秘密結社のバイトの日常   作:ライ麦小麦

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社内恋愛は禁止!でござる。

 

 

「holoxは社内恋愛禁止なんでござる!」

 

 

先日、風真さんが拾ってきたスライムと戯れている僕にそう言ってきた。

 

 

「何の話ですか?」

 

 

すると風真さんは一枚の紙を見せてきた。

見覚えのある紙に懐かしさを感じる。

僕がバイトとして雇われる前に見せられたholoxの禁止事項一覧表、その中の社内恋愛禁止という欄に赤線が引かれていた。最後の方を見ると"バイトが吾輩に逆らう事"と書いていた。おいこんな規約最初無かったぞ。

 

 

「…それで誰のことを言ってるんですか?」

 

「沙花叉とルイ姉の事でござるよ!」

 

 

思い返してみると確かにあの2人は一緒にいることが多い。

 

 

「よく一緒には居ますけど…それで決めつけるのはどうなんですかね」

 

「そこで風真、考えました!」

 

 

するとポケットの中からデジタルカメラと黒いサングラスを取り出した。

よく見ると横に立っているぽこべぇは既にサングラスをかけていた。あらやだかわいい。

 

 

「これで証拠写真を撮って真相を明らかにする!」

 

「成る程、良い考えですね。じゃあ頑張ってください」

 

 

僕がスライムを抱き抱え、部屋から出ようとする。その瞬間、僕の腕を掴まれてしまった。

 

 

「多々益々弁ず。多い方が有利でござるよ?」

 

 

ぽこべぇへ助けを求めようとしたが僕の足を掴んでいた。

 

 

…そっち側なのか…ぽこべぇ。

うきうきしているぽこべぇを見ながらそう思った。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

「いたでござるよ」

 

 

風真さんの目線の先に鷹嶺さんと沙花叉さんの後ろ姿があった。

僕、風真さん、ぽこべぇは体を電柱に隠しながら顔だけ出し、2人の姿を観察する。

 

 

「あっ!海殿のサングラスを渡すのを忘れてたでござる!」

 

 

そう言うと僕用のサングラスを渡されたが僕はそれを受け取り驚愕した。

 

 

「ありが…ちょっと待ってください!なんでフレームが星形なんですか⁉︎」

 

 

ぽこべぇと風真さんが付けているのはよくあるウェリントン型のサングラスでありそれに対して僕は星形。

 

 

「それしか無かったでござるよ…」

 

「こんなの付けたら嫌でも目立ちますよ!気分はパーティですよ!」

 

 

すると風真さんとぽこべぇはしょんぼりとしながら自分たちの付けていたサングラスを取り、僕へ渡そうとしてきた。

 

 

「じゃあ風真のやつと交換するでござるか?」

 

 

2人を見て何故か心が痛む。

 

 

「い、いや!ありがたくかけさせてもらいます!」

 

 

瞬間、2人にニパっと笑顔が戻った。

僕はサングラスを受け取り装着する。すると虹色に光りだした。光りだした⁉︎

僕はサングラスを外し、それを地面に叩きつける。

ふと横を見ると再度2人が涙目になっていた。僕はピカピカと光っているサングラスをそっと拾い上げまた装着した。

 

 

「それで…鷹嶺さん達は今どういう状況ですか?」

 

「そうでござるな…あっ!手を繋いだ!」

 

「いや手を繋ぐのはよくあると思いますけど…」

 

「もう少し様子を見てみるでござるか…」

 

 

僕らは鷹嶺さん達の尾行を続けた数分後、人通りの多い商店街へ出た。

平日の夕方だからか夕食の準備をしようと多くの人が買い物へ来ており、周りからはヒソヒソと話し声が聴こえてくる。

 

 

「なんか視線を感じるでござるなぁ」

 

「そりゃあパーティメンバーにカラフルにパーティしてるサングラスをかけてる奴が居ますからね。あっ光り方が変わりましたよ。凄い凝ってますねこのサングラス」

 

 

僕はこのサングラスを受け入れた方が気が楽だと思い、何も考えないことにした。

逆に鷹嶺さん達にバレないのが不思議なくらいだ。

すると鷹嶺さんと沙花叉さんはとある喫茶店に入っていく姿が見えた為、僕らも少し間を開け、同じ店に入店。

 

中へ入るとほんのりと香る珈琲の匂いと昔ながらの喫茶店のような雰囲気から、無意識にも心地が良いと感じる。こんな所が近所にあったのかと驚いてしまった。

 

僕らは鷹嶺さんと沙花叉さんが座っている席の壁で遮られている反対側の席に座る。横からは談笑をしているのか沙花叉さんの笑い声が聞こえてきた。席に座ったと同時に店員さんがメニュー表を渡してくれ、僕の方を見るや否や驚いた顔をしていた。バイトよ…分かるぞ、その気持ち。

 

 

「取り敢えず何か注文しましょう」

 

 

何も注文しないのは迷惑だと思い店員さんを呼ぶ。僕はブレンドなどよく分からなかった為、適当に選んだ珈琲3人分を店員さんへ注文した。

 

 

「話し声とかって聞こえますか?」

 

「ここからじゃしっかりと聞こえないでござる」

 

 

運が良いのか壁の高さが椅子から膝立ちすれば反対側が見られる程であり、顔をそっと出し覗き込んだ。

沙花叉さんと鷹嶺さんのテーブルには珈琲が入っているであろうマグカップと小さなケーキが2人分置いてあった。

 

すると鷹嶺さんがケーキの一口分のサイズをフォークで刺し、沙花叉さんの口の方へ運んでいた。

 

 

「これだ!」

 

 

