大胸筋が…すっごい?』

 

 

間髪入れず僕は言う。

 

 

「ビデオカメラって出来ましたっけ?」

 

「お前がフラれた理由、なんとなく分かったわ」

 

 

何かを悟られてしまった。

風真さんはゴホンっと咳払いをし、話を戻す。

 

 

『それで風真も一緒に行かないかって…』

 

「行けば良いんじゃないか?」

 

『…なんかさっきから2人とも適当過ぎではござらんか?』

 

「いやだって次元が違かったら僕らなんも出来ませんし…」

 

 

よく分からない現状で一つだけ分かるのは次元が違くても携帯は繋がるって事が凄いぐらい。

 

 

「多分あれだ。魔王倒したらなんかくれると思うぞ、そこで元の世界に戻して!って言えば帰れる筈だ」

 

『帰れなかったらどうするつもりでござるか?』

 

「そん時はそん時だ。じゃっ!頑張れよ!」

 

うえっ!ちょっと!

 

 

風真さんの言葉を最後まで聞かず、総帥は電話を切ってしまった。僕は総帥へ疑問に思った事を聞く。

 

 

「…大丈夫なんですか?」

 

「何がだ?」

 

「いや万が一、風真さんに何かあったら」

 

「あいつは弱くない。吾輩が雇った用心棒だぞ?魔王なんかもうこうだ!」

 

 

ズバッと刀で何かを切るジェスチャーをする総帥。

 

 

「あいつから電話がかかってくるまで気長に待とうや」

 

「…そうですね。何か甘い物でも食べますか?僕心の傷を糖分で中和させたいです」

 

「吾輩ドーナツ食べたい!」

 

「フードコートにあると思うので行きますか」

 

 

そうして僕と総帥は目的のある場所へ歩き出した。

 

 


 

 

「あま〜〜」

 

 

幸せそうにドーナツをほうばる総帥を見ながら、僕はタピオカミルクティーを飲んでいた。久しぶりに飲んだが案外美味しいものだ。

僕のタピオカミルクティーが残り僅かとなった頃に総帥の携帯に先程と同じ番号の電話がかかる。

総帥は躊躇なく電話に出た。

 

 

「もしもし?魔王倒したか?」

 

「…何この会話」

 

 

こんなやりとりはじめて見た。

 

 

『一応、倒したでござるが…』

 

 

もごもごと何か気まずそうにしている風真さん。

 

 

「どうした?帰れなかったのか?」

 

『いや元の世界にはいつでも帰してくれるらしいのでござるが…』

 

「何か帰れない事情でも?」

 

『か…が…まお…に』

 

「えっ?」

 

『風真が新しい魔王に…』

 

「「なんでぇ⁉︎」」

 

 

急展開過ぎるだろ。

 

 

『いやね?風真、魔王に最後の一撃を喰らわして世界救ったでござるよ。そしたらその魔王が"次は貴様だ!"って…』

 

「いやなんでその指示従ってるんですか⁉︎早く帰ってきてくださいよ!」

 

 

何でこの人僕たちが呑気にタピオカミルクティー飲んでる間に世界救って魔王になってるんだ。この一日だけで経歴凄い事になっちゃったよ。

 

 

『違うよぉ〜。この世界のモンスターが可愛くて見放すのが可哀想なんでござるよぉ〜』

 

「あれ?僕たちの目的ってモンスターを飼うことでしたっけ?」

 

「洗濯機を買う事だろ!」

 

『とくにこのスライムがぁ』

 

「総帥、伏線回収ですよこれ!」

 

「どこがだよ!侍!お前は取り敢えず早く帰ってこい!」

 

 

その後、胸に勲章を付け腕にスライムを持った風真さんが帰ってきた。ぽこべぇの背中にはお土産らしき饅頭を背負っており、その美味しさから先程までの事は綺麗さっぱり洗い流された。

 

 

 

 




最近爪切りました。
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