ダイレクト・アタッキュア・ショー   作:川崎三文

2 / 6
二話【魔法銃士 プリズムアタッキュア】

 会議室に資料が届けられると、サクラがいち早くそれに手を伸ばし、やる気のなさそうなジト目で台本や設定の書かれた資料をパラパラとめくった。

 

サクラ「『魔法銃士 プリズムアタッキュア』略してアタッキュア。この中に詳しい人がいたら手を上げて欲しいっす」

 

エリカ「日朝アニメを欠かさず観てるリコリスなんて居るわけないじゃん。いつ犯罪が起こるかわからないのに」

 

フキ「だな」

 

サクラ「今回のショーはシリーズ十周年を記念した、初のオールスターって設定みたいっすね。歴代のアタッキュアが登場するみたいっすよ」

 

 サクラが資料に目を落としながら言った。

 

エリカ「ねぇ、十周年のオールスターなのに登場するアタッキュアが全部で四人って少なくない? 私達以外にもアタッキュア役が居て、現地で合流するとか?」

サクラ「いや、そんなこと書かれてないっすね。ショーに登場するのは全部で四人。間違い無いっす」

 

フキ「生存者四名ってことか」

 

ヒバナ「これさ、キャラが良く死ぬことで有名なシリーズなんだよ。初代は一話から最終話まで一人戦うんだけど、あとの世代は三人組や五人組で活躍して、ストーリーが進むうちにどんどん数が減っていくんだ。んで、十周年を迎えた今年の時点で、生残っているアタッキュアはたったの四人(八人)ってわけ」

 

フキ「死にすぎだろ」

 

サクラ「最後の『カッコ八人』って何だよ?」

 

ヒバナ「それはおいおい説明する」

 

エリカ「全滅してる世代の方が多いんだね」

 

ヒバナ「だいたいどのアタッキュアも単独任務中、敵に囲まれて倒されちゃうんだよね」

 

フキ「賢いな、敵が」

 

サクラ「味方が脆いっす」

 

ヒバナ「最終回までずーっとその流れで、主人公サイドが全滅して淡々とENDを向かえたシーズンもあったからね」

 

エリカ「嫌なアニメだね」

 

ヒバナ「作品のテーマが『テロとの戦いに終わりは無い。キュア☆』だからね」

 

フキ「これ、本当に子供向けなのか?」

 

エリカ「監督はどんな人なんだろう」

 

ヒバナ「全く表に出てこないことで有名な人でさ、監督兼脚本として関わってるのもこの作品だけなんだよ」

 

サクラ「詳しいっすね。なんてさっき手上げなかったんすか?」

 

ヒバナ「今話したくらいの知識しか無いからね。資料を見れば分かることだし。時々見てたんだよ。リコリスやってると共感できることも多くてな」

 

サクラ「なんだかリコリスの自分たちが演じるのが適任って感じがしてきたっす」

フキ「取りあえず、役の確認でもするか」

 

 しばしの間、カサカサと資料の擦れる音が会議室の空気をこそぐった。

 

サクラ「フキ先輩の役は初代っすね。一話から最終回まで、ずっと一人で戦い生き残った唯一の戦士っす」

 

フキ「まぁ、私の演じるキャラがそう簡単にやられるわけねーわな」

 

サクラ「初代の放送が始まったのが十年前で、放送当時、主人公は十七歳だったんで、オールスターでは二十七歳って設定っす」

 

フキ「・・・・・・・・・・・・おう」

 

ヒバナ「ミズキさんと同い年だね」

 

エリカ「リアルタイムで年齢重ねてる設定なの? 嫌だなー」

 

サクラ「んで、あーしが演じるのが二代目。一卵性双生児の姉妹って設定で、三話で妹が姉を盾にして、姉は死亡」

 

フキ「・・・・・・・・・・・・」

 

サクラ「・・・・・・ひでぇな妹」

 

ヒバナ「でも最終回までサクラが二人ってのも暑苦しいし、キツいよな」

 

フキ「いやいや、原作の姉妹がサクラみたいなキャラだったわけじゃないだろ」

 

ヒバナ「煽りが凄くて保護者からクレームが来そう」

 

サクラ「うるせぇっす」

 

エリカ「三代目、四代目のキャラは全員死亡っと。私の演じる五代目は五人チームで・・・・・・最終回で敵に寝返って、私一人だけ生存」

 

フキ「想像してたのとちょっと違うなこの作品。甘くないというか、ある意味正しいというか。今後の生き方の参考になる部分もあるかもしれねーぞ」

 

ヒバナ「性格の悪い奴ほど最後まで生き残るような構成になってるんだよ。『善人が早死にするのは世の常だ。キュア☆』もこの作品のテーマだからね」

 

エリカ「ねぇ、さっきからその最後の『キュア☆』ってのが気になるんだけど。聞く度にイラッとする」

 

ヒバナ「子供向けアニメに野暮なツッコミ入れるなよ。大した意味は無いだろ」

 

サクラ「これホントに子供向けか? どこの層が喜んで見てるのか見当が付かん」

フキ「DAの関係者だったりしてな」

 

サクラ「ニッチ過ぎて視聴率取れないっすよ」

 

ヒバナ「五代目から九代目までのアタッキュアも全員死亡。私の演じる十代目は・・・・・・『星の記憶を覗きて、過去のアタッキュア達の過ちから学んだ新世代の五人のアタッキュア。彼女たちは閃いた。みんなで融合すれば、私達ずっと一緒に居られる。永遠のズッ友だ。そして彼女たちは開幕早々、魂の波長を合わせて合体。巨大魔導生命体ガンバナヒーとなって、スペース虚無虚無ワゴン団との戦いに身を投じていく』って設定らしい」

 

フキ「多分だけど、ガンバナヒーの衣装だけフリフリのじゃないぞ」

 

エリカ「そうか!」ガタン。

 

 エリカが立ち上がった。

 

サクラ「うおっ、どうしたんすか!?」

 

エリカ「ヒバナの演じるガンバナヒーだけ実質五人だから表記が『カッコ八人』になってたんだ!」

 

ヒバナ「どうでもいい」

 

サクラ「完全に忘れてたっす」

 

エリカ「・・・・・・ごめん」しゅん。

 

 エリカは腰を下ろした。

 

フキ「つーかさ、私の役以外、まともな性格のヤツがいねーのな」

 

 会議室は重い沈黙に包まれた。

 

フキ「取りあえず今日の所は、各自、担当するキャラが登場するシーズンをまとめて視聴する。それでいいか?」

 

サクラ&エリカ&ヒバナ「「「はーい」」」

 

 こうして、四人はアニメを視聴した。その後二日間、激落ちしたテンションで淡々と、セイフの読み合わせ、演技、アクションシーンの練習をこなしていった。

 

 そして向かえる本番当日。

 

 三話に続く。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。