決定的瞬間だと言わんばかりに"今だ!"だと思ったのか、すかさず風真さんはカメラを目の前の光景へ向ける。

次の瞬間、カメラからボンっと嫌な音がし煙が立ち上がった。

 

 

「なんでこのタイミングでカメラが壊れるのーー⁉︎」

 

「うえっ!風真さん!大丈夫ですか!」

 

お客様⁉︎

 

 

事態に気が付いた店員さんが手に持っていた僕達が注文した珈琲を手に持ちながら駆け寄って来た。

 

 

「その煙…も、もしかして火事ですか!え、ええっと…あっ!こ、この珈琲で!!」

 

 

狼狽している店員さんは案を出したのかそれを実行する。

マグカップに入った珈琲を煙が出てる方へかけようとするが、かかったのは僕の頭だった。

 

ここのマスターが愛情を込めて淹れてくれた珈琲。勿論、それは火傷しそうなほど熱かった。

 

 

あっっつ!!

 

海殿⁉︎

 

 

熱いと感じた感覚が脳へと伝わり、運動へ変換される。

僕はその場に立ち上がり、足を滑らしてしまった為、壁を乗り越え、反対側のテーブルに背中を思いっきりぶつけてしまった。

 

 

ぐわっ!

 

 

髪はずぶ濡れ、顔には光るサングラス…こんな人が急に来たら

 

 

うわーーーーー⁉︎

 

うえええええ⁉︎海くん⁉︎

 

 

この反応になるだろう。

 

 

「海殿!」

 

「お客様!申し訳ございません!」

 

 

駆け寄ってくる人たちを見ながら来なければよかったと後悔した。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

「ううっ。風真のせいで…ごめんでござるぅ」

 

「いや別に風真さんは悪くないですよ」

 

 

風真さんとぽこべぇが僕の頭に泣きながら保冷剤を当ててくれた。

 

 

「どう!似合う?」

 

「いやぁ〜…沙花叉は外した方がいいと思ってるよ…」

 

 

反対側に座る鷹嶺さんは僕のサングラスをかけて遊んでいた。

 

 

「それで?なんでいろはちゃん達は沙花叉とルイ姉を追ってたの?」

 

「確かにまだ私聞いてなかった」

 

「ええっと」

 

 

風真さんは尾行していた理由を説明する。

それに対しての回答を鷹嶺さんが出す。

 

 

「なるほどねぇ。いやいや、私らは大親友なだけだよ」

 

「エッ…」

 

 

沙花叉さんの方を見ると鷹嶺さんの方を見る目から光が無くなっていた。

逆に鷹嶺さんの目は僕のサングラスで煌びやかに光っており、取らずにまだ付けていたらしい。

 

 

「えっいや、だ、大親友?」

 

「うん。大親友」

 

「も、もっと、う、上…なんなら…ねぇ」

 

 

より目の光を無くす沙花叉さん。

僕はある提案をした。

 

 

「鷹嶺さん。そのサングラス沙花叉さんにかけてあげてください」

 

「いい案だね!沙花叉、これ似合うよ!」

 

 

鷹嶺さんはサングラスを外し、沙花叉さんへかける。

これで目の光は大丈夫になった。

 

 

「おい!沙花叉で遊ぶなよ!火傷した所、突っついてやろうか!」

 

「僕は怪我人ですよ!優しくしてください!」

 

「こら、2人とも!ここは店の中だよ?静かにしないといけないでしょ!」

 

「ほら!海くんのせいでルイ姉に怒られちゃったじゃん!」

 

「これ僕のせいなんですか?サングラス!似合うと思った!だけなのに!」

 

「五・七・五みたいに言わないでよ!」

 

「物事をこ"まめ"に考える…珈琲"豆"…いや違うなぁ」

 

 

鷹嶺さんはダジャレのレパートリーを増やそうと努力していた。

 

 

「それじゃあ真相も分かった事だし、風真たちは帰るでござるな。いくよぽこべぇ」

 

「私と沙花叉はもう少し残ってるよ」

 

 

風真さんは手を振り、店を後にした。

腰を強打し動けなかった僕は大きくなったぽこべぇの頭の上に乗せてもらいながら帰路を辿る事にした。

 

 


 

 

holoxのアジトへ着くと総帥と博士が暇そうに椅子に座っていた。

 

 

「おお。侍、今帰ってきたのか」

 

「おかえり〜。あれ?海君と一緒に居たんじゃないの?」

 

「博士、僕はここです」

 

 

そう言いながらぽこべぇから降り、そのまま床に倒れる。

 

 

「すいません。腰をやっちゃって動けないんです。アジトに湿布ってありましたっけ?」

 

「確かあったはずだけど…ちょっと待ってて!」

 

 

博士は立ち上がり、別室へ湿布を探しに行ってくれた。

 

 

「何があったんだ?あいつ」

 

「色々あったでござるよ」

 

「ん?…てか侍!なんで吾輩と同じスマホケースをもってるんだ!」

 

 

よく見ると風真さんが使っているスマホケースと総帥の使っている物が全く一緒だったことに気がつく。

 

 

「えっ⁉︎い、いやこれは違うでござるよ!」

 

「何が違うんだよ!」

 

「そ、そっちだっていっつもお揃いにしようとしてくるじゃん!」

 

「バカ!何でここで言うんだよ!」

 

「あれ?なに動揺してるでござるか?」

 

「お前!まじ許さないからな!」

 

「お待たせ!見つけてきたよ…なんか言い争ってない?」

 

「仲が良いだけですよ」

 

 

僕と博士はそのまま風真さんと総帥の言い争いを見ながら親指をぐっと上げた。

 

 

 




辛いもの食べすぎてお腹壊しました
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