その方が幸せだと思ったから。 作:飼いならされたreruhuさん
急いでプロローグ部分を作成しました。
本編開始は長く待ってください。
一人の男の末路。
「くそ、老害上司が!」
一人の青年が自転車をこぎながら愚痴る。
学校を卒業し、無事就職。稼いだ金は自分の趣味につぎ込む……そう言った人生感を持った少年は、社会の荒波にのまれ無事やさぐれていた。
就職一か月にして、上司に残業を押し付けられその押し付けた者は定時で帰る始末。気に入らなければ、時代錯誤のパワハラ。メジャーや仕様書を投げつけてくるしまつ。
家にいるより仕事をしている時間の方が長い……そんな日々を過ごしていた。
手に入れた給料で物を買っても使わず、積まれていくゲーム達。録画したアニメだって、瞼を開けるほどの元気はない。
いっそ地震でもなんでも起きて潰れて死なないかなと思うことが日常になっていた。
小さくため息を付いて切り替える。
そうだ。そんな事もう考えなくていいのだ。何回も提出していた退職願届けがやっと社長の耳に入り、俺はあと一週間ほどで退職だ。
今日、家に帰れば有給だからあんなクソジジィの顔を見ずに済む。
一年ちょっとで会社を辞める事に後悔なんてない。でも、ちょっとした不安があった。
けれど、明日になればきっと退屈で苦しい仕事とはオサラバ出来て彩りがある世界が見えてくるはずだ。
「そう思うともう、この道は行かないんだよな」
ふと、上を見上げる。
俺が住んでいる町は、ドが付くほどに田舎だ。空を遮るものはなく、星空が地平線の先まで続いている。
俺は、この夜空を偶に見ながら帰り道で渡るこの橋が何となく好きだった。
理由?……せめて言うならこの卑屈な心が風によって浄化されていく……そんな気がした。
「っと。は、珍しいな……中高帰宅部だった俺が帰り道に信号以外で止まるなんて」
ちょっとノイローゼになってるかもしれない。
手すりから身を離し、愛用する自転車に乗りペダルを力強く押すのだ。
風に押され、軽やかに自転車をこぐ彼はそのまま新たな人生を送る……はずだった。
異変に気が付いたのは、自らの背を照らす車のハイビームだった。これでも、AT自動車免許の持ちの彼は目を曇らせる光源にイラつきながら自転車をこぐ。
人が居ないのならともかく……この橋の上、普通に車通るぞ。
そう思考しながら進む彼の意識は、乱雑にならされたクラクションによって後方へ向けられた。
「な!?」
ハイビームで辺りを照らした自動車が止まる事なく頭をこちらに向けてきたのだ。
フロントガラス越しに見えるのは、焦ったかのように顔をしかめる白髪の男。必死に体を伸び縮みするが、虚しくタイヤが回る音が響くのみ。
ゴッ、とフロントに体を打ち付けられ宙を舞う少年は何かを残す暇なく……数メートルしたの川に導かれるように落ちていった。
……。
…………。
………………。
――本日のニュースです。昨夜、○○県○○市で自動車による交通事故が起こりました。
――警察官の調べによれば自動車を運転していたのは84歳の高齢者で、「免許返納しろと家族に言われたが、自分が認知症ではないのを認めてほしかった」と供述しています。
――また、被害者である会社員。○○さんは監視カメラで川に転落したのがわかりましたが、以前行方不明で○○県警は総勢30人態勢で捜索しています。